プリズマ☆イリ『ア』   作:四脚好き

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第五特異点 さらばディルムッド

荒野

────────────────────────

 

「ほう……これも防ぐか!」

「……」

 

 ディルムッドと戦闘を始めてから何回か撃ち合った。()()()()()。そう、以前までの僕ならディルムッドの攻撃はまったく防げず自身の再生能力に物を言わせた『肉を切らせて骨を絶つ』戦法で戦っていたと思う。しかし実際はどうだ。敏捷のステータスで負けている分対応しきれずかすり傷を負うことはあるが直撃は喰らっていない。ケイローン先生の教えは確実に活きている!

 

「では俺も少し本気を出さなければな」

「最初から出せばよかったのに」

 

 ただ様子見なのか、時間稼ぎのつもりなのかは分からないけど彼は本気を出していない。そして本人の言葉を信じるならここからが本気らしい。さて英霊の本気に僕の剣の腕はどこまで通用するの―――ぅえ!?

 

「え、早!?」

「見事な反応だな! だが!」

 

 あ、やっぱまだまだ修行が足りないわ。全然ついて行けない、あっさり剣の防御を抜けられて肩に赤い槍が突き刺さる。続く黄色い槍はどうにか避けて苦し紛れの尻尾薙ぎ払いを繰り出す。ディルムッドは素早く僕の肩から赤い槍を引き抜くと跳んで尻尾を避けながら距離を取る。

 

「痛いなぁ、もう」

 

 そう言いながら肩の傷を撫でながらそう呟く。……うん、再生も問題ない。

 

「確かに筋は良い。だが貴様は俺の相手をするにはまだ……未熟だ!」

 

 そう言って二本の槍を構えなおし再びこちらに向かってくる。早い! けど、多分さっきの一撃で目が慣れた。どうにか捕らえられる! 襲い掛かって来る槍の一撃を受け止める。

 

「捕らえた!」

「ああ、捕らえられるだろうな。受け止めて貰うために速度を弱めたからな」

「ッ!?」

 

 な、なんだ!? なにが起きた!? 突き出された槍の一撃を受け止めたと思ったらそこから穂先を捻ってひっくり返されて……? な、なんかたこ焼きひっくり返すみたいな動きされたんだけど!? 

 

「あっ!」

 

 二本の槍で綺麗に剣を捻りまわされ剣から手を離してしまった。ポロリと手の内からこぼれた剣は槍で強く叩かれ遠くへ転がっていく。

 

「目の前に敵がいるにも関わらず自分の得物を目で追ってしまうあたり。天性の再生能力と膂力に物を言わせていただけで真っ当な戦闘の経験は少ないと見た。鍛えればよい戦士になっただろうが主の命だ……」

 

 え! あ、ディルムッドはどこに……!?

 

 

「お前を殺す」

 

 

 

 

 振り向いた先には槍をこちらに突き出すディルムッドの姿。剣は拾いに行けない、回避も僕の敏捷では追いつかれる、今から剣を再構成するのも間に合わない……。なら、なら! 両手を槍に向かって伸ばす。

 

「なに!?」

「掴んだら、必ず壊ァす!」

 

 二本の槍を手のひらで受け止める。槍は簡単に手のひらを突き抜けるが、無視してそのまま槍をこちらからも握りしめる。あとはケイローン先生から教わったパンクラチオンを使って僕はディルムッドの二本の槍を叩き折った。

 

「バカな、宝具を!?」

 

 自身の宝具を壊されたのに驚いてディルムッドに僅かな隙が出来る。この距離なら今の僕でもその隙を十分に生かせるんだよ! 姿勢を低くして相手の胴体に組み付く。腰から下を足で固定して相手と自身の上半身を捻って……そしてそのまま一気に回しちぎる!

 

「ぐばァッ!?」

 

 上半身と下半身が泣き別れたディルムッドは血反吐を吐いて信じられないものを見る目で僕を見てくる。

 

「ま、まさか子供に体を千切られるとは……。驚くべき腕力だな……」

「まぁこれだけは負けない自信があるから」

「あぁ……申し訳ありません主よ。私はまた最後まで供にいることが―――」

 

 以後まで言い切れずにディルムッドの身体は光の粒子となって消えた。さて、あれは……。あ、あった。僕は地面に落ちていた青色の帽子を拾って被り、マスターたちの元へと向かった。

 けど僕がマスターの所に着いたころには戦闘は終わっていて、フィン・マックールはディルムッドがやられたのを察知して撤退したらしい。またその際にマシュがフィンからプロポーズされたらしい。……どういうこと?

 

「良いですか、患部は清潔に、そしてベッドは床に敷き詰めない。本来なら、決して彼等を不潔な地面に寝かせてはなりません。嘔吐剤や瀉血で毒素を吐き出すとか、塩化水銀を飲ませるとか、そういう時代遅れの治療をやったら、あなたに治療が必要なほど殴り飛ばしますので、そのつもりで」

 

 そして今は戦後処理ということでナイチンゲールさんがこの基地の軍医さんに色々と治療や看護について教え込んでいる。なんかところどころ物凄い単語が聞こえる。嘔吐剤? 水銀? 昔のお医者さんってそんなもの飲ますの……? もうお世話になることは無いだろうけど僕の時代までそんなものが続かなくて良かった。い、医療の発展に貢献した人々、現場で働いてくれてるお医者さんに感謝。

 

「いや、しかしそれは最新の医療で……」

 

――ドォンッ!――

 

 じゅ、銃声が……。な、ナイチンゲールさんってこんなに怖い人だったの……。

 

「お待たせいたしました。それでは行きましょう」

 

 なんでもなかったようにテントから出てきたこの人……。ん? なんかこっちを見てる?

 

「少年、その帽子は血や泥で汚れていて大変不衛生です。感染症などの原因になりかねませんので処分します」

「なっ!」

 

 こちらに伸ばしてきた手を避ける。

 

「なぜ避けるのです!」

「あれ? そもそもレイってそんな帽子持ってたっけ?」

「そう言えば……」

 

 マスターとマシュさんが首を傾げる。

 

「この帽子は初めてこの基地に来た時、僕をただの子供だと勘違いしてチョコレートをくれたおじさんの帽子。こんな戦時下で補給も万全とは言い切れない前線で貴重なはずの嗜好品。それを見ず知らずの子供にあげれるような優しいおじさん。だからまぁ、借りは返すべきだしケルト人を倒すところを、アメリカが救われる瞬間を見せてあげたいんだ」

「……なるほど。ねぇ、ナイチンゲール。私からも処分しないでってお願いしたいんだけど」

 

 マスターが僕とナイチンゲールさんの間に入ってくれる。

 

「分かりました。処分は止めにしましょう。けれどその帽子を一度私に預けてください」

 

 あ。そう言って先ほどの立ったまま帽子を取り上げるような体勢ではなく膝をついてあくまで僕から帽子を渡されるのを待つ姿勢になったナイチンゲールさん。

 

「レイ」

「……はい」

 

 マスターが背中に回って僕の背を押す。そっと帽子を外してナイチンゲールさんに渡す。ナイチンゲールさんは帽子を受け取り片手をかざす。

 

我はすべて毒あるもの、害あるものを絶つ(ナイチンゲール・プレッジ)。……雑菌などはこれで滅菌しました。今後汚れが付くようなことがあれば私に報告しなさい。損傷に関しても私で良ければ合間合間に私が直していきましょう。よろしいですね」

「……はい! ありがとうございます」

 

 怖い人かと思ったけど、やっぱり優しいのかな? 返された帽子をかぶりつつそんなことを思う。

 

「良かったね、レイ」

「はい」

 

 マスターが笑いながらそう言ってくれる。

 

「それでは行きましょう。この国の病巣を取り除くために!」

「お待ちなさいなフローレンス。どこに行くつもりなの?」

 

 気を取り直して基地を離れようとしたとき機械兵をつれた女の子……? 取り合えず女の子、に止められた。

 

「軍隊に置いて勝手な行動はそれだけで銃殺ものって知っていて?」

「群体?」

「軍隊ですよレイさん」

 

 あ、そっちか。

 

「今すぐ治療に戻りなさい。さもないと、手荒い懲罰が待ってるかもよ?」

 

 ……あまり良い雰囲気では無さそうだ。手に剣を構成していつでも動けるようにしておく。

 

「私の仕事は何一つ変わりません。兵士たちの根幹治療の手段が見つかりそうなのでそれを探りに行くだけです」

「もっともな理由をありがとう。けど、王様は認めないわよ。絶対に」

 

 王様。アメリカに王様?

 

「そんな人物に私を止める権利はありません。。より、効果的な根幹治療の提示があるなら別ですが」

 

 ぶ、ブレないなぁ……。

 

「やっぱりバーサーカーは話通じないわねぇ。いい機会だから片付けてしまおうかしら?」

「――ッ! マシュ!」

「はい!」

 

 その一言で場の空気が代わりマスターがマシュに指示を出すとすぐにマシュは前に出ていつでも戦えるように構えをとる。

 

「その発想はエレガントではありませんが、同感です。この先の無駄話が省けます」

『あわわ……なんか火花が散ってるぞぅ……』

「どうしてナイチンゲールさんも好戦的なんだ」

 

 呆れつつ、僕も前に出る。するとマシュが相手方に声をかける。

 

「あの、もしかしてあなたもサーヴァント……なのですか?」

「貴女も? って……まぁ! サーヴァントがこんなに! 良くってよ! これは王様にとってグッドニュースかしら?」

 

 また王様だ。それから目の前の女の子は現在のアメリカの状況を説明してくれた。うん、おおよそ僕が聞いた話と一緒だ。ただこの女の子の話の方がより詳しい。

 

「あ、自己紹介もせずにごめんなさい。あたしはエレナ・ペトロヴナ・ブラヴァツキー。ま、世間的にはブラヴァツキー夫人が有名なのかしら。嫌よね、結婚で姓が変わってしまうのって」

『エレナ・ブラヴァツキー! 19世紀を代表する女性オカルティストだね!』

「……わかんない」

 

 有名な人? ドクターが代表するとかいってるしサーヴァントになってるから有名な人なんだろうけど……。

 

「話は終わりましたね。では出発しましょう、立香。一刻も早く、一秒でも早く、この戦争を治療するのです」

「うーん……やっぱりこうなるわよね。仕方ないか」

 

 話が平行線で進まないと理解したのかブラヴァツっっ……言い辛い。……エレナさんは肩を落とした。そしてチラリと僕に視線を向ける。 ん?

 

「少し()()()()()()()()、お願いするわ()()()!」

 

 ッッ! なんか猛烈に嫌な予感が! どこだ、どこに!?

 

「え、あの、すいません。今、何と……?」

「出番だな。悪いが手荒く行くぞ」

 

 どこからか声が……。これは……。

 

『いきなりサーヴァント反応が現れた! 君たちの直上だ! この霊基数値……間違いなくトップクラスのサーヴァントだ!』

「そんな……!」

「マシュ、宝具お願い! レイ、迎撃出来る!?」

「ダメだ早すぎる!」

 

 今から迎撃しようとしても向こうの攻撃が先に決まる! 中途半端でも良いから怪獣化してマスターを守るしかないか! 急いで怪獣化してマスターたちを庇うように前に出る。僕自身の耐久力とマシュさんの宝具であれば威力は大分削げるはず!

 

梵天よ、我を呪え(ブラフマーストラ・クンダーラ)!」

 

 まるで太陽のように輝くサーヴァント。彼が手にした槍が一層激しく輝き炎の渦を巻く。そして僕の意識は途絶えた。

 




・ディル/ムッド
ただし剣ではなく、腕力で無理やり引きちぎって切断。

現在のカルデア

・レイ君がしっかりと自身の教えを活かしているのを見てケイローン先生もにっこり。アキレウスは若干引いた。

・ルビー、イリヤ達の物語の編集を終える。誰でも閲覧可能に。ルビーは初めて寝込んだ。

・イリヤ、美遊、クロエ。折角なので三人で鑑賞会でもしようかと提案。ナーサリー、ジャック、ルサリィたちも見たいと期待の目を向ける。

・通りすがった万能の天才、待機中のサーヴァントたちも暇を潰せるだろうとカルデアのレクリエーションルームを使って上映会にしたらどうかと提案。準備中。

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