イナズマの女帝   作:主要人物の実姉概念が流行ってほしい人

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本作には以下の要素を含みます。
苦手な要素がある方はブラウザバックを推奨いたします。

・オリ主
・独自設定(超次元な設定を含む)
・独自展開、原作とは異なる試合内容
・無双可能な実力を持つ主人公
・原作キャラと血縁関係のあるオリキャラ
・オリジナル必殺技
・一人称「余」の王様(女帝)系長身無乳三年生
・不定期更新

また、お楽しみいただけたらぜひ、感想、高評価、ここすき等をいただけますと幸いです。


こうして、女帝は帝国を去った

 

 

『いよいよ始まります! フットボールフロンティア決勝戦! 帝国学園対木戸川清修中学!』

 

 ――ああ、喧しい歓声だ。

 毎度毎度、嫌気がさす。私の栄光を称える声も、過ぎれば雑音と変わりない。

 

『帝国学園は彼らは今年も玉座を守り、四十年連続優勝という大偉業を現実とすることができるのでしょうか! それとも木戸川清修が帝国を下し、新たな王者となるのでしょうか!?』

 

 苛立ちを呑み込み、悟らせないようにする。

 四十年連続優勝。そこに王手がかかっているのであれば、大衆が騒ぎ立てるのも無理はないと自らに言い聞かせる。

 

『さあ、選手が入場してきます! なんといっても注目は帝国学園キャプテン、二年生の不破(ふわ)煌雅(こうが)! この決勝戦はゴールキーパーを務めるようです! 帝国チームの紅一点でありながら、二年連続でフットボールフロンティアの最多得点を記録するトッププレーヤー! その堂々たる佇まいはまさに女帝!』

 

 合図を受けて、歩き始める。

 降ってくる歓声はより近く、より耳障りなものへと変わる。

 この鬱屈とした気分とは裏腹に、清々しいほどの快晴だ。

 

『さらに今年は天才ゲームメーカーと名高い鬼道有人が加わり、二人の司令塔を有する史上最強のチームとされています!』

 

 小さな溜息が零れる。朗々とした実況は、選手の不愉快など受け取りはしない。

 だが、ただ一人、これに気付く者がいた。

 

「……大丈夫ですか? 不機嫌そうですが」

「喧噪が耳に障っただけだ。お前は気にせずとも良い」

 

 まったく……よく気付く。こちらの顔色さえ窺っていないだろうに。

 

「興が乗らないなら、無理せず休んでください。俺だけでも勝てる相手です」

「決勝に余が一切出ねばそれこそ顰蹙を買おう。下らぬ記録だが、水を差す理由もない。いつも通り、退屈であれば……」

「はい。後半は任せてください」

 

 とはいえ、今回はお前だけに任せることにはなるまい。

 気を害していようと、今日は出場する価値がある。

 木戸川というチームそのものは、フットボールフロンティア全国大会の常連とはいえど、警戒に値する存在ではなかった。……去年までは。

 だが、今年は違う。

 多少なり『やりがい』というものを感じられるのではないかと、そう考えていた。

 

『しかし木戸川にも、今年は稀代のストライカー豪炎寺修也がいます! 決勝戦の結果次第では、最多得点記録を不破から奪う存在となるやもしれません!』

 

 そう――豪炎寺修也。

 あれのシュートは、粗削りながらかなりの力を持っている。磨けば間違いなく光るだろう。

 であれば、今の内に一戦交えておきたいというもの。

 久方ぶりに血が熱くなるかもしれないという、そんな予感があった。

 

「……む?」

 

 ――だが。

 

『おおっと? これはどうしたことでしょう!? 木戸川の選手陣に豪炎寺の姿がありません!』

 

 木戸川の選手たちと向かい合い、実況の言葉を聞いて後方まで目を向けてみれば、確かに白髪のエースストライカーはいなかった。

 今度こそ不満を隠し通せる筈もなく、木戸川のキャプテンを問いただす。

 

「……豪炎寺修也は何故いない。よもやエースを欠いた状態で我らを下すと? 思い上がったものだ」

「ッ、そういう訳じゃない! 今朝、急に連絡がつかなくなったんだよ……!」

 

 向こうのキャプテンの声色に、帝国(こちら)を侮っている様子は見られない。

 彼からしてもこれは想定外で、今の状況に勝機などないと悟っている。

 豪炎寺がいない……?

 不慮の事故か……いや、そうではないと、私の直感は告げている。

 

「だ……だけど豪炎寺がいなくても、俺たちは今年こそお前たち帝国を――ひっ!?」

 

 ああ――煩い、煩い煩い。

 その喚き声を聞くに堪えず、目で黙らせる。

 いないというのなら、これ以上彼らと向き合う理由もない。

 すっかり興が醒め、歩みの重さを感じながらも、守るべきゴールへと向かう。……その必要もないと思うが。

 

「……一体どうしたんでしょうね。豪炎寺は唯一警戒すべき選手だったのに」

「知らぬ。最早この決勝への関心も失せた。……前半にも付き合えん。三点だ、有人」

「分かりました――姉さん」

 

 彼には言うまでもないだろうが、より落胆が伝わったのだろう。

 一層気を引き締めた弟にゲームメイクを任せ、ゴール前に立つ。

 

『さあ、キックオフです!』

 

 ……この会場には学校からバスで来る。事故で一人だけ辿り着けないというのは考えにくい。

 それ以前、学校に来る前に何かあったか。

 そうだとして、偶然の線を可能性から外す。

 豪炎寺修也はサッカーをするために生まれてきたような存在だ。そんな人間が、偶然の事故になど遭うものか。

 であれば……であるのならば。

 

『まずは木戸川、軽快なパス回しで前線に上がっていく! 帝国のディフェンス陣を見事に躱し、早くも最初のシュートチャンス!』

 

 誰かに仕組まれた、その推測を、直感が確信へと変える。

 ああ――このような無粋な真似をする者など一人しかいまい。ふざけたことをしてくれる。

 しばらく大人しくしていたと思ったが、ここまで私が退屈に耐えてきたことへの唯一の酬いを取り上げるなどと。

 

「喰らえ、不破煌雅!」

「――――堕ちよ」

 

 前々から、あれは気に入らぬ男だった。

 サッカーに下らぬ悪意を持ち込むだけであればともかく、妄想、空想で済ませていれば良いものを実行に移す外道。

 可能であれば帝国から追放したかったのだが、あれと生徒では権力の大きさが違う。

 どれだけ気に入らずとも、私には何も出来なかったわけだ。

 

『止めたぁぁ! これが不破煌雅の『勅命』! 手さえ使わず、力ある言葉でシュートを止める必殺技だ!』

 

 ……つまるところ、ここが潮時というものなのだろう。

 サッカーへの情熱が冷めていく感覚は、極めて不愉快ではあるが。

 ちょうど良い機会だ。私も、十分に義理は果たしてやったといえる。

 

『そしてそのまま不破が前線にボールを……いや、これはシュートだ! 強力なシュートが木戸川のディフェンス陣の間を抜けていき――ゴォール! 前半僅か一分! 帝国、先制点です!』

 

 心残りがあるとすれば、有人や後輩たち。

 とはいえ、私がおらずとも問題ない程度には鍛えられている。

 これから先は、また異なる帝国になっていく。それだけのことだろう。

 

『鬼道が奪ったボールを不破へバックパス! 間髪入れず放たれたシュートが木戸川ゴールに突き刺さる! 帝国、二点目を決めます!』

 

 ゆえに、これは手向けだ。

 ここからの帝国に女帝がいない以上、最後にこの威光を民に焼き付けてやろう。

 

『おぉっと! 不破が悠々と歩いてセンターラインまで上がっている! そして佐久間から受け取ったボールをシュート! ゴール! 不破、たった五分でハットトリックを達成しました!』

 

 未練はない。私が輝く価値もないフィールドに、これだけの輝きを残した。

 大会最多得点とかいう称号まで受け取ってやったのだ。民も不満はなかろう。

 有人と視線を交わし、彼が頷いたのを見て、ベンチへと向かう。

 まだ前半も長いが、木戸川の戦意は既に砕けた。私が下がったところで、立ち直れるようなものでもあるまい。

 

「源田、行け。後のゴールは貴様に任せる」

「はいっ!」

 

 あの男がいちいち指示をしてこないなどいつものこと。私の采配に対する文句は、当然のようになかった。

 問題はないと、あの男も認めているのだ。

 源田は一年でありながら決勝に至るまでゴールを守り通してきたのだ。

 豪炎寺のいない木戸川であれば、無失点で終えられるだろう。

 

 ベンチに腰を下ろし、目を閉じる。

 この喧噪で微睡める気もしないが、意識を思考の海に沈めていれば、多少は心も穏やかになろう。

 どうせこの後、表彰式で煩わしいやり取りをせねばならないのだ、少しは落ち着いておかねば。

 

 

 +

 

 

 そうして、消化試合にもほどがある決勝戦を終え、帝国への帰途。

 私は車両の最後方に設えられた一室の玉座で、しばしの仮眠から目を覚ます。

 腕時計の示しているのは出発から三十分後。帝国に着くにはまだ時間がかかる。

 

「お目覚めですか」

「……うむ」

 

 この部屋に許可なく入ってくる者など二人だけ。

 一人はあの男……あれは別の車に乗っている以上、あとは我が弟(有人)しかいない。

 

「……退屈。実に退屈な大会であった。今日の試合だけではない。今年の帝国は、実に完全無欠といえた」

「すべて姉さんの功績です。四十年目の優勝……帝国の歴史に深く刻まれることでしょう」

「余は今回、大半の試合をお前に組み立てさせた。その真意を見抜けぬお前ではあるまい。つまらぬ世辞で己が功に瑕をつけるな」

「……すみません」

 

 他の者が私の威光に目を潰すならば好きにすればいいが、有人にそれがあってはならない。

 有人は私の繰り返しにはなれない。ゆえに、まったく異なる選手となる必要がある。

 

「お前はゲームメイカーとして十分な経験を積んだ。後は己の意思で磨いていけ」

 

 珍しく、きょとんとした表情を浮かべた有人にキャプテンマークを投げ渡す。

 強いて言えば、こうした想定外への対処速度に難があるな。

 だがそれも、司令塔という立場を徹底していれば否応にも鍛えられよう。

 

「ま、待ってください姉さん、どういうことですか?」

「余は帝国を去る。ここから先、帝国を統べるのはお前となる。良いな」

 

 女帝が帝国を去る、か。笑い話にもならん。

 ここに未練を感じられない辺り、心底から冷めてしまったのだ。

 

「何を……何を言っているんですか! まさか、まだ寝ぼけて――」

「うろたえるな、たわけ。これは余の決定である。口を挟む許可を出したか?」

「っ……理由を……理由を教えてください。俺たちは、姉さんの期待に応えられなかったんですか……?」

「言った筈だ。今年の帝国は完全無欠だった。何も障害はなかった――お前たちに非はない」

 

 戸惑いを隠さない有人に……サッカーを強く愛する弟にこれを告げるのは、聊か憚られたが。

 だが、やはりここにきて、自分を偽ることなどできなかった。

 

「余は、サッカーに飽いた。理由はそれだけだ、有人」

 

 

 +

 

 

 相変わらず悪趣味だ。入室して早々に、溜息が零れる。

 帝国は全体的に物々しく、華美さが足りない。教室や部室もたいがいだが、この部屋に比べればいくらかまともだといえる。

 薄暗く、目立った調度品もない、無駄に広いだけの部屋。予算の無駄遣いもいいところだ。

 

「――二年経っても、ノック一つ学べんとは。ほとほとお前の将来が心配だよ」

「礼儀を示すべき相手は選ぶ。貴様がそれに含まれるなどと、思い上がっている訳ではあるまい」

「お前が女帝などと誉めそやされるまで、誰が育ててやったと思っている?」

「余だ。余の意思で、余の才を磨き、余の力を以て結果を出した」

 

 何を勘違いしているのか。私以外が私を強くできる筈もなかろうに。

 はじめに才があった。次に意思があって、力を実らせた。

 この男が私に与えたものがあるとすれば、数えきれないほどの不愉快さだけだろうに。

 

「……お前につける薬はないな。それで、何をしにきた。私を煩わせるためであれば、他のまともな趣味を見つけろと言うほかないが」

「業腹だが総帥たる貴様には告げておかねばなるまい――影山零治」

 

 サングラスの奥の瞳はパソコンに向けられ、何かの資料を速読している。

 こちらにはさして意識を傾けてはいないのだろう。

 癪ではあるが、耐えるほかあるまい。この男……影山に対して何か思うことはこれが最後だ。

 

「受け取れ。必要な書類を作成してもらう」

「……何のつもりだ?」

 

 転出のための書類を影山の机に放り投げる。

 しばしの沈黙の後、投げてきた問いは簡潔なものだった。

 

「決勝の日、豪炎寺修也に何かしたのだろう。余の覇道を汚すなと、入部の際に口にした筈だが?」

「子供の癇癪ほど醜いものはないな。思い通りの試合ができず、不貞腐れて学校を出ようという訳だ。それで? 証拠は提示しないのかね?」

「ああ。示せる証拠は余の確信だけだ」

「話にならんな。早く出ていきたまえ。私は暇ではない」

 

 書類に手をかけ、破ろうとする影山。

 相手にされないことなど分かりきっている。だが、そもそも今日は許可を受けに来た訳ではない。

 

「既にサッカー部の面々には話をしている。余が帝国を去ることも、サッカーを辞めることもな」

「……癇癪で栄光を捨てるつもりか?」

「将来に必要なものはすべて身に付けた。有人はともかく、余にサッカーは必要不可欠なものではない」

 

 有人がサッカーに打ち込み、司令塔として経験を積むことに、他の目的が含まれていることは分かる。

 鬼道財閥の後継者を約束された彼は、少なくともまだサッカーを辞めることができない。

 だが、私にとっては違う。

 熱意が冷めたならば、誰かが覇道を汚したならば、これ以上続ける必要もない。

 

「心配せずとも、有人は帝国に残ることを選んだ。帝国の不敗神話に揺らぎはあるまいよ」

「……」

 

 ……その点に関しては、思うところもないではないが。

 それでも、有人の人生は有人が築くべきもの。私の我儘に付き合わせる理由はない。

 

「二年間、フットボールフロンティアの優勝はくれてやった。いずれの試合も完勝でな。まだ不満があるとは言うまいな?」

「……好きにしろ。お前の自分勝手に頭を痛めることがなくなるのであれば私にとっても朗報だ」

 

 破こうとしていた書類を机の脇に置き、影山は視線をパソコンに戻す。

 話は終わった。これ以上、この部屋にいる必要もない。

 踵を返し、教室に戻る。無駄に長い廊下を歩くのは、毎度億劫になる。鞄も持ってきていれば良かったな。

 二度目の溜息。

 サッカーへの別離は殊の外、些細に終わった。その程度のものだったかという、僅かな違和感を覚えつつも、それを深堀りはしない。

 

 ――その一週間後、私は帝国を出た。

 転校先は、サッカーにおいては今や無名……というより、存在しているという話も聞かない学校。

 かつては今の帝国のように、最強の名をほしいままにしながら、栄光は帝国に奪われ、あっという間に勇名は凋落した。

 

 その名は雷門中。都内屈指の規模を持つ私立中学である。




不破(ふわ)煌雅(こうが)
原作開始一年前における帝国学園のキャプテン。二年生。
女子でありながら、入学時から圧倒的実力で中学サッカー界に勇名を刻んだ天才。
ポジションに縛られないオールラウンダーで、時にはゴールキーパーさえこなす。
尊大で威圧的な性格と、帝国チームの頂点という立場から付けられた異名は「女帝」。
弟妹に鬼道有人、音無春奈がいる。
二人と同じ孤児院にいたが、彼らが鬼道家、音無家の養子となった時期、別の孤児院に転院した。
鬼道と姉弟であることは公にしてはいないものの、帝国内では二人が互いへの態度を隠してはいないため、それなりに知られている。

ミディアムの青みがかった黒髪に、切れ長の目。瞳は赤混じりの黒。
私服の際は眼鏡をかけているが、視力の矯正の意味合いはない伊達眼鏡。
女子としては高い百六十センチ台後半の身長。自身の体には一切の恥はないと断言するが、無乳とさえいえるほどの絶壁であることを気にしていない訳ではない。
試合の時はユニフォームの上に、軍服のような黒いアウターを肩に羽織るタイプ。

【帝国学園サッカー部】
フットボールフロンティア四十年連続優勝を成し遂げた、中学サッカー界最強とされるサッカーチーム。
選手の個人技量もトップクラスだが、その真価は寸分の乱れもない連携にある。
フィールド上に二人の司令塔を置き、多彩な戦術パターンを自在に切り替える戦法は対応不可能とされる。
司令塔の一角である不破が参加する連携必殺技がないことを隙として攻めようとした相手もいたものの、不破の技量がきわめて突出していたため弱点として機能していなかった。

【帝国VS木戸川清修】
フットボールフロンティア決勝戦の対戦カード。
過去最強とされた帝国の守りを、稀代のエースストライカーと評される豪炎寺修也有する木戸川の攻撃力が攻め崩せるかが注目されていた。
しかし豪炎寺は決勝の舞台に現れず、木戸川は決定的な攻撃力を欠くことになる。
結果、不破の開始五分でのハットトリック達成に始まる帝国の攻勢で、終始木戸川は試合のペースを握れず、8-0の大差で帝国が完勝した。
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