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イリヤ達の戦いが上映されていたカルデアではマスターからの召喚要請があったため上映を一時中断、キリが良い事もあり上映会は小休止を迎えていた。
「三人は無事特異点へ到達したそうだ」
「お、それじゃぁマスターに呼ばれた面子にゃ悪いが上映会の再開か?」
食堂ではランサーのクー・フーリンがカウンターに座りながらキッチンで作業をしているエミヤと話していた。
「いや、上映会の再開は1時間後だ。マスターたちは休眠に入ったらしく周りには現地のサーヴァントが多くいることからこの機にスタッフたちも休憩や交代をしている。そして私たちも、今の内に食事をしているという訳だ。ほら、鮭のバターホイル焼き」
「お、旨そうじゃねぇか! んじゃ頂くぜぇ」
エミヤの料理にクー・フーリンは感嘆の声を上げ箸を手に取り鮭を口へと運ぶ。
「うん! うめぇ!」
「それは何よりだ。ほら、これもつけてみろ」
「これは?」
「わさびマヨネーズだ。また違った味が楽しめるぞ」
「……ほぉー」
エミヤからわさびマヨネーズを受け取り鮭の上に軽く乗せるクー・フーリン。そんな二人の輪の中に入る女性が一人。
「ランサー、あなたよくそんなにガッツリ食べれるわね……感心するわ」
「メディアか」
「んだぁ? 別にあの坊主よりヒデェ死体なんざ戦場で山ほど見るだろうがよ」
「だとしても気分の問題よ。エミヤ、何か胃に優しいモノを頂戴。出来れば軽めで……」
自分の身体がドロドロに溶ける様を見せられたせいかメディアは今だ黒化英霊が被弾した腹の辺りを摩りながらエミヤに注文する。
「ふむ……ではすまし汁などはどうかね?」
「それでお願いするわ」
「承った」
エミヤがキッチンの奥の方へと姿を消す。するとカウンターにまた別のサーヴァントがやって来た。
「エミヤさんは……いませんね」
「おう、今ちょっくらキッチンの奥の方に行ってらぁ。少ししたら戻ってくると思うからお前も座って待ってたらどうだ、メドゥーサ」
「そうさせてもらいます。……よくしっかり食べれますね」
メドゥーサはカウンターに座りながらクー・フーリンの方を見てそう言い放つ。
「やっぱりそうよねぇ!」
「なんだいオメェもそう言うのかよ」
メディアはメドゥーサに強く同意してクー・フーリンが顔を歪ませる。
「いえ、殆どの方は軽食なんですが……喉を通らないという理由より映画気分の方々が多いみたいで。私も姉様たちにポップコーンを貰ってくるよう言われたのでこちらに来たのですが……」
「あぁ、片手で摘まめるレベルのものばっかりってことか。……確かに俺みたいにガッツリ飯食ってんのは少ないな」
鮭を食べ進めながらクー・フーリンは辺りを見回す。するとそこにエミヤが戻って来た。
「メディア、すまし汁だ。お代わりもあるから必要なら言ってくれ。っとメドゥーサもなにかリクエストが?」
「いただくわ。……ふぅ」
「実は姉様たちがポップコーンを食べたいと言っていまして……」
「成程、上映会の再開までに届ければ良いのか?」
「はい」
「了解した。……あとはセイバーと佐々木小次郎、ヘラクレスか」
エミヤはカウンター前に集まったサーヴァントを見てそう呟いた。最初は言っていることがわからなかった他のメンバーたちだが顔を網わせてエミヤの言っていることが理解できたらしく口元に笑みを浮かべる。
「確かにあのクラスカードとか言うの、メンバーはどう見ても"俺達の"戦争のメンバーだな」
「えぇ、全くその通りね」
「イリヤスフィールに凛。あのルヴィアという女性は知らないのと、桜がいないのは気になりますが凡そ我々の知る戦争と同一のものでしょう」
「てことはだ。あの坊主たちがあと戦うのはアサシンとバーサーカーって訳だ。……このアサシン、俺の記憶じゃ二通りいたと思うんだがお前たちは?」
クー・フーリンの言葉に全員がある、という返事をする。それを聞いたクー・フーリンは更に笑みを深める。
「そんじゃ、一体どっちの黒化英霊が出てくるか賭けねぇか!?」
クー・フーリンはカウンター上にQPを置きながらニカッと笑う。
「む……なら私は佐々木小次郎に」
「私もあのサムライに」
「……私は骸骨面のアサシンで」
「俺も骸骨ヤロウだな」
カウンターにいる面々がQPを出し切ったところでエミヤは食堂の別の箇所に目線を向ける。
「騎士王たちとヘラクレスはどうするかね?」
「あー……ヘラクレスの方は理解できるか分からんからパス。騎士王は黒い方はともかく青い方は賭けなんてしないだろう。それどころか怒られかねねぇから無しだ」
「ふっ、確かにそうだったな」
そうして時間を潰して過ごしていれば上映会が再開される。
9話『暗殺者』
・サファイアの聴取
"『実は俺、並行世界から来てるんですよ』……んな、あほな。そんなの誰も信じる訳ないだろ。じゃぁ生まれ変わりって言っても信じられるのか? というか俺は転移、憑依なのか? 転生なのか? 一体俺って何なんだろうな……"
画面内のレイがサファイアの質問にどう答えたものかと考えているときの思考がモノローグとして流れる。
「これ、実際に口に出していたらどうだったと思う……?」
クロエが俯きがちに画面を見ながらそうイリヤ達に質問する。彼女は最初レイのモノローグで大分つらかったが次第に明るみになっていくレイの思考に徐々にテンションが下がっていきキャスター戦後には意気消沈していた。それでも視聴を辞めないのは彼女の意地だった。自分の為に獣へと堕ちていった少年。そんな少年の物語を辛いから目を逸らす、なんてことはクロエには出来ないのだ。……とはいえ万が一のこともあるので隣にアイリスフィールとアサシンのエミヤが座らされた。
「私は信じられなかったかも……。だって私にとってはずっと前から一緒にいた幼馴染だし」
「私は……信じたと思う。なにせ私自身がそうだったから。そして……多分だけど私もどこかでレイにそのことを打ち明けて。今とは
美遊は画面の中で『記憶が無い』と言って誤魔化すレイをじっと見ていた。そんな美遊の目線になぜかうすら寒いものを覚えたクロエは恐る恐る美遊に質問した。
「ち、違う関係って……?」
「気が付いたらレイにはクロエがいて、私にはイリヤがいた。けどそれがなかった場合の未来……。私たちの周りにレイ以上の男子がいたと思う?」
「……なっ!?」
「冗談。私たちはそうはならなかった、だから安心してクロ」
美遊の言葉に驚愕して固まるクロエ。そんなクロエの表情を見て美遊は小さく笑いながらイリヤと恋人繋ぎした手をクロエに見せてあくまでその言葉は
・アサシンの奇襲
イリヤの首筋に一本のナイフが間一髪の距離で飛んでくる。そして現れる沢山のアサシン。
「あ? 確かに髑髏面だがこれなんか違くないか?」
「あぁ、私たちの知っているアサシンは……多数に分身したりはしないはずだが……」
エミヤとクー・フーリンが画面の中に現れたアサシンに疑問をもって首を傾げていると少し離れた席から声が上がる。
「おぉ! こやつは余が坊主と共に戦ったあのアサシン共ではないか! なぁ、坊主!」
「えぇい! デカい声ではしゃぐなライダー! あぁ、そうだろうな! そうだろうから静かにしてくれ!」
大声でバンバンとエルメロイ二世の背中を叩きながらイスカンダルはそう言い放つ。それをどうにか落ち着かせようといつもより高く聞こえる声で注意するエルメロイ二世。
「私達とは違う戦争のアサシンらしいが賭けはどうするかね」
「んなもん無効だ、無効」
クー・フーリンは手をひらひらと振って賭けを無効として酒をあおる。
・イリヤの力の暴発。
アサシンに囲まれて絶体絶命になったイリヤは力を周囲に炸裂させ、イリヤを助けに向かっていたレイはその光量に目を回し気絶する。
「ふむ、前回の模擬戦や今の映像内の出来事などを考慮すると毒や攻撃といった直接的に害があるものには強いようですが閃光や魅了などの間接的なものは効きやすいようですね」
「なら次はそのあたりから攻めてみようかしら?」
ゲオルギウスはレイの行動を観察してそのように結論付けた。それを隣で聞いていたマルタは右こぶしを左手に叩きつけながら次の模擬戦の作戦を練っている。
「ねぇ、聞いたかしら
「えぇ、聞こえたわ
「あれだけ頑張っている子には女神からご褒美を上げても良いと思わない
「まぁ、それはとっても楽し―――素敵なことね
「「ふふふふふ」」
・美遊が考えたあり得たかもしれない未来、レイ君争奪戦ルート(別名真・モテモテレイ君ルート)。
ただこのルートは美遊が考えたものであって実際には起こりません。何故かって? だってこの時点で平行世界の人間だと明かしたところで既にレイ君はクロエ(イリヤの中にいる状態)と接触してしまっているためクロエルートが確定しているからです。
『最終マテリアル』で書きましたがレイがクロエルート以外を進むためには前提として幼少期に『迷子のイリヤと出会わない(クロエとの出会いが消失)』必要があるからです。
・レイ君、弱体耐性クソ雑魚。
閃光(スタン)、魅了などに対して結構弱いレイ君。転移してすぐに凛に懐いたり、クロエに一目ぼれしたり、敵対してたギルガメッシュを『王様』とよんで慕ったり、血を分けて貰ってバゼットに気を許したり、落ち着けばレディ・アヴァロンですら『母の様な人物』と評して、ジャックやナーサリー、ルサリィと親愛を深めたりなかなか惚れっぽいところのあるレイ君。
元々色々なものや人を愛しやすく、色々なものや人に愛されやすい、それほど純粋な魂だったんです。その純粋さはレディ・アヴァロンが『稀有な無垢さ』と評するレベルで。ただ本編ではその愛の殆どがクロエ一人に集中してしまったんですけどね。
心の底から愛していて最終的に帰ってくるのはクロエだけど、それはそれとして魅了されることもしばしばである。