上位存在さん「おとーさん♡」ドクター「ふぁっ!?」 作:たこ焼きブラザーズ
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此処の部分書きたいから設定作ってたので書けて満足
「……"私"はこの世に生まれ落ちてから、是迄ぼんやりと漠然としながら生きてきたんだ。"私"達は生命の思いや思念によって生まれるモノ。
だからこの地に生きる人は全て、私達にとって文字通り『親』なんだ」
「.その在り方も姿も、思いという『そうあれかし』という願いによって生まれ形作るのだが……どうやら"私"を願った存在達の思いは刹那に消えて行く儚いものであったらしい」
「人の思いは特にそうだが、思念は雑多だからね。明確な意思や思いはそうそう自らの意思で確立することは難しい。
だから私も、君も『落とし子』という種族は大概それらに受肉出来ずに生まれ落ちる出来損ないに等しい」
不器用に震えるナニカに語り掛けながら、己の過去を振り返っていく。そうだ、私はそういう風にこの生を受けたんだったな。
「そういった儚い思いを基に受肉してしまったのだから、さぁ大変だ。
何をしてこの生を謳歌するべきか、ちっとも分からない。生まれ落ちた場所も何処でも無い辺境であって何もない」
「そこは存在意義が行方不明という"私"にお似合いの場所であったな。だから"私"は、まず彷徨ってみることにしたんだ。
この身には時間だけは多く備わっていたのだから、いつかは形も見つかるだろうと思っての行動だった」
「そうやって何もない所をずっと彷徨っていると次第に周囲は色づき始めて、このテラという大地に居た。恐らく君も同じではないか?」
私は時間そのもの引き延ばしていく。1秒を10秒に、10秒を1分に。
ドクターとの約束もあるからね。立ち話をして約束を破ってしまったという理由では品がない。
「そうしてさらに長い間彷徨い続けると、遂に"私"達を生み出す生命体のうちの一つである"人"の住む場所に巡りあった。
身を寄せて地に降り立ち、人を眺めていくと思いの他楽しい時間になった」
「人は感情豊かだ。今ならそれがどういった物か分かるけれど、かつての"私"は感情という物が理解出来なかった。
人が笑ったり泣いたりするのを、よく形を変えるパーツがあると思っていた。ふふ……面白い話だろう?」
そんな事も確かにあった。その時の"私"は形も意義も何もない、無垢な幼な子だった。人は何処か見えない場所に差し替えるパーツがあって、それを用途に応じて何故か使い分けているのだと。
そもそも人体という概念も持たず、感情はより理解出来ていない頃。なにゆえ形を変えるのか、と不思議がった記憶がある。
「それで……そうだな。そうやって人をただ眺めるだけであっても、人への影響は大きかった。"私"自身は出来損ないの生まれだったが腐っても人ならざる身。
その身には大きな力を秘め、それらを災厄や恵みとして無意識にばら撒いていたらしい。自覚はなかったが身動ぎ一つで国の興隆が決まった場所もあったとか」
「其処に在るというだけで大きな影響を与える存在を、人は迷惑に思ったのだろうな。人は"私"に贄を出すようになった。沢山の供物と身を清めた贄をね」
「『これでどうか鎮まってください。その代わりに此処で一番のモノを捧げます』、『村に雨を降らせてください。その代わり〜』と言った具合に」
「その頃になると"私"は『ソレ』と名付けられ、神の様に崇め奉るモノとして扱われるようになった。だから私はその思念を依代に『ソレ』と成った」
私達はそうあれかしと望まれて生まれるモノ。だからそれを叶える為に、この身にはあり余る力を秘めている。
目の前の子も今は定かではないが、放置していればその内害を与えるようになる。
そして昔の私はそれを理解していなかった。在るがままで厄災を振り撒いていた。この博物館にもその伝承は残っているし残している。
「この時の私はね、何も"無かった"んだ。怒りも喜びも、それを学ぶという思いも全部空っぽ。だから贄を捧げられても何もしなかった。ただただ其処に在って、何時も通り恵みと災いを齎す。」
「贄の子達も戯れに触れてみた。『ソレ』と名付けられても中身は境界線も何もない。だから触れれば"一つにする"だけ。
自我が私という虚無に希釈されていく。それを『死』とは理解出来なかった。」
「だから『ソレ』を鎮めるために贄を捧げるループは加速していく」
贄の儀式も、その内に秘めた思いも、生命そのものも全部無駄にしてしまった。私が全部無為にしたんだ。
まだ贄と捧げられる代わりに、愛する人に恵みを齎す"自己犠牲"になれたなら。まだ憎む先を見つけることが出来ていれば。
そうすれば『この死には少しは意味があったのだと』、理不尽な死を自己犠牲という尊いものに昇華して、少しは"死"を納得出来る余地は増えた筈だ。
憎しみを誰かに託すことが出来れば、思いというものを託して人々の記憶に残れただろう。彼らの今際の願いすら無碍にしたのだ。
自己を愛するモノの為に消費していく。それは悼ましくも、生命が他者を思いやる優しさから来る美しい行為。
その『誰かの為に』と思いやる今際の優しさを、叶えることすらせず無為に終わらせてしまった数々。
私の恵みを狙って起こった争いと戦争。それらで死んだ大人と、身寄りを無くして荒野で一人寂しく餓死した子供。泣きながら獣に引き裂かれた子もいた。それらは全て私に起因する死だった。
そういったものを全て『見ていて』何もしなかった私。そもそも私が其処に不必要に在らなかったのならば、死ぬことなくそれなりの寿命を終えることが出来ただろう。全部全部私が見殺した者達だ
「だからある時贄の一人が、私に問うた。『何故荒ぶるのか、何故理不尽に人は殺されるのか』と。
私は戯れに、贄と会話したんだ。『何もこうも此処に居るだけだが。死とはなんだ』と。」
「だから贄は純粋に思ったのだろう。これはただただ悪意も善意も何もない『無垢』の赤子の様だと。」
「幸運な事に私はまだ明確な自身の形が決まっていなかった。『ソレ』も形の無い意思あるナニカに代名詞を付けただけ。
その時、初めて明確な意思であった『無垢』という思いに結びついて形作られたのが今の私なんだ。」
人が死ぬ時は特に雑多な思念がより雑多なものになる。痛い、怖い、なんで私だけ、まだ生きてたい。そういった思念に溢れた思いでは、概念や思念を依代に"何かに成る"ことは出来なかった。
仮にその時に別の物と結びついていれば、『無垢』ではなくまた別の存在になっていただろう。
かつて自分が押し潰してしまった無数の日常が眠る資料棚をなぞっていく。ここには沢山の死と思い出が詰まっている。
「その後はこうやって人を学び、寄り添う様になったのが今の私という存在だよ。
過ちと、無垢故の何者にでも成れるという希望という思いを背負い、その象徴として在る。だから『無垢』なんていう名前っぽく無くても、私は『無垢』なんだ。」
「今博物館の館長をしているのは、沢山出来事や記憶を覚えているからだね。昔の事を覚えているということは、それの成り立ちや使い方、そして復元方法も分かるということ。
それこそ博物館の求める人材としては破格なものだろう?」
「…それに私の過ちで滅んでいった子たちの痕跡ぐらいは、しっかりと残して覚えてあげたいんだ。
昔こういう人が居たんだよって教えて残していく。一人でも多く覚えてもらって何かを胸中に残せたなら……
少しはその死が無為なものではなかったと……そう思えるから」
この街にはあるお祭りがある。生誕祭という名のお祭り。この街の人達は既に、何の生誕祭なのか忘れてしまっている程昔からあるお祭り。
"人"の形を得た後、沢山謝って沢山学んで寄り添おうとしてきたモノが生まれた日を記念したもの。過ちを犯した罪人でもやり直せる余地はあるという希望を願う日。
「だから君にも時々ここに来て、色んなものがあったんだって思ってほしい。エゴと呼ばれても、それはするべきだと思ったんだ。
だから館長として、"無垢"故に何物にも染まらない当時そのままの記憶を伝えることの出来る者としてここに居る。……分かった?」
「……長くなったが少しは参考になったかな?今はまだ理解しなくても良い。少しは私の過ちを糧に生きてくれたならばそれで良い。」
引き延ばしていた時間を戻していくと、いつの間にか幼い落とし子は消えていた。いつか形を得た後も幸せに生きて欲しい。
祈る先すら無くて、どうしようもなくなって、膝を抱えて蹲って泣く夜をその長い生涯で背負って欲しくない。
気を緩めて何時も通りのペルソナを被り直す。おとーさん達にはもうこの私を見せたくないから入念に。
訂正した資料を纏めると、電気を消して足早にドクターの元へ帰る。今日はずっとおとーさん達の横に居たかった。
無垢:
人の思念や概念を依代に形作られる情報生命体的な上位存在さん。文字通り人は『親』であり、親殺しをした過去がトラウマになっている。
自らが祈り先の様な存在で、神にすら縋れなくてどうしようもない消せない過去が追いかけてくる。だから一人ベッドの隅で蹲って泣いている夜がある。