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「え……?」
これは……ちょっと不味いかもしれない。ケルトだけじゃなくてアメリカ側も敵なのか……? 機械兵多数、サーヴァント3騎、蹴散らすのは容易いけどマスターの安全が確保できない。その対策に色々と仕込みたいけど……
「……」
「ッ」
カルナがばっちりこっち見てるんだよなぁ。
「聖杯があれば、私が改良することで時代の焼却を防ぐことが出来る。そうすれば、他の時代とは全く異なる時間軸にこのアメリカという世界が誕生することになる」
「な……そんなことが可能なのですか!?」
聖杯を使った滅びゆく世界の救済……。あぁ、まったく
「聖杯の力は、召喚された我々にもよくわかっている。充分に可能だという結論が出た」
「他の時代はどうなるの?」
「滅びるだろうな」
マスターの問いにエジソンはすっぱりと答えた。あぁ、これは駄目だ。我慢できなかったのかマシュさんがテーブルを叩きながら立ち上がる。
「それでは意味がありません!」
「何を言う。これほど素晴らしい意味があろうか。このアメリカを永遠に残すのだ。私の発明が、アメリカを作り直すのだ。ただ増え続け、戦い続けるケルト人共に示してくれる。私の発明こそが人類の光、文明の力なのだと!!」
人類の光、文明の光、国の誇り、人類の希望……救世主気取りの愚か者。変わらない、変わらない、変わらないな
「気に入らない」
「その為に、戦線を拡大するのですか? 戦いで命を落とす兵士を見捨てて?」
「貴女らしい意見だ、ナイチンゲール婦長。私とて切り捨てたくて切り捨てるのではない。今は私にとって、この国がすべてだ。王たる者、まず、何よりも自国を守護する責務がある」
「ですが! 英霊であるなら、世界を守る義務が理想が、願いがあるはずです!!」
え、待って。そんなのあるの? 一気に頭冷えたんだけど。
「そうですね。今の私ですら、理性の隅でそう考えるところがあります」
うっそでしょ。マシュさんだけじゃなくてナイチンゲールさんにもあるの? バーサーカーですらそう言うのが片隅にあるの? ……ぇぇ。やっぱビーストだからなのかなぁ?
「ミスター・エジソン。それを否定するならば、あなたはただの愛国者に過ぎません」
ナイチンゲールさんはまっずくにエジソンを睨む。しかしエジソンはそれに怯むことなく胸を張り答える。
「そうだとも。王たる私が愛国者で何が悪い?」
結論は出たな。アメリカとも協力は出来ない。この特異点は現地協力のない、カルデア勢力のみで攻略する必要がある。……いや、ナイチンゲールさんは味方か。
「……そうですか。であれば―――私のすべきことは一つです!」
ナイチンゲールさんが素早く拳銃に手を伸ばすがその手はカルナによって止められる。
「そこまでだ、ナイチンゲール。ここでの戦闘は許さん。それこそ、俺の命に代えてもな」
やっぱ早いな。カルナを相手するならマスターをどこか遠くに隠して安全が確保されてから全力をぶつけるしかなさそうだ。
「離せ……! 私は知っている!! こういう目をした長は、必ず全てを破滅に導く!! そうして最後には無責任にも宣うのだ! 『こんな筈ではなかった』と!!」
ナイチンゲールさんはカルナに押さえつけられながらも必死に叫ぶ。それは僕は知らない、人間同士の泥沼の様な戦争を見てきた人の実感が確かにあった。多くの人を救おうと努力した、叶わず見送った命があった。それでも彼女は止まらない、死して尚、人を愛し、その命を守ろうとしている。ナイチンゲールさんの言うこともわかるし、気に入らないけどエジソンの言い分もわかるっちゃわかる。というか聖杯を使った世界の救済という手法が嫌な思い出を想起させるだけで大切な
「条件は満たされた。我が所業、我が業をここに」
「レイ?」
『ちょ、ちょっと待ってレイ君何してるんだい!? 霊基反応増大、物凄いスピードだ! なんだこれ……聖杯なんて比較にならないレベルの魔力量だぞ!』
マスターやドクター・ロマンが何か言っているが聞こえない。ただゆっくりと歩いてナイチンゲールさんを抑えているカルナの手をどかす。その歩いている間に周りの機械兵たちは僕から放った魔力でショートさせる。
「これはッ!?」
「君は……」
カルナはあっさりと自身の手が剥がされたことに驚き、エレナさんが部屋の隅で腰を抜かして、エジソンが僕の姿に驚愕する。おっとカルナの手がどいたことでナイチンゲールさんがまた動き出しそうだし、ちょっと釘刺しておこう。
「人類悪たる災厄の獣。その第三席を預かる者、『怪獣王デストロイア』として矮小なるサーヴァントたちに命じます。これより僕が良しというまで動いちゃダメです。動いた人から殺していきます。……あ、マスターは別ですよ?」
僕の言葉に部屋の中にいたサーヴァント全員の動きが止まる。勿論、ボクに令呪なんてものはない。これはただ、生物としての格と圧力で従わせているだけ。
「レ、レイ……何したの?」
マスターが冷や汗を掻いて顔を青ざめさせながらボクの手をとって顔を合わせ質問する。
「いや、正直僕ってカルデアに来てから友達とかもできて楽しくて、子供だからかみんな良くしてくれる。それはマスターもだよ。でもさ、だから皆忘れがちなんだよ。
例え子供でも、どれだけ友情を育もうとも、僕の根底はビースト。クロエへの愛の為にクロエ以外を贄とすることを是とする人理の敵。……にしてもいくら動いていいとは言ったけどまさか僕の手を掴んで顔も合わせれるとかマスターの精神力凄すぎない? 意識して圧力が向かないようにはしてるけどそれでも生身の人間が委縮する程度には漏れ出しているはず。これが4つの特異点を乗り越えたマスターか……。
「あぁ、そうだった話を戻そう。ナイチンゲールさんの言う通りだよエジソン。僕はお前によく似た人間を知っている。かつて一人の少女を犠牲に世界の救済を願った男を。だからお前はやっぱり破滅を招くだろうな。事実その男は僕という破滅を招いてしまい、そして滅んだ。同じだ、同じだよエジソン。お前のやり方はクロエを傷付ける、だから僕という破滅を招く。そんなところまで同じじゃなくても良いだろうに……」
翼を広げ、角を伸ばし、眼を爛々と輝かせる。
「……一応サーヴァントだからね、聞いておこうか。マスター、どうする? エジソンだけ殺してここの指示をエレナさんに任せればアメリカは消失しないし、聖杯の改良もできなくなると思うけど‥…」
「エジソンの意見には賛同できない。けどレイ、エジソンを殺すのもなしだよ」
ほう?
「ならどうするの?」
「ここから逃げる! レイ、壁を吹っ飛ばして!」
「まぁ……いいか。そらッ!」
マスターの指示で要塞の壁を吹き飛ばす。
「マシュさんはマスターを。ナイチンゲールさん、患者さんはいささか冷静じゃない。"考える時間"という鎮静剤が必要だ。鎮静剤が効いたころに本格的な治療をしましょう。あぁ、もう動いても良いよ。それから追ってくるなら勝手だが、覚悟をもってこいよ、アメリカさん。プレゼントは置いてってあげる」
そう言って何体かのデストロイア集合体を召喚してエジソン達にけしかけながら要塞を脱出した。取り合えず、何をするにしても一度要塞から距離を取らないといけないためひたすらに走り、少しでも見つかる可能性を下げる為、森の中へと逃げ込む。
「ど、どれくらい逃げれば良いのかな!」
「分かりません、先輩! けれど体力が続く限りは走らないとすぐ追いつかれてしまいそうです!」
「近くに隠れられそうな場所があれば良いけど……最悪僕が洞窟でも掘ろうかな。今はあの要塞から離れないと!」
『待ってくれその近くにサーヴァントの反応だ!』
ドクター・ロマンから通信が入って来る。サーヴァント! いくら再生に限りのある集合体とは言え、早すぎないか!?
「まて、私は合衆国軍でもケルトでもない。君たちと敵対する気もない。少し離れた位置にある小さな街が拠点になっていてな、そこまで君たちを案内したい」
「い、インディアン?」
そう言いながら現れたのは小さなナイフを持ち、黒い肌に白い文様が描かれているサーヴァントだった。
「む、その呼び方は止してくれ。我が名は『ジェロニモ』。 ネイティブアメリカン……アパッチ族だ」
『アパッチ族の英雄か! ……なるほど彼がエジソンに従うはずはないな』
わ、分からない……。この人も有名な人なんだろうか? でもエジソンに従うはずがないってことは……。
「味方っぽい?」
「……うん、みんな行こう。ジェロニモ、案内して」
「ああ、付いてこい!」
そうして僕たちはジェロニモさんの案内に従って要塞から離れていった。
・レイ君久々にビーストっぽいことをする。
・レイ君、ジェロニモ相手に『インディアン』呼びのプレミ。