プリズマ☆イリ『ア』   作:四脚好き

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初戦闘と謎の少女

 翌日 教室 

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 結局、あの後ルビーとかいうステッキのせいで凛先輩とイリヤが軽くバトッた……。いや、バトルでもなんでもないなあれ。ともかく戦闘経験の差で凛先輩が勝利し、イリヤの変身状態を解除。しかしマスター登録問題が解決するまでイリヤが変わりに魔法少女として戦うことになった。となれば、俺も出来るだけフォローするかぁ。

 

「とはいえ、素人を巻き込むことになるとは……」

 

 そこまで考えた所でスパンっと小気味いい音が教室に響く。

 

「たたかれた……」

「授業中に堂々と居眠りしないように!」

 

 音のした方向を向けばイリヤが担任の藤村先生に頭をはたかれていた。まぁ、昨日はあれだけのことがあったんだ、眠れなくても仕方がない。

 はたかれた頭を少しの間抑えていたイリヤだがその後ペンをもって机の上の教科書とノートに向き合う。向き合ってはいるがどこか心ここにあらずって感じだな。……ん? 少し笑ってるか、アレ?

 

「大丈夫か?」

 

 少しだけ不安を覚えつつも時間は過ぎていき放課後。

 

「ごめーん、今日も先帰るね!」

 

 早々にイリヤは帰り支度を済まして教室を出ていく。今日は掃除当番でもなんでもないし、問題はないだろう。帰って魔法の練習でもするのか、妙に元気だったな。

 

「イリヤのやつ、なんかあったのか? レイは何も知らないのか?」

「なぜ僕に聞く」

 

 そんなイリヤの様子に変わったものを感じたのか俺とイリヤのクラスメイトの一人である栗原雀花が話しかけてくる。

 

「イリヤちゃん、今日ずっとなにか考えていたみたいだし、幼馴染のレイくんならなにか知ってるかなって思って」

「幼馴染でも知らんことはあるよ」

 

 同じくクラスメイトの桂美々も俺の方に聞いてくる。いや、まぁ、実態は知っているんだが説明するわけにもいかないし……というかピンポイントで俺に聞きに来る当たり、女の感ってやつなのかな。おそろしい。

 

 

 深夜 衛宮家前

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「……さて、そろそろ家をでないと凛先輩の指定時間に間に合わないぞ~」

 

 深夜の冬木市住宅街、衛宮家正面、電信柱前からの実況です。……なんちって。放課後、掃除も終わり教室を手で校門に差し掛かった時、凛先輩に捕まった。何やら話があるということで遠坂邸まで行くことになったのだが、今後は校門前で待機するのは止めてもらおう。一緒に帰ろうとしていた雀花たちが非常に驚いた顔をしていた。

 

「イリヤの迎えねぇ……」

 

 遠坂邸で説明されたのはクラスカードの場所が特定できたため回収に向かうということ。そしてイリヤには時間、場所を伝えてあるが、時間になってもイリヤが動く気配がなかったら引っ張ってこいとのこと。いやー、小学生相手に深夜0時集合はきつくないっスかね、と口から出かかったがどうにか飲み込んだ。

 

「いってきまーす」

「んぁ? 動いたな」

 

 眼下に目をやれば小さな声でバレないように外出の声掛けをして玄関から出てくるイリヤがいた。じゃ、行きますか。俺は羽を広げて電信柱から降りる。

 

「『こんばんは』イリヤ」

「レイ!?」

「こーら、一応隠蔽の魔術かけたとはいえ大きな声はなるべく出さないで」

「わ、分かった」

 

 俺が説明すれば口を手に当ててコクリと頷くイリヤ。うん。素直でよろしい。

 

「それじゃあ、凛先輩も待ってるだろうから行こうか」

「うん」

 

 羽を分解して普通の背中に戻した後イリヤと共に学校を目指して歩きだす。こんな時間に小学生が二人で出歩いているわけだけども、隠蔽の魔術のお陰で時たますれ違う人間がいても誰も俺達には気が付かない。

 

「ねぇ」

「どしたん、イリヤ」

 

 不意にイリヤが話しかけてきた。多少、時間の余裕もあるし少しだけなら遅れても凛先輩も許してくれるだろう。少しだけ歩く速度を落としてイリヤの質問に答えるようにする。

 

「レイも魔術師なんだよね?」

《あぁ、それはわたしも気になっていました。 レイさん、貴方は一体なんですか?》

 

 イリヤだけでなくルビーにも質問されるとは。

 

「まぁー、正しくは魔術使いなんだけどそこらへんはまた今度で説明するよ。質問の答えとしてはyes。イリヤと知り合う少し前から凛先輩に魔術を教えてもらってた。それからは彼女の助手みたいなことをしながら魔術の勉強していた感じかな」

「へぇー、そうなんだ」

「そういえば、イリヤに聞いたことあっただろ、お世話になった女の先輩に贈り物したいって」

「そういえばそんなこともあったねー。……あ、もしかして!?」

「想像の通り、凛先輩のことだよ」

「そーだったんだ」

《……》

 

 うーむ、ただの魔術使いと言って、俺が何者かと言うルビーの質問に対しても一緒に答えたつもりなんだが絶妙に納得されていない感じ? なんか顔なんてないはずなのにルビーがジッとこちらを観察してきている気がしてならない。

 

「ほら、もう少しで学校だよ。切り替えて」

「え、あ、うん!」

 

 手を叩き空気を切り替える。残念ながら俺も自分のことについてはよく分からないんだ。なにせ、俺の意識が覚醒したあの日よりも以前の記憶は俺にないしな! 

 

「開いてたりは……しないよね」

 

 イリヤは校門に手をかけて開かないか試していたが時間が時間だ、施錠はしっかりとされていた。高校生ぐらいに成長したら気合さえあればよじ登れそうな門だがあいにくこの体は小学生。間を通り抜けることも、開けることも、飛び越えることも不可能だろう。普通なら、だが。

 

「イリヤ、べつにそんなことしなくても変身すれば良い」

「あ! そっかぁ!」

 

 俺は既に変異した身体能力でポンっと門の上までジャンプして到達する。振り返ると魔法少女姿に変身したイリヤも門を飛び越える所だった。校門を飛び越えて校庭に着地したイリヤは手を開いたり閉じたり、自分の身体を観察したりと自分の身体能力に驚いているようだった。

 

「ほえー、やっぱり魔法少女ってすごいねー」

《ルビーちゃんに掛かればあの程度の身体強化魔術も朝飯前ですよ!》

「お、ちゃんと来たわね」

 

 おっと、凛先輩のお出ましだ。何やらいくつかの宝石を準備している。あ、俺のあげた礼装もある。事前に色々準備をしてくれていたみたいだ。

 

「そりゃ、あんな脅迫状出されたら……」

「脅迫状?」

「なんでもない……」

 

 上手く聞き取れなかったから聞き返したがイリヤにはぐらかされてしまった。仕方がない。

 

「ルビー、仕上がりは?」

《放課後、色々練習してみました。とりあえず基本的な魔力射出くらいは問題なく行けます。あとはまあ……タイミングとハートとかでどうにかするほか……》

「はぁ……レイ、フォローお願いね」

「了解ですよ」

 

 ルビーの言葉に僅かに頭痛を覚えるが昨日の今日だ、文句は言ってられない。どうにか俺が隙を作ってイリヤに決めてもらうほかないか……。

 

「正直かなり不安ではあるけど……今はあんたに頼るしかないわ。準備は良い?」

「ぅ……うん」

 

 今までの怒りぽかったり、ルビーに弄られて喚く姿ではなく、真剣な魔術師としての凛先輩の顔。雰囲気が変わったのがイリヤも分かったのか真剣な表情で頷く。

 

「カードの位置は既に特定しているわ。校庭のほぼ中央……歪みはそこを中心に観測されている」

「あぁ~この嫌な感じ、これが歪み、ね」

「中心って、なにもないし、感じないけど……」

 

 そりゃあ、まぁ、イリヤちゃんは巻き込まれただけの一般人ですし? この可笑しな魔力の歪みは気が付かないでしょうよ。

 

ここ(・・)にはないわ。カードがあるのはこっちの世界じゃないの。ルビー」

《はいはーい。それじゃあいきますよー》

 

 ルビーの陽気な声が響くと同時に地面に魔法陣が現れ光り始める。

 

「これは……」

《半径2メートルで反射路形成! 鏡界回廊一部反転します!》

「えっ、な……なにをするの!?」

「カードがある世界に飛ぶのよ。 そうね……無限に連なる合わせ鏡。この世界を、その像の一つとした場合、それは鏡面その物の世界」

 

 凛先輩の言葉が終わると同時に世界がぐるんっと周り一瞬物凄く気持ち悪くなる。うぇ……酔いそう……。

 

「鏡面界。そう呼ばれるこの世界にカードはあるの」

「な、なにこの空……」

 

 イリヤが驚くのも無理はない。明らかにこの世界は可笑しい。どう可笑しいかを説明しろと言われると言葉にし辛いが空の色だけじゃない。もっと根本的な何かが普通の世界のそれとは違う。

 

「申し訳ないけど詳しく説明している暇はないわ! 来るわ、構えて!」

 

 警戒を促す凛先輩の声。それとほぼ同時にぞわり、と嫌な感覚が体中を襲い鳥肌が立つ。何事かと感覚の導く方、肯定の真ん中へと視線を向ける。そこには真っ黒な泥のような何かが溢れ出していた。

 

「きも……」

 

 そう思わずつぶやいた瞬間、泥の中からズルりと何かが這い出てくる。

 

「うわ、過激……」

 

 何かの正体をじっくりと見て少しばかり驚いた。ボディラインの出るタイトなミニワンピ、結構、際どい所までスリット入ってないかアレ? おまけに黒長手袋に黒ニーソ、極めつけに眼帯かぁ……。濃いなぁ、キャラが。

 

「な、何か出てきたッ キモッ!!」 

「報告通り、実体化した! くるわよ!」

 

 過激衣装の痴女がスティレットのようなモノを手に一気に突っ込んでくる。イリヤは左へ、凛先輩は右へ回避した。……受け止められるか? 俺は剣を構成して構える。切り落とす必要はない、ただ自分の力がどれだけ通用するかの確認のための防御。両手でしっかりと剣を構えて、上から振り下ろされるスティレットにぶち当てるッ! 

 

――――ガァッン!―――

 

 金属同士がぶつかったような音を響かせ互いの武器が衝突する。痴女の勢いに押されて少しばかり後退するが、それも少しすれば止まる。……よし、膂力では負けてない!

 

「レイ! そのまま! Anfang(セット)!! 爆炎弾三連!!」

 

 痴女の動きが止まったのを確認すると凛先輩はすかさず手作り(二重の意味で)の礼装を取り出し俺ごと痴女を燃やそうと魔術を使用する。瞬間真っ赤に染まる視界。

 

「ちょ、レイー!? 凛さん、なんでレイを―――!?」

「これで良いのよ。良いから見てなさい」

 

 炎の外からイリアの焦った声とそれをなだめる凛先輩の声が聞こえる。ぉっと? 急に炎が搔き消える。目の前の痴女がやったようだ。 

 

「ダメだ凛先輩、傷一つない」

「やっぱ魔術は無理か!」

「レイ、無事……? なにその姿?」

 

 あぁ、イリヤは見るのが初めてだったか。俺の擬人化モード。

 

「これ? イリヤの変身みたいなもんだよ。あと、僕は基本的に不死身だからあの程度の攻撃ならまったく問題ないんだ」

「変身? というか不死身っ!?」

「じゃ、あとは二人に任せた!! 私は建物の陰に隠れてるから!」

「了解です」

「え、あ、ちょ、ちょっと情報の波が押し寄せてくるんですけど!?」

《イリヤさん、2撃目来ますよ!》

「うぇ!? おひゃあ!?」

 

 怒涛の展開についてこれず、混乱していたイリヤの元に痴女の2撃目が襲い掛かりイリヤは寸でのところで体を逸らすことで回避した。

 

「かすった! 今かすったよ!」

「イリヤ、落ち着いて」

《接近戦は危険です! まずは距離を取りましょう。レイさん、防御お願いします》

「あいよ」

 

 ルビーの提案を受けて再び前へと出る。

 

「キョリね、キョリ! キョリーーーー!」

 

 イリヤがそう叫びながら一目散に走り去る。いや、早いな逃げ足……

 

「っと! そうのんびり考えごとはさせてくれないか」

 

 再び痴女が突っ込んでくる。逆手に持ったスティレットでこちらを突き刺そうと何度も何度も攻撃を繰り返す。

 

「流石に技量差があるか」

 

 元々勝っているのは膂力のみ、俺は剣の正しい振りかたなんて知りもしない、ただ力任せに振るうだけだ。その問題がここで露見した。この痴女、滅茶苦茶早い。大振りになりがちな俺の攻撃が当たったのなんて最初だけで今はもう全然当たらない。うーむ、参った。

 

「どーにでもなれー!」

「ん?」

 

 イリヤの大声が離れた所から聞こえて何事かとそちらに目を向けた瞬間今度はピンク色の光に視界が染まる。

 

「スゴッ!? なにこれ!?」

《いきなりレイさんごと大斬撃とかやりますね、イリヤさん!》

 

 なるほどイリヤの攻撃かこれ。……凛先輩の攻撃に驚いたわりには自分もすぐに俺を巻き込んだ攻撃するなんてなかなか事態を受け入れるのが速いようで……。ただいまので痴女の注目はお前に移ったぞ。

 

「イリヤ、効いてるわ! 間髪入れずに速攻ー!」

「魔法少女というには殺伐しすぎてるような気がするけど……てぇーーッ!」

 

 二撃、三撃とイリヤの振るうルビーから魔力弾が次々と放たれる。巻き込まれないように翼を広げて退避するが……。うん、やっぱり早いなあの痴女。全然攻撃が当たってない。イリヤの隣に降りて助言をするとしよう。

 

「イリヤ、散弾だ!」

「散弾?」

 《一発の威力はあまり求めずに広範囲に一気に攻撃するんです! イメージできますか?》

「やってみる! 特大の―――散弾!」

 

 そう言いながらイリヤがルビーを振るうと校庭中に広がるように小さな魔力弾が一気に着弾する。……確かに広範囲だがこれは……。

 

「バカ! 範囲が広すぎよ! あれじゃあ、一発の威力が落ちすぎる! 反撃が来るわよ、気をつけ……!」

 

 凛先輩の声が途中で途切れる。だがそれも仕方がない事だろう。煙が晴れたあと姿を見せた痴女は自身の前に何か魔法陣のようなモノを展開していた。そしてそれがヤバい。明らかに普通じゃない雰囲気を醸し出していた。

 

「宝具を使う気よ! 逃げて!」

 

 宝具……たしか必殺技みたいなもの何だっけ?

 

《イリヤさん退避です!》

「え……ど、どこへ?」

《とにかく敵から離れてください!》

「早くこっちへ! ダメもとで防壁を張るわ! レイ!?」

 

 早く、早くあの痴女の元へ! 後ろでイリヤと凛先輩が何かを叫んでいるようだが聞こえない。俺は不死身なんだ、それなら万が一宝具が発動しても効きはしないはず! なら一か八か、あいつの宝具が発動する前に仕留めるしかない! 

 

「クラスカード『ランサー』インクルード」

「んぇ?」

 

 俺が痴女へ向かって走り出すのと同時にどこからか女子が現れて俺と並走していた。俺の視線に気が付いたのか向こうもチラリと俺を見る。こいつの格好……大分デザインは違うけどイリヤの衣装と方向性は似ている。多分ルヴィアさんの方が使っていたステッキに選ばれた人間ってことだよな。見た事ないカードの使い方してるし任せた方が良さそうだな。

 

「アイツの頭と胴体、どっちを前に出してほしい?」

「……?」

「僕がアイツの体勢を崩す。だから仕留めて」

「……胴体」

「分かった!」

 

 返事を受け取り翼を広げる。大きく翼を動かし一気に加速する。手に持つ剣に魔力とミクロオキシゲンを集中させる。両手でしっかりと剣を握りしめて痴女の前に着地する。そして加速を殺さずに回転へと変換させるッ!

 

『万物を融解す禁忌の光剣』(ヴァリアブル・スライサー)!」

 

 回転したまま繰り出す三連撃。魔法陣と両手両足を切り落とし胴体部分をがら空きにしてやる。その後すぐに脇にそれて道を譲る。すると俺の後ろから突っ込んできたもう一人の魔法少女が槍を構え、追撃に映る。

 

刺し穿つ(ゲイ)――――死棘の槍(ボルク)!!」

 

 お、何だ今の? 一瞬槍先がブレたように見えた後綺麗に刺さったな。あの魔法少女の腕もあるんだろうがあまりに正確に心臓を貫くからまるで槍が自分から心臓に向かったみたいだ。

 

「『ランサー』アンインクルード。対象撃破……クラスカード『ライダー』回収完了」

 

 青をメインにした魔法少女姿。黒髪を後頭部で一つまとめにしているウチの学校では見た事ない女子。イリヤを西洋人形に例えるならこっちは日本人形か……。

 

「だ、誰?」

 

 これはまた一波乱ありそうだ。

 

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