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「で、どうなのだ? お前の剣はどんな不死でも殺せるのか、呆けてないで答えるが良い」
「え? あ、ど、どうでしょう? 僕の剣は確かに不死らしい存在でも『消滅』させることは出来ましたけどアイツらが本当に不死だったかは分からなくて……」
いや、あんたの格好を前に呆けるなとか無理があるだろ。同じ文化圏じゃなきゃ確実に一瞬固まるよ。で? 不死だっけ? いや、本当に多分殺せる、としか答えられないんだよなぁ。あの大蜘蛛とか田中とか白い巨人とか。あとは他の惑星からやって来た大蜘蛛の仲間とかの不死っぽいのは倒してきたけど……。アイツらが本当に不死の存在か分からないし……。
「そうか……なら少し、試してみるか!」
「ッ!?」
「ちょ、スカサハさん!?」
「レイ!」
この人いきなり槍投げてきたんですけど!? 槍は真っすぐ僕の心臓を狙って跳んできた。それを寸でのところで剣を構築し、槍を
「ほぅ……まだまだ青いが良い師がいるようだな……。にしても……ついに、遂に我が呪いの朱槍を切り裂くおのこが現れたか!」
「そりゃあ、僕にはもったいないぐらいの師匠ですよ……」
なにせあの大英雄たちの師匠でもあるんですからね! ……ケイローン先生に武術などを習って、エルメロイ二世先生やメディア先生に魔術を教わって、パラケルスス先生に化学を教えてもらい、バベッジ先生に数学を習い、紫式部先生に国語の授業をしてもらう。……思えばすっごいことしてないか僕?
というよりなんでこのおっぱいタイツさんはいきなり襲い掛かって来たんですかね!? というか武器思いっきり壊しちゃったけどなんで嬉しそうなんだよ!? マスターもどうするべきか対応に迷ってるし、ジャックも武器を出して構えてるけど実力差が分かるのか切りかかりには行っていない。原因は高らかに笑ってるし、どうしろってんだ……。
「しかしまだ私を殺しせるほどの実力ではないか……。ふむ。カルデア、カルデアか……これは是が非でもいかなくてはならなくなったな。私直々に私を殺せるようになるまで鍛えてやらねばな」
な、なんかカルデアに来ようとしてるし勝手に僕の育成計画を立ててる!?
「だが、まずはこの特異点をどうにかせねばならないな」
「……きょ、協力してくれるってことで良いんですよね?」
恐る恐る問いかける。
「ん? あぁ、マスターにはもう話したが手は貸せる。共闘は出来ぬがな」
「……どういう?」
「あ、それじゃあレイが寝ている間にあったこと説明するね。ジャックもレイも一旦武器を下ろして」
マスターが僕たちの間に入ってそう場を仕切る。これ以上空気をややこしくしないための行動なんだろうけど出来るだけサーヴァントの前や間には入って欲しくない。またさっきみたいにいきなり攻撃してきたらどうするつもりなんだ……。いや、まぁ解っててもマスターはこうするんだろうけど……。
「マスターがそう言うなら……。僕は大丈夫だからジャックも武器下ろして」
「うん」
そうして僕はマスターから僕が寝ている間に起きたことを説明された。……え、またエジソンの所に行くんですか? いや、まぁもう僕たちだけでケルトを打倒すのは難しいけど……。仕方がないか、えぇ、向かいましょう。最悪なにかあったら僕の宝具で全員殺すんで。 わぁ!? じょ、冗談ですから銃ぶっ放さないで下さいナイチンゲールさん!? 分かりました、分かりましたから! 治療! あくまで治療ですね!
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そんなこんなで再びやってきました合衆国要塞。最初に連れてこられたときは撤退しかできなかったけど、今はこっちのサーヴァントもいるし、そのうちの一人はカルナとも張り合える! ……いや、僕もその気になったら勝てるよ? ただ余波でちょっとアメリカ大陸が消し飛ぶだけで。
「――止まりなさい。ここから先は国有地です。今すぐ退散し、アメリカ西部合衆国陸軍機械化歩兵隊に入隊届を出しない」
要塞の前にいた機械化兵にそう呼び止められる。
「ここから先のごまかしは出来ねぇ。マスター、一気に踏み込むぜ!」
「みんな、突撃だ!」
「マシュ・キリエライト、突撃します!」
マスターの指示のもとサーヴァントが一斉に駆けて機械化兵達をなぎ倒していく。……僕も遅れて居られないな。これから味方に付けようとしてるんだし、オキシジェン・デストロイヤー・レイやヴァリアブル・スライサーで傷つけるわけにはいかない。それでいて大勢を一気に無力化するなら……薄いとはいえ知性もあるみたいだしこれで良いか。
「知あるもの、愛あるもの、全てを飲み込み蕩かして差し上げましょう……。
無布中心部にある大口を開いて兵士たちの意識を軽く吸い取っていく。魂の奥の奥までは奪っていないから少ししたら目覚めるだろうけどこれくらいがちょうどいいだろう。意識を吸い取られた兵士たちはバタバタと倒れていく。……軽く痙攣してるけど大丈夫でしょ。世界がもとに戻った時、快楽中毒とかになってたらごめんね。
「お退きなさい! 病人が待っているのです!」
「うむ、実に励まされる言葉だな……」
「治療を受けていた君が言うと説得力があるな」
ナイチンゲールさんの暴れっぷりを見ながらラーマとジェロニモさんがそう口にする。
『あのセリフと一緒に相手を蹴り飛ばしてなきゃいい言葉なんだろうけどなぁ!―――ん? 何だこれ、バースト通信? え? あれ? わ、わ、わ……!?』
「ドクター!? どうしたの!?」
「ダメです、先輩! ドクターとの通信、回復しません!」
急にドクターとの通信が途切れた?
『おのれ、貴様ら……まさかケルトに屈するとはな! それでも英雄か!』
と思ったら急に通信にエジソンが現れた。 もしかして乗っ取られた?
『なにより我がマドンナ、クリミアの天使よ―――貴女ほどの信念の人が、私の信念を介さないとは! 失望ここに極まる! これほど悲しいのは失業率が三割を超えた時以来だ!』
ど、どれだけの悲しみなんだ?
「失望? いいえ、まだ望みはありますとも。私たちは貴方を裏切ってなどいない。ましてケルトに与するなど、冗談にもほどがあります」
『攻め込んできて何を言っているんだか 情報によると、あなたたちはメイヴ暗殺に失敗した。それで生きているのは不自然なのよ。敵に寝返って命乞いした、というのが真っ当な見解じゃなくて?』
あ、エレナさんも出てきた。にしても、寝返った? 命乞いした?
「そんなことする訳ないだろ! あの人たちはそんなことをする人たちじゃない! 死んだんだよ! 暗殺に失敗して死んだよ! 僕が復活しただけで、エリザベートさんもビリーさんも死んだんだよ!」
よし、決めた。エレナ・ブラヴァツキーは一発ぶん殴る。
『あら、獣の尻尾を踏んじゃったみたい。気に障ったなら……いえ、失礼をしたわ、ごめんなさい。どうやらあの子たちはただの負け犬みたい。ケルトに与したって線はなそうよ、エジソン』
『ぬう? つまり敗軍だと? では我々の庇護を求めに来たという訳か? だが、それにしては殺気に満ちている! 獣の少年の殺気はここまで届いているしクリミアの天使は何故か私に銃を向けている!』
負け犬? 殺気の理由が分からない? なんだ、なんなんだこいつら!? なんでこいつらはこんなにも僕をイラつかせる!? 今すぐにでもこの要塞ごと滅ぼしてやりたい。けどそれはマスターの邪魔をすることになっちゃう。そうすれば必然的に人理修復にも影響が出てカルデアにいるクロエにも迷惑が掛かる。だから、我慢しなくちゃいけないッ! ……ナイチンゲールさんとエジソンが話してるし、会話の邪魔もしちゃいけない! 悔しいのに、エリザベートさんやビリーさんに謝れって叫びたいのに……!
「……天使、ですか。そう呼ばれたこともありましたが。それで綿あめのように優しい生物を連想されるのは、苦痛の上ありませんね。発明王エジソン。こうして対面してみて理解できました」
『むう、何かね? ようやく私の偉大さと知性に気づいてくれたかね?』
「貴方は病んでいます。即刻治療を受けた方がよろしい」
聞こえない。二人がどんな会話をしているのかまったく分からない。ただあんなに優しい二人がバカにされたのが許せなくて、その気になればこんなやつら滅茶苦茶に殺せるのに、でもそれをぶつけることもできなくて、我慢しなくちゃいけなくてそれが苦しい。苦しくて涙がこぼれそうでとても胸が痛い。早く終われ、早く終わってくれ。
「痛い」
「無駄話をしている暇はありません。さぁ、踏み込みま―――。失礼、別の患者を見つけました。すぐに合流しますので先に行っていてください」
「え? わ、分かった! それじゃあ皆行くよ!」
いつの間にかナイチンゲールさんの話は終わっていたらしい。マスターの掛け声でみんな要塞の中に攻め込んでいく。遅れないように僕も行こう。
「貴方は待ちなさい」
「うげぇッ!?」
僕もマスターたちに続いて要塞の中に行こうとしたらナイチンゲールさんに首根っこを掴まれた。
「な、なにごとですか、ナイチンゲールさ―――「痛みを訴えたのは貴方ですね。今から緊急オペを開始します。良いですね」―――え、いや、痛みって言っても怪我とかない何でもない痛みで―――「何でもない痛みなどありません」
だ、ダメだやっぱりこの人、話を聞かない……。膝立ちになって僕の体のあちこちを触って触診してる。
「痛いのはここですね。摘出を開始します」
「いや、だからこの痛みは手術とかでどうにか出来る痛みじゃ―――」
そう言いかけた瞬間、僕はナイチンゲールさんに抱きしめられていた。暖かい、暖かくて何故だかとても懐かしい気がする。
「親しい人が亡くなったとき、悔しい時、人は泣くのです。私の話やマスターの邪魔をしまいと我慢してくれていたのでしょう。ここには既にマスターも、カルデアのモニタリングもありません、我慢は不要です」
「……ぅ、ぐずッ―――うぁ、うぅぅうううぅぅッ!」
「涙は心の浄化剤です。痛みが取れるまでこうしていましょう。大丈夫、私が死んでも貴方を治療します」
「しん゛じゃ、いやだぁ゛ッ!」
「! そうですね。ありがとう、優しい子」
ナイチンゲールさんの優しい声と手に包まれる。すると自然と涙がこぼれてきて声を上げて泣いてしまった。ナイチンゲールさんは僕が泣いている間ずっと抱きしめてくれていた。
・スカサハ カルデアに召喚されることが確定。
やったねセタンタ! レイ君の剣が自分を切り殺せるものだと確信。しかし自分を切る程の技量を持っていなかったためレイ君の師となることを決意。ケイローンと育成方針の違いで争うまで残り数日。
・やっと泣けたレイ君。
実はレイ君、涙目になったりすることはあっても、声を上げて泣いたのってプリズマ☆イリ『ア』編でクロエとの初ベロチューと時だけだったんですよ。
親元から急に引き離されたショックに始まり、人間であるこの否定、獣としての自分の運命を悟ったりと色々なことが短い人生の間に置きすぎていてどれだけ悲しいことや辛い事があっても怒りや困惑が先に来るようになってしまい泣けなくなっていました。クロエと別れる寸前や再開した瞬間も泣いていませんからね。
レイ君はクロエにはカッコいいところを見せようとしますからクロエの前では泣けませんし、ジャックやナーサリー、ルサリィも親愛の面が強く甘えられてもレイ君は涙を流せませんでした。だから胸の痛みを心の叫びを聞き逃さないナイチンゲールが必要だったんですね。