プリズマ☆イリ『ア』   作:四脚好き

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観察の終わり

???

────────────────────────―――――――――

 

「え!? なんで、こんな……。ボクの干渉が剝がされた!?」

「なんで、どうして私まで弾かれてるの!? なにが起きて―――」

 

 どこかの世界、互いにレイを自分の目的の為に利用しようと画策していた二人の魔術師が慌てふためいていた。突如としてレイの霊基が変質、ほぼほぼ『獣』のそれと同等の物へとなった。それだけでも驚きの事実だが、更に事態は急変する。

 『獣』への変化を止める為、『獣』へと変化させるため、二人がそれぞれの目的でレイに干渉にしようとしたとき()()()()()()()()()()()()

 

「見つけた」

「「!?」」

 

 そんなマーリンと愛歌に声がかけられる。その声は二人にとってとても聞き覚えのある声だった。しかしそれは互いに魔術を通して観察し、脳内に直接伝わるはずの声であり、絶対にこんな風に耳から伝わってはいけない声だった。

 

「どうしてここに君が」

「……驚いたわ、レイ。あなた、こんなこともできるようになったのね」

 

 二人の後ろには擬獣化形態のレイがいた。しかし通常の擬獣化形態とは少し違っていて、赤かったデストロイアの甲殻部分のほとんどは黒くなり、人部分には毒々しい紫色の光が地脈のように走っている。

 

「レディ・アヴァロンさんはお久しぶりですけど、そちらの方は初めましてですよね? ……随分前から人の身体にちゃちゃ入れてたみたいですけど」

「えぇ、初めまして。私は沙条愛歌。……貴方の、飼い主よ!」

 

 挨拶と同時に愛歌はかつてセイバーに破壊されたビーストの破片をレイにぶつけようとする。レイという新たな『獣』の核に自身の言うことをよく聞くビーストの破片をかぶせ、自身のビーストを復活させようとする愛歌。そうして愛歌はやり直すのだ、セイバーに邪魔されて達成できなかった、彼の夢の実現を。人理を破壊し、ブリテンの破滅の未来を消し去るのだ。

 

「残念ですけど、そういうのはクロエだけで間に合ってます。『万物を融解す禁忌の光剣』(ヴァリアブル・スライサー)

 

 レイは自身を取り囲み蠢くビーストの破片を手にした剣で切り裂く。じゅわじゅわと音を立てて溶け堕ちるビーストの破片。

 

「へぇー、これがビースト……。僕を愛歌さんはこんな風にしたかったんだ」

 

 しゃがみ込み溶けていくビーストの破片を見つめるレイ。

 

「これは、これは破片とはいえビーストをいとも簡単に切り裂くなんて……。君、ちょっと強くなりすぎだろう」

「いやいや、多分強くなってはいないですよ。今まで発揮できなかっただけで」

「そうだろうとも……。そんな風に私がしたんだからね。今回も少しばかり眠ってもらうよ!」

 

 レディ・アヴァロンは杖を掲げ幾つもの魔力弾を放つ。レイは避けることもなく佇む。そして大量の魔力弾が降り注ぐ。

 

「こんなものですか?」

「おいおい、冗談だろう」

 

 着弾の煙が晴れるとそこには無傷のレイが立っていた。自身の渾身の魔力弾がまったく訊いていない。その光景にレディ・アヴァロンは焦り始める。

 

「これは……アーサーを呼ぶべきだったかもね」

「そんなに心配しなくても大丈夫ですよ。僕はまだ『獣』にはなりませんし、貴女の好きな愛ある物語も見せて上げられますよ。―――こんな風に

「ッ!?」

 

 レディ・アヴァロンが気が付いた時にはレイはその場から消えていていつの間にか隣に現れていた。花びらに姿を変えて離脱しようとしたレディ・アヴァロンの手をレイは強く握りしめる。たったそれだけでレディ・アヴァロンの魔術は不発に終わり膂力の差から膝をつかされる。

 膝をついたレディ・アヴァロンの頭に自分の片方の手を添えて自身の"愛"の一部をレディ・アヴァロンの脳内に流し込み始めるレイ。

 

「あ……、ッ゛が! や、やめ―――やめて! あぁ、ぅ――」

 

 レディ・アヴァロンは確かにまるで菓子の様な甘く幸せな物語が続くことを望んでいる。しかし、いまレイが流し込んでいるのは砂糖やバターを混ぜてそのまま油で揚げたような重い愛。しかもそれを本人の限界関係なく、ガソリンスタンドの給油機で無理やり胃に詰め込まれているようなモノ。

 

「んぐむぅ!? お゛う゛え゛ぇ゛っ゛!!  ……お゛っ、あ――お゛ぇえ゛」

「うわ、夢魔でも吐くことあるんですね……。うん、存分に吐いて楽になると良いよ。……ふふふ、あの時とは真逆ですね」

 

 耐え切れずにレディ・アヴァロンは嘔吐した。嘔吐してしまったレディ・アヴァロンを見てレイは愛を流し込むのを辞めて彼女の背を優しく摩る。

 

「うっ……お゛ッ……。はーッ、はーっ、君、あの時のことを……?」

「ええ、思いだしてますよ。もう前世のことは思いだせなくなりましたけど代わりに貴女はボクに素晴らしい愛をくれた。クロエとの出会いをくれた。本当に感謝しています。だから―――」

 

 そう言いながらレイは力の入っていないレディ・アヴァロンを仰向けに寝かしてその上に座り、マウントポジションをとる。そして再びレディ・アヴァロンの頭に手を伸ばすレイ。先ほどとの違いは今度は両手という点だろうか。

 

「沢山、愛してあげます♡」

 

「い、嫌だ! いやいやいやいやいやぁーー! 止めて、止めてよ! もう見たくない、見たくないの!  いや! ああああああ!! なんで、なんでまじゅつつかえないの! たす、たすけて! アーサー!  たすけてよアーサー!」

 

 もう恥もなにも何も気にしていられないのか近づくレイの両手から逃れようと必死にもがくレディ・アヴァロン。美しかった顔は涙と鼻水にまみれ、恐怖から失禁していた。そこにアーサー王を補佐した魔術師としての彼女はおらず、必死に助けを求める一人の少女だけが残った。

 

「……やーめた」

「へ?」

 

 後数ミリでレイの手とレディ・アヴァロンの額がくっつくかどうかの所で突然レイは手を止めた。

 

「さっき言った通り、貴女にはクロエと出会わせてくれたこと本当に感謝してるんです。だから沢山愛してあげようかと思ったんですけどそこまで嫌がるなら特別にやめて上げますよ」

「ほ、んとう?」

「はい。ほら、どきますから貴女は自由ですよ。でもここからは僕の好きなようにさせてもらいます。もし、またちょっかいを出すようなことがあれば本気で愛しますから」

「分かったよ! も、もう私は君に干渉しないとも! あぁ、さようなら!」

 

 レイが離れて魔術が使えるようになったのが分かったレディ・アヴァロンは直ぐにこの世界から逃げ出した。そうして残った愛歌とレイは視線を合わせる。

 

「じゃあ、変わりに貴女を愛しましょうか」

「私を愛して、愛するのはセイバーだけだもの、それはお断りよ」

 

 愛歌の言葉にレイは顎に手を当てて考え込む。

 

「んー、貴女も僕の愛を拒みますか……」

「当たり前よ。私はセイバーの為にこの世界を壊すのに忙しいのよ。だからあなたを利用しようとしたのに折角残っていたビーストの破片までダメにしちゃうなんて……困った子だわ。さっさと帰ってくれる? 私はこれを直さなくちゃいけないの」

「そっちからけしかけて置いてなんて言葉だ」

 

 愛歌の言葉にレイは苦笑いをする。彼にとってレディ・アヴァロンはクロエと出会わせてくれた恩人であると同時に家族と引き裂き、悪夢を見せた元凶であったが、愛歌はまったく知らない人間である。自分の知らないうちに干渉していたらしいが、直接顔を合したわけでは無いのでどうにも愛することも、攻撃することも微妙にし辛い相手だった。その差がこの二人の扱いの差を付けていた。

 

「まぁ、出て行けと言われれば出ていきますよ。今後僕に手を出さないと約束してくれるならですけど」

「え? あー、分かった、それで良いわ。どうやらあの花の魔術師だけじゃなくて私の手にも余るようになっちゃったし。折角いい素材を見つけたと思ったのに、とんだ大損よ」

 

 そう言って愛歌は直ぐにレイへの興味をなくし、自身のビーストを復活させようと作業を始める。そんな自由過ぎる愛歌にレイは溜息をついてその場から消えるのだった。

 

 

新都

────────────────────────―――――――――

 

「……ふぅ」

 

 新都にあるデパート前、僕はそこのベンチに腰かけていた。時間までに色々と片付いて良かった。……さてもう少しでクロエたちが来るはずだけど。

 

「おーい、レイ!」

「お待たせー!」

 

 辺りを見回すとデパート前のバス停に停まったバスからクロエたちが下りてくる。

 

「全然待ってないよ。それよりも、外は暑いし一旦中に入っちゃおう」

 

 今日はもうすぐやって来る夏休みに向けて新しい水着を買いに来たのだ。と、言っても男子の水着なんてたいして差はないんだけどね。それに女子の水着選びに男子の僕が同行するのはどうなんだろうと断りはしたんだけど……。

 

『えー、レイ。私の水着選んでよー! 好きなの着てあ・げ・る』

 

 なんてクロエに言われたら来ない訳にはいかないよね。心配事もなくなったし、ホント楽しみだなー!

 





 レイ君見守り隊、解散のお知らせ。

レイ君、単独顕現で好き勝手し始める。

世界「は、おま、ふざけんなよ……。今に見てろ……」
抑止力さんが対策を練りはじめました。抑止の守護者召喚準備に入ります。

このあとレデイ・アヴァロンは暫くアヴァロンに引きこもり死んだ目で虚空を見つめるだけの人形になった。ある程度すれば普段通りになるがときたま、トラウマ発症してアヴァロンに閉じこもって何も見れなくなる時が出来た。
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