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涙が止まった後僕はナイチンゲールさんと一緒に要塞内部へ突撃してマスターとの合流を目指した。途中で機械化兵達と戦闘にもなったが僕たちの相手じゃなかった。すぐにマスターたちと合流することは出来た。合流した時にマスターに何かあったのかと聞かれたが適当にはぐらかしておく。……だって恥ずかしいし。
「やはり来たか」
そんなやり取りをしているとまるでタイミングを見計らっていたかのようにカルナが廊下の奥から姿を現した。
「無論です、カルナ。貴方もまた病人です。退散なさい、貴方はここに居てはいけない人だ。望むものがあるというのに。僻地での療養をお勧めします」
現れたカルナにみんなが警戒して身構える中、ナイチンゲールさんだけがズカズカと彼に近づいてモノを言う。……あ、相変わらずだ。
「……確かにお前の言う通りかもしれない。オレは忠実であろうという病に罹患している。望んだものを立ちどころに見抜くのは、看護師という職業故か」
「いいえ、貴方が分かりやすいだけです」
「………………そうか」
す、すっごい沈黙してからの絞り出すような声!
「先輩、なんだかあの、カルナさんが凄く凹んでいるうな気がします」
「そ、そうだね……」
「――ご指摘、感謝する。しかしこの道を譲る訳にはいかん。何しろあの発明王に助けを乞われたのだ。オレのような益体もない男に、跪いてな」
「益……体?」
言葉が少ないのに語彙が豊富なのホント辞めて欲しい。
「役に立つ、整っているという意味の言葉だ」
「それに『ない』が付いてるから……役立たないってこと?」
「あぁ」
僕が首を傾げるとそっとジェロニモさんが教えてくれた。や、役立たず? 分身で再生に限りがあるとはいえデストロイアの幼体複数を蹴散らしておいて!? な、なんなんだこの男、謙遜の塊か?
「先に乞うたのが彼だった。おまえたちに敵対する理由としては十分だろう。それに、もう一つ。エジソンはオレの知己に似た男だ。賢くありながら愚かであり、傲慢でありながら博愛に満ちた男。かつてオレを友と呼び、オレを助けた王がいた。あの人懐っこい男に、エジソンはよく似ている。一言で言えば放っておけない、というヤツだ」
……そうだよね、内面の話だよね。見た目が似ているって話だったらどうしようかと……。
「―――驚きました。貴方の様な人が、そのように笑うなんて」
「オレとて人の子だ。人並みの感情はあるよ。だが、お喋りはここまでにしておこう。一度目は様子を見た。此度は二度目。どれほど腕を上げたか、見せてもらおう―――!」
そう言いながらカルナは槍を構えた。
「みんな! 来るよ!」
マスターも身構えて指示を出し始める。
「ナイチンゲールは……もう突撃しちゃってるね! ラーマとブリュンヒルデはナイチンゲールに続いてカルナを! ネロとレイ、ジャックは周りの機械化兵達をお願い! ジェロニモ、ロビン、玉藻はここから援護! マシュは私の護衛でお願い!」
「はい!」
銃弾や魔術が飛び交う戦い、マスターはマシュさんの盾の後ろで飛び交う攻撃から守ってもらいながらも戦場を見渡し的確に指示を出す。味方の要塞内ということもあってかカルナも大技は避けているようだ。それでも十分強いけど、外で戦うよりかは何倍もマシだ。
「……む。戻ってこいとは可笑しな命令を。だが―――そうか、自らの手で決めたくなったか。そういうところが傲慢だが、仕方あるまい」
どこからか念話でも受け取ったのかカルナの動きが止まる。そして自分と戦っていた三騎を吹き飛ばし距離をる。
「主からの指示でな。玉座に戻れ、とのことだ。ここより先、玉座の間にてお前たちを待つ。この国の最大戦力、三人でな」
そういってカルナさんはこの場から離脱していく。
「逃げられちゃったか」
「これだけの戦力差がありながら勝ちきれんとは、まだまだ甘い。もっと厳しい鍛錬が必要だな」
……僕の後ろで腕くみしながらそう話すスカサハさん。
「何もしていなかった貴女がそれを言いますか」
「む? 言っただろう共闘はせぬ、と。それに今は新しい弟子の実力を見るのに忙しくてな。なぁに、アレくらいの敵ならお前たちで十分に対処できると分かっておったからな。手出しは不要だろう」
そう言いながらポムポムと頭を叩いてくるスカサハさん。叩き切ってやろ―――――無理、だな。少しばかり武器と殺気をチラつかせたけど瞬時に槍で刺された。それも何度も何度もそれでも僕は死なないが、相手を殺すこともできない。まさかイメージでも勝てないとは。
「はぁ……参りましたよ」
「ふふ、こんなひよっこに殺されてやるほど私は甘くないからな」
そう。僕は別に実際にスカサハさんに武器を振るったわけでは無いし、スカサハさんも本当に僕を槍で刺したわけじゃない。あくまでイメージ、互いの殺気とセンスによって感じた未来の景色、シミュレーション結果、とかそこらへんの様なものだ。
そんなことをしながら僕たちは歩き続けこの要塞の玉座、エジソンたちが待ち構えている場所までやって来た。
「それでは、突入します!」
マシュが先頭に立って大盾を前に構えたまま扉に向かって突撃し、シールドバッシュの要領で部屋の中に突撃する。
「良くも来たな……! 嘆かわしき裏切り者たちよ……! 何故私の正しさを信じられないのだ! さては陰謀論に浸かっているのか!? エジソンは資本主義の権化だ、とか! 真の天才は商売などに傾倒しないのだ、とか!」
……生前言われた言葉なのだろうか? 扉の先には三人のサーヴァントが揃っていて真ん中にいるエジソンさんがこちらを睨みながら吠える。
「ミスター・エジソン。陰謀論に振り回されているのはそちらではないかと。私は貴方に知性の光を感じたことはありませんが、貴方の発明が素晴らしいものであることは知っています。ですので、そのような風評とは別の所で、私は貴方を病んでいると診断しているのです」
「ええい、言っている意味が分からん! ナイチンゲールよ、統計学の才女よ! なぜバーサーカーなどで現界したのか……ッ! 私は、知性なき獣と話すつもりは無いというのに!」
ほんと、このライオンは好き勝手言うなぁ……。僕はナイチンゲールさんの前に立ってエジソンを指さしながら叫ぶ。
「エジソン! ナイチンゲールさんがバーサーカーだろうと、他のクラスだろうと関係ない! この人は、看護師だ! 人を救うために努力し続ける人だ! そんな人がお前は病気だと言った! こんな信念の人が冗談でもそんなこという訳ないだろ! だから、お前は正しく病気なんだ! おとなしく診察を受けろ!」
「えぇい! 人理を滅ぼす獣であるお前が、この世界を! この国を! アメリカを救おうとしている私に、知性ある人である私に楯突くか!」
くっ、折れないなこの人も……。
「はぁ、やはり熱病に浮かされていますね。マスター、オペの準備を。まずはベッドで安静状態にしてから話を聞かせるしかありません」
やっぱそうなるか……。
「強気ねフローレンス。それはもしかして、戦って勝つということかしら」
するとそれまで黙っていたブラヴァツキーが手に持っている本をパタンと閉じてこちらに鋭い視線を向けてくる。
「えぇ、それ以外では話を聞いてくれそうにないので。戦って、殴って、勝ちますが」
「分かりやすくて好きよ、そういうの。戦いは嫌いだし苦手だけど……。ま、今回はそういうことを棚上げしますか。ミスタ・エジソン、準備はいい?」
うん、ブラヴァツキーもやる気な様でよかった。これで戦闘はエジソンとカルナに任せて見学、とかだったら一発も殴れなかった。しっかり戦闘に参加してくれるようで何よりだ。
「う、うむ!? あぁ、出来ている。現時点での最大電力で迎え撃ってやるのだとも! そして、真に知らしめよう。この発明王の発明が、如何に偉大なのかを―――! 直流こそが、やはり王道なのだ!」
「……やっぱりそこには拘るんですね!」
その言葉を合図として戦闘が始まる。
「うぇ!? ちょ、レイ!?」
戦闘開始と同時に僕は擬獣化を飛翔体に変化させて一気に加速する。指示を聞く前に突撃したのでマスターを驚かせてしまっているけど申し訳ない。僕にはどうしてもやらなくちゃいけないことがある。
突撃してきた僕を止めようとカルナが前に出てくるけどこれ無視する。
「なに?」
「ぬぅ!?」
次にエジソンが僕の目の前にいた。いきなり王手を取りに来たのかとエジソンは警戒して攻撃の体勢に入ってるけど飛翔体の僕相手には遅すぎる。そして僕はエジソンの
「え、わ、私ッ!?」
「エレナ・ブラヴァツキー、覚悟!」
そう、僕の狙いは最初っからお前だ、エレナ・ブラヴァツキー! 擬獣化を完全体へと姿を戻し握り拳を作る。
「シィィヤァァァァッ!」
「キャは゛ァッ!?」
僕の拳は真っすぐ彼女の頬を捕らえた。彼女の顔は大きく歪み、体は吹き飛んでいく。玉座の間の床を二、三回水切りの様に跳ねて壁に衝突して彼女は動かなくなった。……一応、退去してないし手加減には成功したっぽい。
前、決めたもんね。お前は一発ぶん殴るって。
「ふっ、スッキリした。……残り、二人」
これで残るはエジソンとカルナだけ、数の有利もあるしこれは勝ったな。