プリズマ☆イリ『ア』   作:四脚好き

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第五特異点 英霊トーマス・アルバ・エジソン

要塞内部

────────────────────────

 

 圧倒的な数の利があるから当たり前と言えば当たり前だけどぼくたちはマスターの指示のもとエジソンとカルナの二人を打倒した。……いや、打倒したと言い切るには少し早いか。

 

「おお……おおぉぉぉおお! まだだ、まだ敗北しない! 私は屈さない! 戦士として及ばないというのであれば、この身を化学に捧げるまで!」

「まだ動けるのか」

 

 カルナは傷こそおっているけどまだ余裕が見えるし、エジソンも咆哮を上げながら再び立ち上がって来た。

 

「トーマス、大変身、大改造の時である! この人間味あふれた紳士の体を捨てて、今こそ! 今こそ、獣の如き雷音強化! トーマス・マズダ・エジソンに変貌してくれ―――」

 

 エジソンが何かの薬瓶を取り出してそれを口に運ぼうとする。

 

「ジャック!」

「ッ!」

 

 マスターがそうはさせまいとジャックに指示を出す。マスターの指示でジャックが跳び出すが流石に距離がありすぎる。ジャックの刃がエジソンに届くのよりも先にエジソンが薬を口にするのが早い。これは面倒だけど第二ラウンドかな。

 そんな覚悟をしているとジャックの刃よりも素早くエジソンの手にある薬瓶を叩き落とす一撃が()()()()()()()()()()()()()()

 

「ごばっ!? な、何をするのだカルナ君! 私の超人薬を床にぶち撒けるなど!」

「……いや。悪いがエジソン、ここまでだ。それ以上、滅びの道を歩ませるわけにはいかん。それに第一。間違いなく体に悪いぞ、その薬は」

 

 エジソンの妨害をしたのはカルナだった。……なんでぇ?

 

「ノー! 良薬は舌に苦いものだ、心臓が爆発するくらい耐えて見せるとも! ここで私が踏みとどまらなければ、誰がこの国を守るというのだ!」

 

 一種のドーピング薬みたいなものだろうから絶対に体に悪いとは思っていたけど心臓が爆発って……。英霊ならではというか、英霊の特権というか……。生身の人間では絶対に出来ないことだよな。

 

「―――守る、ですか。その割には随分と非合理的な戦いぶりですね、エジソン」

「な、に……? 今……今、私を非合理的だと言ったか?」

「えぇ、きわめて非合理的だと」

 

 ナイチンゲールさんが狼狽えるエジソンの前に立ってそう告げた。するとエジソンは面白いくらいに動揺している。

 

「私は常に合理的である! この国とこの私は、理論から産み落とされたもの。非合理などであるはずが―――」

「……()()()()

 

 "この国とこの私"? 国は象徴的な話だとしてエジソンが合理的? 人が理から産まれるか? ……異常なまでのアメリカへの執着というか、固執? といい、ライオンヘッドといいなんかこのエジソン、混じり物でもあるのかな?

 

「……何?」

「彼らケルトは、生きて死ぬまで戦いに明け暮れた怪物です。この時代の人間はスタート地点からして引き離されている。まして彼らの頭領、メイヴは聖杯を所持し、無限に戦士を生み出している。だから勝てない、勝てるはずがない。彼らの増殖には聖杯以外の資源が必要とされない。数で勝負する、という発想自体が間違いなのです。ですが貴方はそれを譲らなかった。いえ、その仕組みにおいて負けたくなかった。何故なら、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()それがトーマス・エジソンが誇る天才性だから」

 

 あー、ドクターが言ってたやつ。あ、ジャック、暇になったのは分かるけど今良い感じに話まとまりそうだから戻ってきて。うん、首もたてがみも切らなくていいから。ほら、おいで。

 

「"自分のホームグラウンドで負けてなるものか"と無意識の内にムキになってしまった。そんな風に愚図愚図と考えていたから貴方は病に汚染されてしまったのです」

「な……いや、しかし―――しかし――なんという、ことか―――否定、できぬ……。確かに私は生産力にこだわっていた。資源も尽きるというのに、最終的には勝つから良いのだ! などと……」

「えー、ダメじゃん。生産力で勝っても戦争に勝たなきゃ意味ないじゃん。それにこれって防衛戦でしょ? 例え勝ったとしても失った土地が戻るだけで新たな領土とか資源が手に入る訳じゃないし国を保てなくない?」

 

 戦後ボロボロになるんじゃないの? まぁ、日本(ウチの国)のご先祖様たちはボロボロの状態から立て直しましたけどね。スクラップ&ビルドでのし上がって来た国ですから。

 

「まったくレイの言う通りです。そして何より最大の過ちが貴方自身の肉体です! エジソンが獅子の頭を持っていたという記録など存在しません。まして、これほどまでに強大な力を持っているはずもない。ならば、貴方にはあなた以外の力がある。それは貴方を『王』足らしめんとする欲望が」

 

 あ、やっぱり混じり物あるんだ。

 

「あの……それは聖杯では?」

 

 マシュさんが恐る恐る手を上げながら発言する。

 

「いいえ、聖杯ではありません。聖杯は『願いを叶えるもの』であって、『願いを生み出すもの』ではない。エジソン、貴方の願いは貴方自身から生じたものではない」

 

 す、すごいな、ナイチンゲールさん。多分看護師として患者をよく見ているから出来ることなんだろうけどまるで探偵みたいだ。

 

「……そうだ。私の名はトーマス・アルバ・エジソン。そして、このアメリカ合衆国の大統王。過去、現在、そして未来。この国の歴代()()()より力を与えられしもの。何故なら、それが合理的だからだ。彼らは自分たちが全てサーヴァントとして召喚されたとしても、ケルトには敗北するという結論に達した。ならば、一人に力を集積すればいい。大統領ではなく、世界的な知名度を誇る英雄に。彼らは、アメリカという未来を私に託したのだ!」

 

 歴代のアメリカ大統領……。それがエジソンに……。いや、凄いけど、エジソンである必要あるかなぁ!? 確かに知名度もサーヴァントには大事だけど多分、リンカーンとかルーズベルトもいい線行くと思うんだけどな!? リンカーンの宝具なんてすごいんじゃない? 属性が人なら物凄いバフ貰えそう! ルーズベルトの宝具? ……二発の爆弾じゃないかな……多分。

 

『大統領……初代から最後の代まで。というより、大統領という座に着いたもの達の思念、あるいは怨念と呼ぶべきものが憑依していたのか……!?』

 

 ドクターが通信越しに驚いている。成程、怨念がおんねんなぁ……。

 

「ふふ」

「レイ?」

「何でもないよジャック」

 

 僕の腕に抱き着いていたジャックが唐突に笑った僕を不思議そうに見つめてきたのでなんでもないと言って頭を撫でてあげる。……もうジャックに抱き着かれるのに違和感を感じなくなってきたな。

 

「それが病です、我々にはアメリカだけではない。この世界を癒さなければ、救わなければならない使命がある。イ・プルーリバス・ウナム。多数の民族から成立した国家であるあなた方は、あらゆる国家の子供に等しい。ならば、あなた方には世界を救う義務がある。そこから目を逸らして、自分の国だけを救おうとするから―――エジソンは苦しむのです」

「ぬ……ぐ……」

 

 ナイチンゲールさんの言葉にエジソンはドンドン顔色を悪くして膝をつく。

 

「そして、そんなんだから同じ天才発明家として二コラ・テスラに敗北するのです、貴方は」

「GAohooooooooo!?」

「う、うわあ……」

「ナイチンゲールさん、容赦のない一撃です!」

『大丈夫かな? エジソン氏、生きてる?』

 

 そして止めて言わんばかりにナイチンゲールさんは言葉のナイフを思いっきり突き立てた。エジソンは大声を上げて胸を抑え倒れこむ。あんまりな仕打ちにマスターとマシュさんも少し頬を引きつらせている。

 

「はい、かろうじて脈はあります。倒れてはいますが、ビクビクと痙攣していますので……」

「命に別状はありません。エジソン、答えなさい。貴方は、どうしたいのですか?」

 

 倒れたエジソンの近くにより、そう問うナイチンゲールさん。

 

「……そうだな。認めよう、フローレンス・ナイチンゲール。私は歴代のキングたちから力を託され、それでも合理的に勝利できないという事実を導き出し、自らの道をちょっとだけ踏み間違えた……」

「……ちょっとだけ、ちょっとだけ、ですか。まあいいでしょう。病を癒すには、まず病であると認めることから始めます。迷ったとしてもかまいません。貴方は今、スタート地点に戻ってきたのですから」

 

 そう言いながらナイチンゲールさんは倒れたままのエジソンに手を差し伸べる。

 

「そうか……ここまで市民たちに犠牲を強いておきながらやっとスタート地点とは……厳しいな」

 

 エジソンはその手を取りながら再び立ち上がったのだった。そうしてひとまず戦いは終わりを迎え、カルデアは英霊、『トーマス・アルバ・エジソン』と協力体制を築くことに成功したのだった。これであとはどうやってケルトを倒すかに注力できるという訳だ。

 あぁ、戦いが終わった後エレナさんには思いっきり殴ったことを謝って、それでも譲れないところはしっかり話をしてこれからの戦いに影響が出ないように和解した。

 




この特異点で一緒に過ごし沢山抱き着かれたレイ君、まはや癖となってしまいジャックが近くに居ると無意識的に抱きしめるように。
 カルデアに戻ったあとそれをクロエやルサリィたちに見られて大変なことになるのはまた別の話。
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