二人目の護衛(更新停止中)   作:ヨシュア13世

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なんとか形に出来ました! いささか急拵えや寝落ち気味に書いた所があるので何書いてんだコイツ?と言う様な所があるかも知れません……。


修学旅行1日目~関西呪術協会~

「はい。今日から修学旅行で。ええ、分かってます。おそらくこの修学旅行で何かしらあるかと……はい。では」

 

早朝、いきなり仕事用の電話が鳴ったので何事かと思ったら師匠からの連絡だった。

 

「すっかり目が覚めたな……」

 

集合時間にはまだ早いが……仕方ない。他にする事があるわけでもなし、行くとしよう。

 

「青山君おはようございます!」

 

「あ、青山君おはよー」

 

「青山君も早いねー」

 

まだ集合時間の一時間前だというのに、駅前には既にネギ先生を含み、結構な数のクラスメイト達が集まっていた。

 

「おはよう……みんな早いな」

 

「うん、もう楽しみで楽しみでー」

 

その通りみたいで、まだ余裕があると言うのに次々と集まっていくクラスメイト達やそれ以外のクラス。

 

「それでは京都行きの3A、3D、3H、3J、3Sの皆さん、各クラスの班ごとに点呼をとってからホームに向かいましょう」

 

「では1班から6班までの班長さんお願いしまーす!!」

 

出発時刻になり、源先生が声をかけ少年がクラスの誘導を始める。ちなみに俺は対象達と同じ5班だ。……そうして点呼が終わり新幹線に乗り込む。

 

「ふぅ……神楽坂、俺は寝るから何かあったら起こしてくれ」

 

「はいはい、おやすみ」

 

「ああ」

 

そう言って目を閉じたのだが……みんなが騒いでいるようでとても眠るどころではなかった。

 

「……はぁ」

 

「何ため息ついてんのよ。せっかくの修学旅行じゃない」

 

「騒がしくて眠れん」

 

「それくらい我慢しなさいって。それより青山君もみんなと遊べば?」

 

「俺がそんな人間に見えるか?」

 

自分で言うのも何だが、俺は積極的に誰かと何かをする柄でもないし、その気も今は特にない。

 

「ううん、全然。だからこの機会に遊べば良いじゃん」

 

「しかしだな……」

 

「キ、キャー!?」

 

「なんだ?」

 

「な、なに!?」

 

いきなり聞こえた早乙女の叫び声に何事かとそちらを見るが……。

 

「カエル!?」

 

「……」

 

この蛙は術で出来た式神……となると近くに術者がいるか。探してみるか。

 

「神楽坂、後は頼んだ」

 

「え!? ちょ、待ってよ! どう言う事!?」

 

「説明は後でする。俺は探し物がある」

 

「あ、ちょっ――!」

 

「む……? 感付かれたか? 気配がない……」

 

いや、そもそも時限性の術と言う可能性もあるか。蛙程度なら対象に危険は無いと思うが……とりあえず戻った方が良いか。

 

「あ、戻ってきた! カエル集めるの手伝ってよ!」

 

「そうアル! 少しは手伝うアル!」

 

「……仕方ないな」

 

どうやら殆どの女子は蛙に抵抗があるらしく、まともに動ける者が少なかったようだ。

 

「この袋に入れるアル!」

 

「分かった。少年、現場をまとめるんだ。源先生が失神している」

 

「あ、はい! 保健委員は介抱を! いいんちょさんは点呼確認をお願いします!」

 

「も~! このカエルなんなのよー!!」

 

「……気づかないのか?」

 

他には聞こえないように小声で神楽坂に話しかける。

 

「え?」

 

「普通に考えて蛙がいきなり至る所から大量発生すると思うか?」

 

「! そ、それじゃあこれって魔法!?」

 

「いや、魔法とは少し違う」

 

「違うの?」

 

「ああ、詳しくは少し落ち着いてから……そうだな、旅館について一息ついたら説明する」

 

確実に対象が狙われていると見ていいだろう。この蛙はさしずめ様子見と言った所か。

 

「う、うん。ネギには?」

 

「今少年にそれを言っても余計に混乱するだけだろう。後で一緒に話す」

 

「分かった! それじゃ、ちゃっちゃと終わらせましょ!」

 

「ああ」

 

それから手早く蛙を集め終え、少年に報告しようとしたのだが、肝心の少年が見当たらない。

 

「む? 少年はどこへ?」

 

「あ、ネギならなんかあっちの方に行ったわよ? 良く分かんないけど何か追いかけてるっぽかった」

 

「何……?」

 

こんな時に何をやっているのやら……。

 

「どうする?」

 

「この場はとりあえず雪広の指示を仰げば良いんじゃないか?」

 

「そ、そうね……」

 

「あ、アスナさんにこのかさん、桜咲さんがいませんわ」

 

「えっ」

 

「せっちゃんが?」

 

全く、どいつもこいつも……こう言う時くらいは団体で動いた方が良いと思うのだがな。

 

『―――まもなく京都です』

 

なんとか蛙騒動もひと段落し、それからしばらく電車に揺られているともうすぐ京都だと言うアナウンスが入った。

 

「皆さん降りる準備をしてくださ――い!」

 

「……行くか」

 

さて、今度はどんな邪魔が入る? もう『敵』の手の中だ。どんな事があってもおかしくはない。

 

「全員揃ったのか?」

 

「まぁね」

 

「ふむ。時に神楽坂、何故近衛は元気がないんだ?」

 

傍目から見ても分かる程に元気がない。てっきり周りのみんなと同じくはしゃいでいると思ったんだが。

 

「分かれば苦労しないわよまったく……」

 

「そうか……」

 

分からないのなら考えても無駄だろう。あの様子からしてこちらから聞いても多分、大丈夫だと言うだろうし。自分から話す時期を待てばいい。

 

「ま、いっか。とにかく、次清水寺行くみたいだから早くバスに乗りましょ」

 

「了解した」

 

清水寺か……一度師匠に連れて来てもらった事があったな……。あまり記憶に残っていないが……まぁ覚えていないと言う事は大した事もなかったのだろう。

 

…………

 

………

 

……

 

 

「京都ぉ―――っ!!」

 

「これが噂の飛び降りるアレ!」

 

「誰かっ!! 飛び降りれっ!!」

 

「では拙者が……」

 

「おやめなさいっ!!」

 

はしゃぐクラスメイト達をよそに、俺はここに着いてから……いや、新幹線に乗った時から感じていた視線の主を探していた。新幹線ではあまり派手な動きも出来ないから放っておいたが……これは露骨すぎるな。誘われているか?

 

「やれやれ……」

 

「まったく何やってんだかね」

 

「おや、神楽坂もあっちに混ざっているのかと思っていたが」

 

「いやいや、あんた私をどう言う目で見てるのよ」

 

「言った方がいいか?」

 

「……ごめん、言わないで」

 

別にはしゃぐのは悪い事じゃないと思うがな。ただ限度があるという事は覚えておいた方が良いと言うだけで。とりあえず、俺はこの視線の主を追うか。

 

「でさ、電車の中のアレって……」

 

「旅館に着いてから説明すると言ったろ」

 

「う、う~。でも気になるしさー」

 

「今気にしたところでどうにかなるわけでもないだろう?」

 

「それはそうだけど……」

 

「まぁ、そう焦るな。あと、すまないが俺は別行動を取らせてもらう。少年含め先生達には上手く言っておいてくれ。じゃあな」

 

「え、あ、ちょっ!?」

 

来た道を引き返し、視線の元へと向かう。多少林の中へと入る事にはなったが、そこにはメガネをかけた女が一人立っていた。

 

「お前か、俺達を……いや、近衛を狙っているのは」

 

「なんや、釣れたん一人だけかいな」

 

「ここでやり合うつもりか?」

 

「まさか。確かにこのかお嬢様は喉から手が出る程欲しい。けど、今ここで攫うんはリスクが高すぎる。せやから……折角釣れたあんただけでも消えてもらいますえ」

 

次の瞬間、殺気を感じた俺は上体を逸らす。そのまま俺は戦闘状態に頭を切り替える。

 

「あらー? 今のをかわすとはやりますなー」

 

「その剣技……また面倒な奴を雇ったくれたものだ」

 

「くっくっく、用心には用心を重ねんとこの計画はあっと言う間におじゃんやからなぁ」

 

「だが、そいつ一人程度なら――」

 

「……誰が雇ったんは一人や言いました?」

 

「何?」

 

「遅いね。『石化の邪眼』」

 

「石化魔法……ちぃっ!」

 

この上なく厄介な魔法をこの上なく悪いタイミングで放ってくるか! だがそれよりも、戦闘状態で神経を張り詰めている俺に気配も察知させずにここまで接近するとは……。

 

「……ふむ、良くかわせたね。さっきの遅いと言う言葉は訂正しよう」

 

「フェイトはん、この場は任せて大丈夫やな?」

 

「問題ないよ。彼『程度』なら僕一人で十分だ」

 

「えー、ウチも戦わせていただきたいわー。そのお兄さん強そうですしー」

 

「月詠はんにはまた別の神鳴流と戦わしたるからいきますえ!」

 

「ああん、いけずー!」

 

二人減った。通常なら喜ぶべき状況ではあるが俺からしたら二人逃してしまった、と言う事でもある。

 

「しかし、俺『程度』とは言ってくれたものだな。これでも鍛えているつもりだが」

 

「そのようだね。けど少なくとも今の君は脅威に値しない。その中のモノを飼い慣らす事が出来れば少しは相手になるかも知れないけど」

 

「こいつの事も知ってるとは……フェイトとか言ったな。お前、何者だ?」

 

「それに答える義理はないね。それじゃ、早く戻らないといけないから終わらせるとしよう」

 

「そう簡単に終わるつもりはない。俺にはまだ仕事があるのでな」

 

「口で言うだけなら簡単だよね。リ・シュタル・ヴィシュ・タル・ヴァンゲイト、小さき王、八つ足の蜥蜴、邪眼の主よ。時を奪う毒の吐息を。『石の息吹』」

 

「!」

 

ここで広範囲石化魔法!? 避けきれるか……!? 俺にあそこまで接近した事といい、この魔法といい……こいつは、強い。なら俺がしなくてはいけない事は……必ず戻って少年達に報告する事――!

 

――

 

「……強すぎたかな、霧で前が見えない。でも手応えはあったから例え直撃ではなくとも彼はもう戦力としては役に立たないだろうね」

 

そう、彼は良いとしてネギ・スプリングフィールド……君はどうするんだい?

 

――

 

「すまない、遅くなった」

 

「あ、やーっと戻って来た! こっちは大変だったのよ!? このかからも言ってやってよ!」

 

「あ、うん……」

 

「ふむ? にしてもこの惨状は……?」

 

戻って来た俺が目にしたのはクラスのほぼ全員が顔を赤くして倒れている光景だった。だが、これと似たような光景をどこかで見たような気がする。

 

「む……? こ、この匂いはまさ、か……っ!?」

 

「ど、どうしたの?」

 

「青山君、大丈夫ですか!?」

 

「だ、大丈夫じゃない……そ、それよりこの匂いは……酒か!?」

 

「え? あ、うん、一応ここ甘酒屋だし……」

 

「どうしたんですか!? 顔が真っ赤ですよ!?」

 

「ぐ、もうそんなに回ってきてるのか……」

 

マズイ、このままでは俺は確実に……っ! 戦闘の直後と言う事もあり回りやすい……!

 

「回る? 回るって一体……」

 

「俺、は……酒が――――」

 

「あ、青山君! 大丈夫ですか!?」

 

「問題ない……ひっく」

 

ああ、駄目だ……回りきってしまった。

 

――

 

「え?」

 

「ひっく、うぃ~……ひっく」

 

「……まさか」

 

「こーちゃん、酔っとる?」

 

普段の様子からは有り得ないとも言える紅の様子に思いつく状態を本人に訊ねる木乃香。

 

「ああ……気を張っていれば大丈夫なんだが、今回は油断した……。酒類は匂いだけでもダメなんだ……ひっく」

 

「あやー。ほんまに顔も真っ赤やね。立てる?」

 

「も、問題ない……ひっく」

 

そう言って立ち上がる紅だったが、その足取りはまさに酔っぱらいのそれであり、右に行ったり左に行ったりの千鳥足でとてもまともに歩けるような状態ではなかった。

 

「それのどこが大丈夫なのよ」

 

「どこをどう見ても大丈夫だ――おぉ?」

 

「あ、ちょ、このか危なっ!」

 

「ほへ?」

 

まるで吸い寄せられるかのようにフラフラとした足取りで木乃香の方に倒れ込む紅。

 

「このか大丈夫!?」

 

「ち、ちょっと無理かも~? みんな助けて~」

 

「本当にお酒に弱いみたいですね」

 

「す、すまない近衛……すぐにどく」

 

と、木乃香から離れた紅はそのまま仰向けにひっくり返ってしまった。後頭部からダイレクトに石畳にいったが、本人は割と平気そうである。

 

「わああっ!? あ、青山君!?」

 

「今頭からいったわよ!? ヤバくない!?」

 

「そんな事でどうにかなるような鍛え方はしていない……」

 

「兄さんにも弱点があるんだなぁ……」

 

「あ、あらどうしましたネギ先生? 青山君が倒れてますけど……それに他のみんなも」

 

と、そこにやってきたしずな先生がネギに尋ねた。

 

「うひゃ~~ん!! 何でもないです~~!!」

 

「えーと、青山さん含め一部が疲れて寝てしまったようで」

 

「良く分かりませんが、どうも清水寺ではしゃぎすぎたようです」

 

「バ、バスに押し込みますから旅館に向かいましょう! しずな先生!!」

 

…………

 

………

 

……

 

 

――嵐山のとある温泉旅館――

 

「――不覚」

 

「ま、まぁまぁあれは仕方ないって」

 

「いや、あの程度の事予測しておくべきだった。完全に俺の落ち度だ」

 

戦闘の後で気が緩んだのか? どのみち失態は失態だ。

 

「落ち度だなんてそんな! それを言ったら僕だって担任なのに皆さんを危険に……」

 

「……そうだ、清水寺で分かった事を話そう」

 

「分かった事? それって別行動するーって言い出した時の?」

 

「ああ」

 

「それは是非とも聞かせてもらいたいですね」

 

「「え?」」

 

「あ、おめぇは!」

 

「……桜咲か」

 

まさか今のタイミングで話しかけてくるとは思わなかった。だが、こいつにも話はしておくべきだろう。俺が出会ったヤツの事は……。

 

「貴方が別行動をした理由、それはお嬢様を狙う敵の排除ですね? ずっと我々を監視していた視線の先に向かった様ですし」

 

「え、私達監視されてたのネギ!?」

 

「し、知りませんよ僕!」

 

「桜咲の言う通り、俺は早々に芽は摘んだ方が良いと思った。だが……大きな誤算があった」

 

「誤算?」

 

「……敵には少年と同じ様な西洋魔術師と神鳴流がついていた」

 

神鳴流だけならばおそらく俺一人でも対処は出来ただろう。だが問題は西洋魔術師であるあのフェイトと呼ばれた白髪の少年だ。高等魔術である石化魔法を使いこなし俺が脅威にもならないと言う。

 

「なっ、神鳴流が!?」

 

「し、しんめいりゅー?」

 

「あ、あのぉー、結局どう言う状況なわけ? 何か大変な状況って事は分かるんだけど……」

 

「あ……と、神楽坂さんには?」

 

「こいつが今ここにいる事が答えだ」

 

「あはは、思いっきり巻き込まれてマース……」

 

「そうですか……。では神楽坂さん、僭越ながら私が説明させていただきます――」

 

「……え――っ!? 私達3-Aが変な関西の魔法団体に狙われてる!?」

 

変とは心外な。一応由緒ある日本の呪術団体だと言うのに……。

 

「はい。関西呪術協会って言う……」

 

「いえ、関西呪術協会自体が敵に回っている訳ではありません。いわゆる過激派の一部の者がこのかお嬢様を狙っているのです」

 

「そうだったんですか!? あ、そう言えばこの事を青山君は知ってたんですか!?」

 

「知ってるも何も、俺は近衛の護衛として麻帆良に籍を置いている」

 

もうバラしても問題ないだろう。と言うかそろそろ一緒に行動していかないと取り返しのつかない事になる。

 

「やはりか……」

 

「「えっ!?」」

 

「二人にも話した事はあるはずだぞ?」

 

もちろん詳しくは言っていないがな。

 

「あ……そー言えばエヴァちゃんと戦った時にある依頼とか何とか言ってたけど、それがこのかの?」

 

「そう言う事だ」

 

「と言う事は今の任務と言うのがこのかさんの……」

 

「だからそうだと言っている」

 

「しかし、それなら何故言ってくれなかったのですか」

 

「初日に敵意全開で睨まれたものでな。こっちに来るまでは関わらない方が良いと踏んだ」

 

「うぐ」

 

「さぁ話を戻そう。俺が相対したのは3人。主犯と思われる眼鏡をかけた京言葉の女、その護衛と思われる神鳴流が一人、そしてこいつが一番の問題だ。石化魔法を難なく操る西洋魔術師……」

 

結局、俺は攻撃する間もなく逃げてきたわけだ。だがこの情報を持ち帰るためと思えば些細な出来事である。

 

「えっ、石化魔法を!?」

 

「兄貴! こいつはやべーっすよ!」

 

「そ、そんなに?」

 

「ああ。石になると専門の治癒魔術師等が必要になってくるからな」

 

それらを用意するのがまた大変なのだ。

 

「西洋魔法については明るくありませんが敵の手札がかなり強力と言う事は分かりました。その情報には感謝します」

 

「ああ。それで、俺から一つ提案がある」

 

「……聞きましょう」

 

「近衛に魔法をバラす」

 

これはあの少年から逃げてくる途中で思った事だ。本当は本人が知らない所で解決して何も知らない普通の学生生活を送って欲しかったがな……。

 

「なっ……」

 

「えっ!?」

 

「それ良いの!?」

 

「良い訳がない。だが、敵の出方が分からない以上、全てを話して多少でも心構えをすればある程度の危険は回避出来るハズだ」

 

「貴様っ!!」

 

途端、俺の胸倉を掴む桜咲。まぁ、仕方ないだろう。俺とてあの対象をこんな世界に連れて来たくはない。

 

「ちょ、桜咲さん!?」

 

「お、落ち着いてください!」

 

「お前の気持ちも分かるし、俺だってそんな事は極力したくない。……だからもう一日だけ様子を見る。今日明日で俺達だけで何とかなるかどうかを判断する。出来そうならこのまま護衛を続け、無理そうなら本山に連絡してその旨を伝える。……これでどうだ? これ以上の妥協は出来ん」

 

「……俺っちは賛成だな。正直ここにいる人間が集まってどうにもならねぇなら助けを求めた方が良いですぜ」

 

「で、でもこのかは……」

 

「そ、そうですよ! このかさんは普通の……」

 

「……普通の人間が呪術協会に狙われるわけがないだろう。なぁ桜咲、もう良いか?」

 

少なくともこの2人と1匹には教えておいた方がいいと、俺は思う。

 

「ぐ…………は、い」

 

「……近衛は関西呪術協会の長、近衛詠春の一人娘だ。当然、その身に宿る魔力も凄まじいものだと聞き及んでいる」

 

「え……えーっ!!?? このかさんが関西呪術協会の!?」

 

「あ、でも学園長のジジイの孫娘だし……魔力に関しては納得だな」

 

「じ、じゃあこのかは魔法使いなわけ!?」

 

「違う。あくまで素質があるだけだ」

 

それも最強クラスのな。当然、その力を狙う輩が出てもおかしくはない。

 

「え、えっとこのかは魔法使いじゃないけど素質? があって関西呪術協会の長? の娘で狙われてて……あ、あれ?」

 

「落ち着けバカレッド。今は全て捨て置け。俺達が今しなくてはいけないのは近衛を全力で護る事だ。そうだろう、桜咲?」

 

「……ええ。ですが私は……!」

 

「あ、桜咲さん!?」

 

悔しげな表情を浮かべた後、そのまま走り去ってしまった。

 

「どうしたのかしらね……」

 

「さぁな。心が読める訳でもなし、分からん。可能性としては……」

 

「しては……なんなんですか?」

 

「自分の力のなさに悔いている、とかな。俺にも当てはまるから俺視点で言わせてもらうが、俺は戦う事しか出来ない。だから最善手が浮かばない、理想しか思い描けない。こう出来たらいい、こうするのがいい、とな。もう一度言うがこれはあくまで俺視点だぞ?」

 

「なんか難しーわね……」

 

「いや、違うな。俺達は単純だ。今回も、俺は倒した方が早いと思った。だが相手は俺よりも強かった。もし俺が独りだったならそこで終わっていた」

 

「青山君……」

 

「しかし俺にはお前達と言う友がいた。だから俺はお前達を頼りにして逃げ、五体満足で帰ってくる事が出来た。逃げる事は恥だと責められるかも知れない。だが俺は友を信頼し、頼る事をお前達から学んだ。これは恥でもなんでもない、友は俺の……譲れない誇りだ」

 

「う……良くそんな恥ずかしい事真顔で言えるわね」

 

「心からの言葉に恥も何もないだろう? と、まぁ話は一旦ここまでにしておくとして……敵がいつ攻めてくるとも分からないから今のうちに体を休めておけ。流石に旅館内で仕掛けてくる事はないだろうが――」

 

「あ、あの!」

 

「ん?」

 

急に大声を出して、どうしたんだ?

 

「どーしたのネギ?」

 

「ぼ、僕頑張ります! 青山君が信頼してくれる、その分まで頑張りますから!」

 

「……フ、それは良いがな少年」

 

「?」

 

「少年も俺を信頼して、頼れよ? 不覚をとったがこれでも腕は立つ」

 

それでもあの白髪の少年に勝てる気はしないが……俺達の目的は別に白髪の少年を倒す事じゃない。

 

「あ……はいっ!」

 

「わ、私も! 親友の為だもん! それにネギと仮契約もしてるし!」

 

「……本当は素人同然のお前には大人しくして欲しい所だがな……。今回は、頼らせてもらう」

 

「まっかせて!」

 

「だが、俺の指示には従ってもらう。それが出来ないなら悪いが外れてもらう」

 

「うっ……分かった。そう言うのは青山君の方が正しいだろうし」

 

「青山君~~! ネギ先生~~!」

 

その直後、源先生に俺と少年が名指しで呼ばれる。中々危ないタイミングだな。今の会話を聞かれたら完全にアウトだった。

 

「ひゃっ!?」

 

「し、しずな先生?」

 

「何か用ですか?」

 

「ネギ先生は早めにお風呂を済ませてくださいね。青山君はせっかくなのでネギ先生とご一緒に、と言う事よ」

 

「あ、ありがとうございます」

 

「分かりました。しかし、それでは理由が薄い気がするのですが?」

 

「その……ね。実は、ここは混浴なのよ」

 

「ああ……なるほど、分かりました。他のみんなと時間が重なったら大変ですね」

 

初日から目をつけられて護衛しにくくなるのも困る。桜咲がこちらに協力……してはくれるだろうが利害の一致、という関係だろうな。

 

「間違いなく大騒ぎね……あ、みんなには言っとくわ」

 

「すまない」

 

「ええ、そう言う訳だからごめんなさい」

 

――ちなみに、風呂は露天風呂だった。

 

「ふぅ……。これは……気持ちいいな」

 

「ですねぇ~。なんだかホッとします~」

 

学園の大浴場も良かったが、やはり温泉の方が気持ちいいかも知れない……。

 

「これで何も問題がなければ良いんだがな」

 

「あはは、そうですね……。あ、そう言えば……」

 

「?」

 

「いえ、その……青山君とはあまりゆっくりお話ししたことないなぁ、って。あ! い、今はそう言う事言ってる場合じゃないって言うのは分かってるんですけど!」

 

「気にするな。さっきも言ったろう? 休める時には休むものだ。俺には新鮮なんだ、ゆっくり他人と話すのは。だから、こういう時くらいは構わないさ」

 

そう、せっかく与えられた普通の日常なのだからな……。

 

「え、えと……じゃあお聞きしたい事があるんですけど良いですか?」

 

「今回の件以外の事なら良いぞ」

 

「そ、それじゃあ……青山君は仮契約してるんですか?」

 

「いや、特にしていないが?」

 

「え、アスナさんやこのかさんとは?」

 

「神楽坂はともかく、近衛としていたらその魔力で気付くだろう……?」

 

そして、していたら俺はほぼ100%強制送還だ。

 

「そうなんですか? 良く3人で仲良くしているの見かけるのでしてるのかなって」

 

「あいつらとは女子中等部に来た時からの付き合いだからある程度仲は良いさ」

 

「フホホ! 兄さんにその気はなくともあの2人は……かも知れませんぜ!」

 

「?」

 

「……あ、天然かこの人」

 

「何を言ってるんだお前は」

 

するとそこで、戸が開く音が聞こえた。ふむ、他の教員か?

 

「そう言えば他にも先生はいるんでした……ね」

 

少年と共に誰かが入ってきた方を向くと、そこにはとんでもない光景が広がっていた。

 

「えええっ!? お、女の人!? って言うか刹那さん!?」

 

「……そう言えばあいつ、源先生が来る前に去ったからここの事を知らないのか」

 

「ど、どうしましょう!?」

 

「少年、静かに。見つかったら面倒だ」

 

少年の口を塞ぎながら桜咲の様子を観察する。出来るならこのまま何事もなく去ってもらいたいが……。

 

「ふが……は、はい。すみません」

 

「おっほぉおおおおお!」

 

「黙れ消すぞ」

 

「ハイ」

 

しかし、困ったな……。この際少年と一緒な所はまだいい。問題は……俺達が現在進行形で桜咲を覗いてしまっているような状態にある点だ。一応言い逃れする術はあるが……言った所で通じるかどうかはまた別の話だ。

 

『ふぅ……私は、どうすれば……!』

 

「刹那さん……」

 

「ま、待て少年、それ以上は危険だ!」

 

『! 誰だ!』

 

少年が僅かに乗り出した気配に桜咲が気づいてしまった。とりあえず岩の置物に隠れたはいいがここからどうしたものか……。

 

「わわ、気づかれた!」

 

「兄貴! とりあえず逃げやしょう! 絶対ボコボコにされやす!」

 

「……多分、手遅れだ」

 

『逃がさん! 神鳴流奥義、斬岩剣――!!』

 

風呂にまで持って来ていたのか、普通に持つには長すぎる刀……野太刀を使い、神鳴流の奥義の一つで岩を真っ二つにされた。……旅館の人には何と言うべきか?

 

「い、岩が真っ二つ!? とりあえず武器を何とかしなきゃ! 風花・武装解除!」

 

「やった! 奴の得物を弾いた!」

 

「油断するな!」

 

「え? ふぐぅっ!?」

 

少年が武器を弾き、油断したその隙を突き桜咲は少年の喉と股間を握った。……急所を狙うのはセオリーとは言え……。

 

「何者だ。答えねばひねり潰すぞ?」

 

「あ、あわ、あわわわわ……」

 

「止めろ桜咲。相手を良く見ろ」

 

「あ、貴方は……って、え? じゃ、じゃあ……」

 

俺を視認してようやく桜咲は自分が今誰に何をしているのかを認識したようだ。

 

「あうあうあうあうあう……」

 

「す、すみません! で、ですが仕事上、急所を狙うのは当然で……!」

 

「こっちこそ済まなかった……声をかけておくべきだった」

 

バスタオルを渡し、後ろを向きつつそう言っておく。桜咲は少年から手を離し、バスタオルを体に巻きつけた。

 

「……いえ、こちらこそ考え事をしていたもので……」

 

「心配するな、とは言わん。不確定要素が多すぎる案件でもあるしな」

 

「え……?」

 

「だが、それでも俺達は近衛を護る。違うか?」

 

「……そう、そうですね。確かに貴方の言う通りです。私はお嬢様をお護りする。それだけです!」

 

「だからその為に皆で協力する必要がある。もちろんお前の手も借りたい、頼めるか?」

 

「勿論です! このかお嬢様をお護りする為なら!」

 

ちょうどその時、再び戸が開いた。入って来たのは――

 

「うひゃー、アスナアスナ! 露天風呂やえ露天……風、呂……」

 

「このか? どうしたの突然固まっ……てぇ!?」

 

ふむ、今の状況を軽く整理してみるか。風呂場に男女が3人と動物が1匹、うち1人は股間を抑え隠れており、動物は1人に寄り添うように傍にいる。そして残った男女はバスタオルこそ巻いているがほぼ全裸と変わらぬ状態。更に湯に当たっているせいもあり顔を上気させた状態で向かい合っている。……あ、これダメなパターンか。

 

「お、お嬢様? 神楽坂さん?」

 

「とりあえず、落ち着け? そして話を聞いてくれ。俺と桜咲は――」

 

「「お邪魔しました」」

 

「待って! 待ってください! お願い、お願いですからぁっ!!」

 

「せっちゃん! うちが悪かったえ! うちに冷たかったんはこーちゃんと仲良くしてた事に嫉妬してたからなんやね? うん、分かっとる。分かっとるよ? 大丈夫や!」

 

「違います! これには訳が――!!」

 

「青山君、ごめん。さっきの信頼云々の話、少し考えさせて?」

 

「だから待てといっているだろう!? 何を勘違いしている!」

 

ええい、俺は一体何を間違えた!?

 

「あ、あの皆さん……?」

 

「兄貴、これが修羅場だ。兄貴も気をつけるんだぞ」

 

「う、うん……」

 

「せっちゃん……今まで、ごめんな?」

 

「だ、だからちがっ!!」

 

「もう! 女々しいわね! 桜咲さんとはそ、そう言う関係なんでしょっ!? 無駄にドキっとしたりして悪かったわね!!」

 

「頼むから話を……」

 

結局、錯乱した2人を宥めるのにかなりの時間を要した。……とんだ災難だ。

 

「――で、本当に2人は何もないん?」

 

「ありません!」

 

「俺と少年が先に入っていた所に桜咲が入ってきてな……覗きではないと誤解を解いた直後にお前達が入ってきたんだ」

 

「にしてもビックリしたわよ……ネギが風呂嫌いって事もあるからもう2人とも出てるかと思ったらあんな……ねぇ?」

 

「せやねぇ……」

 

「全く……混浴なんてものがあるから……」

 

それさえなければあんな面倒な事にならずにすんだものを……。

 

「でも……良かったぁ」

 

「え、何が?」

 

「?」

 

「せっちゃん、うちと話すのが嫌とかやなかったんやね……」

 

「あ、う……そ、そりゃ私かてこのちゃんと話し……。っ! し、失礼しました!」

 

急にその場に跪き対象に謝罪の言葉は述べる桜咲。……一体何がしたいんだ?

 

「「は?」」

 

「へ?」

 

「そ、その私はこのちゃ……お嬢様をお守り出来たらそれだけで幸せで! それもひっそりと陰から……そ、その……」

 

「……むぅ~!」

 

桜咲がそこまで言った時、急に膨れる対象。……そろそろ理解の範疇を超えそうなんだが。

 

「お、お嬢様……?」

 

「せっちゃん!」

 

「は、はいっ!」

 

「お守り出来たら、って何? ひっそりと陰から、って何?」

 

「え、あ、あの……?」

 

対象のいつもと違う様子に戸惑う桜咲。しかも戸惑っているのは桜咲だけではなく

 

「(ねぇ、何かあのこのか怖いんだけど)」

 

「(俺が知るか。あと、今の格好であまり近くに寄るな)」

 

「(! このスケベ!!)」

 

「(煩い、黙って2人を見ていろ)」

 

「うちは、せっちゃんがまた前みたいに一緒に遊んだり話してくれたらそれでええ。守るとかひっそりって言うんは何や事情がある思うけど、守るんやったら近くにいた方がええ思うしひっそりするくらいなら一緒におった方が守りやすいんと違う?」

 

……さすが、頭が良いな。対象の言う事は正論だ。と言うか、桜咲の言う事が若干ズレている。

 

「あ、いや、それは…………はい」

 

「せやろ? だから、せっちゃんは今日からまた前とおんなじ様にうちと……ううん、うちらと遊んだりお話ししたりする事。ええね!?」

 

「ひゃっ!!?? そ、その…………はい、分かり、ました」

 

対象の勢いに押されてではあるが、ちゃんと頷いた桜咲。それに満足したのか、対象は途端に破顔する。

 

「……えへへ、せっちゃ~ん!」

 

「うわぁっ!? お、お嬢様っ!?」

 

どうでも良いが、いつまでもバスタオル一枚でいると風邪引くぞ。

 

「くくく、桜咲、心配が一つ減って良かったな?」

 

「笑ってないで助けてください!」

 

「アスナ、ネギ君、ほらこーちゃんも!」

 

「え、ちょ、このか!? さすがにこれはマズイ! 色々とマズイってぇええええええっ!!」

 

「あわ、あわわわ……」

 

「ぬぐ、これはキツいぞ……」

 

今の状況を客観的に説明すると、裸でくんずほぐれつしている男女五人組。こんな場面、誰かに見られたら社会的に死ぬ。

 

「お、お前らな、ななな、何をハレンチな事をしとるんや~~~!!??」

 

「うわぁっ!!?? こ、このか人がいるから早く離して! お願い! お願いだからぁあああああっ!!」

 

「お嬢様お願いです! どうか、どうかご容赦を!!」

 

「あや、ごめんごめん。つい嬉しくなってもーて♪」

 

「! お前は……!」

 

昼間の女だが……何故出てきたんだ? しかも1人で。

 

「あ、あんたら中学生やろ!? それなのにハ、ハダカでくんずほぐれつ……恥を知り恥を!!」

 

「ご、ごめんなさい! ほら! このかも謝る! 元はといえばあんたのせいでしょ!!」

 

「せ、せやね。ほ、ほんまにごめんなさい!」

 

「申し訳ありません! 公共の場で……!」

 

「すみません! 全ては先生である僕の……!」

 

「そんな事はどうでも良い。貴様、堂々と乗り込んでくるとは良い度胸だな?」

 

「ハッ――!? せ、せやった。あまりのハレンチさに飛び出してもうた!! ま、まぁちょっと予定は狂ったけどこのかお嬢様はいただいていきま――」

 

「白き雷」

 

「――ほへ?」

 

女が喋っている間に詠唱が完了した魔法を脅しの意味を込めて放つ。放たれた魔法は女の真横を通り過ぎ、そのまま虚空に消える。

 

「え、い、今の……?」

 

「ちょーっ!!?? ここで使っていいの!? いいの!?」

 

「あ、青山君!? このかさんがいるのに!」

 

「――いえ! この場は仕方がありません! 私も応戦します!」

 

「フ、フン! 今のは不意を突かれただけ。行きますえ、月詠はん、フェイトはん!」

 

しかし、しばらく経っても月詠と呼ばれたあの神鳴流も、フェイトも出て来なかった。

 

「……?」

 

「えっと……?」

 

「何が狙いだ……?」

 

「つ、月詠はん! はよ来なはれ! フェイトはんは!?」

 

『あ~、ごめんなさい~、今美味しいお団子屋さん見つけたんで~♪』

 

『――ふむ、このコーヒーは中々……』

 

「アホかぁ―――――っ!!! 高い金出しとる意味ないやないかーっ!!」

 

……どうすればいい? 携帯から聞こえる音声を拾っていると何か凄く居た堪れない気持ちになるのだが。

 

「――神鳴流奥義」

 

「えっ!? ちょ、ま!」

 

「百花繚乱!!」

 

「ぺぽ――――っ!!??」

 

「うーわー……」

 

「吹き飛ばしちゃいましたね……」

 

「せっちゃんすごーい!」

 

おい、せっかく主犯格が取り残されたのに吹き飛ばすとは何てことをしてくれるんだ。

 

「……すみません、やりすぎてしまいました」

 

「まぁ……俺も使ってしまったしな」

 

「そー言えば、さっきこーちゃんが何や手から出してなかった?」

 

「……手品だ」

 

「いや、それってどうなのよ」

 

「あ~、手品か~。ほかほか~。こーちゃん、手品も出来るやなんて凄いなー」

 

「信じるの!?」

 

相手が対象で助かった……。だがしかし、まだまだ油断は出来そうにないな。




……良いのか? これで良いのか? お風呂まででほぼ一日目終わっちゃったぞ、月詠とフェイトが何か若干アホの子になってるぞ。しかもこの×せつになりそうな勢い……。そしてこの人ら……風呂シーンなってから終わるまで、ずっとバスタオル一枚で会話してたんだよ……?
中盤なんて主人公にカッコいい事言わせたかっただけなんですごめんなさい!

そして前半の主人公……フェイトの石化魔法食らったけど割と平気にしてるよね?なんで?って所ですかね。その理由は次回かその次辺りになんとか――!

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