二人目の護衛(更新停止中)   作:ヨシュア13世

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サブタイトルを深く考えるのは止めにしました。

今回は少々(かなり?)長めとなっております。


バカレンジャーと図書館島

「ふわ~ぁ。そろそろあったかくなってきたねー」

 

「そうだな」

 

「そーですねこのかさん!」

 

「3人とも喋ってないで走りなさいよ!」

 

――いつの間にかこの4人で行くのが定番になって来ていた。少年はともかく……俺も馴染んだものだな。当初はあまり干渉する気はなかったが……。気がつけばすっかり、だ。

 

「こーちゃんどうかしたん? 何や考え込んでるみたいやけど」

 

「ん、ああ……確かに気持ちのいい気温だな。とな」

 

「「………」」

 

対象が顔を覗き込んで聞いてきたが、まさか先程考えていた事を素直に言うわけにもいかず、最近習得した不自然にならない程度の笑顔で答えると何故か対象と神楽坂がボーっとした。

 

「どうかしたのか?」

 

「ほへ? あ、う、ううん。なんでもないなんでもない。な、アスナ!」

 

「え? あ、そ、そうね! ホント、なんでもないから気にしないで!」

 

少し顔を赤くして二人はそう言った。本当にどうしたのだろうか?

 

「?」

 

「どうしたんでしょうかお二人とも……」

 

「分からない。女性特有の悩みかもしれない」

 

「な、なるほど~」

 

結局良く分からなかったが……問題はなさそうだから放っておいても良いだろう。

 

「(ねぇ、あたしおかしいのかな? 高畑先生でもないのに一瞬ドキッとしたんだけど。何あの笑顔)」

 

「(ウチもやアスナ。こーちゃんのあんな顔初めて見たえ……これってギャップ萌え言うんかな?)」

 

「(た、多分……?)」

 

「本当に大丈夫なのか?」

 

顔を寄せ合って何やら言っているが……。

 

「ネギ君おっはよー!」

 

「やっほーネギ先生!」

 

「あ、佐々木さんに和泉さん!」

 

「おはよー」

 

「青山君もおはよー」

 

「ああ、おはよう」

 

この日は驚く程つつがなく授業が終了し、こちらに来て初めて平和な一日が過ごせる。俺は安易にもそう思っていた――

 

「水冷たっ!」

 

「この裏手に私たち図書館探検部しか知らない秘密の入り口があるです」

 

「お――」

 

「何で俺まで……」

 

夜……俺は何故か図書館島に来ていた。別に気がついたらそこにいた、と言う訳ではない。いきなり対象に電話で呼び出されたのだ。

 

「ごめんな、こーちゃん。でも、図書館島はまだ入った事無いって言ってたやろ? だから丁度いい思てんけど」

 

「そーそー少なくとも行って損は無いよー」

 

「むしろお得です」

 

「いや、俺が聞きたいのは何でこんな遅くにって事なんだが……それに少年まで」

 

早乙女と綾瀬はそう言うが……そもそもこんな時間に空いてないだろう。

 

「あ、青山君こんばんは~。ふわぁ……」

 

「大丈夫か? かなり眠そうだが」

 

「な、なんとか大丈夫です。あ、僕はこれで」

 

俺にわざわざ一礼をして少年は神楽坂の方に行った。相変わらず律儀な少年だ。

 

「ところで、近衛達の目的はなんなんだ?」

 

「あんな、図書館島にあるて言われとる魔法の本を探しに行くんよ」

 

「魔法の本?」

 

こんな時間に出歩くくらいだから余程の事だろうとは思ったのだが……よりによって魔法の本だと? 魔導書とかその類か? そんなものがここにあるとは到底思えないが……。

 

「うん。実は夕方にテストの話してて、ほんで行こうって話になって……」

 

「……繋がりが見えないんだが」

 

「あ、それはな~。図書館島には頭を良くする魔法の本があるねんて」

 

「それはまた……」

 

「まぁ魔法言うより分かりやすい参考書やって夕映は言うてたよ?」

 

「そうだろうな。だが……それで納得した」

 

何故テストの話から魔導書を探す話にと言う事にもその面子にも納得がいった。

 

「え?」

 

「いや、綾瀬はともかく佐々木や長瀬たちはあまり本を読まなさそうだったから」

 

「あはは、こーちゃんも言うなぁ」

 

俺の言葉に対象が苦笑した。でも、そう思ったのだから仕方ない。何しろ綾瀬はともかく、他の4人は典型的な体育会系。とても本に興味を持っている様子ではなさそうだったからだ。

 

「あれ? 青山君も来たんだ~」

 

「……佐々木か」

 

「もしかして青山君も頭が良くなる本が欲しいとか? この間も補習でてたしー」

 

「なんと。そうでござるか?」

 

「お、仲間アルなー」

 

「いや、俺は前から図書館島に行ってみたかったから丁度いいと思って付いてきただけだ」

 

正確にはいきなり呼び出されてさっき説明を受けたばかりなんだが。あと、補習の件についてはもう一度話し合う必要がありそうだ。

 

「なんだそっかー。せっかくバカ仲間が増えたと思ったのにーねぇ、アスナ」

 

「そんなこと私に聞かないでよ。ってゆーかそもそもそのバカ治すために来たんでしょーが!!」

 

「ふむ……」

 

「こーちゃんはどう思う? 魔法の本あると思う?」

 

「さぁな。あったとしても『頭を良くする』といった目的に合うものかどうか……」

 

魔法の力で強制的に頭を良くすることは可能かもしれないが脳に直接働きかけるような魔法は極力使用しない方が良いだろう。

 

「ほうほう」

 

「あるって絶対ある!!」

 

神楽坂が力説している。大方、魔法があるから魔法の本がある。と言う考えだろうが……口を滑らしそうで怖いな。

 

「何故そこまで言い切れる?」

 

「それはこいつがまほ……」

 

「ア、アスナさーん!?」

 

……少し抱いていた疑念が確信に変わった。少年の正体はバレているな。だが、ここで俺がどうこう言える訳もなく、知らない振りをした。

 

「まほ……?」

 

「え、あ! なんでもないなんでもない! とにかく行くわよ!」

 

「「「「「「おー!」」」」」」

 

「……」

 

綾瀬を先頭に図書館島の中に入った……のだが、言葉が出なかった。どこを見ても本、本、本。とにかく、本しかなかった。これが図書館島か……凄まじいな。

 

「わ――っ!? 本がいっぱい! ホントにすごいです!! これなんか凄く珍しい本で――うひゃ!?」

 

「あ、先生。貴重書狙いの盗掘者を避けるためにワナがたくさん仕掛けられていますから気を付けてくださいね」

 

少年がはしゃいで近くにあった本を取ろうとすると、矢が少年目掛けて飛んで行ったが長瀬が掴んでその動きを止めた。……大した動体視力だ。

 

「えええっ!?」

 

「……どんな図書館だ」

 

罠が仕掛けられてる図書館なんて聞いた事がない。だが、それほど貴重な本があるという事だろう。

 

「うそーっ!!」

 

「死ぬわよそれ!?」

 

「と、ところで……皆さんなんでこんな所に?」

 

少年がおそるおそるといった感じで尋ねてきた。……まだ聞かされてなかったのか?

 

「んとなー、この図書館島に読むだけで頭がよくなる魔法の本があるねんて」

 

「そうなの! で、それを探そうと……」

 

「ここに来たアル!」

 

「えっ……ええ~~~~!? 読むだけで頭が良くなる魔法の本~~!?」

 

そんなものこんな所にあるわけがないとは思うが……学園が学園なだけに強く否定できないのも事実である。

 

「そーらしーえ?」

 

「手伝ってネギ君……?」

 

「あうっ……そんな、でも……」

 

教師と言う立場上それは困るだろう。夜遅くに生徒が外で、なんて。

 

「ねぇ夕映ちゃん、あとどれぐらい歩くの?」

 

「そうですね……部室から内緒で持ってきた地図によると、今いるのはここで、地下11階まで降り、地下道を進んだ先に目的の本があるようです」

 

綾瀬が地図を指で指しながら説明する。……それは勝手に持ってきて大丈夫なのか?

 

「往復でおよそ4時間。今はまだ夜の7時ですから……」

 

「ちゃんと帰って一応寝れるねー」

 

「よし……私も試験でバイト休みだし! 手に入れるわよ『魔法の本』!!」

 

「……」

 

何やら少年が考え込んでいるが……恐らく魔法の本の事だろう。しかし、本当にそんなものがあるのか?

 

「では出発です!」

 

「「「「「「おー!!」」」」」」

 

「みんな、ここ道が細いから気をつけてなー」

 

「ほう、今俺たちが歩いてる場所は本棚の上なわけか」

 

「そうそう。せやから本見てたらバランス崩して落ちてまうえー――きゃう!?」

 

が、言ってるうちに足を滑らしてしまった対象。

 

「このかー!?」

 

「このかさーん!!」

 

「っと」

 

間一髪のところで対象の手を掴み、落ちるのを防ぐ事が出来た。何が何でも助けるつもりではいたが、危なかっしい事この上ないな。

 

「あ、こーちゃん……」

 

「全く……」

 

「ありがとなー」

 

「気をつけろと言った本人が落ちてどうする」

 

「あ、あはは~……面目ない」

 

罰が悪そうな顔をして笑う対象。まったく……こっちの身にもなって欲しいものだ。何かあったら『あの人』に俺が怒られる。……それだけで済むのか?

 

「だ、大丈夫ですか!?」

 

「大丈夫やよ。こーちゃんに助けてもろたし」

 

「ホント、びっくりしたわよ」

 

「ごめんな、アスナ」

 

みんなが対象を心配して集まってくる。この不安定な足場にあまり集まらない方が良いと思うのだが……この場合は仕方ないだろう。

 

「でも、さっきの青山君なんかカッコ良かったよねー」

 

「もの凄い反射神経だたアルな」

 

「隣を歩いていたんだ。反応くらい出来る」

 

「ええー? ウチのために頑張ってくれたんちゃうん?」

 

「そこまではさすがにどうだろうな……」

 

ある程度体が勝手に反応したのは培った経験故か……。

 

「あはは、それもそやね」

 

「まったく、このかも意外とドジなんだか――らぁッ!?」

 

神楽坂の素っ頓狂な声が聞こえ、そちらを見ると何をどうしたらそうなったのか、こちらに向かって飛んできていた。滑って転けたとかの比ではない。宙に舞っていたのだ。

 

「アスナー!?」

 

「わっ、ちょ、このかに青山君避けてぇええええ!!」

 

「……ふむ。近衛、少し下がっていろ」

 

「え? で、でもこーちゃんが」

 

「問題ない」

 

それよりもあのまま落ちたらたとえ上手く着地が出来たとしても本棚が揺れて神楽坂がさらに危険な目に遭いそうだ。なので俺は神楽坂の落下点をある程度予測し、その場所まで歩く。

 

「大体この辺りか?」

 

「青山君!? 危ない! 危ないってばぁ―――っっ!!」

 

「ア、アスナさーん!?」

 

「カエデ、間に合うアルか!?」

 

「間に合うがこの足場では……!」

 

俺は落ちてくる神楽坂を出来るだけ衝撃を殺して受け止めた。全く、どいつもこいつも……足元をちゃんと見なくてはダメだろうに。

 

「うぅ……え? あれ?」

 

「なんと!」

 

「まさかのダイレクトキャッチアル!」

 

「しかもあれは……」

 

「お姫様抱っこやね~」

 

「一応聞いておこう、どこか怪我はないか?」

 

「あ、え……う、うん大丈夫。その、ありがと……」

 

「そうか、なら良い。次からは前方と足元に注意して歩く事を奨める」

 

神楽坂を降ろし、先へ進む。神楽坂の顔が何やら赤かった気がするが……特段問題はないようだから気にする必要はないだろう。

 

「うー……」

 

「アスナ、だいじょぶ?」

 

「う、うん。なんとか……」

 

「顔、真っ赤やで?」

 

「う、うううううるさいわね!」

 

あの二人は何を言い合っているのだろうか? テストの時間が押しているのではなかったのか?

 

「とりあえず、早く行くですよ」

 

「せやね!」

 

「おー!」

 

それから綾瀬の案内で奥へ、奥へと進んで行く俺達。

 

「ゆ、夕映ちゃんまだなのー?」

 

「いえ……もうすぐそこです」

 

「これが図書館とはな……」

 

道なき道、とでも言えばいいのだろうか? 俺達は埃や汚れに塗れながらも進んでいった。

 

そして――

 

「おめでとうです。さあ、この上に目的の本がありますよ」

 

「す、すすすごすぎるーっ!?」

 

先頭にいた綾瀬に続き、上に上がると大きな広間みたいな所に着いた。

 

「魔法の本の安置室です。とうとう着きましたね」

 

「こ、こんな場所が学校の地下に……アハハ」

 

「やっと着いたか……それにしても地下にこんな空間があったとはな」

 

俺はそう呟きながら制服に付いた汚れを払う。これで本も何もなかったら完全な無駄足か……。

 

「見て! あそこに本が!!」

 

「あ……あれは!?」

 

「どうしたのネギ!?」

 

どうやら本を見つけたようなのだが、突然大声を上げた少年。まさか、本物の魔道書か?

 

「あれは伝説のメルキセデクの書ですよ!! 信じられない!! 僕も見るのは初めてです!!」

 

かなり興奮した様子のネギ先生。メルキセデクか……ふむ、帰った時に師匠に聞いてみるとするか。

 

「てことはホンモノ……?」

 

「ホ、ホンモノも何も、あれは最高の魔法書ですよっ!! 確かにあれならちょっと頭を良くするくらいカンタンかも……」

 

「少し落ち着け」

 

「ネギ君詳しいなー」

 

「やった――!!」

 

「これで最下位脱出よ――!」

 

俺と対象が少年を窘めていると、バカレンジャーの面々が本に駆け寄っていく。今までの事を考えると罠があって当然かと思うが……。

 

「……」

 

「みんな待って! あんなに貴重な魔法書、絶対ワナがあるに決まってます!!」

 

「気ぃつけて!!」

 

俺達は先に行った連中の後を追いかけるように走るが、突然足場が崩れてその場にいた全員が落下した。

 

「「「「「えっ!!」」」」」

 

「キャ!?」

 

「いた!」

 

「わぁ!?」

 

「ぐ、先生に近衛……大丈夫か?」

 

くっ……大した高さではないとは言え、自分は普通に着地したにも関わらず対象を守れなかったとは不覚……。

 

「うん。ウチは何とかー、ネギ君は?」

 

「あたた……ぼ、僕も何とか大丈夫です」

 

「コレって……?」

 

「ツ、ツイスターゲーム……?」

 

佐々木達が足元に描かれている平仮名が記されているものを見て耳慣れない単語を口に出していた。

 

『フォフォフォ! この本が欲しくば……わしの質問に答えるのじゃー!!! フォフォフォ』

 

「キャー!?」

 

「石像が動いた――!?」

 

「いやーん!」

 

「!?」

 

「おおおお!?」

 

「……ん?」

 

石像が動いてるのは当然魔力でだろうが……何か変だな。感じた事のある魔力だ。あと、石像の声も聞いたことある気がする。

 

「こーちゃん?」

 

「いや、なんでもない。それより、近衛と先生は下がっていた方が良い」

 

それにしても……ついすたーげえむってなんだ? この平仮名をどうにかするのだとは思うのだが……。

 

「う、うん。分かったえー」

 

「は、はい」

 

『―――では第一問! 「DIFFICULT」日本語訳は?』

 

「えっ!?」

 

「何それ!?」

 

「なるほど……」

 

この声といい、何の脈絡もなく英語の問題。こいつの正体が分かった……。

 

「どうかしたんですか?」

 

「……いや、大した事じゃない」

 

石像の正体が分かったので俺は静観することにする。もし俺の考えたとおりであればあの石像は俺達に危害を加えないはずだ。ただ……もしもの事を考えて石像を観察しておこう。誰かに攻撃の姿勢を見せてもすぐ行動できるように……。

 

「み、みんな落ち着いて!! 大丈夫です! ちゃんと問題に答えればワナは解けるハズ! 落ち着いて!!「DIFFICULT」の訳をツイスターゲームの要領で踏むんです!」

 

…………

 

………

 

……

 

 

「あたたたたっ!!」

 

「死ぬ、死んじゃう~~~!」

 

「い……いたいです!」

 

「うわぁ……」

 

「い、痛そうやえ……」

 

ついすたーげえむとやらが始まって十数分経った……今の状況を一言で表すと

 

「地獄絵図……と言う奴か」

 

「せやね……」

 

それぞれの四肢が絡まり合い、下手に動くと互いの関節が極まってしまうようだ。これが……ついすたーげえむか。恐ろしいげえむだ。

 

俺達はアドバイスをしながら神楽坂達の苦行を見守っていた。……それにしても、改めて思うが相当に頭が良くないな。どれもこれも簡単な英単語ばかりだぞ……。こっちからヒント沢山出してようやくとは。

 

『最後の問題じゃ。「DISH」の日本語訳は?』

 

「えっ……ディッシュ……」

 

「ホラ! 食べるやつ! 食器の……」

 

「メインディッシュとかゆーやろー」

 

最後の割に簡単な問題だな……。やれやれ、これで帰れるか?

 

「わ……わかった! 「おさら」ね!?」

 

「「おさら」OK!!」

 

「お!」

 

「さ!」

 

そして最後のひとつ……。まぁ、間違える事は無いだろう。……そんな事を思った俺もまた、頭が悪いという事なのだろう。

 

「「ら!」」

 

「「「「「「……」」」」」」

 

静寂がその場を支配した。それと言うのも佐々木と神楽坂が踏んだのはあろうことか「ら」ではなく「る」だったからだ。

 

「……おさる?」

 

「違うアルよーッ!!」

 

『ハズレじゃな。フォフォフォ』

 

石像は持っていたハンマーを振り下ろした。さっきまで立っていた地面が割れ、俺達は下に落ちる。

 

「平仮名も読めない程だったとはな……」

 

「アスナのおさる~~~!!」

 

「いやあああ~~~~」

 

「みんなゴメーン!!」

 

この場合は仕方がない……か。少年にはバレるかも知れないが、非常事態だ。

 

「『風よ』」

 

「!」

 

小声で詠唱し、全員の落下速度を落とす。

 

…………

 

………

 

……

 

 

「む……」

 

どうやら、落ちた衝撃で気絶していたようだ。俺以外のみんなはまだ気絶している。

 

「ふむ……出口でも探してみよう」

 

ついでにこの周囲に何か無いか見ていた方が良いだろう。

 

「高さは……およそ30mと言った所か?」

 

かなり落ちたな……。一人なら魔法を使うが、みんながいるこの状況ではそんな事も出来ないので登る事は不可能。だがここはあくまで学園だ。必ずどこかに出口があるハズだ。

 

「さて、そろそろ戻るか」

 

みんながいた場所へ戻ると、既に全員が起き上がっていた。

 

「あ、こーちゃん。どこにおったん?」

 

「パッと見渡した時いなかったからみんな心配したのよ?」

 

「心配かけてすまない。俺が一番先に起きたので少し周りを探索してきた」

 

「それで、どうだったアルか?」

 

「出口などはあったでござるか?」

 

「いや、本当に5分程しか回っていなかったからな。それより、怪我はないか?」

 

みんなを見渡すとそれぞれ問題ないと首を振っていた。

 

「私も別に……。痛っ!」

 

「む? 左肩か?」

 

「だ、大丈夫だって。別にこれくらい何とも」

 

「え~いっ♪」

 

「ギャ―――!? こ、このかあんた何すんのよ!?」

 

「あまり傷口を刺激しない方が良いんだが……とりあえず触れれば痛い程の傷と言う事は分かった」

 

となると、直に見ないと何とも言えないな……。

 

「何か医者みたいアルね~」

 

「や、ホントに大丈夫だって! 打撲みたいなもんだし!」

 

「あんなに痛がってたのに?」

 

「そりゃ怪我してるとこ触られたら誰でも痛いでしょーが!!」

 

「で、でもアスナさん。もし傷が酷かったりしたら……」

 

少年の言う事はもっともだ。打撲と本人は言っているがそんなものはあてにならん。

 

「う……」

 

「何にしろ一度見てもらった方が良いのでは? 青山さん、医療の知識はお有りで?」

 

「そこまで大層なものじゃない。応急手当が精一杯だ。まぁ……傷の度合いにもよるが」

 

「でしたらやはり見てもらった方が良いかと」

 

「うぅ……分かった。分かったわよ! で? 私はどうしたらいいの?」

 

「まずは服を脱げ」

 

傷口を見ない事には手当のしようがないからな。多少恥ずかしいだろうが、医療行為にそんな感情は持ち出さないでもらいたい。

 

「へっ?」

 

「何を惚けている? 服を脱げ、と言ったんだ。時間があるかは知らないが手当は早い方が良い。余計な事は考えずに脱げ」

 

「え、いや、ちょっと待って! ちょっと待って!?」

 

「俺は構わないが……」

 

やはりこうなるか……仕方ない。少し待つか。

 

「な、なぁこーちゃん? 別に脱がんでも袖捲ったらええんとちゃう?」

 

「ふむ……それもそうか」

 

「ほっ」

 

「青山……意外と抜けてるアルね」

 

古の言う通り……俺、何でそんな簡単な事に気付かなかった? 答えは簡単だ。普段俺がそうしているからだ。いかんな……自分がそうだからと言って相手もそうだとは限らないだろうに。

 

「では改めて神楽坂、傷口を見るから袖を捲ってくれ」

 

「う、うん」

 

「では私達は出口の探索へ。青山さん、人手はいりますか?」

 

「問題ない、ありがとう」

 

「そうですか……なら行ってくるです」

 

「アスナさん、無茶しないでくださいね!」

 

「分かってるわよ」

 

綾瀬達を見送り、改めて神楽坂と向かい合う。

 

「よいしょ……痛っ」

 

「やはり服が擦れて痛むか……捲りにくかったらやはり脱ぐか?」

 

「それだけは勘弁して! 男の子の目の前で脱げるわけないじゃない! 変態じゃあるまいし!」

 

「ただ医療に変態もクソもあるか。ちなみにあと袖を裁断すると言う方法があるが?」

 

しかし、それを行うとシャツをもう一着買わなければいけない。アルバイトで生計を立てていると言う神楽坂には少しではあるがキツかろう。

 

「あ、じゃあそっちで……いや、でもそうするとシャツ代が……今月ちょっとピンチだし……けど……」

 

「埒が明かないな……金は立て替えておく。余裕のある時に支払ってくれれば問題ない」

 

「うぅ……ごめん」

 

「気にするな。このまま怪我を放置する方が危険だろう」

 

さて、問題はどうやって布を裁つかだな……。魔法を使うわけにはいかないし……。

 

「ところで、青山君ってはさみとか持ってるの?」

 

「生憎と持ち合わせていない。だから多少強引に破かせてもらう」

 

「へ? 破くってまさかキャアァァァ!?」

 

「ふむ。綺麗に破れて良かった」

 

縫い目に合わせたおかげか、すんなりと裂けてくれた。

 

「綺麗に破けてなかったらどうするつもりよ!?」

 

「綺麗に破れたから問題ないだろう? それより怪我だ」

 

「そう言う問題じゃ、ってあいたたたた!? ちょっとは優しく扱いなさいよね!」

 

「いちいちうるさい奴だな……。怪我は打ち身に擦り傷、何かを庇ったりしたか?」

 

でなければこんな怪我の仕方はしないと思うのだが……。

 

「あー……うん。落ちる時にネギの奴をね。ほら、まだガキだしさ」

 

「ほう……? 確か、子供は嫌いなんじゃなかったのか?」

 

「う゛っ。そ、それはほら、何て言うかさ? 逆にガキ過ぎて放っておけないって言うか……お姉ちゃんみたいな?」

 

「そうか……」

 

姉か……俺にもそんな人物がいたんだろうか? 家族と呼べるのは師匠ただ一人だしな……。

 

「あ、そう言えば青山君の家族は?」

 

「いない、と言えば良いのか知らない、と言えば良いのかは分からないがそう言う事だ」

 

「あ……ご、ごめん変な事聞いて」

 

「気にしていない。それよりも今から消毒液をかけるから多少染みるぞ?」

 

後は包帯でもあれば一番良いんだが……ないものねだりをしてもしょうがない。先程破いた袖を包帯代わりに使うか。

 

「んっ! っくぅ~~~、染みるぅ~~!」

 

「我慢しろ。包帯がないからお前の服の袖を使うが……問題ないか?」

 

「あ、包帯ならあっちにあったよ?」

 

「そうか、あるならそれを使うとしよう」

 

神楽坂の言う通りの場所に行くと確かに包帯があったので、それを怪我してる部位に巻き付ける。

 

「これでしばらくは問題ないだろう」

 

「あ、ありがと」

 

「ああそうだ、もし包帯が緩くなったり傷が痛んだりしたら俺に言いに来い。もしくは先生に頼んでおくからそっちでも良い」

 

「はーい。あ、お風呂……はないから水浴びかな? したい時はどうすれば良い? さすがに体洗わないと汚くてさ……」

 

これだから女って言うのは面倒だな……。師匠もどんな任務でも風呂は絶対に入りたいって言ってたし……。

 

「まぁ……今すぐ適切な治療をしないと危険と言う怪我でもないし、終わった後でしっかりと包帯を巻いておけば問題はないだろう」

 

「そっか。良かった~」

 

そこで綾瀬達が帰ってきた。浮かない顔を見るに、出口は見つからなかったと見える。

 

「だめですね……やはりどこからも登れないようです。ハルナとのどかが救援を呼んでくれるとは思うのですが……」

 

「やはり……か」

 

「ふえーん」

 

「う~ん、困ったアルね~」

 

「そうでござるなぁ。さすがにこの高さでは拙者も……」

 

みんなの士気が下がり始めたその時……

 

「み、皆さん元気を出してくださいっ!! 根拠はないけど……きっとすぐ帰れますよ!! あきらめないで期末に向けて勉強しておきましょう!!」

 

この状況でその発言……楽天的だな。だが少年のその考え方は、嫌いじゃない。

 

 

「プッ……アハハハこの状況で勉強アルかー!?」

 

「ハ、ハイ! きっとすぐに出られますから!!」

 

「何かネギ君、楽観的で頼りになるトコあるな~」

 

「……そうだな」

 

「幸いなことに教科書には困らないようですし」

 

「よ―――し! じゃあ早速授業を……」

 

授業を始めようとしたのだが、誰かの腹の虫が鳴った。

 

「……とその前に」

 

「食料探しだ――っ!!」

 

どうやら空腹には勝てなかったようで、みんな駆け出した。そう言えば……最後に食べ物を口にしたのは何時間前だ?

 

「あはは、みんな元気やなー」

 

「悪くない雰囲気だとは思うが」

 

ほぼ全員が食料集めに行った中、残されたのは俺と対象だった。まぁ、全員が行く必要もないだろう。

 

「ほな、ウチらは勉強の準備しとこかー」

 

「了解した」

 

対象の提案に頷き、全員分の教科書やら椅子やらを準備していく。

 

―――そしてその翌日(テストまであと1日)。食料は潤沢にあったので、俺達は先生とこのメンバーの中では一番成績の良い対象に勉強を教わっていた。……俺も一度教える側に回ったのだが、非常に分かり難いらしい。

 

「では、これ分かる人ー?」

 

「「「ハーイ!」」」

 

「ハイ、佐々木さん」

 

「35です」

 

「正解でーす」

 

佐々木の正解に、歓声が起きた。どうやら勉強以外にする事が無い以上、普段より勉学に身が入り、学力が上がっているようだな……。

 

それから少しして――

 

「……ここにも出口はナシ、か」

 

俺は一人で地底図書室を散策をしていた。無論出口を探す為にだが、それとは別にもう一つ。

 

「――ふぅ、ようやく一人になれたか」

 

ここまでずっと誰かと一緒だったからな……。こうして一人で何か考えるような時間も欲しかった。

 

「フ……まさか俺が団体行動に馴染むとはな……」

 

こんな大人数の時は離れて一人で任務を行っていたのだが……いやはや。

 

「あ、あのー……青山君?」

 

「少年か、どうかしたか?」

 

まだ授業中かと思ったが……休憩でもしているのか?

 

「あ、その……僕達が落下した時なんですが……その」

 

「む? それがどうかしたのか?」

 

「い、いえ! やっぱりなんでもないです! ごめんなさい!」

 

少年はそれだけ言って去っていった。

 

「完全にバレた……と言うわけではなさそうだが、疑われてしまったな」

 

まぁ、学園内で使うのはこれっきりにしておくか。

 

「キャ――――ッ!」

 

「あの声は……佐々木か?」

 

立ち上がり、声のした方へ向かう。やれやれ、どうも俺の周りは静寂と言う言葉を知らないらしい。少しは静かにして欲しいものだ。

 

「誰か助けてーッ!」

 

声がした場所に辿り着くと、何故かタオル一枚だけ身に纏った姿の佐々木があの石像に捕まっていた。……どういう状況だ?

 

「またあのでかいの!?」

 

「ゴーレムですよっ! アスナさん!」

 

少年達も来たようだ。この場は静観で良いか……。あくまで俺は一般人だからな。

 

「キャー、ネギ君助けて――!」

 

『フォフォ』

 

「ぼぼ、僕の生徒をいじめたなっ! いくらゴーレムでも許さないぞっ!!」

 

少年を中心に魔力が集まっていく。……みんなが見てる前で撃つ気か?

 

「くらえ!! 魔法の矢!!」

 

『フォ!?』

 

「ま……」

 

「まほーのや……?」

 

不発に終わったところを見ると……どうやら封印していたみたいだな。

 

『フォフォフォ、ここからは出られんぞ。もう観念するのじゃ。迷宮を歩いて帰ると、三日はかかるしのう~』

 

「三日も!?」

 

「それでは間に合わないアル!!」

 

「み、みんなあきらめないでっ!! 僕の魔法の杖で飛んでいけば一瞬だから……ハッ!?」

 

「こ、こらネギッ!? さっきから何モロ言ってんのよっ!? やっぱり熱あるの!?」

 

さっきから少年……いい加減に正体バレるぞ。そして神楽坂、お前の発言もやや危うい。

 

「……まほーのつえ……?」

 

「なんでもないったらなんでもないから!! と、とにかく私達は諦めないんだからね!! 明日の期末テストまでに、絶対ここを抜け出してやる!!」

 

「アスナさん。やっぱり僕のために……」

 

「違ーう!! みんな、逃げながら出口を探すのよっ!!」

 

『フォフォフォ、無駄じゃよ出口は無い』

 

「それはどうかな?」

 

俺は一歩前に出る。少しは役に立っておくか。

 

「こーちゃん?」

 

『フォ?』

 

「出口ならもう見つけたぞ?」

 

『な、なんじゃと!?』

 

カマをかけてみると予想以上に良い反応をしてくれた。そこまで分かりやすく反応されるのも……。

 

「その反応……出口はあるんだな。教えてくれてどうも」

 

『フォ、しまった!?』

 

「ん……? あ!! みんなあの石像の首の所をみるです」

 

「あっ!」

 

「あれはメル……何とかの魔法の書!?」

 

「……あの本も一緒に落ちてきたのか」

 

少年が言う所の伝説の魔道書。伝説と言われると多少興味が湧くのは何故だろうか?

 

「本をいただきます!! まき絵さん、くーふぇさん、楓さん!」

 

「「「OK! バカリーダー!」」」

 

「中国武術研究会部長の力! 見るアルよ――!! ハイッ!!」

 

『フォ……!?』

 

「アイ~~、ヤッ!!」

 

「キャ」

 

古が石像を連続で攻撃し、捕まっている佐々木を助け出した。ふむ……魔力は感じられないが気を感じる。相当鍛えている証拠だな。

 

「よ」

 

『フォ!?』

 

「やぁっ!」

 

空中で長瀬に抱えられた佐々木がリボンで石像の首元にあった魔道書を取った。なんなんだあのリボンは。

 

『あっ……』

 

「キャ―――! 魔法の本取ったよーっ!」

 

『ま、まつのじゃ~~~~』

 

当然ながら、魔道書を持った俺達を石像が追いかけてくる。

 

「よしっ! 目的の本を取ったからにはズラかった方がいいわね!!」

 

「あのゴーレムのあわてよう、きっとどこかに地上への近道があるです!!」

 

「さっきカマをかけたらあるって教えてくれたぞ」

 

『で、出口は見つからんと言うとるじゃろーが! あきらめて捕まるのじゃ――!』

 

この期に及んでまだそんな事を……どこかは知らないがある事はもう割れている。

 

「やだよー」

 

「出口は見つからなくても捕まる気はない」

 

「おおー、こーちゃんカッコええー」

 

「茶化すな……」

 

『ぬぬぬううぅぅぅ~~!!』

 

……気のせいか、殺気が俺一人に集中したような……。既に誰だか分かっているだけにこれは……。

 

「あっ、見つけました! 滝の裏側に非常口です!!」

 

「それよ!!」

 

『フォ~~~!? ま、まつのじゃ~~っ!』

 

さすがに周りにも逸れてくれたか。……それにしても、過剰反応過ぎやしないだろうか……?

 

「キャー!」

 

「早く早く中へ……」

 

「うっ……!? 何コレ!?」

 

「扉に問題がついてる……!?」

 

「『問1 英語問題 readの過去分詞の発音は?』です」

 

なるほど……どこまでも勉強させる気なのか。だが、いい考えだと思う。

 

「ええ~っ何ソレ!?」

 

「そんなこといきなり言われてもー!」

 

「ムムッ……!? いや……ワタシコレわかるアルよ!」

 

「え!?」

 

「答えは[red]アルね!」

 

ピンポーンと機械音がして扉が開いた。ちなみに古が解いたのは以前やった事のある問題なのでむしろ解けて然るべきと言えるだろう。

 

「おおっ!?」

 

「ひ、開いた~~~~!? みんな、早く中へ――!」

 

しかし……中は中で凄い事になっていた。

 

「うわっ! 何コレ!?」

 

「らせん階段!?」

 

「コレ上まで登るん?」

 

「登るしか……ないだろうな」

 

あの石像はサイズ的に入って来れないが何があるか分からないので軽視は良くないだろう。そして、俺達はらせん階段をひたすらに登る。

 

「ハァハァ! え~ん、部活の練習よりキツいよーっ!」

 

そこに、壁を突き破って石像が出てきた。やはり、か。

 

「おいおい……」

 

「キャ!?」

 

「しつこいなー、ゴーレムが無理やり追って来るアル!!」

 

『ならぬならぬ! ほ、本を返すのじゃ~~っ!!』

 

「べ――っ」

 

「もー返さないアルよ――」

 

俺達はらせん階段を登りながらも途中にある問題を解いて行き、そして……

 

「あ……。け、携帯の電波が入りました!! 地上は近いです。助けを呼ぶのでみんながんばって!!」

 

途中で転んでしまい、足を挫いた綾瀬が長瀬に負ぶってもらいながらそう言う。

 

「ち……地上が……!?」

 

「ああっ! みんな、見てくださいっ! 地上直通のエレベーターですよっ!」

 

「こ、これで地上へ帰れるの!?」

 

「みんな急いで乗って乗ってーっ!!」

 

「そう上手くいけばいいがな」

 

「そこ、変なフラグ立てない!」

 

――やはり、現実はいつもそう上手くはいかないものだ。

 

『――重量オーバーデス』

 

無機質且つ無情な声がエレベーター内に響き渡った。

 

「……」

 

「「「「いっ……いやああああ――っ!!」」」」

 

「地底図書室で二日間飲み食いしすぎたアルかー!?」

 

そうだな……体を動かすとかはしていなかったから多少体重が増えるのは仕方ないだろう。

 

「まき絵さん。今何キロです!?」

 

「わ、私はやせてるよっ! それに、原因だったら青山君が変なフラグ立てるから~~!!」

 

「そんな事で一々立ってたまるか」

 

ところで、フラグって何の事だ? 旗?

 

「スペース余ってるやん。根性なしのエレベーターやなー」

 

「あああ勉強ばっかりしてたから……!!」

 

「みんな! 持ってるものとか服を捨てて!! ホラ見て! 片足出すだけでブザーが止まる……あとちょっとなのよ!」

 

「ホンマや!!」

 

「おお、脱ぐアル! 脱いで軽くするアルよ―――!」

 

「ちょっと待て……一応男が目の前にいるのにそれはどうかと……それに神楽坂、お前怪我の治療の時には散々……」

 

別に脱衣はどうでも良いのだが、『あの人』に見られた場合の俺の今後が少し心配だ……。

 

「非常事態よっ!! だったらそっぽ向いときゃ良いでしょ!! そしてあんたも脱ぐ!!」

 

「……分かったよ。脱げばいいんだろ脱げば」

 

半ばヤケになって俺達は服を脱いだ……のだが、それでも音は鳴り止まなかった。

 

「やっぱりダメアル―――!!」

 

「もー捨てるものないよ~っ! あとちょっとなのに――っ!」

 

「さすがにこれ以上は……な」

 

今現在の俺達の状況…少年以外全員下一枚である。さすがにこれ以上は勘弁願いたい。そしてもちろん、俺は見ないように背を向けている。……おや? 少年も脱げばいいのではないか?

 

『フォフォフォ追いつめたぞよ―――!! 覚悟するのじゃ!』

 

「キャ――ッ!?」

 

そこへ、何を思ったのか少年がエレベーターを降りて石像の前に躍り出た。……無茶をする。

 

「ネギ!?」

 

「僕が降ります!! みなさんは先に行って明日の期末を受けてください!!」

 

「「「えっ!?」」」

 

「ネギ! だってあんた魔法が……!!」

 

「動く石像めっ!! 僕が相手だっ!!」

 

全く……世話の焼ける少年だ。

 

『フォフォいい度胸じゃ。くらえーい!』

 

「あうー!?」

 

『フォ!?』

 

石像の腕がネギ先生に襲い掛かる……が石像の腕は空を切った。何故ならば……俺が少年を引き戻したからだ。

 

「やれやれ……あまり無茶はしない方がいい」

 

「え、あ、青山君!? どーして……」

 

どうして……か。それが分かれば苦労はしない。むしろ俺が教えて欲しいくらいだ。

 

「神楽坂、少年を頼む」

 

「わっ!?」

 

「ちょ、青山君はどーすんの!?」

 

「問題ない。倒したらすぐに行く」

 

『フ、フォフォ良かろう、くらえーい!』

 

この距離なら、俺の方が早い。悪いな石像の中の人、多少痛い目見てもらわなくてはならなくなった。

 

「あかんえ!」

 

「なに」

 

「カッコ」

 

「つけてる」

 

「のよ!」

 

「です!」

 

後ろからそんな声が聞こえたかと思うと、いきなり後ろから引っ張られた。

 

「ぐぉっ!?」

 

『フォ!?』

 

「ったく、男の子ってみんなこうなの!?」

 

「な、何をする……」

 

どうやら俺は全員に引っ張られたみたいで半ば全員から抱き締められるようにしてエレベーターの中へ入っていた。かなり苦しいのだが……。

 

「全員揃って行かないと意味がないって言ってんのよ!」

 

「そうやえ! ホントにすぐ倒せてもエレベーターが行って戻ってくる前にテスト終わってまうえ!」

 

「足止めは必要だろうが。それに重量はどうする気だ」

 

「そんなの、こーすれば良いだけでしょ!」

 

そう言って神楽坂が持っていた魔法書を振りかぶる。……ここまで来てそれか。

 

「あ~~~~……」

 

「やはりアルか」

 

「ですね……」

 

あんな本無くても頭を良くする事は出来るが……これまでの労力を考えるとな……。

 

「まぁ……仕方ないえ」

 

「そうだな」

 

「それ――っ!!」

 

『フォ~~~~~!?』

 

魔法書が見事に命中し、その衝撃で落下したゴーレム。そして魔道書の分で重量制限が解除されたのか、ようやくドアが閉まった。

 

「や、やった動いた――!!」

 

「脱出アルよ~!」

 

「ふぅっ、なんとかね!」

 

「で、でも本が……」

 

「あれが正解といえば正解だったのだろう」

 

結局は自分で努力しなければ意味がないと言う事だな……。

 

「ところで……すまないがいい加減離してはくれないか?」

 

「え? わ……」

 

「あや、ごめんごめん」

 

「に、にょほほ、ほぼ裸だたの忘れてたアル」

 

「ひ、必死だったもんねあの時は」

 

「で、ですね……」

 

ようやく全員が離れてくれて苦しさから解放された。

 

「ところで神楽坂、肩の傷は大丈夫か? 結構走り回ったりしていたから傷が開いたりはしていないか?」

 

「え、あの、ちょ……近い、近いって! て言うか裸! 裸!」

 

「あはは、アスナ照れとるなぁ~」

 

「そこ、うっさい!」

 

「まぁ……問題ないなら良い」

 

さて……後は言い訳を考えなくてはいけない訳だが……今回は非常事態……と言うよりこのエレベーターの作りが甘かった事に問題があった。そう言う事にして言い逃れるしかないだろうな……。

 

「それにしてもさ、図書館島大変だったけど楽しかったよね~」

 

「あ、あのみなさん本……」

 

そして……ようやく一階、つまり地上に着いた。

 

「わ、まぶしっ」

 

「まぁとにかく……」

 

「外に出れた――ッ!!」

 

「いえーっ!!」

 

「空を見るのも久しぶりだな……」

 

二日ほど地下に籠もっていた訳だからそう感じるのも無理はないか。

 

「……なぁ、こーちゃん」

 

「ん?」

 

「服と下着どーしよ……? さすがにこのままなんは恥ずかしーえ……」

 

「すまない、とりあえず他所を向いておく」

 

その後、十数分もしたら早乙女と宮崎が着替えを持ってやって来た。ただ、さすがに俺の分はなく、女子の制服を来て一度寮に戻ると言う変態的な真似をしなくてはならなかったが。

 

…………

 

………

 

……

 

 

「最後の悪あがきに徹夜で勉強したら遅刻アル――!!」

 

「一時間で起こしてって言ったのにー!!」

 

「ごめんなさいー……」

 

「寝てもうたー」

 

「今さら文句を言っても仕方ないだろう。さっさと走れ」

 

あの後、古の言っている通り最後の悪あがきと言う事でギリギリまで勉強していたのだが、皆寝てしまい結局テストに遅刻と言う次第である。

 

「アスナーっ! 早く早く~~~っ! 始まっちゃうよー!」

 

「ハァ、ハァ……み、みんなゴメン!!」

 

「遅れてすみません。この娘足をケガしてて……」

 

「ああ、君たちか。遅刻組は別教室の方で受けなさい」

 

「は、はい、スミマセン……」

 

テストは受けれるものの、徹夜のおかげで慣れている俺を除き、全員フラフラだった。

 

「ほらフラフラしないで」

 

「あの……み、みなさん試験頑張って!! 僕のせいで魔法の本もなくしちゃったし僕、足を引っ張ってばかりだったけど僕……僕……」

 

「気にするな」

 

「ま……まかしといて~~」

 

「本なんか無くても何とかなるアルよ~~」

 

「ず、ずっと勉強付き合ってくれてありがとうネギ先生」

 

「あとは任せるでござる~~~」

 

「「「「ハハ……ハ」」」」

 

力無い笑顔で答える面々。……本当に大丈夫だろうか?

 

『では始め! 試験時間は50分です』

 

「……うう、やっぱ難しい……」

 

「それに眠いアル……」

 

「やっぱ徹夜は失敗だったかな……」

 

「コラ、私語をしない」

 

これは良くないな……。みんな想像以上に徹夜の影響を受けているようだ。

 

「……?」

 

む、急に頭が……? ふと廊下を見ると少年が何か唱えているのが見えた。魔法は無闇に使うな、とも思ったが……今回は良いか。

 

『終了――筆記用具置いて――』

 

「どう!? できた?」

 

「やるだけやたアル……」

 

「こーちゃんはどうやった?」

 

「そこそこ出来たとは思うが……後は結果待ちだな」

 

――クラス成績発表日――

 

「う~~~ドキドキするー」

 

「まったく……ウチの学校は何でもお祭り騒ぎにするんだから」

 

「でも『最下位で小学生からやり直し』がデマで良かったです」

 

……そもそもそう言うのを信じるのがどうかと思うのだが……。

 

「発表もちょっと気が楽アルね」

 

「コラ! くーふぇ、ゆえー!」

 

「ム、そうだたネ。そのかわりネギ坊主がクビに……」

 

「いえ……」

 

「大丈夫やてネギ君。みんながんばったし。ウチも自信あるえ」

 

「そうだな。あまり考え込まない方が良い」

 

「は、はいありがとうございます。青山君、このかさん」

 

そして……ついに結果が発表される。

 

『第1位――2年えー……』

 

「「え」……?」

 

「もしかして……」

 

『2年F組!! 平均点80.8点!!』

 

「あ――」

 

『第2位』

 

そうして次々と呼ばれていくのだが俺達Aクラスが出てくる事はなくついに……

 

『次は下から2番目……ブービー賞です。えーと……これは……2-Kですね』

 

下から2番目に入れなかったと言う事は……そう言う事である。

 

「「「「「最下位確定~~~~~!?」」」」」

 

その発表の直後、少年が外に出ていくのが見えた。

 

「神楽坂、少年が――早いな」

 

だが俺が言うより先に神楽坂は少年を追いかけて行った。

 

「近衛、行くぞ」

 

「あ、うん! ほら、みんないくえ!」

 

…………

 

………

 

……

 

 

「……いた」

 

「ネギ坊主――ッ!」

 

「ま……待って―――ネギ君―ッ!!」

 

「ネギ坊主――――!!」

 

「み、みんな!?」

 

「いまさら会わせる顔がないです!!」

 

俺達に気付いた少年が逃げようとする。会わせる顔がないのは結果が出せなかったこちらだというのに全く……!

 

「あ、ネギ!!」

 

「それっ!」

 

「あぷゅ!!」

 

佐々木が飛ばしたリボンが少年の足に絡まり顔を地面に打ち付けた。

 

「わ!? ゴメン、ネギ君!!」

 

「ネギ先生ー!」

 

「ひどいよーネギ君! 何も言わずに行っちゃうなんて!!」

 

「ネギ君、もう一度おじいちゃんに頼みにいこ、な?」

 

「えっ……」

 

「そうだよ! ネギ君子供なのに厳しすぎるよー!!」

 

「も一度テストさせてもらうアル!」

 

「い、いえでも最終課題は僕も納得の上でのコトですから……」

 

「……」

 

こればかりは仕方ないだろう……俺としても納得のいく結果ではなかったが。

 

「フォフォフォ、呼んだかのう?」

 

「え?」

 

「あ……学園長」

 

そこへ学園長がやって来た。この人にはあとで色々と聞かなくてはな。

 

「がっ……」

 

「学園長先生―――!?」

 

「いやー、すまんかったのネギ先生。実はの……遅刻組の採点をワシがやっとってのう。うっかり2-A全体と合計するのを忘れとったんじゃよ。報道部の生徒にこっぴどくしかられてしまったわい」

 

「……はぁ」

 

似たような事を体験したな。俺が女子寮に入る事になったのも忘れていたな?

 

「え……えーっ!! 何ですかそれ!?」

 

「そ、それってつまりウチら9人分の点数入ってへんゆーコト?」

 

「じゃ、じゃあ……ひょっとするとひょっとして……2-A最下位じゃないってコトかも……?」

 

「まぁ……9人分も抜けたら最下位にもなるか」

 

本当にとんでもない事してくれたな……。

 

「……で、でも私たちバカレンジャーの点数足したくらいじゃあんまり……」

 

「フォフォ、ではここで発表しちゃおうかの。……まずは、佐々木まき絵。平均点「66点」ようがんばった」

 

「ええっ!? うそっ、66点!?」

 

「部活熱心なのはいいが、もちっと勉強もな」

 

「は、はいっ!」

 

「次に古菲「67点」。長瀬楓「63点」。この調子で頑張るのじゃぞ」

 

「ホ、ホントアルか!」

 

「うむ」

 

「――綾瀬夕映「63点」。普段からもっとマジメにの」

 

「……」

 

凄く嫌そうな顔をしてるな。以前も言っていたが余程勉学が嫌いなんだな。

 

「早乙女ハルナ「81点」。宮崎のどか「95点」。このか「91点」。青山紅「87点」。とこのへんは問題ないのう。青山君は女子中等部でのテストは初めてじゃったがようやった」

 

「……ありがとうございます」

 

順当、と言ったところか。普段よりも少し高いがこれはしっかりと勉強したからだろう。

 

「は……87点!?」

 

「な、何でアルか? 青山はワタシたちと同じくらいしか勉強してなかったアル!」

 

「へー、こーちゃん結構頭いいんやね~」

 

「ホントホントびっくりしたよー」

 

「……あのくらいは普通だろう」

 

逆に普通に授業聞いていて何故点数が低くなるか聞いてみたいものだ。

 

「――最後に神楽坂明日菜……「71点」!」

 

「え……」

 

「あ……スゴイ」

 

「ようやったアスナちゃん!」

 

「あ……じゃあ……!」

 

「うむ。これを2-Aに合計すると……平均点が81.0点となり0.2の差で……なんと! 2-Aがトップじゃ!!」

 

「や……やった―――ッ!!!」

 

みんなが先生を取り囲んでそれぞれ喜んでいる中、俺は少し輪から外れていた。少々考えたい事があったからだ。

 

「ようやったのう。青山君」

 

「あ……どうも」

 

学園長に話しかけられたので軽く会釈しておく。さぁ、種明かしといこうじゃないか。

 

「混ざらなくていいのかの?」

 

「今はちょっと……気分ではなくて」

 

「そうかの? いやー、それにしてもあんなに成績が良いとは思わんかったぞい」

 

「あ、いえ今回は勉強しましたから」

 

いきなり話題を振られたが、一応答えておいた。普段はそんなに良い方でも無い。目立たない位置にいたハズだ。今回は……特別だ。

 

「フォフォフォ良きかな良きかな」

 

「学園長……お聞きしたいことが」

 

「フォ? なんじゃ?」

 

「あの図書館島での事……あれは学園長が仕組んだ事ですね? さらにあの魔法書は偽物でしょう?」

 

「ふむ……どこから分かっておった?」

 

「あの英単語ツイスターとやらの時から疑ってはいました。そしてあの石像の声、それから行動が決め手になりました」

 

「フム……」

 

「……それにもしあの本が本物ならあんな英単語ツイスターとやらにせず、そのまま落とせば良いだけの事。それにあの石像は俺たちに対して一度も攻撃をしてこなかった。それこそあのハンマーなり剣なりで俺たちを叩き潰せば良い。それをしなかったのはあの本が偽物かそれとも絶対に取られない自信があるかの二つくらいしかない。しかしこちらには長瀬や古と言った武闘派、そして魔法使いの少年が居た。だから俺は前者だと思った」

 

「フォフォフォ9割方正解……と言ったところかの」

 

「え?」

 

「確かに君の言うとおりあの本は偽物じゃ。また、絶対に取られないという自信が無かったのも正解じゃ。だがの……自信が無かった理由には長瀬くんやくーふぇくん、ネギ君だけでは無いぞよ?」

 

「?」

 

「なにせ君もいたからのう……。下手したらツイスターゲームの段階で取られておったかも知れんわいフォフォ」

 

「俺……ですか?」

 

特に何かしたと言う記憶は無いのだが……。

 

「そうじゃ。君はツイスターのとき、ずっとこちらを見ておったじゃろう? だから手出しが出来ずアスナちゃんたちが間違ってくれるのを待っておったのじゃよ」

 

「……バレてましたか」

 

念のため、対象に被害が及ばないように気を配っていただけだが。

 

「当たり前じゃいっ! あんな殺気全開の目で睨まれて気づかん方がどうかしとる。まったく……ゴーレム越しとは言えど小便ちびるかと思ったわい。それと……木乃香の裸は見ておらんじゃろうな?」

 

「いえ、見ていません。あの状況下では厳しかったですが」

 

「フォフォ、それもそうか。……まぁ、あれはワシもビックリしたんじゃがの。まさか、男子である君がいる中で脱ぎ出すとは……」

 

「……それは自分も思いました」

 

さすがにあれは肝が冷えた。出来ればもう二度と体験したくないものだ。

 

「それで、今回の事じゃがの。……君のその咄嗟の判断力や仲間の為に体を張れる勇気、強靭な身体能力。どれを取っても噂通りの素晴らしいものじゃった。ただ……」

 

「ただ?」

 

「今度はあんな殺気の籠もった目で睨まんでくれよ?」

 

「……気を付けます」

 

それ以前に今度は、って事はまたやる気なのか学園長……? と言うか今回は俺へのテストも含まれていたのか……? だとしたら、本当にくえない人だ。

 

「フォ、そうじゃ」

 

「まだ何か?」

 

「このかとはうまくやっとるかの?」

 

「あ、はい。近衛には良くしてもらってます。近衛だけじゃなくクラスのみんなにも同じことが言えますが」

 

ただ……最近、対象の俺に対する態度が少し変化したような気がする。まぁ、気のせいかも知れないので取り立てて報告することではないだろう。

 

「フォフォ。そうか、ではこれからもがんばるようにの」

 

「はい。ありがとうございます」

 

それだけ言って学園長は去っていった。なので俺はみんなのところに戻る事にした。

 

「あ、こーちゃん。おじいちゃんと何の話しとったん?」

 

「近衛……。ああ、成績のことでちょっと」

 

「あー、青山君点数高かったもんねー」

 

「ホントアルよー! あんな点数、詐欺か何かアルー!」

 

「……詐欺はないだろう詐欺は」

 

何故か俺の発言で笑いが起こった。それはともかく……なんとか、少年は麻帆良学園の正式な先生となったのであった。

 




……あれ? アスナがちょっとヒロインっぽくなってるような……。どうやら書いている内に作者の何かが暴走したようです。

今回初めて主人公が超簡単なものですが魔法を使いました。ネギ君に気づかれたっぽい雰囲気でしたがネギ君が真正面から魔法使いですか?と言える訳もなく有耶無耶で終わりました。

さて、では次回予告です!
次回は終了式~お見合い編になります。端的に言うと二巻の後半部分でございます。

今回程ではありませんが、こちらもまた少々長くなります。
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