二人目の護衛(更新停止中)   作:ヨシュア13世

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キャラ紹介は後書きでさせていただきたいと思います。

このサイトでの投稿は初めてなので色々と拙い所がありますがどうかご容赦の程お願い致します。
誤字・脱字には気をつけているつもりですが読者様で発見された場合、連絡頂けたら速やかに対応させていただきたいと思います。

それでは拙作でありますが、どうぞご閲覧くださいませm(__)m


-序章-
共学試験生


「では、今日から改めて孫娘のこと、よろしく頼むぞい」

 

早朝……ここ、麻帆良学園の学園長である近衛近右衛門から学園長室に来るようにと先日達しがあり、そうして来て早々に本題を切り出された。

 

「はい」

 

そもそも達しの意味が分かっていた俺は返事をして頷いた。……それは俺がこの学園に在籍している事に関係するだろう。

 

「とつぜん男子中等部から女子中等部に移るのは大変じゃと思うがここは一つ、頑張っての」

 

「ええ、問題ありません」

 

先程の話に出て来た『孫娘』の護衛。それが俺の役目であり、この学園に在籍している理由である。そして、さらにその護衛のために俺は男子中等部から女子中等部に移される事になった。

 

「ほ、言い忘れとった。……くれぐれも『魔法』は人に見られてはいかんぞ?」

 

「分かってます」

 

自分では良く分からないがどうやら俺の腕が買われたらしく、護衛任務の話がきた。

 

「それと、女子中等部の校舎は初めてじゃろうから孫に案内を頼んでおいたぞい」

 

「それは……どうも」

 

別に道に迷おうが護衛出来ればそれで良いんじゃないだろうか? わざわざ大事な孫を野放しにする意味が分からない。約1年間見た限りでの学園のセキュリティを疑っているわけではないが……。

 

などと考えていると、後ろから戸を叩く音がする。

 

「おー、待っておったぞ」

 

「失礼します~」

 

「……失礼します」

 

どうやら件の孫娘が来たようだ。だが来たのは一人ではなく、おっとりとした表情を浮かべている生徒と何やら不満気な顔をした2人の女生徒だった。

 

「うむ。では予め言っておいたように彼を教室まで案内してくれんかの」

 

「うん、わかったえ~」

 

少し間延びした声に黒く長い髪。彼女の名は近衛木乃香。学園長こと、近衛木之衛門の孫娘……即ち俺の護衛対象である。そしてもう一人は髪を二つに結っているが……一体誰だ?

 

「……」

 

「アスナどうしたん?」

 

アスナ……と言うのが名前か。何故押し黙っているかは不明だが……まぁどうでもいいな。俺の任務とは関係のない事だ。

 

「やっぱり反対です! 学園長!!」

 

「ほ?」

 

「?」

 

「ひゃあ! びっくりしたぁ……アスナどないしたん?」

 

何を思ったのか、いきなり大声を出して机を叩き出した。情緒不安定なのだろうか?

 

「なんでいきなり「共学」なんですか!?」

 

「まあまあアスナ落ち着いて……」

 

「これが落ち着けるわけ無いでしょ! 共学よ共学!? 男子が混じんのよ!? 木乃香はどうなのよ、嫌じゃないの? もう気楽に体重増えたとか胸おっきくなったとか話出来ないのよ!?」

 

「今普通に話しとるやん……あや?」

 

アスナにそう指摘した後、対象は俺を見て首を傾げた。なんだ? 何か問題でもあったのだろうか。

 

「?」

 

「あれ? ウチら……どっかで会うたこと無い?」

 

「!」

 

「へ?」

 

「なんじゃと!?」

 

学園長が一番大きく反応した……? ……まぁいい。一応不自然ではない程度に答えておこう。

 

「……いや、他人の空似だろう。俺の記憶では会ったことは無い」

 

「そっかなぁ? でもどっかで見たような……」

 

本当は……小さい頃に一度だけ会った事がある。しかし、微かにでも俺のこと覚えているとは……。それに俺の事は覚えている必要はないし、覚えていた所で、だ。そして何故か学園長が俺を睨んでいるが……気にしない事にしよう。

 

「――とりあえず部屋を出ないか?」

 

「あ、せやな。ほら、アスナもずっと文句言ってないで早よ教室いくえー」

 

「……分かったわよ」

 

まだ言っていたのか……? 学園の決定事項に一学生の意見が通るとはとても思わないが……。

 

「ほ、そうじゃまた忘れとった」

 

「「「?」」」

 

俺を含めて三人が同時に振り向いた。今度は何を忘れたんだ? 少なくともここには一般人が二人いる。魔法や仕事の関係ではないはずだが。

 

「共学試験中、君は女子寮に部屋を設けておるからそこで過ごすようにの?」

 

「……」

 

「ええええぇ~~~!?」

 

アスナが叫んだ。その感覚は分からないが女子にとってはキツイらしい。だが、問題はそこではない。この仕事を請け負ったハズである俺がその事を知らされていなかったと言う事が問題だ。

 

「どういうことですか、学園長。俺も初耳ですが……」

 

「ふぉっふぉっ。そりゃそうじゃろ、ワシも今まで忘れておったからの」

 

……食えないじいさんだ。忘れた、と言われてしまってはどうしようもない。

 

「うちは別にかまへんけど……」

 

「どーしてよ!? おかしいでしょ! 共学ならまだしもなんで寮にまで男子がいることになるのよ!?」

 

それにしてもさっきから騒々しい奴だ……。聞くに堪えん。

 

「詳しい事は高畑先生かしずな先生に聞くと良いじゃろう」

 

「……分かりました」

 

女子寮にまでいる必要性は皆無だと思うのだが……それも任務だというなら仕方ない。従うしかないだろう。

 

「放課後にうちらが寮まで案内したげるな~」

 

「……どうも」

 

「ええって、ええって。どうせうちらも寮やし、それに……あ」

 

「?」

 

「そーいえばうちらまだお互いに名前しらへんなぁ」

 

俺の方は資料を受け取っているから名前と簡単な人となりだけなら知っている。しかし、一応世話になることになったので挨拶ぐらいはしておかないと変だろう。疑われたら後々面倒だ。

 

「……青山紅。よろしく」

 

「うん、こちらこそ~。ウチは近衛木乃香やえ。よろしゅうなぁ~」

 

「ああ」

 

「ほんで、こっちが……」

 

「だからなんで女子寮に男子が……!!」

 

「まぁまぁ、アスナちゃんや。落ち着きなさい」

 

……本当に騒々しい奴だな。何をどうしたらそこまで煩くなれるのか真剣に問うてみたいものだ。

 

「ほらー、アスナも自己紹介せんとー」

 

「……神楽坂明日菜よ」

 

異様にぶっきらぼうに挨拶された。まぁ、丁寧な挨拶を期待していた訳ではないが。

 

「……ああ」

 

「で、いつまで学園長室におるんじゃ?もうすぐ予鈴が鳴るぞい?」

 

「へ?」

 

「あ、ほんまや」

 

「そのようだな」

 

学園長に言われて時計を見ると、確かに予鈴が鳴りそうな時間だった。

 

「ちょ、ちょっと何あんた達のんきなこと言ってんのよ!?」

 

「ほぇ? だってまだ間に合うし~」

 

「俺はまず職員室に行って顔合わせをする必要がある」

 

なんでも、教室には担任の先生と一緒に行く予定のようだ。

 

「そうなん? ん~、ならついでに職員室まで案内したげるな」

 

「手間をかける」

 

「いえいえ~、ほな行こか~」

 

「ちょっと待ってよ木乃香! 職員室まで行ってたらほぼ確実に遅刻……」

 

「う~ん、でもこーちゃん一人だとこっちの校舎の職員室まで道分からん思うし……」

 

「……ちょっと待て」

 

「プッ」

 

コイツ、笑いやがった。

 

「うん?」

 

「なんだ、そのこーちゃんとは……」

 

「え? だって名前が紅やからこーちゃん。……変かな? 青山の青ちゃん言うのもなんやビミョーやし……う~~~ん……」

 

「……まぁいい。好きに呼んでくれ」

 

特に気にすることでもないだろう。約一名笑ってはいるが。

 

「そうけ? ほな、はよ行こかー。あ、ウチの事はこのちゃんでえーよ?」

 

「近衛と呼ばせてもらう」

 

「あや」

 

そうして漸く学園長室を出た俺達。さて、早く職員室に行って顔合わせしておかなければ。

 

「まったく……しょうがないわね」

 

「アスナも遅刻になりそうなのにすまない」

 

「もう良いって。木乃香は一度言ったら頑固だし」

 

「……みたいだな」

 

不思議と近衛には押し切られてしまう。

 

「――って、なんでアンタに名前で呼ばれなきゃなんないのよ!」

 

「む? 近衛がそう呼んでいたからそう呼んだ方が良いのかと思ったのだが……違うのか?」

 

周りと合わせるために呼び方等も変えるつもりだったのだが……。対象の方は、学園長が物凄い殺気で睨んできたから止めておいた。他の気配が察知しにくくなって困る。

 

「親しくない奴にいきなり呼び捨てにされたくないって話よ!」

 

「……分かった神楽坂。これで良いか?」

 

「最初っからそうしなさいっての……」

 

「ほな、いくえ~?」

 

それから対象について行き、職員室と書かれたプレートが下がっている部屋まで着いた。

 

「ここが職員室やよ」

 

「すまない、助かった」

 

「いえいえ、どういたしまして」

 

「あっ、木乃香! もうすぐ予鈴が」

 

そう言ってる間に響くチャイムの音色。

 

「あ」

 

「……鳴ったな」

 

と言う事はあと五分で始業か。……間に合うのか? これは一応自分の責任になる……そう思うと申し訳ないな。

 

「ギャ――!? 早く行かないと遅刻ぅ~!!」

 

「あはは……、ほなまた後でな~」

 

対象は騒ぐ神楽坂を見て苦笑いし、俺に手を振って走って行った。

 

「……はぁ、騒々しい」

 

近衛木乃香……か。昔と変わってないな。かく言う俺も彼女の記憶は朧気だ……。まぁ、今は職員室に入る事が先決だろう。確か担任は高畑先生……だったな。

 

「失礼します。今度女子中等部に移ることになった青山ですけど……高畑先生はいらっしゃいますか?」

 

戸を開けて職員室に入ると、俺の他に女子中等部に移ることになった奴らが既に集まっていた。

 

「……ふむ」

 

そう言えば……高畑先生がどんな人か知らないな……。どうしたら良い物か……。

 

「やぁ、君が今日からうちのクラスに来ることになった子かい?」

 

「っ!?」

 

突然後ろから男性の声がしたので、驚いて振り向くと……。

 

「おお? いやぁ、すまないすまない。驚かせるつもりは無かったんだが……」

 

「いえ、その……高畑先生ですか?」

 

後ろにいたのは30代くらいの男性。だが……俺が全く気配を感じなかった……? 多少警戒は緩めてしまっていたとは言え、こうも簡単に背後を取られるなんて……。相当な使い手か……? 見た目は普通の人に見えるが……やはり、外見では判断は出来ないな。

 

「ああ、そうだよ。僕は高畑=T=タカミチ。君は?」

 

「この度、女子中等部2-Aに共学試験生として配属される事になった青山紅と申します」

 

「青山……?」

 

マズい……気づかれたか? 『師匠』いわく、この苗字は有名のようだからな……。気をつけないとダメか。ここで動揺した素振りを見せては素性がバレかねない。あくまで俺は普通の生徒を演じなければならない。自然かつ確実に対象の護衛をするためには。

 

「あの、なにか?」

 

「うん? ああ……いや、なんでもないんだ。それじゃ青山君、教室に行くとしようか」

 

「はい」

 

「あ、高畑先生お電話です!」

 

廊下に出た直後、職員室から高畑先生を呼ぶ声がした。

 

「僕に電話? う~ん、参ったなぁ……」

 

「高畑先生、私が代わりに連れていきましょうか? ちょうど今手が空いてますし」

 

「しずな先生……すみません。では、お願いします。青山君、すまないね」

 

「ええ、任せて下さい」

 

「いえ、お気になさらず」

 

そう言って高畑先生は職員室に戻って行った。仕事か……俺の事でないと良いが。

 

「さて、私は源しずな。みんなからはしずな先生って呼ばれてるの。貴方は?」

 

「青山紅と言います。お世話になります」

 

「はい、よろしくね。それでは、行きましょうか」

 

柔和な笑みを浮かべ、俺を先導するように歩き出した源先生。この人が学園長が言っていたしずな先生と言う人か。……一応、覚えておくか。

 

「準備とか手続きとか大変だったでしょう? いきなり男子中等部から女子中等部だなんて」

 

「いえ、特にそうは感じていませんが……」

 

元々俺個人の荷物は無いに等しい。それに手続きは学園側にされていたので特に大変だったと言う事は無い。

 

「なら良いのだけど……これから貴方のクラスになるA組はクセの強い子ばかりだけど、頑張ってね」

 

「確かにあんな奴がいたら問題も起こりそうだな……」

 

学園長室でのやり取りを思い出してそう呟く。聞くところによると、俺が入る事になる2-A組は良い意味でも悪い意味でも結構問題のあるクラスらしい。

 

「?」

 

「なんでもありません」

 

「さぁ、先に入って」

 

「はい」

 

教室の前に着き、促されるままドアを開けた瞬間、俺の目の前に黒板消しが落ちた。俺の癖で、罠を警戒してやや下がってドアを開けたのでそのまま落ちてしまったようだ。俺は何事も無かったかのように黒板消しを黒板に戻し、教卓の横に立った。

 

「はーい、みなさーん前々から言ってたように今日から一緒に勉強する子を紹介します」

 

どうやら黒板消しの事は無かった事になったらしい。

 

「ハイ、では自己紹介して」

 

「この度、共学試験生として男子中等部から来ました、青山紅です。皆さん、どうぞよろしく」

 

簡潔に自己紹介をして、俺が頭を下げた瞬間……。

 

「「「「「いらっしゃーい!!」」」」」

 

「っ」

 

いきなりの大声に少し驚いた。良くそこまで大きな声が出せるな……。人数が多い分の波状効果かもしれないが。

 

「男子中等部からようこそー!!」

 

「これからよろしくねー!」

 

「好きな食べ物はー?」

 

歓迎の言葉やらいきなり質問が飛び交う。……騒々しい。今日はやたら騒々しい日だな。ここまでとは想定外だ。

 

「はいはーい、みなさん静かに。ではまず自己紹介からね。質問はそのあと」

 

やはり質問はされるか……こればかりは諦めるしかないようだな。

 

「じゃあ出席番号順にね」

 

「じゃあ私からだにゃ~! 私は明石祐奈、趣味・特技はバスケットボールだよ、よろしく~!」

 

と、なぜかバスケットボールを抱えながら。教室に持ち込んでいいのか?

 

「んじゃ次は私だね、私は朝倉和美。通称は麻帆良のパパラッチって言うの。よろしくっ!」

 

「……」

 

今度はカメラか……。しかし、たかが自己紹介でこんなに盛り上がれるものなのだろうか……? そんなどうでもいい疑問を抱きつつ俺は騒々しいクラスメイト達を見回した。全員が全員、好奇の目で見ている。当然……か? このクラスに男子は俺一人……。

 

「……む?」

 

ふと対象の方に目を向けると、笑顔でこっちを見ていた。そして全員の自己紹介が終わり……。

 

「全員自己紹介は終わったわね? それじゃあ青山君の座る席だけど……あそこが空いてるわね。一番後ろの窓際よ」

 

「分かりました」

 

先生に言われた通り、窓際の一番後ろの席に座る。

 

「じゃあ皆さん、私はこれから用事で出ますけど騒いだりしてはいけませんよ?」

 

「「「「ハーイ!!」」」」

 

ほぼ全員がそう叫ぶ。……これは騒いでいる内には入らないのだろうか。

 

「そうそう、言い忘れてたわ。彼は共学試験が終わるまでの間、女子寮に住むことになってるから……みんな、寮でも仲良くしてあげてね?」

 

俺は仕事だからと割り切ってはいるが……それ以前に神楽坂のように反対するのが普通だと思うのだが……。

 

「「「「あははー、寮でもよろしくねー!!」」」」

 

どうにも俺の認識は甘かったらしい。……何故だ? 最近の女子は皆こうなのか?

 

「何でよっ! 流石におかしいでしょ!! なんで女子寮に男子を入れなきゃなんないの!?」

 

……ああ、神楽坂か。どうやらまだ納得がいってなかったらしいな。もう無駄だとは思うが。

 

「えー? 別に良いじゃん明日菜ー。面白そうだしー」

 

「……」

 

面白いのだろうか?

 

「良くないわよっ!」

 

「なんでー?」

 

「あたしは高畑先生みたいなオジサマならともかく、こんな同級生の落ち着きが無い男は大っ嫌いだからよ!」

 

すごく個人的な意見だ。それと、人に指を突きつけるなと教えられなかったのだろうか?

 

「そうけ?」

 

「はぁ……さっきからギャーギャーうるさいですわよアスナさん!」

 

傍観者気取りでそんなやり取りを眺めていると、立ちあがって神楽坂に向かってそう言った人物がいた。確か……雪広、だったか? ……まだ全員把握しきれないな。把握する意味があるかは分からないが。

 

「何よ! いいんちょはおかしいとか思わないわけ?」

 

「確かに最初は思いましたわ」

 

「だったら……」

 

「だからと言って私達学生の身分で学園の決めた事に逆らうなど10年早いとは思いませんこと? 学園長先生だってそれなりの考えがあるでしょうに」

 

どうやら頭のいい人間のようだ。その分敵に回すと面倒になりそうだが。

 

「うっ……それは……」

 

「だいたいあなたの反対する理由は個人的過ぎます! 何ですか高畑先生ならともかくとは、それこそ教師と生徒。なおさら駄目に決まっているじゃありませんか!」

 

「そ、そんなの分かんないじゃない! 誰も試したこと無いんだから!」

 

試さなくとも分かる事を敢えてする必要があるのだろうか? そんな無駄な事をしている暇があるなら一般的な学生らしく勉強でもしていたら良いだろうに。

 

「……まぁ、確かにそれはそうですわね、倫理的にはアウトですけど」

 

「……」

 

要はダメと言ってるじゃないか。

 

「でしょ、でしょ?」

 

「しかし! 今一番落ち着きが無いのは他でもないアスナさん、あなたではありませんこと? 少なくとも青山さんは落ち着いている男性だと思いますけれど?」

 

「うっ……うぅ……」

 

あの騒々しいのを窘めるなんて……やるな。……などと感心してるのは俺だけでなく。

 

「流石いいんちょー」

 

「やるぅ~」

 

などとあちこちから聞こえた。ところで対象……はやはり笑っている。良くこの状況でも笑っていられるな……。そして神楽坂は……

 

「分かったわよ、仲良くすりゃ良いんでしょ仲良く!」

 

何故か怒り出した。あと誰も仲良くしろとは言ってない。

 

「改めて神楽坂明日菜よ、よろしく」

 

最初の挨拶と同じく、ぶっきらぼうに言って右手を出して来た。これは……握手と言う事か?

 

「……よろしく」

 

「じゃ、私は他に仕事があるからこれで行くわね。みんな、くれぐれも静かにね」

 

源先生が出て行った。まだいたのか先生……完全に忘れてたな。そうして源先生が外に出た途端……。

 

「さーて、皆さんお待ちかねのしっつもんターイム!!」

 

「へぶっ!?」

 

と、一番前の席の朝倉? が俺と握手していた神楽坂を押し退けてそう言い出した。だが俺は待ってなどいない。むしろこのまま解散してほしいくらいだ。

 

「「「「イエーイ!!」」」」

 

「好きな食べ物は?」「趣味は?」「休みの日とか何してるの?」

 

などと、みんな声を張り上げて質問してくる。……騒ぐなって言われなかったか……? それに一斉に言われても何を言っているのか分からん。

 

「皆さん!!」

 

そこに、再度雪広が立ち上がった。

 

「そんなに一斉に質問をしたら青山さんが困るでしょう! 質問をするなら一人ずつ順番になさい」

 

「確かにそうね」

 

一人がそう呟く。くっ……結局質問されるのか。

 

「なら、改めてみんな質問がある人は順に並んでー!」

 

「好きな食べ物はなに?」

 

「……いや、特には」

 

しかし、朝倉が言い終わる前には既に質問があると言う奴は並び終えていた。なんだこの無駄な団結力は。……そして質問が始まり、それに答える度に教室が沸く。……俺の答えは変なのだろうか?

 

「趣味はなにかある?」

 

「……特にこれと言ったのはない」

 

「本は好きですか?」

 

こいつは確か……綾瀬だな。対象の近くにいたのでついでに覚えた。確か本は好きか、と言う質問だったか?

 

「本は読むが、好きか嫌いかと聞かれると分からない」

 

確かに読んではいるが、好きか嫌いかなどと意識したことはない。ただ読んでいるだけだ。

 

「ほぅ……。ならどんなジャンルを読んでいるですか?」

 

「あ、ずるーい! 夕映吉、質問は一人一つだよー!」

 

「え?」

 

明石……だったか? 綾瀬が2つ目の質問をした時に声を上げた。別に数なんて決まっていなかった気がするが……。

 

「そうでしたか。それは残念です」

 

「ハルナ、のどか、このかさん、後は頼んだですよ」

 

暗黙の了解。と言うやつなのか? 大人しく席に戻った綾瀬は綾瀬で何やら対象を含めて数人に言っている。そうして対象の番が来た……何を質問されるのか。

 

「うーんとな~」

 

「……」

 

悩んでいる。さっき綾瀬達と何か決めていたのではないのか?

 

「こーちゃんはもうどんな部活に入るか決めとる?」

 

「「「「「――――――」」」」」

 

対象が言った瞬間、教室が凍りついた。いきなりあだ名で呼べば驚きもする……。目立ちたく、無かったんだがな。いや、それはここに俺がいる時点で無理と言う物か。他のクラスには2~3人行っているのに対して、こちらは一人だからな……。

 

「部活……」

 

「部活」

 

「プッ……ククク」

 

しかし、凍りついた原因は俺の予想に反して、みんな部活の方に意識が向いていた。……あのあだ名はそこまで目立たないものなのか? 試しに神楽坂の方を見ると……笑っている。どちらが正しいのだろうか?

 

「いや、特に決めてないな。まだ来たばかりだから、こちらに慣れるまでは帰宅部でいるつもりだ」

 

やがてみんなの視線が俺に集まったのを感じ……無難に答えておいた。どのみち部活などやっていては、任務に支障をきたすから入るつもりはない。

 

「ほぅほぅ、ありがとな~」

 

「じゃ、次は私の番ね」

 

確か早乙女……だったな。さっと対象の方を見ると早乙女をジッと見ていた。なんだ? さっきの部活の話の続きか? それとも綾瀬が言っていた本の話か? 質問を待つと……。

 

「ケータイ持ってる? 持ってたら番号教えてくれない?」

 

「あ、私も知りたい!!」

 

「私も私もー!」

 

早乙女の質問を皮切りに、その声が続出した……。携帯の番号を聞いてどうすると言うのだ?

 

「まあまあみんな落ち着いて。私が聞いた後みんなに教えたげるからさ」

 

「で、ケータイ持ってる?」

 

「まぁ……一応」

 

何故か視線が集まってるんだが……まぁいい。

 

「出して出して」

 

「あ、ああ」

 

俺は言われるままにズボンのポケットから携帯を取り出して机の上に置いた。任務用とは別のダミー携帯、いわゆるプライベート用と言う奴だ。……使った事は無いが。

 

「へぇ~……じゃ番号教えて?」

 

「それなら後で返してくれればいい」

 

携帯を早乙女に渡した。どうせ使っていない携帯だ。壊れても構わん。

 

「サンキュー、じゃあ後で返すね~」

 

早乙女は席に戻り、他の人間も集まっていた。……席に残っているのは

 

「青山……? まさか……な」

 

何故かこちらを睨んでいる少女。名乗られた記憶はないので名前は知らない。

 

「……」

 

全く興味無さそうな褐色肌の少……女? どう見ても俺より同年代には見えないが……まぁ、鳴滝とか言うどう見ても小学生に見える双子もいる事だ。気にしないでおこう。

 

「……」

 

あの、お手玉をしてるのは……サーカスとかそこらの女か? 妙な気配がするが……害意は感じないから今は問題ないだろう。

 

「んー……」

 

他には長瀬とやら……ぐらいか。サーカス女は分からないが他の3人……強いな。隙が無い。どれくらい強いのだろうか? 仮に敵に回られたらどう対処すれば良いかも考えなくてはならない。

 

「さて……」

 

放課後になり、とりあえず教室で対象を待っているのだが来る気配がない。

 

「こーちゃ~ん」

 

「……来たか」

 

俺をそう呼ぶのは一人しかいない。それ故にすぐに分かった。

 

「ん?」

 

「いや、何でもない。早速で悪いのだが寮までの案内を頼む」

 

「あ、んっとな? まず寮の前に校内をちょっと案内しよう思てんけど……どう?」

 

「そう言えば……男子エリアとは違うのか」

 

学園長からの話では、女子エリアと男子エリアでは造りが多少違うらしいが……どうしたものか。

 

「……もしかして迷惑やった?」

 

「いや、問題ない」

 

特に拒否する理由も無かったのでそう答えておいた。あまり邪険に扱う必要もない。もちろんその逆も然りだが。

 

「良かったぁ~、なんや考え込んでたみたいから……」

 

「それはすまなかった。他意はない」

 

意外と見られているな……。念のため、もう少し気を付けるか。

 

「ところで、案内してくれるのは助かるが近衛一人なのか?」

 

「ううん。外にハルナと夕映とのどかがおるえ~」

 

確かに対象の言うとおり、教室の外に3人ほどの気配がある。しかし……名前で言われても分からん。まだ苗字しか把握できていない。それも全員ではないのだから。おそらく、早乙女・綾瀬・宮崎だとは思うが……。

 

「それなら行くとしよう」

 

「お~」

 

「あ、やっほ~」

 

「どうもです」

 

「あ、ああのどどどうも」

 

教室から出るとやはり早乙女に綾瀬に宮崎が待っていた。質問されてる時にも見たが、仲が良さそうだったな。

 

「今日はよろしく頼む」

 

「うん。うちらに任せとき~」

 

「任せて下さいです」

 

「ご、ごごごご期待に添えられないかも知れませんが……」

 

俺が頭を下げると、三者三様に返して来た。だが、その中で早乙女だけが黙っていた。

 

「……い」

 

「?」

 

何だ?

 

「ハルナ?」

 

「どうしたですか?」

 

「かった―――い!!」

 

「?」

 

硬い? 何がだろうか。頭? 確かに、魔力を込めれば岩くらいは割れるだろうが……。

 

「ひゃっ」

 

「あうっ」

 

「ひぅっ!!??」

 

いきなり早乙女が大声を出したのでみんな驚いたようだ。

 

「固い! 固すぎるよ青山君! もっとフランクに出来ないわけ!?」

 

「いや……怒鳴られても困るのだが」

 

「ハ、ハルナ落ち着いて……」

 

「そうですよハルナ。青山さんは来たばっかりなんですからいきなりは無理だと思うです……」

 

「う、うん。私もそう思うー……」

 

「なんでよ!? せっかくの女子中等部よ? 可愛い子いっぱいで口説くのにも困らないのに!? それにのどかだって、男性恐怖症のくせに普通に話せてるじゃない!!」

 

困ったな……こう言う時の対処法は知らないな……。

 

「しっ、失礼ですよハルナ! さすがにその言い方は」

 

「さ、さすがにウチも言い過ぎと思う…てゆーか意味分からんし」

 

「あ、あうあう」

 

「……」

 

まぁなるようになるか。

 

「で、どうなの青山君、そこんところ!」

 

「「「ハルナ~!」」」

 

見事に3人の声が重なった。いや、今はそこじゃなく早乙女に返事しないとだダメなようだな……。フランク……つまりもう少しくだけて、つまり友達にとかそういう意味か? だが……俺の仕事に必要がない事だ。……この場は適当な嘘でごまかしておくべきだろう。

 

「……すまない。俺は何というか、その、苦手なんだ。誰かと仲良くってのは……。気を付けてはいるんだが」

 

半分は事実でもある……。人とどうやって接したら良いかなんて分からない。……違うか。あくまで『普通』の接し方が分からないと言うべきだろうか。

 

「「「「……」」」」

 

「?」

 

「プッ」

 

「くく」

 

「む……?」

 

4人が驚いた顔をしたかと思えば、何故か笑いだした。そんな要素どこにもなかった気がするのだが……。

 

「あははははっ!」

 

「だ、駄目ですよハルナ笑っては……プッ」

 

「あ、あのごめんなさい……くすくす」

 

「あははー、こーちゃんおもろいな~」

 

「……何か変な事言ったか?」

 

俺は一体どうすれば良いのだ。

 

「あははは、ゴメンゴメン。でも今時珍しくってさー」

 

「は?」

 

「いやね、仲良くするのが苦手とか気を付けるとかさ、普通気がついたら仲良くとかなってるもんじゃない?」

 

「そう……なのか?」

 

そう言われても分からんな……今までそう言う経験もなかった。

 

「うんうん」

 

「私もそう思うです」

 

「わ、私もー……」

 

「そうそうせっかく同じクラスになれたんだからもっと仲良くしようよ」

 

「……さっき気がついたら仲良くなってるもんだとか言ってなかったか?」

 

言っている事が矛盾している気がするんだが……ヤブヘビ、と言うやつか?

 

「……コホン。とりあえず、今日! この時から! 青山君は私たちのお友達!! 良いわね?」

 

「ウチは全然かまへんで~」

 

「私もです」

 

「うん、私もいいよー……」

 

「よっし! 男嫌いののどかの返事ももらったし。さぁ……後は青山君の返答次第よ!」

 

早乙女が俺に指を突き付けてそう言ってくる。……どうしてこう神楽坂と言い、人を指差す奴が多いのだろう。

 

「ハルナハルナ、人を指差したらあかんえ~」

 

「……」

 

友達……か。そもそも友達とはなんだ? それに俺には対象の護衛と言う仕事がある。しかし……何故俺はこんなにも迷って……いや、戸惑っている? まさか、俺は望んでいるのか? 友達を、普通の日常とやらを。……まぁ、良いだろう、迷うくらいなら望んでみようじゃないか。対象の安全が確保されるまでにはなるが。

 

「ああ、これから……よろしく頼む」

 

「「「「あ……うん! よろしく!!」」」」

 

そうして……俺は彼女達と友達になった。フ、たまにはこう言う気まぐれも悪くない。

 

「じゃあ早速、記念にカラオケでも行きますか!」

 

「……それはまた次の機会にして、とりあえず今日は校内の把握に努めたいのだが」

 

それ以前に『からおけ』と言うのが何かすら分からないわけだが……。

 

「そうやえハルナ。こーちゃんはまだ来たばっかりなんやから」

 

「そうですよ。だいたいこの時間からカラオケ行ったって不完全燃焼で帰るのがオチです」

 

「とりあえず今日は青山さんの案内をするべきだと思う……」

 

「あーっ!! のどかまで!? みんな冷たいなぁ、もー!」

 

「……フ」

 

みんなが笑うにつられ、俺もつい笑ってしまった。……何年振りだろう、口だけでも笑ったのは。

 

「あれ? 今こーちゃん笑った?」

 

「え、マジで!?」

 

……どうやら見られてしまっていたようだ。

 

「うん、今確かに笑ったえ? な、夕映、のどか」

 

「はい、確かに見ましたです」

 

「わ、私も見ました~」

 

……早乙女を除く全員に見られていたとはな……不覚。

 

「くぅ~、私も見たかった! お願い! もう一回笑ってみせて!」

 

「知らん」

 

「そんなーっ!?」

 

「あはは~、笑ったこーちゃん結構可愛かったえ?」

 

「可愛いと言われてもな」

 

どう反応すればいいのか困る。喜ぶべきなのか?

 

「あれあれ~、照れちゃってんのかなー?」

 

「……」

 

「あ、ちょ、無視は酷くない!?」

 

こんな会話の中で、俺は胸の奥が暖かくなる感覚を覚えていた。これが……友達というやつなのだろうか? そうして初めての友達に校内を案内してもらい、最後に寮へと向かう途中

 

「そういえば部屋はどこなんか分かる?」

 

「……そう言えば分からないな。源先生か高畑先生に聞けば分かると思うが……」

 

「高畑先生は出張したですよ」

 

「なら源先生か」

 

「しずな先生もお昼から出張してましたけど……」

 

「……八方塞がり、だな」

 

今日は野宿でもするか……。

 

「おじーちゃんなら部屋くらい知ってるかも」

 

「学園長か……? でも知ってたなら学園長室を出るときに教えてくれてたんじゃないか?」

 

……わざと教えなかった可能性も否定はできないが。あのじいさんの事だ。有り得ない線ではない。

 

「あ~、そういえばそうやなぁ……。でもおじいちゃんやし、忘れとるだけかも。ハルナは何か知ってる?」

 

「う~ん、さすがのパル様も分かんないわ」

 

「ん? みんなこんな所でどったの? 青山君まで一緒に」

 

俺達が悩んでいると自転車をこぎ、カメラを持った女生徒が現れた。む、そう言えば同じクラスにいたな。名は確か……。

 

「……朝倉、だったか?」

 

「お、早速私の名前覚えてくれてるなんて嬉しいなぁ。で、どうしたの?」

 

「ほら、こーちゃんこれからしばらく女子寮に住むやん? ほんで、高畑先生かしずな先生に部屋の場所聞こう思てんけどどっちも出張やねんて」

 

「朝倉さんは何か知ってるですか?」

 

「ん~、ちょっと待ってよ。えーと……」

 

朝倉は懐からメモらしきものを取り出して、何かを確認していた。

 

「お、あったあった! んっと、近衛の2つ隣の空き部屋だってさ」

 

「……何故分かるんだ?」

 

「ふっふ~ん。情報収集は私の得意分野なのさ。麻帆良の中のことならほとんどの事は分かるよ~」

 

「……凄いな。ありがとう、助かった」

 

「あはは、どういたしまして。んじゃ私はこれで」

 

そう言い残して朝倉はどこかに向かって行った。情報収集か……俺もした方が良いのかも知れないな。

 

「それじゃ部屋も分かったことやし」

 

「行くですか」

 

「了解した」

 




長ったらしい文章をここまで読んでいただきまして誠にありがとうございます。長すぎて読むの辛いよ。と言う方がいらっしゃたら是非おっしゃってください。次からは半分程度に文字数調整して出すようにしたいと思いますので……

さて、下記からは本作の主人公の紹介(設定公開?)になります。

~キャラ紹介~
名前:青山紅→本作主人公。名字は今の段階では分かる人には分かる、と言う所になります。
オリ主なので見た目の特徴からご紹介させていただきます。
黒髪に切れ目、背丈はアスナより少し高いくらいです。
知ってる方向け分かり易い例え→グリ○イアの主人公イメージしていただけたら……
無口ではありませんが裏の世界の人なのでそれなりにスレており表情・感情の変化が乏しいタイプ。と言う事にしております→作者の技量のなさでいきなりお前誰?レベルになってしまう可能性が……。
上記の通り裏の世界の人なので考え方や感覚がややズレています。

現状ではこんな所でしょうか……。話が進むに連れてオリ主の紹介内容は増えていきます
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