プリズマ☆イリ『ア』   作:四脚好き

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熱で寝込んでおりました。久々の投稿です。


夏の祭典と言えば……

栗原家

────────────────────────―――――――――

 

「性器さえ隠れていればどんないやらしい水着着ていてもわいせつ物陳列罪にはならないらしいぞ」

「おねぇ……この限界状況で一言目がド下ネタとかマジほんと勘弁してください」

「火雀さん、大分キテますね」

 

 現在僕は、いつか雀花に約束した夏コミの手伝いに来ていた。といっても僕はそれほど画力があるわけでは無いのでべた塗りとかモデルとかそういう方向の手伝いが主だが。

 

「話してないと寝そうなんだよ。しょーがないだろ。とにかく最終締め切りまであと4時間! 夏コミで新刊落としの生き恥を晒す訳にはいかないんだ! おい、レイ、鎖骨見せろ!」

「はい、どうぞ」

 

 うーん、毎年ながら本当にギリギリで生きてる人だ。シャツの首元を引っ張ってチラリズムの形で火雀さんに鎖骨を見せつける。

 

「もうちょっと早くから手を付けていればこんなギリギリには……」

「ヒリつかない〆切なんて〆切じゃねぇ!」

 

 名言? いや、迷言を火雀さんが吐いた所、彼女の携帯が鳴りはじめる。

 

「おう、アキラ! 早かったな漫画出来た? メールでデータ送ってくれればこっちで……。あ? なに違う? ……え? 落とした?」

 

 おっとぉ……。大分雲行きが怪しくなってきたな? 雀花も察したのかピクリと動きが止まる。

 

「おい冗談じゃねーぞ! お前のパート12ページ分どうすんだよ!? 今から台割の変更なんてきかねーぞ! あっ、待て、泣くな! 逃げんな! 切るな―――ッ!」

 

 あー、これはこれは……。作業部屋内に重苦しい空気が流れ始める。

 

「……雀花、今から12ページ漫画描け」

「うわーお……」

「でっきるわけねーだろ! 常識でモノ言えボケェェ!」

「常識の範疇でなんか生きてねーんだよ!」

 

 うーむ、誕生会とは別の意味で修羅場だ……。そして火雀さん、頼むから常識の範疇で生きていてくれ。貴女は人間だろうに。

 

「とにかく原稿用意しろ! 漫画でも小説でもなんでもいいから! あともう、レイは上全部脱げ!」

「はい、どうぞ」

「おねぇ、毎年手伝ってくれてるとはいえ仮にも妹のクラスメイトに遠慮が無くなり過ぎだろ! それに都合よく、漫画や小説のストックがあるわ……あ」

 

 お? 雀花が何か思いついた表情をした。

 

「あるかも。ちょっと電話してくる」

 

 そう言って雀花は部屋を出ていった。ふーむ、雀花の当てが何なのか分からないな。とりあえず火雀さんに体触らせて創作意欲を刺激しておくか。

 

 そうして少し待っていると雀花が呼んだのはまさかの美々だった。ここで何故美々? 固まったが僕と目があった美々はビシリと凍り付く。それもそうか、どう呼ばれたかは知らないが部屋に入ったらクラスメイトが上裸で別のクラスメイトの姉に体触られてるんだもんな。そりゃ固まるわ。

 

「すまんな……美々!」

「お?」

 

 固まっている美々を雀花は手早く布団に包んで拘束して美々が持っていたノートを回収する。え、なんか鮮やかすぎる手際にびっくりなんだけど……。

 

「あった、おねぇ。これ!」

「ん?」

 

 雀花はパラパラとノートをめくり目当ての物を発見したらしくこちらに見せてくる。

 

「なになに……『禁断のカルテット』ホモでバイな男三人との逆ハーレムものか……!」

「美々は授業中もコソコソ小説書いていたからなー。何かしら使えそうなものがあると見たんだ!」

「良いねぇ、紙面からグツグツと煮えたぎった妄想力が滲みでてるよ!」

 

 栗原姉妹が覗き込んでいるノートをせっかくなので二人が読み終わってから回してもらう。

 

「うおっ……」

 

 美々は確かにむっつりだったが思ったよりも大分濃い内容のものを書いてる……。びっくりして思わず変な声出た。でもなんだろう……どっか見た気がするんだよなぁ、このキャラ……?

 

「頼む美々、この小説を私たちに寄稿してくれ」

「ん゛ーん゛ー!」

 

 僕が呼んでいる背後で雀花はそう言いながら縛られたままの美々に頭を下げている。口をガムテープでふさがれた美々は首を大きく横に振って否定の意思を告げていた。

 

「これだけの妄想ため込んでいたのは辛かっただろう……」

「分かるよ、溢れ出る思いを隠さなきゃいけないつらさ。でもさ私らはその気持ちを理解できる」

「かく……し、て……たか?」

 

 火雀さんもいつの間にか美々の前に移動して美々を優しく撫でながら語り掛ける。そうして栗原姉妹二人がかりの説得が始まったのだが……雀花、お前本当に隠してたか?

 

「私らは同志だ」

 

 あ、でも美々にもなんか思うところあったっぽい。同志の言葉に反応して顔を上げた。

 

「美々、悪いようにはしない。あんたのその気持ちと書き上げた小説、私らに預けてくれないか?」

「ん」

 

 あ、頷いた。

 

 

 

 

 

 それから数日後。

 

「あ……あ、あぅ……い、いら、……いらっしゃい……ませ」

「いらっしゃいませー!」

 

 東京国際展示場東ホールにて僕と美々はコスプレ売り子をしていた。……国際展示場か、どうしてか分からないけどなんかぞわぞわする。なぜだろう、べつに曰くつきの場所とか、魔術的に怪しいところはないはずなんだけど……? 展示場というより臨海副都心一帯になにか……? ま、いっか、実害はないし。

 

「そうそう二人とも良い感じ、美々ちゃんも恥ずかしいのは始めだけだからさ」

「周りもみんな仲間だから恥ずかしがる必要はないって」

 

 緊張で縮こまっている美々を励まそうと栗原姉妹が声掛けする。……ふーむ。

 

「美々」

「れ、レイ君」

「衣装は君の方が露出が少ないんだそんなに恥ずかしがる必要ないよ」

「う、うん」

 

 そう今、美々が着ているのは彼女自身が書いていた小説のキャラのコスプレ。学園者ということもありその恰好は学ランだ。一方の僕は雀花が書いていた中性的な少年が金持ち大学生に飼われて女装させられ……、というギリギリを攻めた作品のコスプレだからか肩だしユルユルパンクTシャツにホットパンツにサンダル。上下ビシッと布で覆われている美々と違って露出が多い。

 自分よりヤバい格好している奴が近くに居るんだ。美々が恥ずかしがる必要なんてまったくない。

 

「いらっしゃいませー!」

「いらっしゃいませー!」

 

 うん。美々も声が出てきて良い感じ。

 

「いいねぇ、いいねぇ」

「美々も才能あるぜ!」

 

 そうして販売会は完売の大成功を達成し、美々は同人デビューをしたのだった。

 

 

栗原家

────────────────────────―――――――――

 

 

 即売会から数日後。雀花に呼ばれて僕は彼女の部屋で待機していた。雀花はイリヤ達も呼んでくると言って出て行ってしまった。……時間的にそろそろ戻って来るとは思うんだけどイリヤ達もよぶなんてなにかあったか? ……あるんだろうなー。多分美々のことなんだろうけど。

 

「おいっすー、悪りぃ、待たせた」

「お帰り雀花。それほど待ってないよ」

 

 あ、戻って来た。

 

「ッ、お、おぉ。お、お帰り、って言われるのなんかいいな……

「わー……本棚だらけ……」

「凄い量ね……」

 

 クロエにイリヤも来た。うん、目的通り連れてこれたみたいだね。

 

「や、クロエ、イリヤ」

「あ、レイだ」

「あら、本当。ここ雀花の家よね?」

「僕は二人より先に呼ばれてたの。それでこうして待ってたって訳。二人とも雀花の家は初めてでしょ。ほら、こっちの適当なところに座っておいて」

 

 そういって僕は自分の横をポンポンと叩く。するとすぐにクロエがやってきてくれて隣に座る。イリヤはそのすぐ後ろだ。

 

「これ全部雀花の?」

「いや、8割くらいおねぇの本。私の部屋書庫代わりに使われてんだ」

 

 ひどい話のようにも聞こえるが姉妹で趣味が同じことを考えるとこれは雀花の趣味の本でもある訳で……しかも本は全て火雀さんの金で買われたものだから雀花はただで好みのジャンルの漫画が読み放題という訳だ。うーむ、そう考えるとこの部屋のこの姿は良い事なのか、それともやっぱり悪い事なのか。

 

「てまぁぶっちゃけると私は腐女子ってやつで……いわゆるBL愛好家なわけよ」

「びー」

「える?」

 

 雀花の言葉がわからなかったのかクロエとイリヤは二人そろって首を傾げる。かわいい。

 

「やっぱそこから説明しないとダメか。えーと、なるべく初心者向けのやつは……」

 

 雀花が自分の紙袋の中からおすすめの本を探しだす。そんなとき丁度チャイムが鳴り響く。

 

「まずい美々がもう来やがった」

「呼ぶとは聞いていたけど随分早いね」

「15分前行動か? そういうところは変わらないな!」

「え、美々も呼んでたの!?」

 

 15分前行動……流石にちょいと速すぎないかい、美々さんや。

 

「とりあえず、イリヤとクロエは押し入れに隠れろ!」

「なんでよっ!?」

 

 手際よく二人を押し入れの中に押し込む。なんかこういうの手際良いよね雀花。いったいどうして……あ。龍子(制圧対象)か。

 

「まずは現状の美々を見てくれ! あとBLが何なのかはこの本を読めばわかるから! 美々連れてくるから物音立てるなよ……」

 

 そう言って雀花は再び玄関に向かった。しかしさっき雀花の渡した本、結構描写ヤバい奴じゃなかったか? 急いでたから間違った奴渡したのかな?

 

「おじゃましまーす」

「や、美々」

「あ、レイ君も呼ばれたの?」

「まぁね」

 

 雀花が美々を伴って現れた。雀花が美々を座らせると美々は直ぐにカバンから一冊の本を取り出した。

 

「あのね! 貸してくれた本、すっごく良かったよ!」

「おぉう」

 

 それからあの雀花ですら若干引く熱量で一気に語り出す美々。……凄いなここまで腐の進行スピードが速いとは……。

 

「それでね! 介悪郎様の■■■が■■に■■■■で■■■■■■! 結局■■は■で■■■■なんじゃないかって思うの! ■■■■■■が■■で■■■は■■!」

 

 まさか、あの『地味だけど優等生』の美々がひと夏の間にここまではっちゃけて、優等生らしからぬ単語を言いまくるようになるとは誰が思うかよ。

 

「■■■■■■■■■■!!」

 

 バーサーカーかよ。ん? 押入れが……。あー、もう我慢できなくなった感じか?

 

「外れっ……」

「キャ!」

「「あっ……」」

「は?」

 

 次の瞬間押し入れの戸が外れてイリヤを組み敷いたクロエが出てきた。

 

「そんな汗だくになって押し入れの中でなに……シテたの?」

「思考が全方面にピンク色になってるー!?」

「クロエ」

「こっちはこっちで真っ黒になってる!?」

 

 

 

 

「―――とまぁ、常時バッドステータスな訳でもう私の手に余るんでお前らにも応援頼んだんだけど」

「酷いよ雀花ちゃん……イリヤちゃん達にばらすなんて……」

「でもどうしてこんな……?」

「あー、イリヤってコミマって知ってる?」

 

 イリヤが原因について知りたかった様なので一応説明の為の前提として質問してみる。

 

「こないだニュースでやってたわね。一般人が自分で本を作って売るイベントでしょ?」

「クロエ正解」

 

 そう言いながらクロエの頭を撫でる。

 

「そういう本を同人誌って言って雀花のお姉さんも本を作ってコミマに出しているんだ」

「その同人誌に美々の小説無理やり載っけちった☆」

 

 雀花が途中から説明を引き継いで、てへぺろのポーズをしながら白状した。

 

「なにやってるの!?」

「しかもコスプレで売り子させられました……」

「なにやらせてるのー!?」

「僕もコスプレしたんだ」

「写真はどこなのよ!」

 

 雀花と美々の発言にイリヤがツッコミを入れて、僕の発言に対してはクロエが食いついた。写真はないんだよね。でも確かあの衣装は火雀さんが保管してるはずだから衣装はこの家にあるはず……。

 

「見たい?」

「見たい」

 

 うん、力強く返事されてしまった。じゃあ、ちょっと火雀さんのとこ行ってみるか……。そうして部屋を出て火雀さんの部屋へと向かう。部屋の中ではイリヤと美々が何やら言い合っているがよく聞き取れん。

 

「あ」

「あ゛ぁ゛? ……レイか」

 

 廊下を出て火雀さんの部屋の前まで来たところでまさかの火雀さん本人が部屋から出てきた。

 

「丁度良かった、火雀さん。前回の即売会の衣装ってありますか?」

「あるぞ。……着るのか?」

「はい。リクエストがあったので」

「分かった、衣装はクローゼットの中だ。少し席外すからそのまま部屋ン中で着替えていいぞ」

「ありがとうございます。返すときはいつも通りで?」

「おう」

 

 それだけ言って火雀さんは廊下を歩いて行った。……雀花の部屋の方だなあれ。

 

「まぁ、いいや。着替えよ」

 

 クローゼットを開けるとそこには今までの即売会で来た衣装、資料用の衣装など僕が今まで着ていた衣装がずらりと並んでいた。……こうして保管してくれてるのは嬉しいけど資料用のとかは写真撮ったら捨てても良い様な気がするんだけどなぁ……。

 さてさて……前回の衣装は……あった。

 

「着替えて、さっさと部屋に戻ろ」

 

 着替えをして軽くメイクもしたらコスプレは完成。さっそくお披露目しようと雀花の部屋に戻った。

 

「みんなお待た「男の人は男の人同士で、女の子は女の子同士で恋愛すべきだと思うの」

 

 ……美々の暴走はもう誰にも止められないかもしれない。あ、コスプレ? 普段の僕が絶対に着ない服装だからクロエが滅茶苦茶興奮してくれて嬉しかった。偶に孤児院で着る法衣とか見せたらどんな反応するんだろ。

 

 

 




 火雀さんは原作より数段ヤバい人になりました。
 というかここまで好き勝手させてくれる美ショタがいても変わらずBLを突き通してる筋金入りの貴腐人です。
 因みに『返すときのいつもの』は洗わずに返すということです。

 孤児院は仏教系ですが子供達には学校で浮いたりしないよう洋服を与えていますし、服装は子供たちの自由です。ただ全員に法衣自体は配られています。しかし洋服の方が着るのが楽、おしゃれということで着る子供はいません。レイ君だけ学校が休日のとき偶に法衣を着ています。キアラ先生大喜びです。
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