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「ひとまずクラスカードの回収が終わったし、ある意味の区切りを迎えた訳ね」
「えぇ、そうですね。ここから一か月の間は特に異変もなくイリヤさん、美遊さん、レイさんの三人で楽しく学校生活を送ったわけです」
クロエの言葉にルビーが頷く。鑑賞会は再びの休憩時間を迎えていた。そこで待機中のサーヴァントたちや休憩中のスタッフたちは再びそれぞれで集まり思い思いに感想を話す。
「ま、そこは思いっきりカットしてクロさんの登場辺りまで飛ばすんですけどね」
「ちょ、なんでよ! あの一か月の間にも色々あったでしょ! なのはちゃんとの出会いとか会ったじゃん!」
「あ、あの出来事はちょっとした
ルビーのカット宣言にイリヤはその期間中に出会った自分よりも年下なのに圧倒的なパワーを感じた魔法少女との出会いがあったと主張するがルビーは目を逸らした。
「そのこともあるけど一度情報を纏めよう」
「美遊様の言う通りかと」
激化しそうなイリヤとルビーの話に美遊とサファイアが待ったをかける。二人の言葉を聞いてイリヤとルビーは落ち着きを取り戻す。
「まず最初にレイは私と同じ平行世界からやってきた人間だった。私的にはこれが一番衝撃だった」
「美遊はやっぱりそれよね……」
美遊の言葉にクロエは少しだけげんなりしながら答える。この後に美遊の口から出てくる言葉がある程度予想出来ているからだ。
「当時は異性の友達どころか親しい異性はお兄ちゃんぐらいしかいなかった私はレイを警戒してたし、レイも私を警戒してたから余り会話は無かった。けど、こうやって見返すとライダー戦で協力してくれたり、キャスター戦で私のことも守ってくれたし、バーサーカー戦ではタッグも組んだ。話すきっかけはいくらでもあったのに……」
「最初の頃の美遊はほら、『友達』とかも大分重く捉えてちゃってたし、こっちの世界にきたばかりで精神的に追い詰められてたからしょうがないよ……」
少しだけ言葉に後悔がにじみ出ている美遊の手をイリヤが握りながらフォローを入れる。
「ありがとう、イリヤ。でもそれが出来て居ればレイとももっと仲良くなれたかもしれない」
「その『仲良く』って言うのは上映中に言っていた
頬を若干ヒクつかせながらクロエは美遊に質問する。そんなクロエを見て少しばかり揶揄いたくなった美遊は軽く笑みを浮かべながら口を開く。
「うん。それに余り話さなかった状態でさえバゼット戦の時にレイにお姫様だっこされたことあるし、
「あ、あああ、美遊、貴女ね! い、言ってはならないことを言ったわね!」
美遊の発言にクロエは震えながら立ち上がり思いっきり美遊を指さしながら大声を上げる。普段どちらかと言うとクロエに揶揄われることが多い美遊とイリヤだがこの場ではそれが逆転しておりそれが面白く美遊は笑みを深める。
「……美遊」
「イリヤ?」
クロエのリアクションに満足しているとふとイリヤに袖を引かれてそちらに目を向ける美遊。目線の先には頬を膨らませいかにも不機嫌と言ったイリヤがいた。
「美遊は私よりレイが良かったの?」
「違うわイリヤ! そんなことはない! 私は何よりも貴女のことが大切よ。ただ、これはクロエを揶揄いたくて言っただけよ!」
「ちょっと!」
イリヤの言葉に美遊は大急ぎで否定をする。その過程で自分が揶揄われただけと雑に暴露されたクロエも思わず不満顔を浮かべる。
「さっきも行ったけどこの話はあくまであり得たかもしれない未来の話。ここではそうは成らなかったの。私が愛しているのはイリヤ。貴女だけよ」
「美遊……」
「……私、なんかダシに使われただけ?」
「それはそうと私とイリヤはどちらも女の子だし最悪『胤』だけ貰って――――」
「待って美遊! なんかすごいこと計画してない!? ちょっと美遊!? なんか聞き捨てならないこと言ったでしょ!?」
友人の恐ろしい計画を耳にしたクロエはイリヤを抱きしめている美遊の体を激しく揺さぶるが、美遊の頭の中にはイリヤの血を継ぐ子供との生活の妄想で溢れていた。
「リリィ、大丈夫ですか?」
「え、えぇ、大丈夫です、本来の私。少し……レイのことを考えていただけです」
別の場所では椅子に座ったままのルサリィにジャンヌが水の入ったコップを差し出しながら無事を確かめる。ルサリィはそれを受け取ってお礼を言った後水を一口飲んで大丈夫だと答える。
「あのガキも不憫よね。平和な世界で幸せに暮らしてたら行き成り他の世界へポイ、だもの。……気に入らないわね」
ルサリィの隣に座っていたジャンヌ・オルタは不満げな顔をして腕と足を組みながらそう言い捨てる。そんなオルタにジャンヌとルサリィは意外な物を見る目を向ける。
「何、その目?」
そり目線に気が付いたオルタは疑問を投げかける。それに対してジャンヌとルサリィは一度顔を見合わせた後ニコリと笑ってオルタを優しい目で見る。
「オルタもそうやって人を思いやれるようになって私は嬉しいです」
「そうです! あの投げやりな態度も改善してきましたし確かに将来性を感じるようになっていますよ成長した私!」
「だぁあああ! そういう意味じゃないわよ! 気に入らないのはあのガキよ! あいつ、心の中に復讐心が無いのよ! 普通あれだけの仕打ちを受ければ復讐心の一つや二つ抱えるでしょ! 模擬戦で勝てないのは癪だけどあの赤い竜の姿は気に入ってるからアヴェンジャークラスに仕立て上げてファヴニールの代わりにしよう思ったのに! なのにまったく復讐心を抱いてないのよアイツ!」
オルタは自分のことを勘違いしている二人に対して顔を真っ赤にして反論をする。そして今度はオルタの言った言葉にジャンヌとルサリィは驚くことになった。
「まったくないのですか?」
「ええ、そうよ。あれだけのことをされて復讐心の一つも抱かないなんて、信じられないわ」
「それだけレイが優しいということですね!」
ルサリィがまるで自分のことの様に自慢げに話すがジャンヌとオルタの顔は少しばかり険しいものだった。
「それはつまり……」
「どっかぶっ壊れてるのよ、あのガキは。この時から、カルデアに来た今もずっとね」
そう言ってオルタは真剣な表情でルサリィに告げる。
「あんた、あのガキとこれからも友達でいたいっていうなら、ちゃんと見ていてやりなさいよ」
「はい! 私はレイのお姉さんですから!」
「……なんでそうなったのよ」
ルサリィの発言が理解できず若干引き気味になりながらそう呟くオルタだった。
「お前の言う通りだ、復讐者となった聖女よ」
シアタールームの端にひっそりと霊体化を解いて一人の英霊が現れた。凶悪な人相に黒い帽子、黒い外套を纏う男。『巌窟王 エドモン・ダンテス』。彼は画面内のレイをジッと見ながら誰にも聞こえないように独り言を続ける。
「確かに
そう言ってエドモンは姿を再び消したのだった。
「なんなのだあの外道は!」
「気持ちは解るが落ち着けよ。姐さん」
「親に愛されていた幼子を! 笑顔に溢れていた幼子を! 自分の悦楽の為だけに引きはがし、あのような業を背負わせたのか! なにも……なにも知らない幼子だったんだぞ!」
「分かった! 分かったから姐さん! カリュドーンの皮持ち出すのはマジで止めてくれ! カルデアでそれ被っても意味ないだろ! 原因のレディ・アヴァロンってやつもいないんだし!」
また遠く離れたテーブルでは怒りで冷静さを失っているアタランテがレディ・アヴァロンもいないのにカリュドーンの皮を身に纏おうとしておりアキレウスが必死にそれを止めていた。
「許さん、絶対に許さん……! アキレウス。もしレディ・アヴァロンなるものがカルデアに来た時は私はヤツの顔を一発殴らなければ気が済まん。その時は止めてくれるなよ」
「あぁ、その時には邪魔しねぇから今は一旦そいつをしまってくれ」
こまでしてようやくアタランテはカリュドーンの皮をしまった。そして今も特異点で活動しているジャックとレイの無事を祈り、帰ってきた二人に好きな菓子でも作ってやろうと決心したのだった。
・恐ろしい計画を企てる美遊。
出しに使われただけと油断したクロエに突き刺さる驚愕の一言。
・ファヴニールの代用品にされるレイ君。
オルタ的には『レイ君』は嫌いだけど『デストロイア』のビジュは好み。
・ぶち切れアタランテ。
アキレウスさんはストッパー兼苦労人に……。