「結構買ったな」
「うん。ほな、そろそろ戻ろか~」
「分かった」
俺の両手には破れそうなくらいに膨らんだ買い物袋。ちなみにほとんどジュースの類である。あと念のための菓子だ。費用はクラス全員から預かった。もちろん俺も出している。
「しかし……こんなにジュースばかり買って大丈夫なのか?」
「う~ん、大丈夫やろ。それより……」
「ん?」
「こうして二人並んで歩いてると何やデートみたいやなぁ♪」
笑顔で言う対象。……デートとは何だ? DATE? 日付の事か? ……いや、さすがに違うだろう。
「ありゃ、無反応や」
「……デートとは一体何なんだ?」
「……あははっ、こーちゃんかわえーとこあるなぁ」
笑われてしまった。……自力で調べておくか。また聞かれた時に答えれるようにしておかなくてはな。何度も笑われる訳にはいかない。
「とりあえず早く戻ろう」
「あ、こーちゃん。待ってや~」
だが戻ってみると神楽坂は戻っておらず、手持ち無沙汰になってしまった。
「おかえりー、このかに青山君お疲れさま~。アスナももうちょいで戻ってくると思うからねー」
「うん、ただいま~。あや、アスナまだなんやね」
「ふむ、まだ何かあるか?」
「う~ん……後はアスナを待つだけやし、とりあえず休んでてええよ? 」
「分かった」
近くにあった椅子に座る。周りを見るとそれぞれ談笑している。
「……不思議な感じだな」
まさか俺がこんな催しに参加する事になるとは……。出る前にも思ったが多少の交流は必要かと考えてはいた……。だが、俺はこの時間を……この雰囲気を楽しんでいる。そこまでは考えていなかったのだが、俺も変わったものだな。たった一月程度で。
「みんなー、アスナが帰ってきたよー! ネギ君も一緒みたい!」
「皆さん、良いですわね?」
雪広の言葉に返事をするクラスメイト達。何をする気だ?
「む? 何だ?」
どうやら考え込んでいた間に何か決まったらしい。……乗り遅れたか?
「こーちゃん。コレ持ってな」
「これは……さっき買ったクラッカーか?」
「二人が入ってきたらクラッカー鳴らしてな~?」
そして、二人が戸を開けた瞬間――
「「「「「ようこそ!! ネギ先生ーっ!!!」」」」」
みんながクラッカーを鳴らしたので俺も見よう見まねでとりあえず鳴らした。タイミングがずれるところだったが、ギリギリ間に合った。
「へ……」
かなり驚いた様子の少年。これは……成功って事になるのか?
「あ……そーだ! 今日あんたの歓迎会するんだっけ……忘れてた!」
「え――っ!!」
買い出しに行った本人が忘れてどうする。いや、それとも買い出しの際にその事を忘れる程の出来事があったのか?
「ほらほら主役は真ん中!」
「わぁ~~、嬉しいなぁ」
クラスメイトに囲まれ嬉しそうな少年。朝の一件があったからか、こう言うのは素直に嬉しいのだろう。
「アスナなにやっとったん?」
「結構遅かったな。しかもネギ先生と一緒に」
「……色々とね」
「あの――……ネギせんせい……」
「え、あ、27番の図書委員の宮崎さん」
俺は誰が何番とかまでは覚えていない。ようやくあまり話さない奴の顔と名前も一致で覚えてきた所だ。
「あ、あの……さっきはその、危ない所を助けていただいてその、あの、これはお礼です……図書券……」
「えっ?」
「本屋がもう先生にアタックしてるぞ――!!」
宮崎が少年に礼をしたのを見てみんなが騒ぎだす。
「――センセ。私からもコレを……記念です」
するとそれに触発されたのか、雪広が出したのは……何やら銅像のような物。しかも少年を模している。血迷ったか?
「うっわ、それ先生の銅像!?」
「なんだそれ!?」
それを見た人間から次々と声が上がる。内容はまぁ、先程俺が考えていた事とほぼ同じような事だ。
「金持ちの考える事は謎に満ちているな……」
「ウチもよう分からんわ……」
「あんたバカなんじゃないの!?」
「なっ……アナタに言われたくないですわアスナさん!!」
喧嘩し始める二人。もう見慣れてしまった自分がいる事に驚きだ。
「やぁネギ君、初日の授業お疲れさま」
「あ、タカミチとしずな先生まで――」
少年も気づいたようだ。そして高畑先生に気づいた神楽坂が何やら少年に近づき耳打ちしている。またロクな事じゃないだろう。
「先生カンパーイ!」
「あ、カンパーイ。いやぁ、中々うまくいかなくて……」
器用に高畑先生と会話しながら時折生徒から来る挨拶を返している。俺には真似出来んな。
「ネギ君すごいな~」
「そうだな」
「」
少年が高畑先生にそう聞いた瞬間、神楽坂がずっこけ……その手に持っていたジュースが零れて俺の制服に盛大にかかった。冷たいのは特に問題ないが、ジュースの種類が悪かったのか、ブレザーはもちろん中のカッターシャツにまでその染みが広がってしまっている。
「おい……」
「こ、こーちゃん大丈夫?」
「俺は大丈夫だが……どうしてくれるんだ。とてもじゃないが着れないぞ……」
そう言いながらブレザーを脱ぐ。これは……クリーニング確定か……。
「あやー、こりゃクリーニングに出さんと落ちへん思うえ?」
対象が脱いだブレザーと、カッターシャツに付いた染みを見てそう言う。
「だろうな。……仕方ない。明日にでも出してこよう」
「それならウチがついてこか? 近道知ってるんよ」
「良いのか?」
「うん。明日は部活ないし大丈夫やよ」
「それなら頼む。さて……おい、神楽坂――ってどこに行った?」
話をつけようと神楽坂を探すが姿が見えない。人にジュースをかけておいてどういう了見だ。
「ありゃ? ほんまや、さっきまでおったのに」
「全く……」
ジュースのシミがついた制服を綺麗にたたみ、鞄にしまう。
「ほな、明日の放課後に行くから教室おってな?」
「了解だ」
それから歓迎会も終わり(最後に一悶着あったみたいだが)……。
「いや~、歓迎会楽しかったな~」
「……そうだな」
制服が濡れるという事件があったがそれ以外は概ね楽しめた……と思う。未だ楽しいと言う感情が良く分からないでいるが……。今この胸にある感覚をきっとそう呼ぶのだろう。
「……ほ……た―……よ!」
「い……ど……」
神楽坂と少年は何やら二人で話していた。……そう言えば少年は泊まる所が無いから今日から対象達の部屋で暮らすんだったな。
「あはは、あの二人まだやっとる。アスナ~!」
「あ、うん! ほら、何してんの行くよー」
「あ、はーい。は……はっ……」
「……はぁ」
また暴発か……その癖はどうにかならないものか。それも修業で直すべき所だな。
「ハクシューン!」
「きゃあ」
「きゃ……またかお前はーっ!!」
「ご、ごめんなさ~~~いっ!」
「……うー、こーちゃん……見た?」
「ん? 何をだ?」
そう言う事があるだろうと思い、顔を背けておいた。何も見えるわけがない。
「……こーちゃんのエッチ」
なのにそんなことを言われてしまった。不名誉にも程がある……。
「待て、何の事だか……」
「おーい、夫婦漫才はいいからさっさと帰るわよー!」
「そうだ、神楽坂。お前にはいくつか話がある」
「あー、こーちゃん逃げたー」
などと他愛無い会話をしながら寮へと戻る俺たち。……うむ、悪くないなこう言うのも。いや、制服は悪いか……。
…………
………
……
…
「全く! バイトも遅刻しちゃったし、ホントあんたなんか泊めるんじゃなかった!!」
「えっ!? 僕のせいじゃ……」
「仲悪いなー、二人」
「おはよう。……何かあったのか?」
「あ、こーちゃんおはよう~。実はな……」
合流してからは会話したりしつついつもの様に学校へ向かう。これも、日常になってきているな……。
「じゃあ、一時間目をはじめます。テキスト76ページを開いてくださいね。The(以下略)――今のところ誰かに訳してもらおうかなー、えっと……」
少年のその言葉にクラスの連中は次々と目をそらす。俺は特に目をそらす事なく前を向いていた。当てられても答えられるしな。そして少年は神楽坂の前で止まり
「じゃあアスナさん」
「なっ……何で私に当てるのよっ!?」
「え? だってアスナさんア行だし……」
「アスナは名前じゃんか!!」
往生際が悪いな……。分からないなら分からないと素直に言えば良い物を……。
「あと感謝の意味も込めて」
「何の感謝よっ!?」
「―――要するに分からないんですわねアスナさん」
「なっ!?」
「では委員長のわたくしが代わりに……」
「訳すわよ! 訳せば良いんでしょ!! えーと……」
そして雪広に焚き付けられた神楽坂が先ほどの英文を訳し始める……のだが
「ジェイソンが花の上……に落ち春が来た? ジェイソンとその花は……えと高い木で食べたブランチで……骨…‥が百本? えーと……骨が……木の……」
見慣れた光景ではあるが……何をどうしたらそこまで間違えられるのか聞いてみたいものだ。そもそも文章として成り立っていない事に読んでて気づかないものか。
「アスナさん、英語ダメなんですねぇ」
少年がくすりと笑うと、周りからも笑いが起き……怒った神楽坂が、少年の胸倉をつかむ。しかし神楽坂の長い髪が少年の鼻に当たり
「ハ……ハ……」
「……ふむ」
「ハクション!!」
「うひゃあっ!!」
少年よ、その暴走だけでもさっさと直すべきだな。後始末も大変だろう?
うーん……あまり手直ししていないせいかこれ大丈夫か? レベルな内容になっている気がしますが……まぁ、大丈夫でしょう。多分。
では今回追加された設定をご紹介いたします。
・頭はそれなりに良い?
・デートを知らない
異常で……いえ、以上です!
ここまで読んでくださった方々、大変ありがとうございます。