プリズマ☆イリ『ア』   作:四脚好き

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美遊の元へ

エインズワース家

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 さて……一体どうしたものかな。黄金に輝く波紋から姿を現している宝具の数々に冷や汗が出る。『獣』としての霊基で出力にものを言わせ無理やり『冠位』のバーサーカーを呼び出したことで全身の魔術回路は焼け焦げ、僕を構成するデストロイアはその多くが崩壊した。そのため今は僕自身の攻撃も大した威力が出ないし、カードをインストールしても『ヘラクレス・イーコール』を呼び出すことは不可能。かと言って他のカードではあの金髪のカードに勝てるとも思えない。

 

「空中から剣が……」

「あなたは誰ですか!? 金ぴかかっこいいです!」

「はいはい、少しは空気呼んでよね田中さん。このシーンはちょっとした……絶体絶命なんだから」

 

 ……田中に同調するつもりはないんだけど正直いつまでも金髪って呼ぶのもわかりづらいから名前ぐらいは聞いておきたい。

 

「なんてこった……戻って来たのか……ッ! 逃げろ! そいつは……その女は、危険だ!」

 

 背後の牢から叫ぶ声が聞こえる。しかしねぇ……お兄さん。僕たちとしては美遊の居場所を調べる立場にいるわけで……。どうにか聞き出したりできたら儲けものなんだけど……。

 

「お前たちの目的・侵入方法を答えろ。3秒以内に答えねば……一人ずつ殺していく。3」

「に……逃げろって言われても……!」

「2」

「このどこに繋がってるか分からない水にでも飛び込む果てに」

「1……一人目だ」

 

 痛覚共有のあるイリヤを傷つける訳にはいかない! 僕が前に出て受けるしかッ! イリヤを庇うように前に立つ。しかしそんな僕のさらに前に飛び出た影が一つ、ギルさんだ。

 彼は僕たちの前に立って飛んできた武具を金色の波紋の中に仕舞った。

 

「へっ……!?」

「はら?」

「なんだ? ……何をした貴様!」

 

 ギルさんの行動に疑問を持ちながらも自分の攻撃が防がれたのを理解した金髪は波紋の数を増やして更に攻撃してきた。

 

「1 2 3 4 5……。……12本と」

 

 しかしその攻撃は全てギルさんの波紋の中に飲み込まれていく。

 

「総数に比べれば塵みたいな数だけど、ご返却どーも」

「んん? 何が起きてるです?」

「剣が飛んできてギル君が吸い込んでる?」

 

 田中とイリヤが事態を把握しようとする。しかし二人の理解を超えた景色に首を傾げるばかりだ。

 

「お前は……」

「こうしてみると改めて実感するよ。贅沢で傲慢な戦い方だ。本来一人の英霊に宝具は一つ……。そんな神話や伝承に謳われる宝具の原典を星の数ほど有し、それを矢のように無造作に、無尽蔵に放つ。故にアーチャー、故に最強。それこそが人類最古の英雄―――『英雄王 ギルガメッシュ』その宝具は宝物庫そのもの『王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)』僕のカードの使い心地はどうだい? ねぇ、アンジェリカ」

「ギルガメッシュ……?」

 

 それがギルさんの本当の名前。……ギルガメッシュ……バビロン……あ!

 

「勉強した! メソポタミア文明の王様!」

「ふふふ、よく勉強してるね。正解だよ」

 

 僕がそう言うと少しだけこちらを振り返ってギルガメッシュ王は笑う。へぇー、これがあのギルガメッシュ王……。若い頃の姿なのかな? というか最古の英雄だから他の英雄の宝具の原典を持っているって……。そりゃあんなに強いわ……よく勝てたな僕。

 

「まさか……受肉したのか?」

「さすが理解が早い。まぁ受肉と言っても半分だけどね」

 

 ん? ここら辺は分からない話になって来たな。

 

「なるほど財宝の一部が消えていたのはお前と二分したためか。向こうの世界で随分遊んできたらしい」

「君らにとっては幸運だったかもね。完全な受肉だったらこんな物語、僕が塗り替えていた。でもまぁ、もう僕が塗り替えることもなく君たちの神話は終わりを迎えるけどね」

「カード風情が良く吠える。大人しく私に使われていればよかったものを」

 

 ペラペラとなんか重要そうな話をしていくギルガメッシュ王と……たしかアンジェリカ? だったか金髪は。しかしその内容は僕たちにとって理解しがたいものであり、イリヤが途中でどうにか話に入ろうとするが全ての発言が被せられ撃沈している。

 

「ああ、まったく傲慢や慢心まで真似なくたっていいのにさ―――!」

「全然話が見えないんですけどーッ!」

 

 ついに我慢が効かなくなったイリヤが大声を上げる。

 

「む」

「あら? いやぁ、このへん予定調和とイレギュラーが酷く入り組んだ話でさぁ」

「さっきからずっと置いてきぼりで田中、眠くなってきたでぐぅ……」

「ごめんねギルくん! おねむの人もいるからややこしい話はまたの機会に! 私が知りたいのは一つ……美遊はどこ!?」

 

 イリヤが直球で問いかける。

 

「知ってどうす―――「美遊は……城の中央……一番高い塔の最上階だ!」

 

 アンジェリカの声を遮って牢の中から美遊のお兄さんの声がする。

 

「頼む……美遊を!」

 

 しかしその言葉は途中で途切れた。アンジェリカが何かの呪文を唱えたのだ。そしてお兄さんの声は言葉を成さない苦痛に苦しむうめき声に代わった。

 

「が、アッ!!? あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」

「お兄さん……ッ!?」

「余計な口は寿命を縮めるだけだ。だがどの道、無意味なこと。お前たちは今この場でまとめて殺す」

 

 そう言って先ほどよりもはるかに大量に波紋を呼び出すアンジェリカ。……あの波紋一つ一つが光ってて大分眩しいことになってるな……。どうしよう僕も魔術回路光らせて対抗するべきか!?

 

「三人とも、合図したらこの紐で隠れて逃げて」

「えっ……それじゃギル君は……」

「僕の目的は彼女の使っているカードなんだ。三人はそれぞれ自分の目的を果たしなよ」

 

 そう言ってギルガメッシュ王はここに来るまでに使った紐を渡してくる。

 

「頼む……美遊を救ってくれ……ッ!」

「……っ」

「行こう、イリヤ!」

 

 イリヤと田中さんの手を取る。

 

「さぁ、行って!」

 

 ギルガメッシュ王が何かの魔術を炸裂させた瞬間、僕たちは紐で身を隠して一気にその場を離脱した。地下水路を抜けて再び城の周りを走り回る。

 

「どこに向かってるです?」

「決まってるでしょ! 美遊が捕まってる塔!」

「問題はこの城のどこを通ったらあの塔に辿り着けるか!」

 

 城の周りを走り回りながらそんなことを離す。

 

「うぅ、いつもなら空飛んですぐなのに……! ……レイ! そう言えばあなた飛べたよね!?」

「飛べるけど、実は今少し弱体化しててね! 二人を抱えては無理! 僕一人だけならいけるけど!」

 

 それは戦う手段を持たない二人をこの場に残していくということ。エインズワース家はさっきの騒動で警戒態勢に入っているはず、いくらこの紐でも見つかる可能性はあるんだ。そんな所に二人を置いていくわけにはいかない。

 

「というか、僕だけ美遊の所に行っても抱えて跳べないよ!?」

「ぶふー! 夢見がちなお子様です! 人は飛べないです!」

「僕は飛べるんだよ! 人じゃないから! ちょっと黙ってろ田中ァ!」

 

 記憶喪失でぶっ飛んでる癖にどうしてそんな所だけ変に常識的なんだよ! お前が可笑しな目で見られる原因、そういうところだぞ田中ァ! というかお前に関しては僕が擬獣化して空から助けただろうが!

 

「レイ! 構わないから行って! 美遊を連れて塔を下りてきて! 私たちも塔を目指すから途中で合流しよう! もし入れ違いになって外に出ちゃったら空に一発ガンドを撃って! それを見たら私たちも外に向かうから!」

「……分かった!」

 

 イリヤの提案を受け入れ、僕は紐から飛び出て飛翔体に擬獣化。一気に空へと舞い上がる。目指すは塔! 無駄な行動する余裕はない、最速で、最短で、まっすぐに、一直線にッ!

 

「美遊!」

「……レイ?」

 

 塔の窓の外まで飛んできた。そして見つけた。やけに煽情的な黒いドレスを着た美遊を。……美遊の本来の趣味か? いや、でもお姫様って言われてたしああいうのが正しい恰好なのかな? 部屋の中から美遊もこちらを見つけたんだろう。驚いた表情を浮かべている。

 

「まぁ、今はどうでも良い! 窓から離れて!」

 

 どんな魔術的な防御がされてるか分からない。となればスピードでぶち抜くのみ。 一度大きく旋回して窓から離れて遠くから一気に加速して突っ込む!

 

「ダメ! レイまって―――」

 

 窓に突っ込んだ瞬間、景色が変わる。は? 勢いを殺すため地面を転がってから体勢を立て直しあたりを見回す。そこは窓の外から見えていた美遊の部屋の中ではなく薄暗い部屋。窓は一切なくぼんやりとした光を放つ光源が何個かあるだけ。壁は地下水路と似ているレンガ造りだからここも地下のどこかだったりするのだろうか?

 

「……というよりなんだこのドロドロ」

 

 足元に目を向けるとそこには綺麗な水は流れておらず。若干粘性のある黒い液体がくるぶし程度の高さまで溜まっている。なんかどっかで見た気がするんだよなぁ……。

 

「出口を探さないと」

「どこにも行かせませんよ」

「!?」

 

 出口を探そうと正面に視線を向けた瞬間背後から声がかけられ、急いでその場から飛びのく。

 

「う、ふふふ、うふふふふふ。あぁ、私と先輩の家にどこから入り込んだでしょう? あぁ、駆除しないと。 ふふふ、先輩褒めてくれるかなぁ……私得意なんですよ、お掃除」

「お前は……」

 

 そして声の主を確認するして納得する。ああ、道理で見覚えあるわけだ。あの時散々苦しめられたもんなぁ……。背後に現れたのは黒い鎧を身に纏い紫の髪を揺らめかせる女性。間違いない、この世界の『間桐桜』がそこにいた。

 

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