プリズマ☆イリ『ア』   作:四脚好き

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少年の終わり

孤児院 庭

────────────────────────―――――――――

 

「―――っ、――――はっ、―――はっ」

 

 あの女の襲撃があった日の晩。()は孤児院の庭に出て息を荒くしていた。今日はこの私がこの身体になってから初の勝利を刻んだ日。その勝利を決定的な物に(殺害)しようとしたのにあの人間の雌(凛先輩)、それを邪魔しおって……。地脈の中にある8枚目とかなんとか言って勝利を有耶無耶にしてあの女を逃がしやがった……。

 

「くくく、ははは。あぁ、ダメだ笑いが止まらないな……」

 

 食事も風呂も済ませたというのにまったく興奮が収まらない。この昂り(ぼく)の本来の姿なら人間が家と呼ぶ箱を壊して辺りを火の海にでもしてやれば収まるのだが、(わたし)として生きている以上それは出来ない。人の身体は本当に不便だ。()のこの興奮はどうすれば収まるんだろうか……。

 

「レイ、また外に出ているので―――あぁ、随分と()()()()()()()()()()

「キ――アラ、先生?」

 

 夜空の月を見上げながら悩んでいると背後から声がかけられる。振り返ればキアラ先生がいた。先生もお風呂に入っていたのだろうか、黒い髪がしっとりとしていて頬が上気している。なぜだろう、風呂上りの先生なんて普段から見ているのに今日はなぜだか先生の姿がとても綺麗に見えて、目が離せない。

 

「月は魔性のものとも言います。何かに取りつかれたのでしょうか? 普段のレイとは()()()()()()()()()()

 

 凄いなキアラ先生。(ぼく)に気が付くんだ。

 

「詳しくは言えない。けどね、キアラ先生」

「はい」

()初めて勝ったんだ。みんな勝てなかったような強敵に俺一人で、しかも一人で勝ったんだ!」

「まぁ、おめでとうございます。レイはとても頑張ったのですね」

「それからとても、とても気分が良いんだ! もうドキドキしっぱなしでどうにも落ち着けなくて!」

「それで昂っていたのですね……。ふふ、ふふふ」

 

 何か考え込んでいるキアラ先生。一体どうしたというのだろうか?

 

「レイ、その昂りを鎮める方法を教えて差し上げましょう」

「ホントですか」

 

 僕一人だとどうしようもなかったからとても助かる。そしてその後キアラ先生についてくるように言われて孤児院の一番奥、キアラ先生の部屋にやって来た。

 

「ここがキアラ先生の部屋……」

 

 そう言えば初めて入ったかも。凄いな、色んな本が一杯ある。それに何だろう、とても甘い匂いがする。

 

「レイ、こちらに……」

 

 あ、ちょっと部屋の中をキョロキョロしすぎたかも。先生がベッドの上で僕を呼んだ。私は直ぐにその声に従ってベッドの上に乗り、先生の対面に座る。けど、一体この部屋で何をするつもりなん――――ッ!?!?

 

「せんせっ、なに! え、服、脱いで!?」

 

 ―――綺麗。 目の前に座る先生が服をドンドン脱いでいく。焦る言葉とは逆に視線と思考は先生に集中してる。しかし胸のドキドキは収まるどころかもっと激しくなっている気がする。

 

「舌技は仕込みましたが、いい機会なので鎮めるのといっしょに他の技も仕込んでしまいましょう。ふふっ、レイ、貴方の好きなようにして良いのですよ。さぁ、こちらへ……」

 

 僕はその日初めて"女"というものを知った。

 

翌日 エーデルフェルト邸

────────────────────────―――――――――

 

 

「しかし見事に潰れたものね」

「やっぱあの女も同じように潰しとくべきだったんですよ」

 

 崩壊したエーデルフェルト邸を前にして呟いた凛先輩の言葉にそう言い返す。

 

「……レイ」

「なんですか?」

「アンタ、随分性格が過激になってない?」

「……そうですかね?」

 

 昔から内心ではだいたいこんな感じだったような気もする。ただそれが内心に留まらず口に出てるってことはやっぱり怪物化の影響が多少は出てるのかな? 俺たち二人が話していると隣にルヴィアさんが美遊を連れてやって来る。

 

「宝石や研究資料のほとんどは地下にありますから大した問題ではありませんわ。 家などいくらでも建て直せばいい。所詮日本での仮住まいなど使い捨てですわ」

「あ、地下は無事だったんですか」

「えぇ」

 

 それならクロエを初めて拘束して痛覚共有を刻み込んだあの部屋も無事ってことだ。思い出の部屋だからね、無事なのは凄く嬉しい。……あの拘束具またクロエに使いたいな。

 

「レイ」

《レイ様》

「ん? 美遊にサファイア?」

 

 何かあったのだろうか? ん? 美遊が持ってる箱って確か……。

 

「ごめんなさい、これは潰れちゃってたの」

 

 美遊が箱を開けて中身を見せてくれる。なかにあったのは僕がサファイアの手入れに使っていた道具たち。確かにこれらは普通に客間の箱に纏めて入れて置かせてもらっていたから屋敷がああなれば潰れるのは道理か。

 

「別に気にしないで、タダの道具だから。それにルビーから聞いたよ」

《聞いたとは?》

「サファイア、本来手入れ必要ないんだってね」

《なっ……姉さん……》

 

 前やった時に思ったけどそれは美遊も微妙な表情浮かべるわ。手入れが必要ないものに対して真剣に手入れしてるんだもの。

 

「サファイアも行ってくれれば良かったのに。悪かったよ」

《あ、いえ、そんなことは……》

「そういうことでどっちにしろもう必要の無い物だったんだ。気にしなくていいよ美遊」

「そ、そう?」

 

 さて……ゴミ置き場は……あそこか。美遊から受け取った箱を手に集団から離れて歩き回り、業者が壊れたインテリアなどを纏めている箇所を見つける。これは分別とか……されてないな。とりあえず不用品を一旦まとめてる感じか。なら丁度いいや。

 

《あ、あの》

「どしたん、サファイア?」

 

 僕が箱を置こうとしたとき、いつの間にかサファイアがついて来ていたらしく、声をかけられる。

 

《その、確かに私たちカレイドステッキにレイ様がしてくださったような手入れは不要ですが……その……。私はレイ様に手入れ、して欲しいです……》

 

 ……はぁ。正直面倒くさい。手入れが不要ならその時間をクロエの為に使いたいんだけどなぁ……。でもうーん、"愛されたい"と欲しているものを無下にするのもアレですし……。ま、軽く弄ぶくらいなら良いか。

 

「サファイア、おいで」

《は、はい》

 

 手を差し出して寄って来たサファイアを手のひらに乗せて一度蓋を止めた箱を再び開ける。

 

「もしかしたらまだ使える道具があるかもしれないし、一緒に探そっか! ほら、サファイアはどの道具が好き? まだ無事だと良いけど」

《か、かしこまりました》

「あぁ、それから」

《――レイ様ッ!?》

 

 手のひらに乗って来たサファイアをがっしりと握りしめ逃れないようにする。そしてサファイアに顔を寄せて小声で囁いてやる。

 

「僕は以前みたいに無知ではないよ」

《!?》

「サファイアやクロエの上げていた声、『嬌声』って言うんでしょ? どういうときにあげる声なのか、どんな声なのか全部知ってるよ」

《な、え――、それは……》

 

 逃げようともがいていたサファイアの動きが固まる。

 

「なのに、わざわざ僕に手入れしてほしいなんてサファイアのへんたーい♡」

《ち、ちがっ!》

「気にする必要はないよ。『愛』も『欲』も良いものなんだから。いっーーぱい愛して、蕩かしてあげます。くふふ……天上解脱、なさいませ?」

《ま、レイ様、待って、これは―――》

 

 サファイア、かわいいよ。いろぉんなかわいいところ、いいこ、いいこってしてあげるから……。ほぉらとぉっても、とってもきもちいい

 

 

正面玄関

────────────────────────―――――――――

 

 くたくたになって自力で飛べなくなってしまったサファイアをまだ使える道具たちといっしょに箱に入れて凛先輩たちのいる正面玄関の所に戻って来た。

 

「本当にぺしゃんこになっちゃったのねー! あはははは」

「お、奥様! 笑う所ではありません……!」

「やほーい」

「お見舞いに来ましたー」

 

 クロエだ! 箱を置いて、クロエの方に向かう。

 

「おはよう、クロエ」

「おはよ、レイ。……手伝い?」

「まぁ、そんな所」

 

 ホントは8枚目のクラスカードについての話とかを凛先輩としに来たんだけど、適当に誤魔化しておく。クロエの後ろにはイリヤにアイリさん、それに確か……セラさん? ん? リズさんだったか? がいる。イリヤとアイリさんはともかく、このセラリズさん(どっちか分からん)はクラスカード事件に関わっていない、ヘタに情報を漏らす訳にはいかないのだ。

 

「なんでもボイラーの爆発事故があったとか。ささやかですがお見舞いを」

「すいません」

 

 セラリズさんが美遊になんか渡してる。そしてイリヤがルヴィアさんに話しかける。

 

「ルヴィアさん、怪我はもう大丈夫なの?」

「お陰様で……と言うべきかしら。あの程度の負傷を引きずるほどヤワではなくてよ」

 

 そう言えば凛先輩もルヴィアさんもあの女も異常に頑丈だよな。魔術師って全員もっと身体能力は低いイメージあったんだけどな……。

 

「今はあのマッシブ女にどう恩を返すか考えるのが楽しくて楽しくて、取り合えず屋敷の損害分を協会に請求しつつ回り回ってヤツの負債になるようネゴと根回しを……」

「いやぁ、お元気そうで何よりです!」

 

 使い捨ての屋敷と言いながらそこらへんはちゃっかりしている。

 

「そう言えば美遊たちは昨日どこに泊ったの? まさか野宿?」

「ルヴィアがそんなことするわけないでしょ」

 

 クロエ……。人はそう簡単に生活レベルは下げられないんだよ……。と言っても地下部分が残っているなら避難所的な部屋もありそうだけど……?

 

「新都の方にホテルを借りてて……しばらくはそこで寝泊まりするつもり」

「一棟丸ごと貸し切ろうとしたのに断りやがりましたのでオーギュストに株を買い占めるように頼んだところですわ」

「なんでこんなバカが金持ってるのかしら!」

「クロエ、気持ちは解るけど口が悪いよ」

 

 そんなクロエも好きだけど。そんなことを言っているとアイリさんが寄って来た。

 

「そんなわざわざホテルなんか取らなくてもみんなウチに泊ればいいのにねぇ」

「「「え!?」」」

「!!」

 

 ……やっぱ只者ではないわ、アイリさん。

 

「お、奥様! いくらなんでも三人は……! ぶっちゃけ今でもそうとうキツキツなんですよ!?」

「あららーだめなの?」

 

 セラリズさん、苦労してるんだろうな……。

 

「どうぞお気遣いなく、私は実家が別にあるので大丈夫です。ルヴィアもホテルの方が気を遣わないでしょうし……ルヴィア?」

 

 凛先輩が遠慮して断るがどうにもルヴィアさんの様子が可笑しい。何を考えているのか顔を赤くしてガクガク震えてる。

 

「いけませんまだ早すぎますお義母様!!」

「何がよ!」

 

 あ、暴走した。

 

「というか順番が逆でしてよお義母様ッ!!」

「だから何の話してんのよアンタはーーッ!」

「でも本人たちの同意の上であるならば多少本来の手順と異なってもそれは、それでー!」

「ああもう、いいから黙れ! 永遠に!」

 

 この二人は相変わらずブレないなぁ……。結局この後、美遊だけイリヤの家に一晩泊ることになった。……いいなぁ。 それはそれとしてどうやら今日出会ったのはセラさんだったらしい。

 

 




レイ君、卒業(何がとは言いませんが)

現在の魂の構成
沖繁レイ(統合体)5割、キアラの干渉5割


・沖繫レイ(統合体)
キアラの手によって『クロエの願ったレイ』『デストロイア』『少年』の三つが溶かされて混ざり合って生まれた姿。

・レイ君、魔性菩薩の仲間入り。獣としての準備は完全に終わった。あとは本人の気分次第。


この世、全ての愛(???)
ランク:???
種別:対全宝具
レンジ:???
最大補足:???
 ()()()()()()()()()()()()()()()()を介して生き物の魂を自身の身体に招き入れ、クロエへの愛として供物に捧げる。
 そうして何十億という愛の渦に巻き込んで知性あるものを融かし、その『生涯』を一瞬で昇華させる。
 生物に限らず、知性をもつ存在であれば逃れる術はない。
 殺生院キアラの教えを受けたレイが自分なりの悟りを開いたことで誕生した最強(最高)宝具(愛の証明)



ぷーりん「え!? なんで、こんな……。僕の干渉が剝がされた!?」
根源少女「なんで、どうして私まで弾かれてるの!? なにが起きて―――」
???「見つけた」

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