レイ君、基本的には普通の学生で特に特徴もなく学校生活していることが多い都合上ツヴァイでのヒロイン登場(もう皆さん察してるし名前出しても良いと思わない?)までは衛宮家やイリヤたちとのやりとりが本当にカード回収ぐらいしかない。
そのためプリヤ原作の日常描写はカットされるし、しかも彼目線で話が進むため彼が行動不能時にはドンドン原作のカットが入る……。
今回はそんなレイくんの日常が少しだけ判明する回でもあります。
────────────────────────―――――――――
「どういう事ですの? 敵はいないしカードも無い……もぬけの殻というやつですわね」
ルヴィアさんの困惑した声が響く。それもそうだ、この鏡面界、いささか静かすぎる。前回のイレギュラーな夜を乗り越えて4枚目のカード回収にやって来た俺達。今回の鏡面界は深い深い森の奥。今までならジャンプしてすぐに敵が現れたり、既に攻撃準備をしていたり、後ろから急に刺してきたりしたのだが、今回は一切そういうものがない。
「鏡面界は誰かが意図的に起こさないと基本的に風が吹かないから凄い不気味に感じるね」
「ちょっとレイ! 怖いこと言わないでよ!」
「ごめんごめん。座標はあってるんですよね、凛先輩?」
俺の言葉にイリヤが怖がりギュッとルビーを強く握りしめる。……強く握りすぎだろう、ルビーが若干藻掻いてる。
「あっているはずよ。なによりこうして本来存在しないはずの鏡面界がこうしてあることが何よりの証拠よ」
成程……なら場所はあってるのか。
「そういえば今回は天井が低い様な……」
イリヤが上を見上げながらそう話す。んー? あー、確かに今までの空間よりかは全然低いな。
「カードを回収するごとに歪みが少なくなってきている証拠よ。最初の方は数キロ四方もあったらしいし」
「うへー……」
「それはなんともお疲れ様で……」
最初の二枚を回収した協会の魔術師さんは大変だっただろうな……。一体どんな人なんだろう。ステッキもなしに純粋に魔術で勝ったってことだし、どんな魔術使うか気になるな。いつか会えたりしないかな。
「嘆いていても仕方がありませんわね、歩いて探しましょう」
《んーむなんとも地味な……もっとこう、魔法少女らしくド派手に魔力砲ぶっ放しまくって一面焦土に変えるくらいのリリカルな探索方をですね……》
「それは単なる破壊だよ……」
取り合えず、いつまでもここにいても意味はないので、歩いてカードの英霊を探しに行く。何か攻撃を受けてもよっぽどのことでない限り再生できる俺が先頭に立って森の中を突き進む。
なにやら後ろで物騒なやり取りが聞こえるが通常界に害がないならそれでもいいと思ってしまうのは悪い事だろうか……。
「行っても行っても、草ばかり」
《あの、レイ様》
「どうしたの、サファイア?」
先頭を切って歩いているとサファイアから声がかけられる。カード回収の任務中にサファイアが美遊以外に話しかけるとは珍しい。というか喋るのも中々珍しい。ほら、美遊も驚いている。
《レイ様は、ご自身についてどれほど知っていますか?》
「……ほう?」
いや、しかも任務外のこと聞くなんてほんとに珍しいな。いったいどうしたんだ。
「どれほど……って言われてもねぇ……あんまり何を求められてるのか分からないな。好みのタイプでも言えば良いの?」
《はい》
「え?」
「え!?」
「マジですの!?」
は!? ホントにどうしたのこのステッキ!? 美遊もびっくりしてるし、周囲を警戒しながら聞き耳を立てていただろうルヴィアさんのまで驚いてるよ!? 驚きすぎてすんごい言葉遣いになってるよ!?
《正確に申しますと、そう言った情報含めて全てです。レイ様の様な特殊なせi……『人間』は珍しく私達でも初めての遭遇です。その為どんな些細な情報でも記録しておきたいのです。レイ様が問題無いと判断したところまででも構いませんので提供できる情報はあらゆる情報を提供していただきたいのです》
あ、そう言う意味かぁ。確かに俺みたいな人間なんてそうそういないよな。居たら今頃世界はもっとヤバかっただろうし。でもなあ俺自身どうやって説明すれば良いのか分からんのよなぁ。気が付いたら『沖繫レイ』になっていたわけだし……。『実は俺並行世界から来てるんですよ』……んな、あほな。そんなの誰も信じる訳ないだろ。じゃぁ生まれ変わりって言っても信じられるのか? というか俺は転移、憑依なのか? 転生なのか? 一体俺って何なんだろうな……。
「うーん……正直僕にもよくわからないんだよねぇ」
「分からない? 自分のことなのに?」
美遊ももう聞く方向にシフトしてるし。
「実を言うと僕、五年前から昔の記憶が無いんだ」
「!」
「僕には五歳以降の記憶しかない。それでいいならいくらでも答えられるよ。名前は沖繫レイ、10歳。仏教系孤児院の真言立川流『詠天』に住んでる」
「孤児院?」
ルヴィアさんが反応した。
「そうですね。孤児院ってことで察しが付くかもしれないけど両親は不明。強いて言うなら院長……キアラ院長が親かな。穂群原学園初等部に通っていて成績は上の中って感じ。趣味は術式の研究。と言っても根源を目指している訳じゃなくて『洗濯物が早く乾く魔術』とか『揚げ物の油跳ねを防止する魔術』とか日常で役立つ魔術を研究してます」
説明したものはどちらも乾燥機を買えば良いし、蓋を盾にすれば防げるものなんだけど……。孤児院だからあまり高い家電は変えないし、蓋もって両手塞がるの嫌じゃん? そんな日常のちょっとしたイライラを解決する魔術を研究してたりする。最近で一番の自信作は『割りばしが必ず綺麗に割れる魔術』だったりする。
「サファイアが気になってる能力についてだけど、熱や魔力で体を再生、変異、進化させることが出来ます。翼や尻尾、角が変異の結果ね。あと、ミクロオキシゲンの生成が出来ます。ミクロオキシゲンっていうのは簡単に言うと超ちっちゃい酸素原子で他の分子の間に入り込んでその結合を崩壊させることが出来るの」
《キャスター戦で見せた彼女をドロドロに融解させた攻撃、アレがミクロオキシゲンによるものですね》
「正解。あとはほら今も邪魔な枝を切り落とすのにも使ってるよ」
そう言って手の剣をブンブンと振って見せる。
「あとは凛先輩に教えてもらったからある程度の魔術は扱えるよ。……こんな感じで良い?」
「あら、好きな女性のタイプがまだでしてよ、レイ」
サファイアの質問に大体答えたからこれで良いかなぁと思っていたらニヤニヤと笑った顔のルヴィアさんがそう言ってくる。くっ、ただの冗談で言うつもりなんて最初からなかったのに、忘れてなかったか!
「……言わないとダメですか」
「自分から振った話でしょう。最後までやり遂げなさいな」
「……」
「レイ」
「美遊?」
「ちょっと私も気になる」
「美遊!?」
成程君も一人の女子、人のコイバナにはそれなりに興味があるか!?
「……こっちを引っ張ってくれる姉気質な人。多少強引なほうが好き……です」
ぬあーーーーーっっっ!? なんでこんな羞恥プレイを受けにャならんのだ!? ええっぃ、その『おおー』みたいな反応を辞めろ美遊! 録画をするな、写真を撮るなサファイア! お前案外そういう所は姉と似てるのな! びっくりだよ!
「……レイ」
「なんですか、ルヴィアさん」
「遠坂凛は止めておきなさい」
「凛先輩のことではないでーす! 真剣な表情なぁーに素っ頓狂なこと言ってるんですかルヴィアさんはー!?」
というか……凛先輩とイリヤは?
「……あっ、べ。美遊、ルヴィアさん。イリヤ達が後方でなんか立ち止まってます」
「え? ホントだ」
「まか、敵を見つけて私たちに黙って自分たちだけで倒すつもりかしら! そうはいきませんわよ遠坂凛!」
こんな森の中で離ればなれはマズイので合流するため来た道を戻る。
「凛先輩! なにがあったんですか!」
「遠坂凛! 手柄の一人占めはさせませんわよ!」
「そんなんじゃないわよ! ただイリヤが急に立ち止まったから何かあったか聞いただけよ! ね、イリッ!?」
俺とルヴィアさんの声掛けに凛先輩が反応して同意をイリヤに求めようと振り返った瞬間、イリヤの首にナイフが飛来して当たった。
「なっ!?」
「美遊!!」
「
直ぐに美遊がナイフの飛んできた方向に魔力砲を放つが相手の姿が確認出来ない。ひとまず、イリヤと凛先輩を翼で包み込み周囲を防御する。
「あうッ……」
「イリヤ!」
「ルビー、怪我は!?」
《大丈夫、物理保護が利きました! 薄皮一枚です!》
それならひとまず安心か。
「敵の位置は不明! 方陣を組むわ! 全方位を警戒!」
凛先輩の指示で素早く全員が背中合わせの形になり全方位を警戒する。……天井が低い結界で助かった。上空への心配はしなくて済むからな。
「不意打ちとはナメた真似をしてくれますわね!」
「攻撃されるまでまったく気配を感じなかったわ! その上完全な急所狙い……! 気を抜かないで、ヘタすれば即死よ! レイ以外!」
はい、俺に対する熱い信頼どうも、凛先輩。あ、これ不味い気がする。なんか前回にも感じた直感が……。
「敵を視認! 総数50以上!! そんなッ!?」
「いや、50どころか100はいないかこれ?」
「嘘でしょう、完全に包囲されてますわ!」
「なんてインチキ……! 軍勢だなんて聞いてないわよ!」
黒ずくめに髑髏の仮面をつけた格好の奴らがわらわらと出てきやがった。全員が手に短刀を持っている。アレが全部さっきの精度で投げられるのは不味くないか……!
「レイ、吶喊! 敵の攻撃を受け止めて! 包囲を突破する! イリヤ、美遊、レイを盾にして火力を一点集中!!」
「はい!」
「りょーかいっと!」
凛先輩の指示のもと獣化形態へ移行、やる事はキャスター戦となにも変わらないただ前へ。ひたすら前へ! 途中で何本か短刀を投げつけられるがその程度なら刺さりもしない!
どさり、と誰かが倒れこむ音がする。
「イリヤ!?」
凛先輩の焦った声を聞いて振りければイリヤが転んでいた。何があった!? ナイフは全部俺が防いだはず……。
「から……からだがうごかない……っ!」
《魔力循環に異常っ! 物理保護が維持できませんっ!》
「まさか、毒!?」
毒っていつ……最初の一撃か! というか物理保護がないのは不味いだろう!? 急いで体を反転させてイリヤの元に向かう。既にイリヤの周りには多くの髑髏野郎。間に合うかっ!?
「イリ―――、なっ!」
同じようにイリヤに向かっていた美遊が驚愕の声を上げる。それと同時に俺の視界は真っ白な光に包まれた。
「あー……生きてるー。いや、僕が死ぬようなことなんてそうそう起きないんだけどね」
あの光を至近距離で喰らったせいか少し気絶していたらしい。うーむ、怪我はないんだけど閃光対策はしてなかったなぁ……。これは俺の判断ミス。次からはサングラスでも持ち込んでおくか? ……冗談、どうせ顔面に一撃喰らって顔ごとグシャグシャになるのが見えてる。
「もういや!!」
「イリヤ!」
……何事? よくは分からないがイリヤが消えた。ジャンプして通常界へと戻ったらしい。……あー、また俺が意識ない間になにかありましたね? というか辺り殆ど焦土なんだけどナニがあった本当に。……取り合えず、
「凛先輩、これカード落ちてました『アサシン』……なるほどあの不意打ちにも納得のカードですね」
「あ、ありがとうレイ」
「何があったか説明、お願いします」
こんどは一体何が起きたんだ……。