プリズマ☆イリ『ア』   作:四脚好き

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久々のメインヒロイン登場だぜ! やっちゃいな、クロエさん! 


再会

穂群原学園小等部

────────────────────────―――

 

「ん……あ? ここ、どこ?」

 

 気が付いたらベッドで横になってた。確かエインズワースの工房から逃げる途中で……そう! クロエだ! クロエが助けに来てくれてそれで安心しちゃって倒れたんだった!

 

「クロエ!? どこっ!? ―――ッ゛ア゛!?」

 

 ベッドから跳び起きてクロエを探そうとしたが、全身に上手く力が入らずベッドから転げ落ちる結果になった。くっそ……体が痛いし、視界がなんか変だし……。

 

「あ、左目潰れたまんまか……」

 

 それなら視界は仕方がないか。一旦目の回復に重点的に魔力を回すか……。 あー、もう全然動ける気がしない。ん? 足音が聞こえる。誰かこっちに向かってるな。まあ、状況的にクロエ。それか凛先輩やルヴィアさんだったりするんだろうか。二人も無事だったなら嬉しいんだけど。

 

「起きましたか……大丈夫ですか?」

「バゼットかぁ……」

 

 ドアを開いて姿を現したのはバゼットだった。いや、そうか、彼女もあの空に裂け目が出来たときその場にいたもんな。転移しててもおかしくない。

 

「大体誰を期待していたのかはわかります。私で悪かったですね」

「はは、そんなことは無いよ。……ごめん、体に力が入らないんだ。手を貸してくれるとありがたい」

「……構いませんよ」

 

 バゼットは僕の身体を軽く持ち上げてベッドの上に戻してくれた。

 

「ここは?」

「我々が拠点として使っている学校、そこの保険室です」

 

 ……やっぱり、拠点って大事だよね。外を見れば完全に日は落ちて月明かりが差し込んでいる。

 

「大分寝てたみたい」

「5時間ですかね。何があったかの話や敵の戦力について、こちらの対策などは先に起きていたイリヤスフィールと共に終わらせています」

「そっか……」

 

 本格的に寝すぎたな、なんて考えていると屋上だろうか? ドンっと大きな音が響いた。

 

「敵襲!? ッう……」

 

 何事かと身構えるが全身に激痛が走ってそれどころじゃない。

 

「落ち着いてください。敵襲ではありません。これは……姉妹喧嘩です」

「し、姉妹喧嘩?」

 

 こんな爆音が響くとかいったいどんな姉妹喧嘩だよ。……いや、あり得るのか、あの姉妹なら。イリヤとクロエ、今度は一体何が喧嘩の原因だ……?

 

「しかし……姉妹喧嘩ね。バゼットがそんな洒落た言い回しをするなんて思わなかった」

「……ギルガメッシュ王の言い回しです」

「……そっか」

 

 王様の言い回しを真似たのね。それで少し間があったのか。ん? なんかバゼットがジッと僕を見てるんだけど……なんかあった? もしかして最初に微妙な表情をしたの怒ってる?

 

「なにか、あった?」

「私は……貴方を有効な対抗策の一つだと思っていました。人並み以上の膂力、無限に再生する耐久力、異常な量の魔力、現代に残る宝具フラガラックを両断した一撃。そのどれもが相手にとって大きな脅威になるでしょう」

「お褒めにあずかり光栄ですっと」

 

 なんか真面目に褒められると照れるな。

 

「しかし今のあなたはなんです。魔力は感じられず、体の再生もできていない。膂力は解りませんがその様子だとフラガラックを切った一撃も放てないでしょう。『なにかあった?』それはこちらの台詞ですよ」

 

 なるほど……。

 

「貴方の身に何が起きたんですか? どうすれば貴方は以前状態に戻りますか?」

 

 真剣な表情でこちらを見るバゼット。うーん、少し面倒くさいけど説明するか。

 

「今の僕は割れたバケツなんだよ。バケツに魔力を溜めなきゃいけないのにバケツが割れてるから魔力は全く溜まらない。バケツを直すのにも魔力が必要なんだけど、バケツが割れてるから魔力がない、バケツは直せない。みたいなループ状態に陥っているんだよ」

 

 僕の説明を聞いた後、バゼットさんは何かを考えこむ。

 

「それはつまり外部からの魔力供給があればその魔力を利用してバケツを直せる、ということですね」

「そうだけど……」

「なら話は早い」

 

 そう言うとバゼットは僕の横になってるベッドに近づいてきた。そして左手の手袋を外してどこから取り出したのかナイフで左手の人差し指を傷つける。勿論指からは血が出てくる。

 

「ちょ!?」

「さぁ、どうぞ」

「どうぞって何!?」

「魔力供給です。魔力は体液に溶けやすい、あなたも魔術師なら知っているでしょう。効率は悪いですが非常事態です、我慢してください」

 

 う、うぅ……。魔力供給ならクロエとキスした方がとも思うんだけど、クロエ自身も魔力が必要な側だし……。他の人とのキスなんて嫌だし……。そもそも今まで魔力の心配なんて必要なかったから供給される側なのが凄い違和感……。な、舐めれば良いんだよね……。

 

「ん、ぐっ……ごほっ、ごほっ!」

 

 恐る恐るバゼットの指を口に含む。……他人の指の舐め方も、血の吸い方も分からないし、変に緊張したせいで思いっきりむせる。

 

「落ち着いてください。大丈夫、ゆっくりで良いんです」

 

 俺がせき込んでいるとバゼットが背中を擦ってくる。そしていつの間にかベッドに腰掛けていたバゼットは僕を後ろから抱きかかえ膝に乗せてゆっくりと血を飲ませる。

 なんでこんな格好に……。けど正直自分で起き上がるのも億劫なレベルだから助かるけど……。

 

「んくっ……こくっ、んぇ……」

 

 供給される側ってこんな感じなんだ。まるでお湯を飲んだ時のようにジンワリとあたたかな魔力が全身に染みわたっていく。……あ、味わっている場合じゃないか。この魔力を使って修復を……。

 

「……ん、十分」

 

 与えられた魔力を元手に修復を行い、その余りを全身に回して魔力の増幅を開始する。うん、調子戻って来た! 全身にあった傷も再生で消え去り、自分の足で立てるようになった。

 

「……回復できて何よりです。にしても一気にここまで魔力が増幅しますか。末恐ろしいですね」

「体調も、膂力も、魔力も戻りました。その……ありがとうございます、バゼット()()

「いえ、構いません」

「とはいえ、バゼットさんが期待している一撃は少し待ってください。魔力とは別のものが必要なんですよ」

「まだ不足が?」

「同じ攻撃は出来ますよ? ただ同じ威力は出ないですね」

 

 以前と同様もしくはそれ以上の威力を出すためにはミクロオキシゲンを吐き出すデストロイアの絶対量が足りない。やっぱり必要か()()()()()()()()()()()が。

 

「大丈夫です。そちらの問題も解決できると思います。まずはクロエたちに会いに行きますね」

「……えぇ、分かりました」

 

 そう言って保険室から出て校舎を歩く。いつの間にか喧嘩は終わったのか戦闘音はしなくなっていた。……取り合えず屋上に向かえばクロエと会えるかな。

 

「……ない、か」

 

 屋上に行く前に少しだけ寄り道。元の世界なら僕とクロエ、イリヤそして美遊が通っている教室に入る。そして教壇の上にある生徒名簿に目を通す。そこに僕たちの名前は無かった。そして、雀花たちの名前も。

 

「ここに名前が無いのは元々この世界にはいないのか、それとも……」

 

 それ以上言葉を続ける気にはなれず、ただ教室の窓から見えるクレーターに視線を向ける。

 

「さ、屋上に向かうか」

 

 思考をそこで止める。それは今はどうでも良い事だ。……今はただクロエに会いたい。教室から出て、屋上へ階段へ向かう。すると丁度階段の上の方から声が聞こえる。

 

「ぶー、田中とはプロレスごっこしてくれないですか?」

「た、田中さん! お願いだから大声で言わないで……」

 

 プロレスごっこ? 喧嘩をそうやって誤魔化したのか? 階段の上から下りてきたクロエたちの姿が見えた。彼女たちに手を振るう。

 

「クロエ」

「レイ!?」

 

 手を振って挨拶をするとこちらを見たクロエが急いで階段を下りて走り寄って抱き着いてきた。僕もギュっとクロエを抱きしめ返す。

 

「良かった……良かった……。やっと会えたと思ったら急に倒れるし、傷だらけだしで本当に心配したのよ……。もう大丈夫なの?」

「うん、大丈夫。心配かけたね。クロエも無事でよかった」

 

 あぁ……暖かい、生きてる、良かった。

 

「んひゅ!? れ、レイ!? なんか、手つきがやらしぃ感じなんだけど……」

「た、田中さん! 二人は色々あるだろうから私たちは先に部屋に戻っていようか!」

「えー! また田中、のけ者なのです?」

《ルビーちゃんとしてもお二人の逢瀬を観察したいのですが……》

 

 外野が五月蝿いな……。抱きしめたクロエには見えないようにイリヤと田中、そしてルビーを睨む。

 

「さぁ!! 田中さんもルビーも移動するよ!」

「あー!」

《い、イリヤさん、引っ張らないで下さい!》

 

 ……行ったか、さて。抱きしめていたクロエと離れ、正面から向き合う。彼女の頬に手を添える。月明かりの差し込む学校の廊下。月の光に照らされる褐色の肌に銀色の髪。

 

「……綺麗だよクロエ」

「どうしたのよレイ? あんまりにも私に会えなかったから会えて興奮しちゃった?」

 

 どこか挑戦的な表情でこちらを揶揄いながらそう言うクロエ。

 

「そうかも」

「え?」

 

 呆気に囚われた表情のクロエにキスをする。

 

「ん!? ……んっ」

 

 最初こそ驚いたクロエだがやっぱり寂しいのは僕だけじゃなかったみたいですぐに抵抗なく受け入れてくれる。魔力供給が目的じゃない、親愛だけで行われるキス。

 

「っは……。さっきまで危険な状況だったことと、クロエに会えた喜び、学校でこんなことしてるって気持ち、色々合わさって全然収まらないかも……」

 

 さっきから心臓が五月蝿いぐらいバクバクいってる。

 

「そう、なんだ……良いわ。レイが私をそう思ってくれるのは嬉しいし、付き合ってあげる。いっぱいギュってして、いっぱいキスして……いっぱい大好きって伝えて欲しいわ」

 

 ……最後だけ少し照れて顔を逸らしながら言うのは反則だと思う。

 





 お気づきの人もいると思いますがレイ君の他人の呼び方はその人への尊敬などの度合い、複数人いる時はその人への関心度合を現しています。
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