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「ッあ! 何分死んでた!? ってうわぁぁぁ! メッチャトゲトゲのクー・フーリンがいるぅぅぅ!?」
「レイ! レイ、生きてる!」
「起きたか、坊主! 寝てたのは五分もたってねぇ!」
意識が再び覚醒して一気に立ち上がる。そして目の前の光景に驚愕する。カルデアで見たクー・フーリンがいた。しかしその姿は全く似ておらず黒く刺々しい見た目をしている。きっと見覚えのある槍とその猛犬の様な鋭い目を見た事がなかったら誰だか分からなかったと思う。
「あ、し、心配かけてごめんねジャック。あと戦闘中だから引っ付きセミは勘弁して……!」
僕が起きたことに反応してすぐにジャックが抱き着いてくる。心配かけた僕が悪いし、こんなに好かれてるのは素直に嬉しいけど、戦闘中だったよね! 因みに僕の疑問にはロビンさんが答えてくれました。けど、あんな戦闘の中五分近く寝てたとは……不覚。涙を流しながら頭をグリグリとこすりつけてくるジャックを慰めながら剣を手に構成して戦況を確認する。
「……」
「……」
僕たち暗殺組もケルト側もいつだれが動いても対応できるようにピリついているが全員が手を止めてこちらに注目して……いた……。味方側は『またか……』みたいな目で見られてケルト側のクー・フーリンは興味なさげだけどメイヴにいたっては『可愛いじゃない』とでも言いたげな目で見てきているッ!
「みッ……
戦況的にはクー・フーリン対ネロさん&ロビンさん。メイヴ対ジェロニモ&ジャックだったと思われる。……あれ?
「ビリーさんとエリザベートさんは?」
「……お前をぶっ刺したランサーの男と相打ちだ」
「ッ!」
お別れ、言えなかったな……。このワシントンに来るまでの間ほんの少しだけどビリーさんには銃の扱い方を習った。やっぱ男子としては一度は興味持っちゃうよね、リボルバー。リロードがもたもたしすぎて凄く笑われた。いつかスムーズにこなしてレヴォリューションなリロードをみせてやりたかった。
エリザベートさんだって最初はなんだこの人、と思ってたけど話してみると意外と優しい人で、ワシントンに来るまでの道中、何回か僕とジャックの体調が大丈夫か確認してくれた。僕たち二人ともサーヴァントなのにね。この特異点の攻略が終わってもしカルデアで会った時には歌を聞かせてくれるって言ってた。自称とはいえアイドルの歌、どんな歌声なのか期待もしてた。
そんな二人はもういない。
「……そっか。うん。戦争だもの、そういうこともある」
頭の上にある青い帽子を握りしめる。
「ジェロニモさん、下がって僕が相手する。全体のフォローお願いします」
「了解した。頼むぞ」
「ジャック、一緒に戦ってくれる?」
「……もう無茶しない?」
「……どうだろうね? だから無茶しないように僕の隣で戦って欲しいんだけど」
「分かった」
よし、ジャックも持ち直した。ジェロニモさんと位置を交代して女王メイヴの前に立つ。こちらを見下ろす女王メイヴは人差し指を頬に当てて困ったような表情をしていた。
「うーん、貴方厄介そうだからそのまま眠っていてほしかったのよね……。貴方さえいなければクーちゃんだけで十分だと思っていたんだけどね。……こうなったとき用に準備しておいて良かったわ。賢いのよね、私って!」
「!?」
ジャックを抱えてその場から飛びのく。すると先ほどまで僕たちのいた所にいくつもの矢が刺さっていた。
「さぁ、やっちゃって―――アルジュナ!!」
メイヴが鞭を高く掲げる。その先の空に一体のサーヴァントが浮いていた。ロビンさんやジャックの探知に引っかからなかった四騎目のサーヴァント!?
「……アルジュナ……だと!?」
「な……ん、だと!?」
黒い肌に、黒い髪、白い服をまとったサーヴァント。お、恐らくアーチャー。あ、アーチャーが弓使っている……!?
「カルナが生涯の宿敵と定めたという、あのアルジュナか!? 最悪だ……まさかこんな隠し玉を持っているとは……! 見誤った……!」
カルナの宿敵って……絶対強いじゃん! くっそそんな強い奴な上にアーチャーか……。弓を使うアーチャーとの戦闘なんて経験も想定したこともないよ……。そんなことならアタランテさんとも戦闘訓練しとくんだった。僕あの人と駆けっこしかしたことないぞ。
「……苦しませるのは本意ではありません。どうか速やかに私の役割を全うさせて欲しい」
淡々と告げるアルジュナさん。どうやら交渉とかこっちについてくれるみたいな気配は全くない。
「ジェロニモさん! 僕が時間を稼ぎます、一気にみんなで離脱してください!」
「レイ!?」
僕の提案にジャックが驚愕の顔を向ける。無茶しないって言ったばかりにこんな事になったらそうもなるか。
「大丈夫。ジャック、コレを持って行って」
そう言って僕は自分の胸に手を突っ込んで心臓をえぐり出す。まぁ、群体だから正確には心臓の形をしている微小体の集まりなんだけど。
「これが持っていればジャックに魔力も供給されるし、ボクもその心臓を起点に復活できる。だから、行って! ジャック! ジェロニモさん! ネロさんも結界を解除しちゃっていいです。皆で『顔のない王』で離脱を!」
「ぬぅぅ、すまん! 後を頼むぞレイ! カルデアにてあった時には余からも歌を送ってやろう!」
「任せたぞ!」
「わりぃな、坊主! 必ずマスターたちと合流してやるからな!」
「絶対、絶対復活してね! 死んだら嫌だよレイ!」
辺りの景色が黄金の劇場からワシントンの街並みへと戻っていく。
「行かせるかよ」
「行かせてもらうさ!」
離脱しようとするみんなに攻撃しようとしたクー・フーリンの一撃を弾く。……やっぱり力なら勝てるな。そしてその攻撃を防いだことでみんなも離脱出来た。
「メインの
「チッ、めんどくせぇ」
「……なるほど我ら三人を相手するだけの力は残っていそうですね」
「ふふふ、少し若すぎるけどいい勇士じゃない。いいわ、可愛がってあげる」
とはいえ、ジャックに供給する分魔力の殆ど
「ま、いつもと変わらないか。やれることやるだけだ!」
分身を大量に召喚してメイヴやアルジュナ、周りのケルト戦士の相手をさせる。そして僕自身は大きく触手を振り上げて一番近くにいるクー・フーリンに向かって振り下ろした。
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深い水の底から体が浮かび上がるような感覚。次第に熱を、風を感じるようになり、目が覚める。
「ん……ここは?」
「レイ!? やったレイ、起きたんだね!」
「ジャック」
目に入った光景はどこかのテントの天井で僕はテントの中で横にされている様だった。うん、どうやら心臓の方から復活は成功したみたい。僕の声が聞こえたのか寝ている僕の顔をジャックが覗き込んでくる。
「良かった、よかった!」
あれ? なんか顔、というか全体的にジャックが近い気がする。僕は上を向いて寝ていて、ジャックの顔が視界の上から出てきた。後頭部に感じる熱も地面の暖かさじゃない、というか土とか枕の感触じゃない。僕は自分の後頭部の下にあるものを確かめようと頭上に手を伸ばした。
――ふにゅ――
「ひゃあッ!?」
「うへぇ!?」
何か手に柔らかいものが当たったと思って握ってみたらジャックが思いっきり飛び退いた。そして僕は後頭部の下にあったモノがなくなり地面に頭を打ち付けることになった。
「れ、レイなんでいきなりお尻触ったの!?」
「お、お尻……? あ」
頭の下にあったのジャックの膝か! それで土や枕とも感触が違ったのか! で、なんてだろうと僕が手を伸ばしたらジャックの格好的に生尻を揉んでしまったという訳か……。うん、僕が悪い。
「あ、あの……なんかゴメン」
「レイのえっち」
「ぐふッ」
い、いや愛欲のビーストだしその通りなのかもしれないけど……。こう、ジト目で引き気味に言われるのは少し辛い……。う、うぅ、このあとどうすればいい? クロエならこう、流れで襲っちゃっても良いんだろうけど、相手はジャックだし! 空気が気まずすぎる!
「あ、レイ起きてる! 良かったぁ!」
「マスター!」
よぉし! 助かった! 流石人類最期のマスター! 場の流れを変える力を持ってる!
「ボロボロだった体にジャックが持ってたレイの心臓を取り合えず埋め込んだんだけど再生できてよかったよ!」
「いまなんて?」
ボロボロの体に心臓を埋めた? え? 心臓から再生したんじゃなくてあのワシントンで戦った体を回収したの? で、大穴開いた胸に心臓突っ込んだってこと?
「えっとね、野良のサーヴァントがワシントンでクー・フーリンと戦ってたレイの体を回収して私たちの所まで持ってきてくれたの。『体が有った方が再生も早いだろう』って」
「それはそうだけど……あの場にはアルジュナとメイヴもいた。一体誰が……」
え、だってあの三人相手に子供とはいえ人一人担いで離脱出来るなんて相当な実力者じゃん!
「私だ。なぁに、そこの小僧に興味津々でな。こうして協力してやったという訳だ」
マスターの後ろから更に一人のサーヴァントがテント内に入って来たけどッ!? な、な、なんなんだ―――
「我が名はスカサハ、影の国よりまかり越した。さて小僧、お前の力だがそれはどんな不死でも殺せるのか?」
なんなんだこのおっぱいタイツさん!?
・リボルバーに憧れるレイ君
軍服コスのレイ君。「僕のリロードはレヴォリューションだ!」
ビリー「それSAAじゃないよ」
・エリザベートの歌を愉しみにするレイ君。
彼は彼女の歌の酷さをまだ知らない。まわりはそんな約束をしているレイとエリザベートからそっと目を逸らしていた。
・アタランテとの駆けっこ。
何気に物凄い事をしているレイ君。本人はヘラクレスやアキレウスなどに夢中の為アタランテをヘラクレスと一緒の船に乗っていた物凄い狩人としか知らず、彼女との駆けっこの意味を知らない。
・ジャック→レイ
(見た目だけは)同じ年ごろの異性のほうから体を触られてびっくり。未知の感覚にドキドキ。触ったのがレイ(ビーストⅢ)だったのも拍車をかけている。
・スカサハ
格好がヤバすぎてレイ君ガッツリ自己紹介を聞き逃す。