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要塞を脱出した後僕たちはジェロニモさんの案内に従って西部のとある街に着いた。この街はすでにケルト人の猛攻で住民はおらず、ジェロニモさんの同胞と呼ばれる人たちがいるだけだった。
「君たちを助けたのには理由があってね。協力してほしいのも無論だが治療してほしいサーヴァントがいるんだ」
「サーヴァントがいるんですか?」
へぇー、確かに治療となればナイチンゲールさんの出番か。こんどはどんなサーヴァントさんなんだろ。
「ああ、実は三騎目のサーヴァントをかくまっている。ただ酷い状態なんだ」
「それで私の出番、ということですね。いえ、出番がなかろうが治療を求める患者がいるなら私は出向きます」
「ああ、キミの治療があれば何とか出来るかもしれない。こっちだ、ついて来てくれ」
酷い状態? サーヴァントなのに? 魔力が足りないとかそういう感じなのかな? だとしたらナイチンゲールさんよりもマスターや僕の方が良いかもしれない。そう思いながらみんなでジェロニモさんの後について行ってそのサーヴァントが寝かされているという建物に入っていく。
「ぐっ……!」
「酷い……!」
『心臓が半ば抉られているじゃないか……!? 良く生きていられるな、彼!』
そこにいたのは赤髪でどうにもアメリカらしくない衣装を身に纏った英霊がいた。……今回の特異点大体ケルトかアメリカに由来するサーヴァントが多いと思ってたんだけどなんかどっちでもないっぽいな……。なんかカルナとにた空気を感じる……。
「まぁ……頑丈なのが……取り柄だからな……。ぐゥッ!」
「こんな傷は初めてです。ですが見捨てることはしません。安心しなさい、少年。地獄に堕ちても引きずり出して見せます」
普通心臓壊されたら死んでるからね。そりゃ見た事ないでしょうよ。
「……それでこちらの方は? この国出身のサーヴァントでは無さそうですが……」
前から思ってたけどマシュさんって偶に図太いよね。赤髪のサーヴァントの苦痛に呻く声とナイチンゲールさんの声をバックに平然とジェロニモさんに話しかけてる。
「よ、余の事か!? 余はラーマ! コサラの偉大なる王である! 詳しくは……あいだだだだだ! 『ラーマーヤナ』を読め、以上だ!」
この人も王様なんだ。……流石というかなんというか、治療のためとはいえ心臓近くに空いた穴に指突っ込まれてるのにしっかり喋ってる。しかし……。
「ねぇ、マスター」
「どうしたのレイ?」
「『ラーマーヤナ』ってどこのお話?」
「えっとね……確かこの前図書館で見たんだよね……。い、インドだったかな?」
『正解だよ立香ちゃん。『ラーマーヤナ』インドにおける二大叙事詩の1つだ。彼、ラーマはその主人公だ。あらすじとしては攫われた奥さんを羅刹の王、ラーヴァナから取り戻す冒険かな。カルデアの図書館にも現代訳版があるから読んでみると良いよ』
マスターの答えにドクターが補足してくれる。
「ほぇー、主人公で王様。サーヴァントとしては滅茶苦茶強そうだね。でもそんな王様がどうしてこんな大けがを? あとやっぱり奥さん可愛い?」
「仕方あるまい……何しろ相手はクー・フーリン。アイルランド最強の英雄だ。それからシータは滅茶苦茶可愛い。やらんぞ」
「いらないよ」
「はぁ? シータに魅力が無いとでも言うか貴様?」
「うっわ、この感じのやり取り懐かし」
いや、絶対"欲しい"って言ったら言ったで面倒じゃん。
「クー・フーリン……!?」
『うわぁ……いるよなぁ、ケルトの戦士たちが相手なんだから、絶対にいるよなぁ……』
「ウチのクー・フーリンをぶつけようかな?」
僕とラーマさんが言い合っている間にドクターは頭を抱えてマスターはなにやら愉快なことを計画していた。ゲイ・ボルク対決かぁ……美遊も呼ぶように提案してみようかな……。
「戦線の維持も大切だが、ラーマの治療も優先したい。そこで兵士の治療に専念するサーヴァントがいると聞いてここまで来てもらったのだ」
「なるほどねぇ。どうナイチンゲール?」
ジェロニモさんの言葉に頷きながらマスターはナイチンゲールさんにラーマの状態を尋ねた。
「現在、少年の治療は叶いません。先ほど修復したはずの心臓が既に10パーセント以上損壊しています。底の抜けたバケツ……ほどには酷くないですが、絶えず治療し続けなければ、すぐに死に至るでしょう。これは偏に、私の力不足です。ですが私は彼を見捨てたくはないし、見捨てる気もありません。方法を教えてください。彼を治療する方法を。私は知らない、その技術を!」
そう言いながらナイチンゲールさんは頭を下げる。……本当に人を助ける為ならなんでもする人なんだな。まったくブレない人。
ドクターも医者だからかラーマの治療には前向きだ。そして彼が提案したラーマの治療方法は二つ。一つは心臓を破壊し続ける呪いを絶つこと。しかしそれはこの戦争の中クー・フーリンを見つけ出し打ち取らなければいけないということ。……絶対難しい。そしてもう一つの方法は存在力の強化。生前のラーマを知っているサーヴァントとの接触らしい。
「……え、つまり聖杯がラーマさんを知っている人物を召喚している可能性を願いつつこの広いアメリカの中からその人を見つけ出さないといけない訳? ……クー・フーリン討伐以上に難しくない?」
「いや……そうでもないぞ小僧。一人いる、この世界のどこかに召喚されたサーヴァントが……。それは我が妻、シータだ。余も、まだこの目で見てはいない。だが必ず、この世界のどこかに囚われている」
まさかのさっき話題に上がったシータさんご本人。
「余はそれを糾し、彼女の居場所を知るために、クー・フーリンと刃を交えたのだ」
『成程。ラーマの妻、シータか。君に引きずられる形で召喚されたのかな? 彼女を見つけ出せれば治療も不可能ではない』
「ふむ。ラーマは現在召喚されているサーヴァントの中では疑いようもなく最強だ」
「マジで?」
「……君は省かせてくれ」
……そっか。
「万全の状態であればカルナ相手でも五分の戦いを繰り広げるだろう。出来れば、彼に治療を施してやりたい。その為には彼の妻であるシータを探さなければ。その為には一つ、ナイチンゲールにご同行願わなければならないのだが―――」
「は? 地の果てだろうと同行しますが、なにか?」
「さっすがナイチンゲールさん」
絶対そう言うと思ったよ。この人が助かる見込みのある患者を見捨てる訳ないもん。
「……う、うむ。話が早くて助かる。流石は兵士に恐れ……いや慕われた天使だ。ではラーマの治療と並行して、エジソンとケルトの戦士たちにどう対処するべきか、だ。彼方の世界にいる魔術師。何か腹案はあるだろうか?
『もちろん。立香ちゃんが前線に出ている以上、情報の整理と考察は僕の仕事だ。先ほど我々がフィン・マックールと交戦した時のことです。彼は「連中は
え、そんなこと言ってたの……。無限湧きの敵ってこと?
『となると、通常の対応策は通用しない。数を減らす、という戦略が通じないのですから』
「……薄々そんな考えがないでもなかったが。改めて言葉にされると、気が遠くなるな」
「エジソンさんの機械兵も似たようなものでしょうか」
『ああ、そうだろうね。数千失っても平気なケルトの戦士たちに対抗するには、大量生産で補うしかないのだろう。エジソンという発明家は先進を走るよりも先達の斬新な発明をより普及に適した形に生まれ変わらせる方が得意だったようだ』
「ましてアメリカは大量生産という無機質な戦力増産をもっとも得意とする国家だからな」
第二次大戦とかね。
『となればこちらから進言するべき策はたった一つしかない。"暗殺"―――サーヴァントたちで一気に王と女王を打ち取ること。まっとうに戦って消耗戦を行っては相手の思うつぼだ。敵が無限増殖するのなら、いっきに首魁を狙う意外に方法はない』
暗殺かぁ……。地道にクロール体を散布し続けるか?
「その通りだ。よく言ってくれた、ドクター。貴方はさぞや名の有る魔術師なのだろう。声だけ聞くと頼りないが、その頭は頼りになる」
『……ジェロニモにまでダメだしされたぞ。……どうなってるんだ、ボクのイメージって……』
「フォウフォウ」
「あのドクター。フォウさんが『まったくその通り』と。」
「いやまぁ、軟弱なのは自負してますけどね!?」
……そこ不思議なんだよなあ。なんでか英霊のみんなからドクターって不評何だよね。僕的にはそんな胡散臭さ、とか嫌悪感みたいなのはあんまり感じないんだよね。というか普通に好感高い方なんだけどね?
「……よし。少しでも暗殺の確立を上げる為、各地に散っているサーヴァントたちを集結させよう。彼ら全員と合流して、ケルトの戦士とエジソンに対抗する。……この大地は、せめてヒトの手に取り戻さなければな」
・ラーマに面倒だと思ったレイ君。
同じようなことをレイくんに行った場合。
クロエが欲しいという→殺す
クロエは要らないという→僕だけがクロエの良さを知っていればいい。
なので面倒くさくはなりません。