プリズマ☆イリ『ア』   作:四脚好き

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前回のあらすじ、レイ君がエクスカリバーでアゾられた。


呪い

鏡面界

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約束された勝利の剣(エクスカリバー)

「ぐがあっ!?」

 

 背後の英霊がそう呟くと背中から右胸辺りに突き刺さられた剣から黒い光が溢れて俺の身体を吹き飛ばした。顔の右半分、右腕丸ごとと右胸、腰も右側を少し持ってかれた。

 

「がっ、ごのぉっ゛!」

 

 無事な左手に剣を構成して逆手に持ち背後の奴に突き刺そうと突き出すが簡単に防がれる。しかしそれでも僅かな隙を作れたわけでほぼほぼ崩れ落ちるようにその場から離脱する。

 

「レイ、無事!?」

「ま゛、ずいかも…です。――ざいせい゛、うまく機能、しな゛い」

「なっ!?」

 

 地面に転がるように離脱したところに凛先輩とルヴィアさんが駆けつけて凛先輩が俺を抱きかかえてくれる。―――ってまず! 俺に視線が集まった瞬間、黒の剣士の英霊が二人に切りかかろうとするのが目に入る。残った左手に剣を構築。 凛先輩の腕の中から飛び出す。完全には防げない、けど二人が致命傷になるだけは防ぎたい!

 

「ヴァリアブ―――」

 

 黒の剣士、セイバーの英霊は俺の一撃が決まるよりも早く駆け抜けて俺と凛先輩たち二人を切り捨てる。成程……セイバーの名に恥じない凄い技術を見た気がする。力任せに振るう俺とは大違いだ……。

 俺が一番前でギリ背中の皮が繋がってるくらいに攻撃を受けたから多分、二人はお腹辺りを多少切られるかもしれないけど……。再生能力のない二人が切られるよりかはこの方が何倍もマシだ……。そこで俺の意識は途切れた。

 

 

???

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 暗イ、あるいは黒い。そンナイツか見たケ色。

  ドコニ自分の手足があって、自分が今、上を見てイルノカ下を向いているのかも分カらないのも同じ。ただ違うノハソンナ暗闇の中を今度は『上っている』と頭はなぜか認識しテイて、それが事実だと受け入レテイル。

 

約束された勝利の剣(エクスカリバー)

約束された勝利の剣(エクスカリバー)!!」

 

 終わりがアるのかも分からない上昇の最中、どこかラか叫び声と熱気が伝わる。そして同時にナニカが自分の中へと注ぎ込まれていく感覚。熱い、熱い、熱い。とても熱いものがカらダに流れ込んでくる。

 けれどそれは決して苦しいものではなかった。苦しいはずの熱量だが体はそれを苦しいとは思わずむしろ心地いいとすら思っている。熱いそれは確かに体中を駆け巡り、欠けたものを足して、不足しているものを補い、力を宿す。俺はとてもとても大きなモノへとなっていく。ふと途中で壁の様なものに阻まれる。こレ以上大キクナレナイ。何故! 何故、止メル!? いや……大きすぎても生活しずらいし取り合えず()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

「……なにが、おきたんだ?」

 

 気が付いたら全身の再生と辺りの景色が終わってましたとさ。……いや、なんで? 川岸は崩壊してるし、冬木大橋も壊れてる。って! 鏡面界の空が砕けてるんですけど!?

 

「あ、アレは大丈夫なのか?」

 

 通常界への影響とかないのだろうか? 聞きたくても凛先輩とルヴィアさんの姿はない。記憶している限り最後は近くに居たはずだし、怪我や……最悪亡くなってたとしても遺体は近くにあるはず。ないなら……無事ってことで良いのだろうか? そうであってほしい。

 

「ひとまず、動くか……。もしかして撤退してて僕だけ残されたとか? だとしたら次イリヤ達が来るまでアイツから逃げないと今度こそ殺され……」

 

 そこで俺の言葉は止まる。というのも俺の視線の先にイリヤがいたから。ただいつもの魔法少女衣装ではなく、黒いインナーに赤い外套を身に付けた格好をしていてルビーらしきステッキも持っていない。

 

「イリヤ、無事でよかった。一体何があったか教えて欲しいんだけど……?」

「……」

 

 壊れた冬木大橋の瓦礫の方を見てぼーっと立っていたイリヤに声をかけると彼女はゆっくりと振り返って俺を見つめる。なんで何も喋らないんだ? というか何か雰囲気違う? でもなんかこの感じ知ってる気がするんだよなぁ……あ。

 

「『こんばんは』?」

「……!」

 

 あ、驚いた表情になった。いやけど驚いたのはこっちもだよ。

 

「『こうやって出会えるとは思わなかった。君が助けてくれたんだよね。本当にありがとう。っとぉ!?」

「……」

 

 無言のままこちらに近寄って来たかと思ったらいきなり抱き着かれた。……なんかメッチャ懐かれてる? ……取り合えず頭でも撫でておこう。うん、多分問題ないはず。

 

「……ありがとう。貴方のお陰で私は孤独じゃなくなったわ」

「孤独って一体どうしたの―――って」

 

 抱き着いていた身体から急に力が抜けたと思ったら倒れこんできやがった。どうにか支えるが一応これでもケガから復帰直後なんだが……。というか、喋れたんかい!? 色々言ってやりたかったが既にあの子の雰囲気は消え去っており気絶したイリヤとアーチャーのクラスカードだけがその場に残されていた。少しだけイリヤの身体に魔力を通して探ってみるとあの子の反応がイリヤの中に戻っていた。『孤独じゃなくなった』……か。うん。これからも話しかけるのは続けていこう。もしかしたらまた今みたいに喋る機会があるかもしれないし。

 

「……『だから今はゆっくり休んでて。本当にありがとう』」

 

 俺はイリヤの身体をおんぶの形に移して辺りの捜索を始める。

 

「ぶっは! 死ぬかと思ったわ!」

「おのれ……この屈辱は100倍にして返して……あら?」

「もう終わってますよ、凛先輩、ルヴィアさん」

 

 地面から凛先輩とルヴィアさんが生えてきた。……というか、なんで二人が変身してるんだ? というかルビーがそこにいるってことはやっぱりさっきのイリヤの変身がわけわからないな……。これで予想外にもセイバーのクラスカードを追加で回収することが出来たが色々謎が深まる夜だったなぁ……。

 

翌日 衛宮邸 ベランダ

────────────────────────―――――――――

 

 

 セイバー戦後の翌日。イリヤは謎の発熱から学校を欠席し、発熱こそ無い物の大事をとって休養となった美遊。ふとしたことから美遊のメイド姿を見たイリヤがほぼ強引に美遊を自室に招き入れている間二つのステッキたちはベランダで二人の魔法少女に聞かれないように会話をしていた。

 

《――イリヤさんが倒した……?》

《ええ……イリヤ様が単独で打倒を……。私たちが入り込む余地がないほどに高度な戦闘でした》

 

 ルビーは妹であるサファイアの話に懐疑的な反応を見せる。それもそうだろう。ルビー自身、イリヤにも大きな才能を感じているが、そもそも自身無しに変身すること難しいだろうし、そもそも戦闘センスは低い方で普段はそれを魔法の才能や『魔法少女』に対する思い込みで補っているに過ぎない。まだサファイアと美遊が、もしくはレイが倒したと言われた方が納得できた。

 

《見た方が早いと思う。これを……》

《お、記憶同調ですね。バッチコーイ。……あ! 入ってくる……ッ! ドクドクと…サファイアちゃんのが私の中にィッーーー!》

《……》

 

 ふざけている姉を無視してサファイアは淡々と作業を進める。

 

《余計な演出は要らないです姉さん。……それで、どう思う?》

《まず、驚きですね。イリヤさんがほぼ英霊化しているみたい。恐らくはこれが本来のカードの使い方なんでしょうね……》

《でも協会ですら解析できなかったカードの使い方をどうして……》

 

 ルビーの考察にサファイアが疑問を呈する。それにルビーは少しふらふらと漂って考える。

 

《使い方を知っていたんじゃなくて……手順をすっ飛ばして結果だけを導いた……とか?》

《……それがイリヤ様の能力?》

《憶測ですけどね!》

 

 先ほどまでの真剣な様子はすでになく、少しふざけたようにも見える態度でそう言い放つルビー。

 

《それよりもこちらはどうしたものか……》

《レイ様……ですね、姉さん》

 

 深刻な声で呟く二本のステッキ。

 

《映像見ている限りあの状態のイリヤさんの事を知っているようで問い詰めたい気持ちもありますが、なにより本人が一番訳が分かりません! アレは一体何なんですか!?》

《姉さん落ち着いて》

《なんですか、熱や魔力で再生、変異、進化するって! 明らかに人間じゃないでしょう! 一体どうしてあんな生き物が普通に人間に混じってるんですか!?》

《気持ちは解るけど、イリヤ様と美遊様のご学友で悪い生物でないことは分かっているでしょう、姉さん》

 

 どうにかしてルビーを落ち着かせようとするサファイア。そんなサファイアの懸命なフォローで少しずつ興奮が収まって来たルビー。

 

《ふぅ、ふぅ。すいませんサファイアちゃん。少し取り乱し過ぎました》

《大丈夫》

《で、これがイリヤさんの戦闘時にあったレイさんの変化ですか》

 

 ルビーは英霊化したイリヤの戦闘とは別にサファイアが記録していた映像を再生する。映像の中では戦闘の余波が及ばないように端に寄せられていたレイの身体が写っていた。変化が訪れたのはイリヤが出現させたエクスカリバーとセイバーが持っていたエクスカリバーの二本が激突して辺りに高密度の魔力が満ちた瞬間。

 あたりの魔力を吸収してだろうか、ブクブクとレイの身体が膨れ上がる。そして赤く、より刺々しい肉塊へと変化していく。次第に手や足、顔が形作られていく。

 

《これは、竜種の一種ですかね……? にしては甲殻類のような特徴もありますね》

《協会の資料にあった竜種のどれとも特徴が一致しないわ》

 

 二人は知る由もないがそれは別の世界でデストロイアと呼ばれた怪獣の姿であった。しかし10メートルを超すか越さないかの所まで巨大化をしていたデストロイアの成長はそこでストップする。さらに、デストロイアの体表にオレンジ色のひびが入りはじめる。

 

《これは……?》

 

 全身にひびが入るとデストロイアの身体はボロボロに崩れ落ち液化して消えていった。液体が完全に消えると怪我をする前と寸分変わらぬレイの身体だけがその場に残った。

 

《あとは先ほどの映像と同じ、レイ様と英霊化したイリヤ様が会話して終わります》

《……確かにあれだけの高密度の魔力。一気に再生するどころか成長するのも分かります。ならどうして最後元の形に戻ったんでしょう……?》

 

 映像を見終わったルビーは再び考え込む。

 

《あのまま成長していれば間違いなく今まで以上に強く成れたのに何故……》

《……仮説ですが、レイ様は自身を『人間』だと思っているのでは?》

《あれだけの力と特異性を持っていて人間ですか!?》

 

 サファイアの言葉にルビーは混乱する。

 

《あくまでもそういう力を持った『人間』だと思い込んでいる、故に自身も周りも彼を『沖繫レイ』と呼ぶ……》

《名前を言い換えることで対象の本質を書き換えさせようとする……照応の概念ですか。成程それなら納得が出来ます。彼は彼自身知らないうちに自分に呪いをかけていたということですか》

《その結果人間として生活するのに不必要部分を切り取ったのがあの現象の答えですね》

 

 ポンっとルビーは翼を手のように扱って叩く。疑問が解消して少しだけ気分がよくなるルビーだがそうなると別の問題が浮上してくることに気が付いてまたすぐに機嫌が急降下する。

 

《だとしたら……彼が自分の本当の姿を理解して呪いを打ち払った時、一体どれだけの怪物が生まれることになるんです?》

 

 ルビーの言葉に応えるものはいなかった。

 

 そしてまた夜が訪れる。

 





 という訳で、レイ君の弱体化発覚回でした。レイ君の正体についてのお話ですが読者の中でも察している方がいるので問題ないと思いますが一応反転しておきますね。

レイ君は自分の事を『デストロイアの力』を持った人間だと思っていますが、レイ君の正体は正真正銘この世界で目覚めたカンブリア紀の微生物『デストロイア』です。しかしそのデストロイアの集合体にどういう訳か別世界の人間の魂が入り込み、集合体を統べる統括意識となってしまいました。レイくんの思い込みや周りの人が彼を人間として扱い、『沖繫レイ』という名で呼ぶことでデストロイアの本質は歪められ書き換えられる呪いとなりました。ここら辺の呪いの説明は本文で頑張りましたが分からない、という読者の方がいたらごめんなさい、私の実力不足です。アニメ『ロード・エルメロイ2世の事件簿』第0話を見てください。グレートビックベン・ロンドンスター先生が分かりやすく解説してくださいます……。どうしてこの冬木の地でデストロイアが目覚めることになったかはこの作品の第一話後書きをご覧ください。
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