修学旅行~準備編~
「えーっと皆さん!! 来週から僕達は3-Aは京都・奈良へ修学旅行へ行くそーで……!!」
少年が嬉しそうに言う。……そんなに京都・奈良に行きたかったのか? つい先日エヴァンジェリンと戦っていた時は勇ましかったが、やはりまだ子供と言う事か?
「も――準備は済みましたか――!?」
「は―――い!!」
「それにしても京都か……」
連絡はいってるだろうが、一応師匠に連絡しておくべきか? 自由な時間があるなら一度帰ろうとは思うが……。
「――ちゃん。こーちゃん?」
「え?」
誰かに呼ばれていたようなので呼ばれた方向を向くと対象だった。いや、呼び方で気付くべきか。
「どうかしたん? さっきからなんかボ―ッとしとるみたいけど……」
「あ、いや……少し修学旅行の事で考え事をしていてな」
「ほうほう。ところでな、これからアスナとネギ君も誘って修学旅行の買い物に行こ思てんけどこーちゃんも来ーへん?」
「そうだな……ついて行こう」
ついでに土産でも買っていくか。どちらにせよ会う機会はあるわけだし。
「ほな、学校終わったら私服に着替えて寮の前に集合なー」
「了解した」
そうしてその日の授業が終わり、俺は対象の言う通り私服に着替えて寮の前で二人を待っていた。……適当に目の前にあった服を着てきたが、問題ないよな?
「……遅いな」
別に待つのが嫌だとか言う訳ではないが……こう、何もしないでいる時間と言うのは退屈だな。
「そうだな……今のうちに師匠に電話でもかけておくか」
どの道連絡はしなくてはいけないのだから今のように時間のある時にしておこう。
「もしもし、紅です」
『――』
「ええ、修学旅行で京都に行くことになったので、時間があったら一度顔を出そうかと」
『――!』
「え? 喋らせろ? いや、現に俺と喋って……」
『――!! ――――!!』
「は? え、あの師匠……?」
師匠が意味の分からない事を喚いてる途中に電話が切れてしまった。
「……何だったんだ?」
「おーい、こーちゃーん」
「遅れてごめーん!」
「あ、ああ」
そこへ二人がやってきたので、電話をポケットにしまう。
「ん? 今誰かに電話してたん?」
「ちょっと……な」
「まさか、彼女……っ!?」
「彼女?」
一体誰を指して言っているのだろうか? 師匠? いや、こいつらは師匠の事は知らないハズ……。
「……あー、アスナ。いつものアレやえ」
「……ああ、そっか。アレか」
「?」
良く分からないが、褒められているわけでは無いと言う事だけは分かる。
「ま、それよりこーちゃん、うちらの私服どう?」
「む? どう……とは?」
「だーかーら! 私達に似合ってるかどうか聞いてるのよ!」
「ふむ……」
戦いにくそうだな……は違うか。怒られそうだな。むぅ……女性の扱い方がこんなに難しいとは。これは本格的に少年に教わった方が良いかも知れないな。
「とりあえず……思った事でも良いか?」
「もちろん」
「近衛……随分と丈の長い服を着ているんだな? 似合ってはいるぞ?」
「あはは、ありがとな。これはチュニック言うんよ? ……ちゃんとズボンも履いとるえ?」
「そこは心配していない」
だからわざわざたくし上げて見せようとするな。こんな現場誰かに見られたらどうするんだ。
「このかあんた何してんのよ……」
「冗談やて冗談」
「で、神楽坂は……」
「な、何よ。似合ってない?」
「いや、何となくだが……良いんじゃないか? その、服と言うかふぁっしょん? には詳しく無いからあまりハッキリとは言えんが……」
俺の服装も適当に整えている。いつもは師匠が選んでくれていたが……。
「そ、そう? だったら良いんだけど」
「あや、アスナ照れとるー?」
「う、うっさいわね!」
「逆に聞こう。俺のはどうだろうか? 正直私服を着る機会があまりなくてな」
「そう言えばもう数ヶ月一緒におるけどこーちゃんの私服見るの初めてなよーな」
「確かに……凄い新鮮ね」
もし変なのであれば二人にどのような格好が良いのか聞いてみるとしよう。
「で、どうだろうか?」
「んー、うちはええ思うよ? こーちゃん結構どんな服でも似合うんやね~」
「うん、私もこのかと同じ意見かなー。でもあんたがそんな服持ってる事は少しビックリかも」
「育ててもらった人に選んでもらった。何でいつも同じ服ばかり来てるんだお前は、と言われて」
「「あー……」」
おい、納得したような顔をするな。
「さーて、それじゃそろそろネギの奴探そっか」
「そう言えば少年も誘うと聞いていたな」
「そやよ~。ネギ君いつもスーツ姿やと可愛くない思わへん? あと持ってなかったらカバンとかも買わなあかんおもて」
「なるほど」
それから少し歩いていると何やら急いでいる少年を見つけた。ふむ……? あの手に持っているカードらしきものは先日の仮契約の時のものか?
「あ、いたいた。おーい、ネギ――!」
「ア、アスナさん!? どうしてこんな所に……」
「少年、どうかしたのか? 顔が赤いが……体調でも?」
「い、いえ、その……」
「ネギ君、時間あるなら今から修学旅行の買い物に行かへん――?」
しかし、買い物か。ついて来たは良いが一体何を買えば良いのやら……。カバンくらいか?
「あ、ネギ君なんやソレー? タロットカード?」
「えぅっ!? あ、いや、これは……」
「ひゃー、しかもこれアスナの絵が描いてあるー。やーん、かわぇ~~!」
「えー、何……ホントだ!! あんた、いつの間に……」
「……」
ここで本当の事は言わない方が良いだろう。対象もいる事だし、何より依頼者から対象に魔法には関わらせないようにも言われている。だが……これ、かなり難しくなっている気がするのだが。まぁ、そうなったらそうなった時か。
「(神楽坂、それは仮契約の証のカードだ)」
「(そ、そうなんですよアスナさん)」
「(え、ああ! そう言う事か)」
「にしても、アスナの綺麗なカード持ってるなんて……ネギ君ってやっぱりアスナの事……」
「ち、違いますよぉ!」
「ハイハイ、もう行きましょ?」
「話は終わったか?」
ようやくカードの話を打ち切り、俺達は修学旅行の準備の一つである買い物を始める。
「そう言えばさ」
「む?」
「青山君は仮契約してる人とかいるの?」
「また唐突だな」
まずは少年の服を買うとの事で服屋に来た俺達。少年の服は対象が見立てていて、その隙に神楽坂が話しかけてきた。
「ほら、青山君も魔法使いだって言ってたし、やっぱり仮契約くらいしてるのかなーって」
「やっぱりの意味が分からないが……俺はしていないぞ。師匠からは早く相手見つけてしておけ、とは言われているが……」
そもそも相手を選ぶ基準とは何なのだ? 強さか?
「へ、へー、そうなんだ?」
「ああ。それなら師匠にと一度頼んでみたが普通に断られた」
全く意味が分からなかった。今も分かってはいないが……。
「頼んだの!? ってゆーか青山君の師匠って男、女どっち!?」
「女だが……。言わなかったか? 育ての親でもある」
「初耳よ!? 育ての親ってのはさっき聞いたけどそもそも師匠って何!? こないだ言ってた訓練やら何やらのアレ!?」
「そうだが……何を興奮している?」
一体どうしたと言うのだろうか? 相変わらず落ち着きのない奴だ。
「この際だから聞いちゃうけどさ、青山君て誰か仮契約したい人とかいるの?」
「それは……例の恋人作りの目的になってしまっている事を考慮して言っているのか?」
「え、そうなの!?」
「……」
余計な事を言ってしまったのかもしれない。
「ま、まぁでも似たようなものかな? ほら、仮契約ってその……キス、じゃない?」
「一応他にもあるが、唇同士の粘膜接触が一番簡単だと言われているな。もっとも、契約陣を描く妖精がいなければ無意味だが……」
「粘膜接触て。ホント、冷めてると言うか何と言うか……」
「最低限の基準は決めているつもりだが」
「何々?」
「嫌じゃないと感じた相手だ」
それ以外なら別に誰とでも構わん。さすがに嫌な相手とする気は起きん。
「じゃ、じゃあ……このかは?」
「色々な事情があって不可能だが、問題はない」
「そ、その……私は?」
「問題ない」
「……無いと思うけど一応聞いとく。ネギは?」
「むしろお願いしたいくらいだ」
少年の魔力なら十分な供給を受けれそうだからな。何故無いと思っているのかが謎だ。
「えええええ!? 一番反応がいい!?」
「そんなに驚く事か……? 少年の方が魔力が高いのだから少年とした方が効率的だろう? 無論恋人云々は願い下げだが」
「……あー、そう言えばあんたってそう言う奴だったっけ」
「む?」
「ううん、なんでもない。ごめん、さっきのは忘れて……」
どうやら、俺の回答は神楽坂が満足するものではなかったらしい。
「すまない。育った環境もあってか、俺はその辺りの感覚が他の人間とは違うようだ」
「そんなに違うの?」
「俺を見てたら分かるだろう?」
「納得」
自分で言っておいて釈然としない思いがあるものの、納得はしてくれたようで何よりだ。
「時に神楽坂」
「ん?」
「少年と近衛があちらの方へ行ったが、放っておいて良いのか?」
「えっ?」
「何やら少年の後に近衛が試着室に入ったが……」
いくら10歳とは言え、あの少年が着替えを手伝ってもらわなければならない程子供だとは思えないが……。
「もー、二人して何やってんだか」
「む……?」
この魔力、この感覚は……契約魔法、仮契約か? 場所は二人が入った試着室……ちっ、対象に魔法はバラしてはいけないと言われているのに、また厄介な事を!
「行くぞ」
「え、ちょ!? 何急いでるの!?」
「良いから来い」
さほど距離があるわけではないが、出来るだけ急がなくては。あそこで俺がしっかり見ていればこんな事態にはならなかったと言うのに……。まさに獅子身中の虫と言う訳か。
「間に合うか……?」
「ねー、ちょっとどうしたの!?」
「言えん」
二人の気配がする試着室のカーテンを開くと、仮契約自体は行われていたが、唇ではなく頬へのキスであったため、辛うじて仮契約は失敗。カードも何とも言えない微妙な物となり、やがて霧散した。
「や、やっぱりちゃんとキスしないとダメなんだ……良かった」
「え――!? そうなん!? じゃ、ネギ君もいっかい――!!」
「コラコラこのか落ち着いて!!」
「カモ、お前に話がある」
「……あ、いや、その、これは……」
本当なら今ここで始末して然るべきだが、少年の使い魔である事を考慮して今回は脅しで済ませるか……。
「二度はない、とだけ言っておく」
「ハ、ハイ!」
その後は何事もなく買い物を終える事が出来た。ただ、途中で神楽坂と対象が俺の服を選ぶなどと言い始めて2時間くらい付き合わされたが……。
…………
………
……
…
修学旅行を控えた休日、朝の鍛錬を終えその後の時間をどう過ごしたものかと悩んだ挙句、昼食を摂ろうと俺は外に出ていた。
「……しかし休日は人が多いな」
自炊すれば良いのだが、その材料も無いという有様だった。
「あれ?」
「む?」
「こんなとこで会うなんてめずらしーわね」
「そうだな」
肩にカモを乗せた神楽坂と出会った。最近、少年よりも神楽坂と一緒にいる姿を良く見かけるな。使い魔がそれで良いのか……?
「青山君は……これからお昼?」
「ああ。それから買い出しだ」
「ふーん。休日なのに大変ね」
「休日の方が時間があるから買える物は買っておきたいんだが……この人混みでは」
下手をすれば平日の方が時間があるかも知れない。そう毎度思うが……結局休日になってしまう。休日だと遊びに誘われたりもする。
「ま、頑張って。私はこれからお昼だし」
「ふむ……せっかくだ。一緒に食べてもいいか? これは少し時間を置いてからの方が良さそうだ」
「別に良いわよー。じゃ、いこっか」
そうして神楽坂について行き、ついたのはハンバーガーを売っている店だった。師匠が食べているのを見た事はあるが俺自身が食べた事はないな。
「アンタは何食べる? あ、私はバーガーセットMで」
「良く分からないから同じ物でいい」
注文を終えると、数分程度で頼んだものが出て来た。これがファーストフードか……早いな。
「それじゃあ……って座るとこないわね。寮で食べましょ」
「分かった」
「あ、そうそう。今日ネギとこのか買い物に行ってるらしいわよ」
「朝たまたま出会って聞いた。帰りが少し遅くなるかも知れないとの事だ」
事情も聞いているし、少年が一緒なら大した問題も起きないだろう。少なくとも『関東』では。
「あ、そうだ兄さん」
「?」
「兄さんは京都の事詳しいんですかい?」
「詳しいも何も青山君はこのかと同じ京都出身よ?」
「な、なるほど……」
俺が答える前に神楽坂が答えたが、結局カモはそれ以上は言わずに何かを考えていた。
「しかし、寮で食事となると部屋に戻った方が良いな」
「ん? 別にその辺の椅子に座って食べれば良いじゃない。ファーストフードだし」
「ふむ、神楽坂がそう言うならそうしよう」
そうして椅子に座り、買ってきた物を開く。中に入っていたのはハンバーガーに……確かこの長いのはイモを揚げたものだな。
「あ、姐さん。それ一つくだせぇ」
「はい」
「ほぅ……これは」
「美味しい?」
「体に悪そうな味だな」
何と言うか、凄く油臭いと言うか……。
「まぁ、ファーストフードだしね」
「だがまぁ……悪くないな」
変に癖になると言うか……むぅ、不思議な味だ。
「って言うか、ひょっとして食べたの初めて?」
「ああ。普段はコンビニの弁当で済ませている。自炊でも良いが食事に手間をかけたくないのでな」
コンビニの弁当は栄養バランスもそこそこにあり、味も良い。それに割となんでも揃っているから良く世話になっている。
「なるほどなるほど。じゃあさ、今度食べに来る? とは言っても作るのはこのかだけどねー」
「機会があればご馳走になろう」
「うん。――ってまた柿崎だ。ちょっとごめんね」
どうやら電話のようだ。何かあったのか?
「あら、青山さん。こちらでお食事されているのは初めて見ますわね」
「雪広……。いやなに、買い出しに出たのは良かったんだが……生憎人混みが苦手なものでな」
「そうなんですの? まぁ……確かに青山さんは物静かな方ですからああ言う混雑は苦手でも不思議ではありませんわね」
「そこにたまたま神楽坂が昼食を摂る所だったから一緒させて貰ったと言う訳だ」
以前の俺なら適当に切り上げて帰っていただろうが……。
「そうでしたの。あら、その明日菜さんはお電話ですわね」
「え゛っ、あ、な、なんでもないのよいいんちょ! ってだから良いって柿崎!」
神楽坂が何やら慌てている内に神楽坂の携帯にメールが届く。
「む?」
「ブッ!?」
そこまで慌てるからどんなものかと思ったら、少年と対象が仲良く一つのコップで飲み物を飲んでいる所だった。二人共あまり喉が渇いていないのか? わざわざ一つの飲み物を分け合うとは。
「な、なななんですのこれは~~~~!!?? いたずらにも程がありますわ――っ!!」
「知らない、私は知らないってばぁ~~!!」
「……」
久しぶりに思ったな……騒々しい、と。最近では賑やかなのも悪くないと思ってきたが。
「明日菜さん、お貸しなさい!」
「あ、ちょっと!?」
「そこの三人お待ちなさいっ!!!」
「……せっかくの休日だと言うのに」
「まぁ……ネギが絡んでるし、仕方ないっていうか……」
俺と神楽坂は電話で騒いでいる雪広を尻目にため息をついた。
「さあ私達もすぐに現場に向かいますわよ!!」
「え、私も!?」
「大変だな」
「何を人事みたいに! 青山さんも行きますわよ!!」
「何故だ」
「何故もかかしもありません!!」
これは、諦めた方が良さそうだな……。外に出るなら隙を見て買い物に出るか……。
「……まさか、電車に乗るとは」
どこまで行く気だ?
「たとえこのかさんと言えどもネギ先生に手を出すなんて許しがたい暴挙ですわ!」
「このかに限ってそんな事って……」
「でもよ姐さん、このか姉さんはカード目当てで連れ出したのかも……」
「何?」
カモがいないとカードは出ないが……前回の様子からすると可能性は捨てきれなくもないか……?
「で、ネギに無理矢理キスするっての? まさかこのかに限ってそんな事……」
「無い、とは言い切れないだろう。近衛はどうやらあの手のものに目がないようだからな」
そもそもカモがあんな事しなければ対象がそこまで興味を持つ事も無かったのだが……。
「う、うーん……」
「まぁ……仮契約さえしなければ俺は近衛が何をしようと構わない。ではな」
目的の駅についたようなので静かに素早くその場を離れた。
「あ、ちょっと!?」
「ほら、行きますわよ明日菜さん!!」
……実は、神楽坂にはついてきてもらっては困るのだ。それと言うのも……。
「誕生日……か」
今朝対象が少年と出て行く時に明日が神楽坂の誕生日だと言うので俺からも何か買ってやって欲しいとの事だった。つまり、今日二人が買い物に出かけた目的はそれ。カードの事までは分からないが……。
「しかし、誕生した事を祝う事に意味があるのか……?」
師匠も俺も今まで気にしたことが無かったからな……。だがまぁ……対象には世話になった恩がある。ここは言われた通り何か買うしかない。
「だが……何を買えばいいんだ?」
そう、そこが問題だ。今まで誕生日と言う物を全く気にしなかった俺が人の分を買うなんて事が出来るのだろうか?
『ほぅ、まさか貴様がそんな事を気にするようになるとはな』
「お前……。いや、この際お前でも良い。俺は何を買えばいい」
『どう言う風の吹き回しだ?』
「……少しでもあいつらと時間を共有したいと思う俺がいる。それだけだ」
『……我は龍だ。人間の小娘が好く物なぞ知らぬ』
まぁ、それもそうだ。当然俺も龍が何を考えるかなんて知らないし興味もない。となると……仕方ない、自力でなんとか探してみるか……。
『だが、アクセサリーと言う物を好くと言う事は聞いた事がある』
「何?」
『二度は言わん』
「……ああ。今回だけは感謝しておく」
『フン』
気配が消えた後、俺は人に道を聞きながらアクセサリーとやらが売ってある店まで辿り着いた。
「む、ぬ……」
が、ここまでだ。来たは良いが何を買えば良いのかがさっぱりだ。それ以前に俺は神楽坂が何を好きなのか分からない。
「いらっしゃいませ~! 何かご入り用ですかー?」
「いや、その、友人の誕生日に何か買わなくてはいけないのだが何が好きなのか分からなくて困っている……」
「なるほど~。その方は女性ですか? それとも男性?」
「女性だ」
「ほっほぅ、なるほどなるほど……。でしたら指輪とか如何です? その方のサイズは分かります?」
「分かるわけないだろう」
大体の大きさなら分かるが測ってもいないのに的確な大きさが分かるわけがない。
「あ、そ、そうですよねー! でしたら……ネックレスとかチョーカーなどはどうでしょう? こちらならサイズは自由ですし」
「ではそれで……種類が多いな」
「ええ、何と言ってもこの辺りじゃ一番の品揃えだと自負してますから!」
「そ、そうか……」
なんなんだこの無駄に威勢のいい店員は……疲れる。まるで早乙女を相手にしているかのようだ……。いや、あっちはまだ友人と呼べる間柄だからマシな方か。
「……ふむ、ではこれにしようか」
迷う程知識があるわけでもないので適当に商品を手に取り店員に渡す。
「毎度ありがとうございます~! プレゼント用にお包みいたしますね」
「ああ」
そうして品物を受け取り、少年の魔力を頼りにその方向へと進む。
「あ、青山君! どこ行ってたのよ!」
「買い物だ」
「ほら二人共急ぎますわよ!!」
途中で神楽坂達と合流し、そのまま進んで行くと対象と少年が目に入った。
「あ、いましたわ! コラ~~~~~!! お待ちなさ~~~~~い!!!」
「って柿崎達まで……」
少年は買い物で疲れたのか、対象の膝でうたた寝をしている。
「こ、このかさん……ネギ先生に膝枕など」
「あれー? いいんちょにアスナにこーちゃん。みんなそろってこんな所でどしたん? ……あちゃー、もしかしてバレてたん?」
バレていた……つまり神楽坂に誕生日の贈り物の件を知られていたと言う事か?
「んー……あ、あれ? 皆さん、いいんちょさんにアスナさんまで!?」
「ネギ君、どうやらバレてたみたい」
「ええ~~~~っ!? そんな、どうしよう……驚かそうと黙ってたのに……」
対象がこちらを見たが、俺は喋っていないぞ。首を横に振ってそう伝えた。
「バ、バレてたって……」
「やっぱあんた達……」
「まぁ……こうなったらもうしゃーないなー」
「そ、そうですね。一日早いけど……ハイ、アスナさん! 4月21日の誕生日、おめでとうございます!」
「「「「「……へ……?」」」」」
おや? この反応……バレていたわけではなかったのか?
「今日は朝からずっとこのかさんと一緒にプレゼント選んでたんです」
「中身はアスナの好きな曲のオルゴールやよ。……今日は20日やから明日渡す予定やってんけど……」
「そ、そう言えば……」
「ああ――っ!! そうそう、私達もプレゼントあるよアスナっ!」
そう言って次々と神楽坂にプレゼントを渡していく柿崎達。……ふむ、まぁ後ででも良いか。あの状態だと持つのが大変そうだ。
「あ、ありがとう。ネギ、このか、みんな……。私、私嬉しいよ……」
「えへへ……」
「♪」
「フ……」
当の神楽坂は感極まったようで、声が若干震えていた。これは成功、と言う事だろうか?
「あ……このか、ごめんね。変な風に疑ったりして」
「へ? 何の話?」
「ううん、なんでもない。それより……青山君も知ってたの?」
「ああ。朝に会った時に聞いて、黙ってるようにも言われた」
「ご、ごめんなさいアスナさん。せっかくだから驚かせたくて……」
別に神楽坂は怒りはしないだろう。先程の表情を見る限りではの話だが。
「別に怒ったりしないわよ。むしろありがとね、みんな」
「あ……ハイッ!」
「ええて~」
「おーい! そこの四人、このままアスナの誕生日会やっちゃうよー!!」
「完徹カラオケいっちゃうよ~~~!!」
カラオケ……アレか。狭い個室の中で自分の歌声を披露する……。あそこは、正直苦手だ……。あの騒音がどうしても肌に合わない。
「そう言えば青山君ってカラオケ苦手だったっけ?」
「あー、そやねー。こないだみんなで行った時も難しい顔してたしー」
「いや……付き合おう。わざわざ水を差すのも悪いしな」
「あの、無理はしないでくださいね?」
「問題ない。少しあそこの音が落ち着かないだけだ」
少しではないが……まぁ、友人の誕生日だ。こう言うのに参加するのもたまには良いだろう。
「そう言えばこーちゃんこないだ行った時一曲も歌わへんかったなぁ」
「「「なん……だって?」」」
「む?」
対象の言葉を聞いた瞬間、柿崎達の顔色が変わった。
「どーして!? なんで歌わないのさ!?」
「カラオケ行って歌わないとか人生の9割損してるよ!?」
「そんな事は無いと思うが」
「一応言っとくと私も青山君と同意見ね。まぁ、もったいないとは思うけど」
もったいない……確かに釘宮の言う通り金はもったいないとは思うが……。
「て言うか、なんで歌わなかったの?」
「俺が歌えるのは授業でやった事のある曲だけだ。普段音楽など聞かないものでな」
「ほうほう。ならその方向でいっちゃお~~!」
「「「「お――っっ!!」」」」
ふむ……それもまぁ、良いだろう。そんな気まぐれを起こしてもバチは当たるまい。
そうしてカラオケに行き、神楽坂や対象は勿論、雪広や柿崎達からも勧められひたすら歌わされた。……やはり、あそこは苦手だ。
「やー、歌ったねぇ~~」
「それに青山君が意外と歌が上手い!」
「こりゃ、また誘っちゃいましょうかねぇ~」
「……勘弁してくれ」
断れば済む話だが……今の俺ならなんだかんだで行ってしまうだろう。
「……こーちゃんこーちゃん」
「む? 何か用か?」
「こーちゃんて、アスナにプレゼント渡した?」
小声でそんな事を聞いてくる対象。そんなに気にする事か?
「渡していないが……と言うよりあんなに持っている状態で渡してもな。明日渡せば良いだろう? そもそも誕生日は明日な訳だし」
「それはアカンえ!」
「?」
「アスナはね、女の子なんやよ?」
「あれで男だったら驚くな」
一体何が言いたいんだろうか?
「そー言う意味やなくて……とにかく、こーちゃんからもちゃんとプレゼント渡したってな?」
「……了解」
いや、だから明日渡せば良いではないか……。今に念を押される意味が分からない。……まぁ、また何か言われる前に渡しておくか。
「神楽坂、少し良いか?」
「あ、うん。みんな、ちょっとごめんね」
「はいはーい」
別にわざわざ離れる事も無いと思うが……まぁ良いだろう。
「で、何?」
「明日渡せば良いと思ったがとりあえず渡しておく。これは俺からだ」
「え……これって……」
「友人の誕生日だ、プレゼントくらいはな。正直、この手の買い物は初めてだったから何を買えば良いのか分からなかったが……」
龍からの助言が無ければおそらくとんでもない物を買ったか何も買えなかったかになるだろう。……次からは少し優しくしてやるか?
「あ、あはは……何か照れるな。同年代の男の子から誕生日プレゼントとか貰ったの初めてだし」
「ほう?」
「これ、今開けていい?」
「それはもう神楽坂に贈った物だ。好きにしろ」
「う、うん」
何故か頬を染めつつ贈り物を丁寧に開封していく神楽坂。ふむ、そんなに嬉しかったのならこちらとしても悪い気はしないな。
「わぁ……」
「どうやら首にかける類のアクセサリーらしい。気に入らなかったら捨てるなり好きにしてくれて構わん」
「ううん! これ、結構好きかも。私、普段こう言うのしないんだけど……でもこれならしても良いかなって思ったし」
「そうか。装着してくれた方が道具も浮かばれるだろう」
「……相変わらずその物言いは変わんないわねー」
「む?」
「ま、いっか。さ、そろそろ戻りましょ。あんま遅くなるとある事ない事言われそうだし」
「了解した」
そうしてみんなの所へ戻った俺達。神楽坂の言った通り、告白だのなんだのとどうでも良い事をひたすらに聞かれた。もちろん全部流したが。
何故だ……明日菜がどんどんヒロインみたいになってきている……。いっそ、のどゆえみたいにダブルでやらせるのもありかなと思ってきている愚作者です。
そして今回久しぶりに龍ちゃんが登場しました。なんか助言してくれましたね。あの子がオリ主をどう思っているかはこの修学旅行で明らかになります(予定)!
次回からはいよいよ修学旅行本番です。多分一話一話が長くなりますので前後編で出していこうかと思っています。
……ついにバトルが、戦闘が……どなたか、上手な戦闘シーンの書き方教えてくださいマジで。