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見渡す限りの平原。戦闘訓練で僕はゲオルギウスさんに怪獣王デストロイアとして相対していた。シミュレーターの都合上大きさは50メートルぐらいに抑えたけど、力量に変わりはない。
「キィィヤァァァッ!!」
「くっ……力強い! だが! 我が剣が訴える、汝こそは竜!
迫る光剣に向けて尾を振り下ろし正面から挑む。剣と尻尾は一瞬膠着したあと尻尾が押しかった。
「ぐわッ!」
吹き飛ばされ地面を転がるゲオルギウスさん。そんな彼を受け止める別のサーヴァント。
「大丈夫か?」
「あぁ」
「そうか。なら、次は俺だな。……ジークフリート、参る!」
ゲオルギウスさんの怪我を確認した後、こちらに突撃してくるのは竜殺しの英雄、ジークフリート。色々な媒体で彼の活躍や名前は目にする。間違いなくトップサーヴァントの一角。
「グア゛ア゛ア゛ゥゥゥゥ!!」
近づかれると厄介だ。オキシジェン・デストロイヤー・レイで一気に―――!?
口内に力を溜め始めた途端地面から沢山の槍が突きでてきて片足に突き刺さる。ケガは直ぐにでも治るが急な足場の変化に攻撃を中断する。
「
ジャンヌ・オルタ! ルサリィ先輩の成長した姿か! けど、僕相手に炎は相性が悪い。大した怪我でもない、まずはジークフリートさんを……。あれ? どこ行った?
「こっちだ!」
頭上から声が聞こえ顔を上げると剣を振りかぶったジークフリートさんといつの間にか合流したのか佐々木小次郎さんがいた。
「
「秘剣・燕返し!」
二人の宝具が顔面に炸裂して顔がぐしゃぐしゃにされる。視界が真っ暗だ。急いで再生させないと……。
「視界を奪った今がチャンス! 三人は止めの準備を! 行くわよ……愛を知らない哀しき竜、ここに。せーのっ!星のように!
「グアゥ!!」
な、なんかぶつかって来た!? 思いがけない衝撃にスッ転ぶ。……いてて、まさかこの姿で転ぶことになるとは予想外だ。ゆっくりと立ち上がる。幸い追撃は無かったし、顔の再生も終わった。さて今度はこっちから仕掛けて……やろう、かな……。
「モードレッド卿、合せなさい」
「出来ない、とは言うまいな」
「お、おうよ、やってやるぜ、父上!」
そこにはアーサー王とオルタのアーサー王、そしてモードレッドさんがそれぞれの聖剣を構えて宝具の準備をしていた。
「束ねるは星の息吹、輝ける命の奔流。受けるが良い!
「我は王に非ず、その後ろを歩む者。彼の王の安らぎの為に、あらゆる敵を駆逐する!
「卑王鉄槌、極光は反転する。光を飲め!
く、クラレントはともかく……またエクスカリバーかよォ!!!
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「いやまぁ、結局は勝ったんだけどさ」
「勝ったの!? 凄いじゃない!」
午後、戦闘訓練の後、ベッドの中で生まれたままの姿のクロエに抱きしめられながら午前中にあったことを話す。
「僕が赤い竜ってことでこのカルデアにいる何人かの竜属性、竜特攻、若しくは竜に関連する逸話もちのサーヴァントたちが戦ってみたい、ってなって始まった訓練だったんだよ。でもさ、今思うとなんで佐々木小次郎さんがいたんだろ……。あの人、竜関係ないよね?」
本当に謎だ。しかもなぜかジークフリートさんと仲が良いみたいだったし。訳が分からないよ。
「あー……第一特異点で色々あったらしいわ」
「へー」
後で記録調べてみようかな。
「っとそろそろ夕飯時じゃない? 食堂行く?」
「うーん、お兄ちゃんのご飯は魅力的だけどこの時間帯は食堂も混雑してるでしょうから30分ぐらい時間ずらして行きましょう?」
僕の提案にクロエはそう言う。
「別世界の士郎さんでも料理は上手なんだよね」
「そうねー。士郎さん、美遊のお兄さんの方ね。彼も料理上手だったみたいだから魔術はともかく家事スキルはどの世界でも持ってる共通のモノなんじゃないかしら」
楽しそうに士郎さんの料理について語るクロエ。……確かに食堂で食事をしているときのクロエの顔はとても幸せそうだ。見ているこっちも幸せな気分になる。ふむ、だとしたら……後でお願いしてみるか。
「ねぇ、レイ?」
「どうしたの?」
「このままお喋りするのも良いんだけど……。もう一回……出来るわよね♡」
「……」
折角汗流して体洗ったのに……。いや、別に構わないけど、あんなにすぐにヨガリ狂うのにどうしてそんな『余裕です』みたいな表情が出来るんだ。
「ふふ、無理しちゃって……。本当に可愛いよクロエ」
「―――ッ」
愛しい人の身体に手を這わせながら首にキスをした。結局いろいろ盛り上がって体を洗ったり何なりして食堂に向かったのは食堂が閉まるギリギリの時間になってしまっていた。
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食堂が閉まった時間帯。霊体化してキッチンの方に近づいていく。この時間帯ならまだいると思うんだけど……。調理場の方を覗き込む。やっぱりいた。僕が初日にお世話になったキッチン組と言われる人たちだ。
「む? 怪しき気配! 霊体化しようとキャットの眼は誤魔化せん! 疾く姿を現すワン!」
えぇ……。や、野生の感ってやつなのかな。一番遠い位置にいたはずのタマモキャットさんが最初に気が付くなんて……仕方がない。
「……こんばんは」
「うおっ!?」
「ありゃレイ君じゃない」
霊体化を解除すれば目の前にいたエミヤさんは驚いて、ブーディカさんが目を丸くしてこっちに寄って来る。
「どうかしたの? あ! 食べたいもののリクエストとか?」
しゃがみながらそう聞いてきたブーディカさんに首を横に振って否定を伝える。……ブーディカさんは正直ちょっと苦手だ。いや、苦手って言うのは少し違うかも。この人といるとぞわぞわとむず痒い気持ちになる。最初はクロエに声が似ているからだと思った。でも違った、確かに声は一因かもしれないけど、ブーディカさんの『あり方』じたいが僕を変にさせている。
「……あの。えっと……」
「うんうん、大丈夫。ゆっくりで良いからね」
この人にはなぜか甘えてしまう、というか恰好が付けられなくなる。これじゃただの子供だよ。……なんか恥ずかしくなって顔が熱い。
「ぼ、僕に料理を教えてください」
「へぇ!」
「ほぅ」
「ぬぬ!」
僕の言葉にキッチン組の人たちはそれぞれの反応を見せた。
「うんうん。私は全然構わないよ! 料理が出来る人が増えるのは良い事だし、子供には色々経験させたいし。エミヤとキャットは?」
「
「キャットも構わんぞい! 新たなキッチン仲間にコレをやろう。新鮮なニンジンだ。生でも旨いはずだ。食ってみろワン」
「……いや、食べませんからね」
こいつ、マジか……。なんだろう、タマモキャットさんも声はクロエやブーディカさんと似ている気がするんだけど……。まったく何も感じない。これはひとえにタマモキャットさんのキャラクター故なのだろうか……。
「そうだな……本格的に教えるのは明日からとして今日は仕込みの簡単な手伝いから始めるべきだな」
「うむ! では若人よ、こちらでキャットと共に野菜の下処理をするのだ!」
「そうだね、火も包丁も使わないし今日はそれをお願いしよう。キャット、お願いね」
「任された!」
あ、タマモキャットさんと一緒ですか。はい、頑張ります。そうしてタマモキャットさんと一緒に明日使う野菜の下処理を始める。もともと孤児院で多少の料理経験はある。一度タマモキャットさんの見本を見ればそれほど苦戦することもなく作業は進められた。
「して、少年よ。何故急に我らが組の一員になりたいと?」
「く、組?」
なんで急にドスの聞いた声を? 冗談なのか、本気で探りに来てるのか全然わからん!? え、ま、まぁ、騒ぎを起こそうとかそう言う意図はないし、べつに正直に言って問題ない……よね?。
「その、クロエってここの料理をとても美味しそうに食べるんです。笑顔で、楽しそうで……。だから僕も、そのお手伝いがしたいって言うか……いつか僕の料理であの表情をして欲しいんです」
「……愛情とは美味なる食事に絶対に欠かせないモノ。相手を思う気持ちが料理に表れる。その気持ち大切になさい」
「!?!?」
そ、そんな真面目な声出せたんですか、タマモキャットさん!?
・竜種関連特別合同訓練。
本来の大きさで全力出せたらもっと簡単にレイが勝っていた。そしてこのカルデアでもドラゴンスレイヤー佐々木小次郎。
・バカップルなクロレイ。
仕掛けるのはだいたいクロエ。先にダウンするのもクロエ。
・別に揃えてしまっても構わんのだろう?
この後ピーラーや泡だて器など一式を投影したエミヤさん。色々あったけど彼にとってレイくんは初めての弟だからね。色々構ってくれます。