プリズマ☆イリ『ア』   作:四脚好き

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痴話騒ぎ

海の家 がくまざわ

────────────────────────―――――――――

 

「重ーい!」

「感謝の言葉が重すぎるわー!」

 

 美遊の言葉に雀花と那奈亀が騒ぎ出す。いや、分かるよ。ただの誕生日会でここまで重みのある言葉を聞くとは思わなかったよ。

 

「結婚式のスピーチかと思ったわ! そんならウチらからのプレゼントも受け取れ! そんで感謝しろー!」

 

 そう言いながら龍子がどこからか紐? を取り出す。なにあれ?

 

「なっ……これ龍子が着てたヒモ水着じゃない!? いらないよ!」

「私らの気持ちをー!」

 

 え、あれ水着なの? 何も隠せないだろあれ。え、まって僕みたいって言ってたの、アレを着たクロエを? ……いや見たくはあるか。ただこの場は士郎さんに一成さん、龍子のお兄さんたちに他の海水浴客もいる。たとえ泳がない時に上着を羽織らせるとしてもあれを着せなかった僕の判断は正しい。

 

「ああコラあんまり騒ぐなって……!」

 

 流石に騒ぎが大きくなりすぎたか、士郎さんが諫めに入る。

 

ドガガガガガガガ!!

 

「!!」

「うるさっ……!」

「なんの音!?」

「工事……?」

 

 その時なにか重機の音らしきものが辺りに響いた。余りの騒音にクロエたちも驚いて騒ぎがピタリと止まる。誕生会をいったん中止して海の家から出て辺りを確認する。

 

「工事だ……こんなビーチのすぐそばで……」

 

 外に出ると灯台の近くがフェンスで仕切られていて中に重機が見える。

 

「あら、イリヤたちじゃない?」

「えっ……あっ!」

 

 凛先輩にルヴィアさんだ。二人そろって何をしてるんだろう……。

 

「あれは……遠坂にルヴィアじゃないか」

「こんなところで何を……?」

「あっ!」

 

 うわー、どんどん人が集まってくる……。

 

「アイスキャン……む?」

「あうっ……!?」

 

 うは、あの(バゼット)も来やがった。なんかドンドンイリヤの関係者が集まってきて収拾つかなくなってきたぞ……。

 

「……奇遇ですね。このような場所で」

「バゼット……!」

「なんなんですのその恰好は。というかシェロ!」

 

 全員固まっていた中、口火を切ったのは女。どうやら敵対の意思は変わらずなさそうだがそんなことを知らない凛先輩とルヴィアさんは咄嗟に警戒態勢に移行する。いや、若干ルヴィアさんは他のことに考えを引っ張られてるな。

 

「なんだ? 何だ?」

「知り合いか……?」

「ちょっとした因縁……ですかね」

 

 女に戦闘意識はなく、ルヴィアさんも恋愛脳の為、そんな深刻なことにはならないだろう。というか、全てを巻き込んでグダグダになりそう。海の家から出る時に器に分けて持ち出したアイスにスプーンを突き立てて口に運ぶ。

 

「ほんと突然現れるヤツね! どうする……!? こっちはまだ準備が……」

「落ち着きなさいここで事を始める程愚かではないでしょう。こんな大衆の面前で……というかシェロの面前で……。というかシェロ!!」

「シェロシェロうっさいわね!」

 

 ルヴィアさん、本当に士郎さんのことが好きなんだなぁ。というか士郎さんって凄くモテてない? イリヤに凛先輩にルヴィアさん。あと一成さんに、イリヤの家のメイドのセラさんに美遊も怪しい気がするし……。

 

「……お前たちはここでなにをしているのだ。海水浴という訳でもなさそうだが。まさかとは思うがその怪しげな工事に関係しているのか?」

「オホホホホホ、そんなまさか」

 

 贈り物もセンスのいいもの選んでいたし士郎さんって凄いなぁ。でも、クロエはそんな人と一緒に住んでるんだ……。ふーん……そっかー……。もしかしたら、クロエもいつか……。嫌だなぁ

 

今の内に消す?―――ッ!?」

 

 まて、一旦落ち着こう。相手はイリヤやクロエのお兄さん何だから。特に何かする必要はない。うん。特にないんだから。

 

「ふむ。……では施工主がエーデルフェルトとなっているのはなぜだろうな?」

 

 目ざといですね、一成さん。まるで窓の冊子を指でなぞる姑のようですね。そんなことを思っていると美遊がそっと教えてくれる。

 

「これ、八枚目のカードの元へトンネルを掘る工事。カードが地中深くあるからそこまで掘り進んでから鏡面界にジャンプするみたい」

 

 成程、地脈の中にあるとか言われた時はどうするかと思ったがそういう方法もあるのか。

 

「おー、いたいたイリヤズ」

「なんの工事なんこれ?」

「うおぉぉ、でっけーはたらく車だな!」

「あうあっ……!」

 

 不味いな雀花たちも来たせいで本格的に収拾がつかなくなる。とくに龍子はマズイ、目の前にある重機に目を輝かせて何をしでかすか分からん。

 

「しまった……ボヤボヤしているうちにみんな集まっちゃった……!」

「これ以上、事態がややこしくなる前に撤退させるのよ! レイ!」

「はいよ」

 

 クロエの指示で龍子を抑えて海の家へ戻そうとする。美々は自分から戻ってくれそうで助かる。

 

「な、なんでもないよー、みんなー」

「ささ、ここは危ないから向こうで遊びましょうねー」

「保母さんかお前ら」

 

 イリヤが雀花を、クロエが那奈亀の背を押してこの場から離れさせる。

 

「あっ! 金ドリルとツインテール!」

「えっ?」

「な、なんですの?」

 

 那奈亀が凛先輩とルヴィアさんを見て叫びながら指をさす。……今度はなんだ? 

 

「なんだ知り合いか?」

「あいつらは……あいつらは……。あたしの姉ちゃん……森山奈菜巳の恋路をぶっ壊した悪魔だー!」

「「「なっ、なんですとーーー!」」」

 

 那奈亀のお姉さん?

 

「人違いでしょう。私たちが他人の恋路を邪魔するわけ―――」

「いや、待って。森山……森山……なんか引っかかるものが……あっ! もしかしてあのカエルの時!」

 

 思い当たる節はあるんですね、凛先輩。

 

「その時だー!」

「カエル?」

「どんな状況なのそれ!?」

 

 恋路とカエル? うーん? 当事者たちは分かるようだがこちらは全く分からん。どうしてその二つが関わることになる?

 

「聞いたことがある! ある女生徒が解剖用のカエルが入った袋を投げつけ大惨事になったとか……」

「有名な事件だった!」

「あれ以来姉ちゃんはカエル恐怖症になっちゃったんだ! 名前に『巳』を持つ者が何たる悲劇……!」

 

 いや、名前と個人のトラウマはそんな関係の物ではないだろうに。

 

「そうだ、あの時の後始末は大変だったんだぞ! いったい何を考えているのだ貴様は!」

「しょ、しょうがないじゃない! 中身がカエルだって知らなかったんだから!」

「だからって森山に物を投げつけることは無いだろ」

「あの女を庇う気ですのシェロ!?」

「そ、そういう話をしてるんじゃ……」

 

 高校生組がザワザワと言い合いを始めてしまった。凄いな、アレが修羅場という奴か。

 

「大体ッ! 元はと言えばあの子がわざとらしく衛宮君にちょっかいをかけるから……!」

「姉ちゃんの悪口いうなー!」

「『衛宮君に』……? なぁ、もしかして奈菜巳さんの好きな人ってイリヤの兄貴?」

「へ?」

 

 雀花、鋭いじゃん。そんな所に気が付くなんて。ただ、今の状態的には気が付いて欲しくなかったけど。

 

「おおッ、お義姉さまーッ!?」

「イヤアァーッ!? わたしを抗争に巻き込まないでー!!」

 

 ほら、那奈亀が暴走したじゃん。普段どちらかというとツッコミ側の那奈亀がああなるなんて相当だぞ。

 

「卑劣な……! 妹を使ってまずイリヤの方を落としにかかる戦略ですわね!」

「いや、違いと思いますよルヴィアさん」

「しかし無駄なこと! イリヤスフィールは既に私と義姉妹の契りを交わしています!」

「聞けよ、色ボケ貴族」

「わっ、私は別に衛宮君とか関係ないけど……イリヤとは主従契約を結んだことがある仲なんだから!」

「凛先輩、貴女もか」

「あたしなんかイリヤの恥ずかしいところにほくろあるの知ってるもんねー!」

「乗るな那奈亀、戻れ!」

「ええい、先ほどから聞いていれば破廉恥な! やはり衛宮は女なぞに渡せん! 男だけの柳洞寺で面倒をみよう!」

「いっそそれが一番面白くていい気がしてきた」

「アイスキャンディーいかがっすか!」

「かえれ、女」

 

 というか、話題の中心のイリヤは一体どうして……あ。

 

「「「逃げたーーッ!?」」」

 

 いつの間にかその場を離脱して砂浜を疾走していた。

 

「待てイリヤー!」

「白黒つけなさい―ッ!」

「やーーー追ってこないでーーー!」

「ヤバくなったらすぐ逃げるのは悪い癖よ!」

「そーだそーだ!」

 

 すぐにイリヤを追いかける他の面々。うーむ……別に士郎さんの恋路にも、イリヤの選択にも差ほど興味もないし、ああなった皆は止まらないだろうから放置で良いか。海の家での食事に戻ろう。

 海の家に戻りテーブル上の食事に手を付ける。うん、美味しい。しかし皆がどれくらいで戻るか分からんし、いったいどれほど食べていいものなのやら……。

 

「というか、これどうしよう……」

 

 席に戻ったことで上着に隠しておいたプレゼントが目に入る。僕が作った手作りのヘアピン。シンプルな赤色の本体に三人それぞれに相応しいと思った花言葉を持つ花を彫刻してある。しかもただの彫刻じゃない、魔力を流せば刻まれた花が1000万色に発光する。まぁ、ビカビカ光過ぎても眩しいだけだから穏やかな発光にはしてあるが。

 

「頑張って作ったんだけど、渡せなきゃ意味ないよなぁ……」

 

 僕は士郎さんみたいにセンスもないし、あんな高価なプレゼントもできない。悩みに悩んで作ったヘアピンだが、あのプレゼントと比べては余りに幼稚なプレゼント。いっそ、壊してしまって無かったことにしようか……。箱を手をかけて少しずつ力を込めていく。バキリ、と手の中で箱が壊れる音が聞こえた。無意識の内に手を外してしまう。

 

「あと少し、手に力を籠めればそれで終わりなのに……どうして壊せないかなぁ……」

 

 まったく未練がましい。結局ヘアピンを壊すこともできず本体むき出しのまま再び上着のポケットにしまう。

 

 それから食事を続けていたのだがなぜか記憶が所々抜けているみんなが戻ってきた。何があったのかは分からないがいつの間にかルビーとサファイアがイリヤと美遊の背後に隠れていた感じなにかがあったのは確実だろう。そして凛先輩やルヴィアさんも巻き込んで誕生会は再開されすべて完食しきったあとその日は解散となった。

 

 





因みにレイ君が送ろうとして他ヘアピンに刻まれていた花

イリヤ フリージア『あどけなさ』『親愛の情』

美遊 ヤグルマギク『信頼』『優美』

クロエ ガーベラ『究極の愛』『熱愛』
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