プリズマ☆イリ『ア』   作:四脚好き

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転校生は魔法少女!?

校庭

────────────────────────―――――――――

 

 

「だ、誰?」

 

 イリヤの声が静寂の校庭に響く。声には出さないけど俺もまったく同意見。誰、この子? いや、さっき推理した通り二人目の魔法少女何だろうけど。

 

「オーッホッホッホッ!!」

「わっ!? なに!?」

「このバカ笑いは……」

 

 突如、耳をつんざく高笑い。なんとなーく聞き覚えがあるし、凛先輩の嫌なものが来た、と言わんばかりの表情で声の主が誰か分かってしまう。

 えぇ……。あの人こんな笑い方すんの? あぁぁ、初見の時の綺麗なイメージがどんどん崩れていくぅ……。

 

「無様ですわね、遠坂凛!! まずは1枚目のカードはいただきましたわ!!」 

 

 大きな声と共に校舎裏から登場したのはやはりと言うべきかルヴィアさんだった。

 

「な、なんかすっごい派手な人まで出てきたんだけど!」

《相変わらず肺活量の大きい人ですねー!》

「それは確かにそう」

 

 あの人ずっと高笑いしてるぞ。良く息もつな。

 

「ここしかないというタイミングで如何にして必殺の一撃をいれるか……。その一瞬の判断が勝負を分けるというのに……相手の宝具に恐れをなして逃げ惑うなど笑止千万!! とんだ道化ですわね遠坂凛! オッーホッホッホッ「やっかましぃーーーッ!!」ホブグゥァッ!?!?」

「う、うわぁ……」

 

 ルヴィアさんの長台詞をひくひくと口角を動かしながらどうにか我慢していた凛先輩。ただ、ルヴィアさんが高笑いに移行した瞬間我慢が出来なくなったのか回し蹴りをガッツリ喉に叩き込んだ。ひ、ひっでぇ……身体強化魔術使ってやがるッ。

 

「レ、レディの延髄によくもマジ蹴りを! これだから知性の足りない野蛮人はーッ!」

「なにを偉そうに! 後ろからの不意打ちのくせに良い気になってるんじゃないわよ!」

 

 とたんに二人は殴り合いの喧嘩に入ってしまった。オイ魔術師、魔術しろよ。

 

《成長しませんねー、この人たちは》

 

 ルビーにも呆れられるとか相当だろう。……俺の中の凛先輩像とお嬢様像がどんどん削れていく……。

 

「な、なんかレイも急に落ち込みだしたし! というか空に罅が入りはじめたんだけどルビー!?」

《あらー 原因たるクラスカードを取り除いたので、鏡面界が閉じようとしているみたいですねー。さっさとしないと不味いですよ。凛さん、ルヴィアさん、脱出しますよー。聞いてますかー》

 

 あぁ、あの二人ならもう止められないだろ。なんか変なオーラ出してるし、若干宙浮いてるような気もしてくる。

 

「……サファイア」

《はいマスター。 半径6メートルで反射路形成、通常界へ戻ります》

 

 もう一人の魔法少女が業を煮やしたのか自分のステッキに指示を出して元の世界に戻る準備を始めたらしい。向こうのステッキは大分落ち着いた性格してるな……。

 なんてことを考えていたら視界がぐるりと回る感覚に包まれ一瞬視界が真っ黒になる。

 

「も、戻ってきたの?」

《ふぅ、ひとまず一戦終了ですね》

 

 次に視界が戻った時には既に元の世界に戻ってきていたようで辺りの景色も気配も慣れ親しんだものになっていた。

 ……まぁーだ殴り合ってるよあの二人。

 

「チッ……! この私が攻めきれないとは……生意気にも攻撃の精度が上がってきていますわね貴女」

「単純なタックルがいつまでも通用するとは思わないことね。来ると分かっていれば対応策はある……!」

《そこの魔術師のお二人、肉体言語で語り合わないで下さい》

「仲が悪い……ってレベルじゃないねこれ」

《いっつもこんな感じなんですよ》

 

 いっそのこと、オキシジェン・デストロイヤー・レイを足元に打ち込んで足場をガタガタにしてやれば二人とも止まるか? 威力は出来るだけ控えめにして、効果範囲も狭く……いや、足場を崩すんだから狭すぎても意味ないか。ちょっと調整は腕の見せ所だな。あーでも、威力を抑えている以上効果範囲もある程度比例するわけで……。って……ん?

 

「とにかく! イレギュラーはありましたが……勝つのは私ですわ、覚悟しておくことですわね遠坂凛!」

 

 そう言ってルヴィアさんはもう一人の魔法少女を連れて校庭を後にした。あ、もうお話終わってましたか、そうですか。

 

「結局あの子の名前聞けなかったし!」

「『レイ、あの子のこと気になるの?』」

「いや、普通に気になるでしょう? これから協力するにしても、その……敵対するにしても」

 

 どちらにせよ、ある程度の情報は欲しいよ。

 

「んー、敵ではないわね。なんというか……カード回収の対抗馬? って感じかしら」

《ライバルキャラって感じですね! サファイアちゃんのマスターですから私も気になってはいるんですよ》

 

 凛先輩が俺の話を聞いていたのか補足してくれる。そう、まぁ敵でないなら別に良いか。多分これからもカード回収で顔合わせるんだろうし、追々知っていけば良いか。

 

 

翌日 教室

────────────────────────―――――――――

 

 

「美遊・エーデルフェルトです」

「はーい、みんな仲良くしてあげてねー」

 

 えぇ……こんなのあり? 今、藤村先生から転校生だと紹介された黒板の前に立つ少女の姿を見てそう思わずにはいられない。いや、え? だってどう見てもルヴィアさんと一緒にいたもう一人の魔法少女だよね? え? えぇ……?

 

「席は窓側の一番後ろ、イリヤちゃんの後ろのとこね」

「えっ」

 

 おまけに窓側一番後ろ、だと? な、なんかすっごい転校生のテンプレを見てるぞ俺。あ、因みに俺は一番廊下側の後ろね。転校生、美遊だったか? 彼女とは反対側。というかめっちゃ、イリヤのこと見てないか? いや、まぁ見るよなぁ……。

 

「これから大変だぞぉ……」

 

 無意識につぶやいた俺は間違っていないと思う。

 

 

 そんなこんなホームルームも過ぎて現在休み時間。転校生である美遊の席の周りには興味心身なクラスメイト達が集まっており大盛況のようだ。

 

《さっそく囲まれてますねぇ》

「色々聞きたいことはあるけど……これじゃあ無理だね」

「話したくても話せず、視線にも耐え切れず、たまらずこっちの席まで逃げてきたって訳か」

「だって……」

「別に悪いとは言わないよ」

 

 後ろの席からの視線に耐え切れずにイリヤは俺の席の近くに来ていた。

 

《では、変わりに私がお話を伺うのはどうでしょうか?》

「んぇ!?」

「わ!?」

《あらあらサファイアちゃんも来てたんですね!》

 

 後ろからいきなりイリヤ以外の声が聞こえてびっくりした。声の方に顔を向けるとそこには昨日美遊が持っていた方のステッキがふよふよと浮いていた。

 

「ちょ、ちょっと見つかっちゃうよ!」

 

 イリヤは大慌てでサファイアと呼ばれたステッキを手で隠して廊下の窓際まで持って行く。……あ、俺も移動しないとダメか。よっこいせ……。

 

《サファイアと申します。姉がお世話になっています》

「はあ、どうも」

 

 俺が窓際に着いた時には自己紹介が終わっていたらしい。

 

「ルヴィアさんが最初に使っていた方のステッキであってるかな? 俺は沖繫レイ。この冬木生まれの魔術使い」

《ええ。わたしとサファイアちゃんは同時に作られた姉妹なんですよー》

《初めまして、よろしくお願いいたします。レイ様》

 

 俺の方にも頭(?)を下げて挨拶をするサファイア。……俺やっぱサファイアのほうが良いな。なんで姉妹でこんなに性格が違うんだ……。というかどうして礼装にこんな人格を与えたんだ……。

 

《でも美遊さんも大したものですねー。初めてなのにいきなり宝具を使うなんて》

「宝具?」

 

 ルビーの言葉にイリヤが首を傾げる。あぁー、そう言えば説明してなかったなぁ。俺も詳しく知るわけでは無いんだけれど。

 

《説明してないのですか、姉さん?》

《そう言えば、カード周りの詳しいことはまだでしたね。一度に説明しても混乱させるかと思いまして》

「それは正解。けど別にもう良いんじゃない? というか僕も詳しいわけじゃないから知りたい」

 

 これはルビーのナイス判断と言わざるを得ない。最初のイリヤの戦い様から余計に敵の情報を教え込んでもショートして固まるのが目に見えてる。

 

《分かりました! それではお話ししましょう!》

 

 ルビーは宙で一回転してから張り切った声色でそう言った。

 

《以前、凛さんに見せてもらったクラスカードですが憶えていますか?》

「うん、何か、すごく危険な力を持ったカードなんでしょ?」

《はい。そのカード、実は突然この冬木市に出現したものなんです。異常な魔力の歪みを観測した魔術協会は調査を開始しました。今から約二週間ほど前のことです。魔術協会は二枚のカードを回収しました。そして分析を試みましたが製作者不明、用途不明、構造解析もうまくいきませんでした。ただ一つ分かったのはこのカードは実在した英雄の力を引き出せるらしい、と言う事》

「英雄……?」

 

 英雄……英雄ねぇ……? あの痴女が? どちらかと言うと英雄に倒される側じゃないか?

 

《神話や昔話に出てくるあれですよ》

「神話……ヤマトタケルとか?」

 

 日本神話といえばって感じだけど。

 

《えぇ、あり得ない話ではありません。偉業を成し英雄と認められた者は死後『英霊の座』と呼ばれる高次の場所へと迎えられます。そうして英霊となった者はそれぞれが力の象徴たる武装を持っています。通常の武具を超えた、奇跡を成す強力な兵器……それが『宝具』です》

 

 サファイアが俺の言葉を肯定してくれる。しっかし英霊の座ねぇ……。そんなヴァルハラみたいな場所があるんだ。……やっぱりワルキューレとかいんのかな。

 

《私たちは、カードを介することで英霊の座へアクセスし、英霊の持つ宝具の力を一瞬だけ具現化することができるんですよ》

《昨夜、美遊様が敵を仕留めたのがそれです。刺し穿つ死棘の槍(ゲイボルク)―――放てば必ず心臓を穿つ必殺の槍です》

 

 あぁ、やっぱりあの槍そう言う逸話持ちだったんだ。……どこの神話の武器なんだろ? 

 

《昨日お二人が戦った敵、アレもまたカードによって引き出された英霊の力の一部……いえ、英霊そのものと言っても良いでしょう》

《とは言え、どうやら本来の姿から変質しているうえに、理性も吹っ飛んじゃってるみたいですけどねー》

 

 へー、アレが英霊ねぇ……。あんな格好してる英雄かぁ……。いや、でもルビーが言っていたように本来の姿から変質してるって言ってたし、ホントはもっとまともな格好かもしれない。

 

《英霊はカードを包むように実体化しておりカード回収のためには英霊を倒さなければいけません。アーチャーとランサーは、協会が派遣した魔術師たちによって打倒されましたが、ライダーについてはそうはいきませんでした》

「ん?」

「それはどうして?」

《彼女には魔術がまったく効かなかったのです。恐らくは対魔力Bクラス以上……。『魔術を無効化する』という概念的な守りを持っていたと思われます》

《そこで魔術に頼らない純粋な魔力射出の攻撃ができる私たちに白羽の矢が立ったというわけです!》

「成程ね……」

 

 で、日本に来たまでは良かったが後の出来事は俺があの日冬木大橋で見た通りってことか……。

 

《協会が感知したカードの反応は全部で7つ。残りは4枚です。私たちも全力でサポートしますので美遊様と協力してのカード回収にどうかご協力ください》

「うん……いまいち自信は無いけど、頑張ってみるよ」

 

 イリヤは頬を掻きながらもそう返事をした。その後こちらに視線を向けてくる。あー、俺もなんか言った方が良いか?

 

「僕は元々協力するつもりだったよ? 凛先輩が任務を受けている以上、後輩として手伝わないといけないし。それにこの街に住む一人の人間としてあんなものがあるのは困るからね」

《ありがとうございます》

 

 俺の言葉に笑顔を浮かべるイリヤにまたも頭を下げるサファイア。……ほんとに出来た妹さんだな、サファイアは。

 

「サファイア、あまり外に出歩かないで」

「いッ!?」

「びっくりしたぁ……」

 

 突然話しかけられて振り向けば先ほどから話に出てきていた美遊がそこにいた。いや、こうしてみるとホントにイリヤと真反対っていうか、対極にいそうな見た目してんなぁ……。

 

《申し訳ありませんマスター。イリヤ様とレイ様にご挨拶をと思いまして》

「誰かに見られたら面倒。学校ではカバンの中にいて」

 

 あ、イリヤの方見た。

 

「あ、あの……」

「……」

 

 急に見つめられたイリヤはなんとか声をかけようと口を開きかけるがどうにも声が出なかった。そしてその間に美遊はさっと踵を返して廊下を歩きどこかへ去っていった。うーん、クール。

 

「何か……声かけづらい雰囲気」

「あー、ドンマイ?」

 

 

 

放課後 下校中

────────────────────────―――――――――

 

 

《いつまでいじけているんですかイリヤさん。早く家に帰りましょうよ》

「別にいじけてないよ……。ただ才能の違いっていうのを見せつけられただけだから……」

「……いやまぁ、確かに物凄かったなあれ」

 

 下校中に立ち寄った公園のベンチでイリヤはまるで真っ白に燃え尽きたボクサーのようになっていた。うーん、重症。

 というのもあの後美遊・エーデルフェルトがどういう人間なのか観察を始めたイリヤだったのだが……。

 算数の時間ではcosとかnとか使いだして明らかに小学生レベルではない公式を使っていた。……俺も良く分からんがようするにメッチャ頭が良かった。

 図工ではキュビズムなる手法を用いて先生の絵をかいていた。あれは知ってるピカソの描き方だ。とどのつまり美術力も凄まじいということだ。

 家庭科ではフライパン一個で凄く手の込んだコース料理を仕上げていた。一口頂いたが物凄く美味しかった。

 極めつけは体育の時間に行われた短距離走。イリヤの得意中の得意な種目。これだけは男子にも負けないクラス一、学年一の俊足だったのだが……これも負けた。美遊・エーデルフェルトは完璧超人だったのだ。

 

「……なにしてるの?」

「あー、どーもエーデルフェルトさん」

「美遊でいい」

 

 自身を砕かれたイリヤを眺めているとまたもや背後から美遊に話しかけられる。軽く挨拶をすれば名前呼びが許されたので次からはそう呼ぼう。

 

「こ、これはどうも、お恥ずかしいところを……。美遊さんにあられましては、今お帰りで?」

「何で敬語?」

「いまちょっと卑屈になってんだよ」

 

 凹み過ぎでしょ。ほとんど表情が変わらない美遊だが今ちょっと混乱してるのがわかるぞ。そんなレベルで引かれるとは恐るべし卑屈イリヤ。

 

「あなたも……ステッキに巻き込まれてカード回収を?」

 

 おまけに気を遣われてらぁ。けど、気になっていた美遊の方から話しかけられた影響か少しだけイリヤのテンションが戻った。

 

「う……うん、成り行き上仕方なくっていうか、騙されて魔法少女にされたと言うか……」

 

 ほんとルビーはどうやって契約したんだか。聞き出そうとするとイリヤが止めるんだよなぁ。

 

「そう……」

「……」

 

 え、終わり? どうすんのこの空気? それともアレか、あとはお若い魔法少女同士でごゆっくり~、とかやって退散した方が良いのか?

 

「……それじゃあなたはどうして戦うの?」

「え……? どうしてって?」

 

 よぉっし! 会話続いたァ!

 

「ただ巻き込まれただけなんでしょ? あなたには戦う責任も義務もない」

「だ、だってルビーが……」

「本気で拒否すればルビーだって諦めるはず」

 

 ……あ、これなんか思ったより重い感じですか? 折角続いた会話だけど長続きしない方が良かったりするか? というか『責任』ねぇ……。 まるで自分にはそれがあるような言い方をするじゃん。

 

「うーん……ホントのことを言うとね……。ちょっとだけこう言うの憧れてたんだ。ホラ、これっていかにもアニメとかゲームみたいな状況じゃない?」

「ゲーム……?」

 

 おおっと? なんだか不穏な感じが……。イリヤは両手を合わせてもじもじしながら語ってるから気が付かないかもだけど美遊の顔色なかなか不味い気がするぞ……。

 

「魔法使って戦うとか、変な空間にいる敵とか……冗談みたいな話だけど、ちょっとワクワクしちゃうって言うか……せっかくだから、このカード回収ゲームも楽しんじゃおうかなっーて……」

「もう良いよ」

「……え」

 

 切れたな。こういった手合いは切れると何しだすか分からない。けれどこうでもしないと一体何を考えて生きてるのか、何を腹の中に隠してるか分からないからな。あえてイリヤを放置して切れて貰ったわけだが……。さて、何が出てくる美遊・エーデルフェルト。

 

「その程度? そんな理由で戦うの? 遊び半分の気持ちで英霊を打倒できるとでも? ……あなたは戦わなくていい。カード回収は全部私がやる。 だからせめて、私の邪魔だけはしないで」

 

 そう言って美遊は公園を後にして立ち去った。

 

「……なにも出てこなかったか」

《レイさん、途中わざと黙っていましたね》

「それはお互い様でしょ」

 

 ルビーがイリヤから離れて俺の耳元まで来て小声で話す。ほら、イリヤが混乱してるからお前はあっちのフォロー行けよ、とイリヤの方を指さす。

 

「な……なんで怒ってるの……?」

《分かりませんが……何か地雷踏んじゃったっぽいですねー》

 

 混乱するイリヤの元にルビーが寄って行って話し出す。ふーむ美遊については結局分からず終いか……。

 

「まあ、どうせ今夜また会うし、話せたら話しかけるって感じかなぁ」

 

 下校時に下駄箱に入っていた手紙を広げつつそう呟く。……こんな手紙、イリヤに出してたのか凛先輩。

 





 レイ君は結構サファイアのことを気に入ってますが反対にルビーのことはあまり気に入ってません。
 手すきの時間にエーデルフェルト家にお邪魔してブラシやスケーラーでサファイアを手入れしまくるレイくんとビクンビクンしちゃうサファイア!? 
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