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クロエと一夜を共にした次の日。朝、隣でのびていたクロエを起こして一緒にシャワーを浴びた後、食堂へ向かった。途中、イリヤと美遊とも合流していっしょのテーブルで朝食をとる。
「……にしてもこう、改めて見ると凄いね……」
「どうしたのレイ?」
久々の食事でテンションがあがって朝から唐揚げ定食を頼んだ僕はあたりを見回しながらそう口にする。すると僕の言葉にイリヤが首を傾げる。
「いや、古今東西の英霊達が集まってるこの風景。初めて聞いた名前の人もいるけど、聞いたことのある名前の人もいる。あの一番カウンターに近いテーブルに座ってるの、アーサー王でしょ? ……エクスカリバーでしょ? 見た事ある二人とちょっと小さい一人の三人いるけど」
三人とも物凄い量食べてるな……。
「アルトリアさんとアルトリア・オルタさん、それにアルトリア・リリィさん。リリィさんはアルトリアさんの小さい頃の姿で、オルタさんはアルトリアさんのもう一つの側面らしい。あとサンタにもなるわ」
「???」
ダメだ、変わり者な所があるとは思っていた美遊だけど、僕が会わないこの数年で変わり者度合いが猛烈に高まったらしい。全然言ってることが分からない。
「まだエクスカリバー苦手なの?」
「……いや、多分今なら傷一つ付かないと思う。それはそれとして少しトラウマ」
「それは苦手って言うんじゃ……」
違う、それは違うんだ。戦闘になったら絶対負けないから。ただ、うん。ちょっとね、不意に目の前とかに出てきたらビクッ、てするだけなんだよ。ビクッて。
「君もあの聖剣使いが苦手なのか。わかるよ、その気持ち」
「もう、そんなこと言わないの。私たちもご一緒して良いかしら?」
そんな声が背中越しにかけられた。うん? 片方はアイリさんだったと思うけど……。いや、もう片方もなんか聞き覚えがあるんだけど……?
「な、ば、えみッ!?」
「どうしたんだこの子は?」
え、え、ええええ、衛宮切嗣!? な、なんでここに!? 英霊!? 英霊になったの!? あの衛宮切嗣が!?
「ママ、パパ。いいよ、こっちに座って」
「お義父さん、お義母さん、どうぞ」
「あー、元の世界で色々あったのよ。パパとレイ」
イリヤも美遊もクロエも皆、普通に受け入れてるけど!? え? 肌色とか髪色とか違うけどやっぱ衛宮切嗣なんだ……。あ、普通に席についてる。
「こ、殺されそうになった相手と殺そうとした相手……」
「思ったより複雑な関係なのね……」
アイリさんも流石に予想外の関係性だったのか苦笑いしてるじゃん。しかも目が泳いでるし、『え、本当に一緒にしても良かったかしら』とか思ってるじゃん、絶対。
「それは……すまなかったね」
「謝らないで下さい、別世界のあなたの話ですし。というか……貴方の見た目と声で謝れると背筋がぞわぞわする」
「そこまでか」
「そこまでです」
いや、ホントにぞわぞわして嫌な汗が背中を流れる気分だ。ま、ここではそう言ったしがらみは出来るだけ持ち出さないように過ごすけどさぁ……。別世界とはいえクロエのち、父親だし? こ、交流をは、図ってみる、か……?
「……ハンバーグ、好きなんですか?」
「あぁ、普段なら食事なんて栄養さえ取れればそれで良いんだが、
「へぇ」
あ、キッチンのエミヤさんが目頭抑えてる……聞こえてたんだ。
「……一切れ食べるかい?」
「え!? あ、い、頂きます。唐揚げも美味しいです、よ? お返しに一個どうぞ」
「……もらおう」
な、なんだこの微妙なやりとり……。クロエたちはこっちをみてニコニコしてるけどすっごい気まずいよこれ!?
そんな空気に耐え切れずにどうしたものかと貰ったハンバーグを口にしながら考えているとルビーとサファイアがやって来た。
「おはようございます! 皆様方!」
「おはようございます」
そう言って軽く手を上げて挨拶するルビーと深く頭を下げるサファイア。……人間の姿になったことで二人の性格の違いがより顕著になったよな。
「おはようルビー」
「おはようございます、イリヤさん」
「サファイア、給仕はお終い?」
「はい、ピークは過ぎたので我々もご一緒したく」
「勿論、歓迎するわ。こちらへどうぞ」
クロエとの食事がいつの間にか大所帯に。……いや、クロエも笑って楽しそうに話してるし別にいっか。僕も楽しいし。
「そういえば! レイさん!」
「ん?」
「あなたの記憶をコピーさせて欲しいんですよ!」
「は?」
急に何言ってるんだこのバカステッキは? ……ん? あれ、思ったより真剣な表情だ。というか、クロエたちも『あ、あれかぁ……』みたいな表情してるし。え、みんな体験済み?
「どういう意図?」
「ここ、カルデアはサーヴァントを召喚することを前提に運営されていますので地下の図書室には古今東西の神話、偉人たちについての書籍があります。そこで英霊について分からないことがあれば調べる、といった目的の為でしょうね」
道理だ。せっかくの人理修復の旅、マスターとサーヴァントの相性が悪くて儘ならない、なんて状況は避けたいだろうし。相互理解の一歩にもなる。
「まれにサーヴァント同士も互いの逸話などを調べて交流したりもしています。しかし、私はあることに気が付いたのです! イリヤさんたちについての資料がこのカルデアには無いということを!」
「いや、そりゃそうだろ。僕たち近代どころか別世界の住人だろうが」
なに当たり前のこと言ってんだこのアホステッキ。
「……以前から思っていましたがレイさんって私にだけ当たり強くありません?」
「なんで強くならないと思ってるんだロクデナシステッキ……。お前僕との初対面から自分の行いを顧みやがれ」
「ほ、ほんとにレイの口が悪くなってる……」
「サファイアには優しいのに」
「私は姉さんほど騒ぎを起こしていませんでしたので」
僕とルビーのやり取りにイリヤが戦慄して、美遊とサファイアが顔を見合わせながら決定的なことを言う。
「少し乱暴な扱いをしてくるレイ……。ふ、ふぅん……」
クロエ、君は一体何を想像してるんだ。
「ともかく! 私はレイさんと別れたあの日以降、イリヤさん達やバゼットさん、に別世界の士郎さん、果てには『事件に関係する記憶のみ』という条件付きで私たちの世界にやって来たギルガメッシュ王の記憶も許可を貰ってコピーしたんですよ! それでクラスカード回収から始まった私たちの大冒険。それをまとめているんです。そして今いる面子で唯一記憶をコピーできなかったのがレイさんなんです!」
へぇ、王様の記憶もコピーしたって一体どれだけ拝み倒したのやら。
「コピーさせて頂いた記憶を整理、編集などして映像記録として残したいんです」
「まって、記録に残すの? 個人的な思い出とかにする訳じゃなくて?」
それって大丈夫なの?
「私たちの世界ではイリヤさんたちの功績は記録に残せません。けど、カルデアなら話は別です。『別世界にはこんな話も有ったんだ』で済みます。……少し、しんみりとした話ではありますがイリヤさんたちにはいつか寿命が来ます。私たちもいつか耐用限界が来るかもしれません」
「それは……まぁ」
「そのときに誰も私たちの冒険を覚えていないのって寂しいじゃないですか。私、たった半年程度でしたがあの日々は大変楽しかったと思っているんです。だからたとえ異世界だとしても私たちの記録を残したいんです」
……驚いた。こいつ、そんなこと思ってたんだ。クロエたちもちょっと思うところがあったのか考え込んでる。
「それに! 先ほども言いましたがサーヴァント同士も互いの逸話などを調べて交流することもあるんです。このカルデアでの皆さんのコミュニケーションの一助にもなりますよ! 折角の機会です色々な英雄たちと関わりたいでしょう! あまり食堂には顔を出しませんがなんと、あの織田信長もこのカルデアにはいるんですよレイさん!」
「えっ!?」
の、信長!? あの織田信長!? え、それは確かに会いたい……。
「という訳で、何が会話の切っ掛けになるか分かりませんし協力お願いしますレイさん!」
「……僕も条件を出して良いなら協力するよ」
「わっかりました! それじゃあ後でお部屋に伺いますねー!」
そう言ってルビーは準備があるのか立ち去って行った。僕たちも朝食をとり終わるとマスターに呼ばれたのでその場で解散となった。
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「しゅ、周回って大変なんだなぁ……」
自室に戻ってきて畳に寝転がりながらそう考える。
なんかマスターが『四騎士に相性有利で不利がアルターエゴとプリテンダーだけで味方全体NPチャージ&攻撃バフ持ち、全体、単体切り替え可能宝具持ちだから便利』って言ってたけど……どういう意味?
「……ダメだ、全然わからん」
いくら考えても意味が理解できない。三騎士・四騎士って多分サーヴァントのクラスなんだろうけどアルターエゴとかプリテンダーとか聞いたことない。というかサーヴァントのクラスに相性なんてないだでしょう……? それともマスターだけなんか別の視点でも持ってるのかな?
――ピンポーン――
「はいはー……。……はい」
寝ころんでいると部屋のインターフォンがなる。なにも考えずに開けようとしたけど一応昨日のことがあったのでゆっくりドアを開ける。……別に気にしてないけどね? 一応だよ、一応。
「こんばんわー! ルビーちゃんとサファイアちゃんが約束通りやってきましたよー!」
「失礼しますレイ様」
やって来たのはルビーとサファイアだった。あぁ、なんだっけ記憶のコピーを取るんだっけ。
「ほー、レイさんは部屋を和室に改造したんですか。いいセンスしてますねー。しかし道具作成スキルもないのによくできましたね?」
「まぁね。そこらへんは記憶を見たらわかるんじゃない」
「それもそうですね! それじゃパパっとやっちゃいますよ!」
「姉さん、その前条件を聞かないと」
さっすがサファイア、覚えて居てくれたか。
「おっと、そうでしたね。それでどの範囲の記憶を使わないで欲しいんですか?」
「……初めてバゼットと戦った日の夜から次の日の朝まで……。あとクロエたちとお別れする時に出てきた蜘蛛を倒した後は使わないでほしい」
僕の言葉に二人は首を傾げる。
「別に構いませんけど理由を聞いても良いですか?」
「それは……うん。前者は色々あったんだよ。後者は、その……見たくないだろ、田中と殺し合う所なんて」
前者は映像がR18になって保管できなくなっちゃうし、なによりクロエにあの出来事が伝わるの……ちょっと怖い。後者は単純に後味が悪くなるし、長い。
「田中さん……彼女と殺し合いを?」
「私は姉さんやイリヤ様の記憶でしか拝見したことがありませんが彼女と何故?」
ルビーとサファイアは二人とも僕と田中が戦ったということに納得がいっていないようだった。
「彼女は……ガイアの抑止力だった」
「な!?」
「抑止力……それもガイアの……」
星を滅ぼそうとする僕と星を守る存在である田中が敵対するのは当然の出来事だった。一度は殺したがその後、ビーストとして星の力を喰い漁り世界を滅ぼそうとする僕に立ち向かうために星の後押しを受けて■■の一として復活してきたときはびっくりした……。めっちゃ強かった、既に守るべき人類も地球も崩壊したというのに最後のその瞬間まで殺し合った。最後の方なんか互いに変な友情というか、愛情すら持っていた気がする。
あれ? そうかんがえるとこれもクロエにバレたらまずい気が……。
「と、とにかくその二つは映像記録に使わないこと。いい!?」
「は、はいぃ!!」
そしてその後脳波計みたいなのつけて記憶のコピーした。思ったより早く作業は終わった。
「それじゃ、ルビーちゃんはこの記憶を編集して映像記録の作成に入りますので! 上手く出来たら鑑賞会とかやりましょうね!」
そういってルビーは出ていったんだけど……
「……」
サファイアがずっと隣に座ったままなんだけど? というかコピーもなにも全部ルビーがやってたじゃん、サファイアはなぜ来た?
「……あのレイ様」
「どうしたのサファイア?」
もじもじしながらサファイアはある箱を取り出してこちらに見せてくる。これは……。
「今日、クロエ様と会話する機会がありまして」
「うん」
「クロエ様から"許可"は貰いましたので。……久しぶりにお手入れ、してくださいませんか?」
そうお願いされたなら仕方がないよね。
「おいでサファイア」
このあと滅茶苦茶、手入れ(比喩なし)した。
☆5 ビースト 怪獣王デストロイア
四騎士有利、アルターエゴ&プリテンダー不利。
スキル1『獣の権能』
味方全体の攻撃力を20%アップ、NPを20%アップ。『クロエ』のNPを追加で15%アップ
スキル2『ネガ・ミスティカル』
自身の攻撃力を15%アップ、味方全体の防御力アップ(3ターン)味方全体にダメージカット1000付与(3ターン・2回)
スキル3『自己改造』
自身の宝具威力アップ(1ターン)、宝具チェンジ状態を付与(全体宝具か単体宝具か選択可能、1ターン)
宝具
・通常時アーツカード
『
敵全体に強力な攻撃、強化状態を解除、味方全体のアーツカードの性能アップ付与(3ターン)
・宝具チェンジ時クイックカード
『
自身に〔星〕特攻状態を付与(1ターン)〔フォーリナー〕特攻状態を付与〔1ターン〕
自身に攻撃力アップ(1ターン・OC)、敵単体に超強力な攻撃
入手方法『クロエ・フォンアインツベルン(アーチャー)』が正式加入している状態でフレンドポイントガチャから低確率召喚。
・ルビーの映像記録。
端的にいればYouT○beとかでたまに見る『「○○の鑑賞会」の反応集』みたいなことが出来るってこと。書くかどうかは悩んでるけど。
・後日
「え、本当に手入れして終わったの!?」
「はい……」
なんて会話があったとかなかったとか。