プリズマ☆イリ『ア』   作:四脚好き

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第五特異点 大統王

西側拠点への通り道

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「あーあー、負けちゃった。熱線は防げても衝撃は消えないもんなぁ……」

「だが、見事だった」

「どーもー」

 

 気が付くと僕たちは馬車の荷台の上に転がされていた。周りを見るとマシュさんやナイチンゲールさん、そしてマスターもいた。馬車の傍には機械兵とエレナさんがいて、後方にはカルナと呼ばれていたサーヴァントが控えていた。僕以外の面子は既に起きていたようでマスターたちはエレナさんと今のアメリカの状態を再び聞いたり、『王』と呼ばれている人物のことを聞き出そうとしていた。

 その時間少しだけ手持無沙汰だったため、後方にいたカルナというサーヴァントと一緒に先ほどの攻防について喋っていた。……のだけど。

 

「……どうした?」

「いや、なんでも……」

「そうか」

 

 このカルナって英霊、無茶苦茶言葉足りなくない!? 途中煽られてるのかと思った場面がいくつかあったよ!? 

 そんなことを思いながらも洞窟を抜けると目の前にアメリカ国旗の付いた城が現れた。

 

「ホワイトハウスじゃないんだ」

 

 ……アメリカの王様が居る所だからホワイトハウスかと思ったんだけどお城なんだ。……いや、ホワイトハウスがどこにあるかなんて知らないけど。

 

「ふふ、ホワイトハウスがあるのはワシントンD.C.よ。残念だけど今はケルトの連中に占領されちゃってるの」

「へぇー」

 

 なんとなくの僕の問いにエレナさんが答えてくれた。すると城門の近くにいた機械兵が敬礼して声をかけてくる。

 

 

《ブラヴァツキー夫人、カルナ様。大統王がお待ちです。すぐにおいでください》

『き、聞き間違いかな。だいとうおう、とか言わなかった、今?』

「いった」

「言ったね」

「はい……。間違いなく言いました。大変言い辛いのですが……すごく短絡的と言うか……」

 

 大統領で王様だから大統王なのか、大統領たちの王様だから大統王なのか。ただまぁ―――

 

「すごく、馬鹿っぽい」

「でしょ? でもそこが良いのよね。私たちからは出ない発想だし。さ、ついて来て。王様は気が短いのよ」

 

 ……気の短い王って最悪の部類では?

 

 エレナさんの案内で僕たちは城の中へと進んでいく。そして大きなテーブルが置かれた会議室の様な場所に通される。エレナさんに促され着席するが一人ひとりの背後には機械兵が待機しており銃口を向けられている。僕とマシュさんにナイチンゲールさんはその気になれば機械兵は大丈夫だがマスターが撃たれてしまう。それに仮に機械兵をどうにか出来てもカルナがいる以上望み薄。

 

「……大人しくしてるしかないかぁ」

「そうそう、それが一番よ。王様~、連れてきたわよー!」

《了解しました。大統王閣下がご到着されるまで、あと一分です》

 

 遂に王様と対面か……。

 

「緊張してきましたね、先輩」

「一体どんな王様なんだろうね?」

 

「おおおおおお!! ついに、あの天使と対面する時が来たのだな!! この瞬間をどれほど焦がれた事か!! ケルト共を駆逐した後に招く予定であったが、早まったならそれはそれで良し!! うむ、予定が早まるのは良い事だ!! 納期の延期に比べれば大変良い!!」

「うるさっ」

 

 突然ドアの外から大きな声が聞こえてきて思わずポロっと本音が出てしまった。

 

「……はあ。歩きながらの独り言は治らないのよねぇ。独り言はもう少し小声でやってくれないかしら?」

「今のは独り言何ですか!?」

 

 独り言って……アレが? あれだよね、拡声器持ちながら独り言喋っているとかなの? そんなレベルで大きかったけど。そして足音はドンドンと近くなりバンっとドアが開かれた。

 

「―――率直に言って大儀である!! みんな、初めまして、おめでとう!!」

 

 ら、ライオン? え、ひと? でも顔はライオン……。いや、二足歩行で服着てる……? ん? んん? か、怪獣? いや怪人?

 

「……」

「……」

「……」

 

 マシュさんとマスターも固まって―――ッッ! あ、あのナイチンゲールさんまで固まってる!? や、ヤバい、このサーヴァント? 恐らくサーヴァント! 何がとかは分からないけどともかくなんかヤバい! 

 

『あれー? モニターの故障かなー? クリーチャーしか映ってないぞぅー?』

 

 ドクター! 逆にあなたは動けるのか!? も、もしかしていつもぽわぽわしてるけどドクター・ロマンって大物なのでは?

 

「もう一度言おう大儀である!! 諸君、大儀である、と!」

「ね、驚いたでしょ。ね、ね、ね?」

「……それはまぁ、驚くだろうな」

 

 僕たちの驚愕、我関せずといった風にポーズをとって大声を上げるライオン怪人。僕たちの反応が他とも理想的だったのか物凄いニコニコ笑顔のエレナさん。常識人のカルナさん。

 

「い、いえ、確かに驚きましたが……。大丈夫、こういうのには割と慣れてきましたので……」

「色々あったからね……。―――水着、ハロウィン、ぐだぐだ、サーヴァントユニヴァース……

「な、なれるの?」

 

 こ、こんな頓智気な存在に慣れてるってマスターたちの今までの旅路って一体……?

 

「我こそはあの野蛮なるケルトを粉砕する役割を背負った、このアメリカを統べる王。サーヴァントにしてサーヴァントを養うジェントルマン! 大統王、『トーマス・アルバ・エジソン』である!」

「エ!?」

『ジ!?』

「ソンなバカな!?」

 

 え、エジソン……。あの電球の? ……いや、でもそっか。

 

「あり得るのかも……」

「レイ!?」

 

 僕の呟きにマスターが驚いて顔を向けてきた。けど、マスターなら、多分マスターなら理解できるはず!

 

「だってほら、マスター! エジソンは偉い人、そんなの常識じゃん! なら大統領で王様なのにも納得ができる!」

「レイ!? お、落ち着いて!? 確かに日本ではそうかもだけど(某国民的アニメ)! くっ、レイはまだトンチキ耐性持ってなかったから! 特異点に連れてくる前に一度、水着のノッブと沖田さんの二人と一緒にハロウィン特異点とクリスマス特異点に一週間くらい漬けておくんだった!!」

「先輩! それはいくらなんでも残酷すぎます!」

 

 わ、わからない。マスターとマシュさんの言ってることが何一つ分からないよ……。

 

「失礼、絶句してしまいました。エジソン……発明王エジソンですか? 貴方が? キメラではなく?」

「いかにも。今は発明王ではなく、大統王であるが」

 

 す、すごい。流石ナイチンゲールさんだ。状態異常からいち早く回復してる……。

 

「そして貴女がフローレンス・ナイチンゲール嬢ですな。……報告にある通り美しい。不幸にも生前に知り合う機会はありませんでしたが、今この瞬間こそエネルギーの、いや、魂の奇跡でしょう。私は戦場に生きるものではありませんが、だからこそあなたの信念を、理性を尊敬する。ぜひ、あなたの力を貸していただきたい。医療の発展は勿論、兵士の士気向上―――広告塔としての効果は計り知れないのだからな! ははははは!」

「……人間では無かったとは知りませんでした」

 

 ん? 若干ナイチンゲールさんも混乱状態か? それとも天然か? バーサーカーの狂化の影響か? ……いや分からん。

 

「何を言う。私はまごうことなき人間である。人間とは理性と知性を持つ獣の上位存在であり、それは肌の色や顔の形で区別されるものではない。私が獅子の頭になったところで、それが代わる訳でもない。私は知性ある人間、エジソン。それだけのことである」

「……獣の上位ねぇ」

 

 少しだけ引っかかるのは僕がビーストだからだろう。ただそれを抜きにすれば凄く良い事を言っていると思う。こんなこと言ってくれる人が近くに居たら僕の未来は変わっていただろうか……。いや、辞めよう。あり得ない過去(IF)のことを考えてもしょうがない。

 

『……すごいな、言い切ったよこの英霊……。そのポジティブさ、ボクも見習いたい……』

「ん? ドクターは立派な人間してるよ? 人を滅ぼす獣たる僕が肯定してあげるよ?」

『はは、どうもありがとう。そっか、(ビースト)にそう言われるほど人間してるのか、ボクは』

「はいはい、ミスタ・エジソン。哲学的なお話はそこまで。話を進めましょう?」

 

 エレナさんが手を叩いて場の空気を引き締め直す。

 

「それもそうだな。さて、キミの名前は藤丸立香……だったな。この世界に置いて、唯一のマスターよ。単刀直入に言おう。4つの時代を修正したその力を活かし、我々と共にケルトを駆逐せぬか?」

 

 僕たちのことはすでに知られていると……。

 

「どうしてそれを?」

「知っているとも。ある人物がな、それを私に知らせてきやがったのだ。この世で最低最悪のろくでなし! 憎きあの素っ頓狂めが!」

 

 ロクデナシ……。レディ・アヴァロンがまた何かしてきてる? ……確かめに行こうかな。

 

「"こんなことがあったのだが、私は息災だ。君にはこんな大冒険はないだろうエジソン君"などとな! 実に不愉快極まる!」

 

 あ、レディ・アヴァロンではないっぽい。全然口調違うし。

 

「言うまでもなく、ケルト人どもは時代を逆行している。アメリカ合衆国は資本と合理が生み出した最先端の国だ。この国は我々のものであり、知性あるもの達の住処だ。だというのに、奴らめ、プラナリアのように増え続け、その兵力差でアメリカ軍は敗れ去った。しかし幸いなるかな、この国には英霊たる私が降臨した! 私が発案した新国家体制、新軍事体制によって戦線は回復し、戦況は互角となった」

 

 大きく身振り手振りを交えながらエジソンの演説は続く。……こうみるとすっごい王様っぽい。そんなエジソンさんの話を纏めると、大量の兵力は用意できたけど将、一騎当千のエースがアメリカには不足していて、サーヴァントの相手が出来ず折角取り戻した拠点もすぐにまた奪われてしまうのだとか。それで僕たちカルデアを将として迎え入れたいらしい。

 

「2つほど、聞いてよろしいですか?」

 

 ナイチンゲールさんがスッと手を挙げた。

 

「何かね? 他ならぬ貴女の言葉だ、真摯に答えよう。『紳士、真摯に答える』―――おお、エレガンティック!! カルナ君、今のを大統王録に記しておいてくれたまえ」

「了解した」

 

 了解するんだ。

 

「1つ目の質問です。ここに来るまでに何度か機械化兵団を見ましたが、あれはあなたの発案なのですか? あなたの言う新体制の目指すところだと?」

「うむ! その通りである! この困難を打破するため、私は一つの結論に到達した! 国家団結 市民一群……いや、一軍となっての新生! 老若男女、分け隔てのない国家への奉仕! いずれ、全ての国民が機械化兵団となってケルトを、侵略者を討つだろう! 無論、その為には大量生産ラインを確保しなくてはならない。各地に散らばった労働力を確保。1日20時間の労働、休むことのない監視体制。無論、福利厚生も最上級のものを用意する。娯楽なくして労働なしだからな。我々は常人の3倍遊び、3倍働き、3倍勝ち続ける! これが私の目指す新しいアメリカである!」

「……に、人間の限界を知らないのかな……?」

「同感です……エジソン氏のプランには肉体の限界が考慮されていないと断言します」

 

 国民が国に奉仕して……。国民全員が労働者で……。厳しい監視があって……。ん? これ共産主義国家みたいじゃない? ……え、これ言って良い奴かな? なんかこのエジソンさんにこれを言うのは凄くダメな気がするんだけど……。

 

「では2つ目の質問です。いかにして世界を救うつもりなのですか?」 

 

 ナイチンゲールさん的にはそれも重要だよね。

 

「それでしたら、聖杯を確保すれば達成されます」

 

 エジソンさんより先にマシュが答える。今まで4つの特異点を解決してきたんだもんね。勝手知ったものだろう。

 

「いいや、時代を修正する必要はない」

 

 おっとぉ? 今までとは違う冷たい声でエジソンさんはそう言い切ったのだった。

 





尚、カルデアではルビー編集のイリヤ達の物語が上映開始された模様。
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