二人目の護衛(更新停止中)   作:ヨシュア13世

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今回も木乃香の出番は少なそうです……。原作沿いにしてしまうとどうしても明日菜寄りに……。なんとか方向修正しなくてはいけませんね。頑張ります!



桜通りの吸血鬼~前編~

「いよいよ新学期、私たちも中3ねー」

 

「はいっ」

 

「そうだな」

 

「これからも一年よろしくな、ネギ君」

 

俺達はいつもの通学途中の電車の中で話していた。しかし、いつ乗っても混んでいるな。時間の問題だろうか?

 

「きゃあっ」

 

「……大丈夫か?」

 

不意に電車が揺れ、対象の体勢が崩れた。距離が近かったので普通に対象を受け止め、この程度では問題ないだろうが安否を確認する。

 

「うん、大丈夫やえ。ありがとなこーちゃん」

 

「いや、気にしなくていい」

 

「結構揺れるから気をつけなさいよー?」

 

俺達の様子を見ていた神楽坂が対象にそう忠告した。

 

「おー、ありがとアスナー。……ところでネギ君、パートナー探しはもうしなくてええの?」

 

「……」

 

先日のお見合いの時の話だろう。神楽坂に聞こえないように対象が少年に聞いていた。まぁ、俺には大して関係ない話だ。別に混ざらなくても問題ないだろう。

 

「しっかし、いつ乗っても混んでるわねー」

 

「む? ああ、そうだな」

 

「ま、通学途中だから当たり前なんだけど」

 

そう言って笑う神楽坂。

 

「…………ああ、今のは笑う所か?」

 

「ちょ、わざわざ言わないでよ。なんか恥ずかしくなるじゃない」

 

「すまない。どうもその辺りの機微には疎くてな」

 

「き、きび?」

 

「はぁ……」

 

ため息をつき、説明が面倒だという意思を伝える。

 

「そ、そんな露骨にため息つかなくても……」

 

「要するに俺はそう言う雰囲気を察するのが苦手なんだ。分かったか」

 

「う、うん」

 

「あー、二人で何の話しとったん?」

 

そこに対象が会話に入ってきた。どうやら少年との会話は終わったようだ。

 

「ああ、それは神楽坂が――」

 

「お願い、それ以上言わないで……」

 

「なるほど。またアスナがなんか言うたん?」

 

「概ねその見解で間違ってはいない」

 

「うぅ」

 

神楽坂が嘆いた。だが……こればかりは仕方がなくないか?

 

「へっくしょん!」

 

「む?」

 

「きゃ!?」

 

「わ!」

 

くしゃみと共に吹き荒れる風。少年よ……君も飽きないな。もちろん、意識してやっていないだろうが。

 

「また変な風やったなー」

 

「……そうだな」

 

確かにいきなり風が吹いたらそう思うしかないと思うが……もう少し変には思ったりしないのか?

 

『次はー麻帆良学園中央ー』

 

「あ、着くえ二人とも」

 

「喧嘩してる場合じゃないぞ」

 

おそらく先ほどの事で言い合っていたらしい少年と神楽坂に2人で話しかける。

 

「よーし走るよー」

 

「ネギ君遅れんでな」

 

「……行くか」

 

今日もまた賑やかな1日になるのだろう。俺はそんな事を思いつつ、校舎への道を走った。

 

「3年!」

 

「A組!!」

 

「「「「「ネギ先生ーっ!!」」」」」

 

騒ぎ出すクラスメイト達……予想通り、学年が上がっても相変わらず元気だな。

 

「えと……改めまして3年A組の担任になりましたネギ・スプリングフィールドです。これから来年の3月までの一年間よろしくお願いします」

 

「「「「「は――い! よろしく――!!」」」」」

 

しかし、すっかり板についてきたみたいだな少年。最初は未熟な子供かと思っていたがこれがどうして。まぁ、魔法の方はまだまだのようだが。

 

「ネギ先生、今日は身体測定ですよ。3-Aのみんなもすぐ準備してくださいね」

 

教室に入ってきた源先生がそう伝える。身体測定か……確か俺は別教室だったな。

 

「あれ? 青山君どこいくんですか?」

 

席を立って移動しようとすると少年がそう尋ねてくる。

 

「今から身体測定だろう? だから俺は別教室でやる事になっている」

 

「え、あ……そうでした! すいません呼び止めてしまって!」

 

「問題ない」

 

ふむ、確か5つ隣にある空き教室だったな。

 

「「「ネギ先生のエッチ~~~!」」」

 

「うわ~~~~ん!! 間違えましたー!」

 

俺が教室を出てすぐに、みんなの黄色い声と共に少年が飛び出してきた。

 

「……どうしたんだ少年」

 

「あ、青山君実は――」

 

少年が中で起きた出来事を話してくれた。どうやら少年が中にいたまま着替えを促したらしい。

 

「ふむ、なるほど……」

 

「あうう、やっぱり……僕が悪いですよね」

 

「悪いとまでは言わないが……まぁ次から気をつけたら良いだろうな」

 

「うう、ありがとうございます」

 

そう言えばこの少年と二人で話すのは久しぶりだな……。前はいつだったか……そう、この少年が来た初日に一言二言話したきりか。

 

「いや別に礼を言われる事じゃない」

 

「あ、ところで青山君は行かなくて良いんですか?」

 

「ちゃんと行くさ。それより少年も来るか? どの道後で渡さないといけないし」

 

少年が来てくれたら後で渡す手間が省けると言う物だ。

 

「う~~ん、そうですね。分かりました! 僕も行きます」

 

「では行くとするか」

 

「はい!」

 

それから男子用の空き教室に行く。そこには既に計る為の用具が置かれていた。

 

「身長、体重、座高、視力、聴力の順か」

 

「わー! すごいなぁ!」

 

機材とか初めて見たのか? 少年の目が子供のように輝いている。いや、子供だが。

 

「見た事ないのか?」

 

「あ、はい。普段はまほ――」

 

やれやれ、これで今まで神楽坂にしかバレていないんだから驚きだ。

 

「まほ?」

 

「え、あ、その……魔法瓶?」

 

「いや、俺に聞かれても」

 

「ご、ごめんなさい! 忘れてくださいぃぃ!!」

 

……絶対に他の奴にもバレるな。

 

「良く分からないが……まぁ、そう言う事ならとりあえず計測するから記入を頼む」

 

「はいっ!」

 

…………

 

………

 

……

 

 

「へぇ、少年は首席で卒業したのか」

 

「そ、そんな大したものじゃないですよ。僕、こっちに来てからダメダメで……」

 

「……最初から出来る奴なんていない。これから頑張れば良いさ」

 

「青山君……そうですよね。うん! ありがとうございます。僕、もっと頑張ります!!」

 

……まったく。何で俺がフォローしなくてはならないんだ。と言うか最初は普通に雑談していたと言うのに何故こうなった?

 

「……どうやら女子はまだ終わってないようだな」

 

教室の前まで来ると、未だに体重がどうのとか声が聞こえてくる。

 

「そうですね。なんか楽しそうだな…」

 

「まぁ、彼女ららしいと言えばらしいが」

 

少年が苦笑して呟いたのが聞こえたので、一応返事をしておいた。

 

「あ、聞こえてました?」

 

「ああ。……む?」

 

これは微かだが……魔力? なんでこんな朝から……。ふと隣にいる少年を見てみると

 

「あれ……?」

 

「どうかしたのか?」

 

「あ、いえ……」

 

少年も気がついたようなので声をかけるが、ここはしっかり隠していた。

 

「先生―――っ!! 大変や――っ! まき絵が……まき絵が――!!」

 

そこに少年の事を呼びながら血相を変えた和泉が走ってきた。

 

「何!? まき絵がどーしたの!?」

 

勢いよく扉が開かれるが、当然身体測定中だったみんなは下着姿である。

 

「わあ~~~!?」

 

「……はぁ」

 

ちょっとは考えて欲しいものだな。

 

場所は変わって保健室。……あの後理不尽に俺が怒られたのは言うまでもない。

 

「ど……どーしたんですかまき絵さん!?」

 

「なにか桜通りで寝てるところを見つかったらしいのよ」

 

「なんだ大したことないじゃん」

 

「甘酒飲んで寝てたんじゃないかな――?」

 

「昨日暑かったし、涼んでたら気を失ったとか」

 

……さっきの魔力は、消えかけだが佐々木から出ている……。桜通りで寝ていた事と関係あるのか?

 

「まき絵さんは心配ありません、ただの貧血かと……それとアスナさん僕今日帰りが遅くなりますので晩御飯いりませんから」

 

「え……? う、うん」

 

「ええの? ごはん」

 

「遅くなっても食事はちゃんと摂るんだぞ?」

 

「ハイッ」

 

放課後、俺と対象と神楽坂に早乙女、綾瀬、宮崎を加えたメンバーで寮へと帰っていた。

 

「吸血鬼なんてホントに出るのかなー」

 

「あんなのデマに決まってるです」

 

「だよね――」

 

帰っている途中に聞きなれない単語が聞こえた。

 

「吸血鬼?」

 

「青山君知らない? 最近桜通りに満月の夜になると現れる真っ黒なボロ布につつまれた吸血鬼が出るって噂」

 

「いや……初めて聞いたな」

 

「実はまきちゃんはその吸血鬼に襲われたとか……」

 

「へ……え」

 

もし本当に吸血鬼なら少し気を付けた方が良いな……。まぁ、吸血鬼の種類によるが。

 

「じゃあ先帰っててねのどかー」

 

「はいー……」

 

そうして宮崎と別れ、俺達は別の道を歩く。

 

「……本屋ちゃん一人で大丈夫かな?」

 

「吸血鬼なんていないゆーたんアスナやろ?」

 

「まぁ……神楽坂の懸念も分からなくはない」

 

「え?」

 

「今日は……満月だ」

 

ウワサの吸血鬼は満月になると現れる。空を見ると月が真円を描いていたのでそう言ってやった。

 

「やっぱ気になるから本屋ちゃん送ってくよ」

 

「あ、アスナー。こーちゃん達は先帰っててええよー」

 

対象はそう言って神楽坂の後を追った。……む、魔力? これは……佐々木に付いていたのと同じ魔力か。

 

「二人とも行ってしまわれたですね」

 

「そうねー」

 

「……悪い、俺も行ってくる」

 

二人にそれだけ告げて、対象達が行った方へ走る。

 

「え、ちょっと!」

 

「青山さんも信じてるですか、吸血鬼なんてもの」

 

……それから少し走ると二人に追いついた。

 

「あれ、こーちゃんもきたんやー」

 

「そんなぞろぞろ来なくても……」

 

「もし吸血鬼の話が本当なら一度見てみたいと思っただけだ」

 

「こーちゃん不謹慎やえー。何人も被害にあっとるのにー」

 

「……すまん」

 

「まぁそういうウチも見てみたかったりするんやけどなー」

 

そう言って笑う対象。そこへいきなり何かが弾けたような音が聞こえた。

 

「何や今の音?」

 

「あっ、ネギ!!」

 

音が聞こえた場所に何故か少年が居てその腕に宮崎が制服が殆ど破けている状態でいた。魔力を感じるところを見ると……ついさっきまでここで戦闘行為があったのか? 

 

「きゅぅ~……」

 

「あうっ!?」

 

「うひゃあ」

 

「あんたそれ……!?」

 

「……ふむ」

 

状況から察するに、宮崎の血を吸おうとした吸血鬼に少年が攻撃を仕掛けた……という感じだろうか? それから反撃をくらったがとりあえず外傷はない。だが制服が破れた……と。つまり、武装解除呪文の類か。

 

「ネ、ネギ君が吸血鬼やったんか~~!?」

 

「ち、違います誤解です――!!」

 

少年が誤解を解こうとしていると、人の動く気配がした。いや、違う……この気配は、人の物ではない!

 

「誰だ!!」

 

その気配の方に俺が鋭く叫ぶ。だが、すぐに気配が遠ざかってしまう。アレが吸血鬼か……? それにしては随分と魔力が小さかった気がするが……。

 

「あっ! 待て!!」

 

「え……今のは?」

 

少年に続き神楽坂も気付いたようだ。……今のに気付くとは、こいつ本当にただの人間か?

 

「?」

 

「ア、アスナさんこのかさん青山くん! 宮崎さんを頼みます! 体に別状はありませんから!」

 

……制服が散ったがな。

 

「僕はこれから事件の犯人を追いますので! 心配ないですから先に帰っててください!!」

 

「ふむ」

 

「え、ちょっとネギ君……!」

 

「じゃあ!」

 

「ネギく……うわっ、はや!?」

 

少年は風の魔法を使い、かなりのスピードで走って行った。急ぐのは分かるがこんな所で魔法を使うのは感心しないな。

 

「ちょっとネギーッ!! このか、青山君! 本屋ちゃんをおねがい!」

 

「え?」

 

「アスナー!」

 

「あたしはネギを追っかけるから!!」

 

と言って神楽坂も行ってしまう。……どうするのだこの状況。

 

「……」

 

「……」

 

仮にも吸血鬼相手に未熟な魔法使いと一般人を行かせても良いのか? ……だがこの場合だとこれが適切なのかも知れない。下手に俺が動くと色々厄介な事になるかも知れない。

 

「と、とりあえずのどかを運ばな……」

 

「……そうだな」

 

「うん。じゃこーちゃんはのどかをおぶってくれる?」

 

「ああ……なぁ、近衛……」

 

俺は今の状況を思い出し、対象に話しかける。

 

「え?」

 

「この姿の宮崎を俺が運んでて人に見つかった場合、俺はどうなるんだ?」

 

「あ……」

 

対象も思い出したようだ。宮崎は制服が破け殆ど裸の状態だった事に。今も見ないようにしてるとはいえ……人に見られたらとんでもない事になる。俺は間違いなく通報されるだろう。

 

「とりあえず俺の上着を渡すからそれで隠せないか?」

 

「う、うん。やってみるえ」

 

そう言って自分の制服を脱いで対象に渡す。その数分後――

 

「こーちゃんおっけーやで」

 

「なら人に見つかる前に行くぞ」

 

「うん!」

 

俺は気絶している宮崎を背負って寮へと急いだ。

 

「なぁこーちゃん」

 

「なんだ?」

 

寮へと急いでる途中、対象が話しかけてきた。出来るだけ早く着きたいのだが……。

 

「のどかおぶるの代わろか? さっきからずっとおんぶしてるし……」

 

「いや、大丈夫だ。ありがとう近衛」

 

「ん、わかったえ。それにしても……」

 

「?」

 

「こーちゃん相変わらず体力あんなー、人背負いながら走ってるのに全然息切れてないしー」

 

「そうか?」

 

まぁ……鍛えられた身の上だ。人一人くらいおぶって走るくらい何ともない。

 

「うん。アスナでもさすがに息切れると思うえ」

 

「これでも男だ」

 

とりあえず適当に言い訳しておく。あまり深く詮索されるのも面倒だ。

 

「なるほどー」

 

「……寮に着いたな。近衛、悪いがここからは頼んでも良いか? これ以上は見つかる可能性が高い」

 

「うん、わかったえ。こーちゃんはどないするん?」

 

「さすがに少し疲れたから部屋に戻って休もうと思う」

 

「そかー。ならお休みやね~」

 

「ああ、お休み」

 

宮崎を対象に渡し、俺は部屋に戻った。少年と神楽坂……せめて怪我はするなよ?

 

…………

 

………

 

……

 

 

「ひえーん」

 

翌日、いつものように部屋を出ると少年が神楽坂に担がれていた。

 

「おはよう。……何かあったのか?」

 

「あ、こーちゃんおはよー。あんな――」

 

「――登校拒否?」

 

さすがに部屋の前で話している時間は無いので、学校に向かいながら説明してもらった。何でも、今朝急に登校するのを嫌がったみたいだ。

 

「うん、何でも昨日怖い目におうたとかで」

 

昨日……か、そう言えばあの後どうなったんだろうか。怪我は無いみたいだが。

 

「噂の吸血鬼にでも襲われたのか?」

 

「ア、アスナさ~ん!! お……おろしてください~~!!」

 

俺達が話している間にも最初と変わらずに叫んでいる少年。結局、教室まで担がれてきた。

 

「みんなおはよ――っ!」

 

「あ~~ん!! ま、まだ心の準備が……」

 

「ほんまネギ君どうしたんやろな~」

 

「さぁ……な」

 

そして英語の時間――……どう見ても様子がおかしい

 

「ハア……」

 

本日何度目になるか分からないため息をつく少年。

 

「よ、読み終わりましたー」

 

「えっ!? は、はいご苦労様です、和泉さん。……あの、つかぬ事をお伺いしますが……和泉さんはパートナーを選ぶとして、10歳の年下の男の子なんてイヤですよねー」

 

……なるほど。朝から元気なかったのはそれが原因か。つまり、昨夜の一件でパートナー探しをしなくてはいけない程の状況になってしまったと言う事だろう。

 

「なっ!?」

 

「えええっ!? そ、そんなややわ急に……ウ、ウチ困ります。まだ中3になったばっかやし……」

 

ふむ……となると吸血鬼は本当に居たようだな。それに今朝の慌てよう……自分一人では勝てなかったんだろう。そしてそこを後から来た神楽坂が助けた……と、こんな感じか?

 

その夜―――自室で本を読んでいると部屋の外がやけに騒がしいので出てみると、なにやら対象の部屋の前に人だかりが出来ていた。何事だ? しかも良く見るとクラスメイトではないか。

 

「……何をしているんだ?」

 

ちょうど対象が輪から外れていたので尋ねてみた。

 

「あ、こーちゃん! 見てやコレ――!」

 

「かわいーよねー!」

 

「コレ……?」

 

コレと言われて俺の目の前に差し出されたのは……

 

「……オコジョ?」

 

どこからどうみてもオコジョだった。しかもこいつ……妖精か。厄介だな、触れただけで俺の魔力を察知して俺の正体がバレる可能性が非常に高い。

 

「うん。ネギ君のペットやねんてー! かわえーよねー!」

 

「そう……だな」

 

返事をしておく。にしても少年の……か。使い魔か何かか?

 

「こーちゃんも触ってみる?」

 

「え、いや俺は別に……」

 

そんな事したらこいつに俺の正体がバレてしまうと思うのだが……。

 

「ええからええから~」

 

「肌触りたまんないよー?」

 

「あ、おい」

 

俺の拒否したにも関わらず、手にオコジョを乗せてくる。……全く、厄介なクラスメイト達だ。

 

「!」

 

「誰かに喋ったら殺す……」

 

やはり俺の魔力に気付いたようだが、殺気を込めてオコジョにそう囁いた。

 

「……ガタガタガタ(こ、こえー!! マジだ! この人はマジだ!!)」

 

「あれ? どうしたんやろ? なんや震えてるえー」

 

「とりあえずコレ……」

 

効果覿面のようで、震えているオコジョを少年に返した。

 

「あ、あの……僕コレ飼ってもいいんですか?」

 

「いーんじゃない?」

 

「この寮ペットOKだし」

 

「ウチ許可取ってきたげるな――!」

 

「やっ……やったー! ありがとうございます!!」

 

みんなの言葉に喜ぶ少年。まぁ、使い魔がいたら助かるだろうな。

 

「……少年」

 

「え? 青山君どうしたんですか?」

 

「そのオコジョの名前を聞いてもいいか?」

 

「あ、カモ君って言うんですよー」

 

カモか。よし、覚えた。

 

「へぇ……それじゃ俺はこれで失礼する」

 

「あ、はい!」

 

「忠告はした」

 

少年とカモの横を通り過ぎた直後、先程よりも殺気を込めてカモにだけ聞こえるようにそう言った。

 

………

 

……

 

 

「――ったくもう!! 下着ドロのおこじょなんてとんでもないペットが来たもんだわ!!」

 

「朝から荒れてるな……」

 

「あはは。まーまーアスナきっと布の感じが好きなんやろ」

 

「んじゃネギのパンツだっていーじゃない!」

 

「女物やないと柔らかさがイマイチなんとちがう?」

 

「?」

 

何があったのだろう? 朝から下着だパンツだと……。

 

「あはは、ほなウチは部室寄ってくるな~」

 

「ああ」

 

対象と別れ教室へ行こうとすると、少年が何かを探しているみたいにキョロキョロしていた。

 

「先生? 誰か探しているのか?」

 

「え! いや、その……」

 

「?」

 

「おはようネギ先生」

 

いきなり後ろから声がかかった。聞いた事のない声だな。

 

「!」

 

「ん?」

 

「――今日もまったりサボらせてもらうよ。フフ、ネギ先生が担任になってからいろいろ楽になった」

 

「エ……エヴァンジェリンさん、茶々丸さん!!」

 

「おはよう」

 

一応二人に挨拶をする。えっと、エヴァンジェリンだったか? あまり見た事ないな。絡繰の方はちゃんと来ているが。

 

「ん? 貴様は……青山紅か」

 

「おはようございます。青山さん」

 

「ああ。こうして話すのは初めてだけどな」

 

エヴァンジェリンがすごく不満そうな顔で俺を見、絡繰の方は丁寧に挨拶を返してきた。

 

「くっ……!!」

 

「先生?」

 

こっちはこっちでいきなり臨戦態勢か?

 

「おっと、勝ち目はあるのか? 校内ではおとなしくしておいた方がお互いのためになると思うがな。――そうそう。タカミチや学園長に助けを求めようなどと思うなよ。また生徒を襲われたくはないだろ?」

 

エヴァンジェリンがそう言い放った。エヴァンジェリン……聞いた事がある名だが……偶然か?

 

「うぐっ……うわああ~~~~ん!!」

 

「ネギ!!」

 

逃げた少年を追いかけ神楽坂も走っていった。……神楽坂いたのか。話に入って来なかったから先に行ったもんだと思っていたが。

 

「……じゃ俺もこれで」

 

「待て」

 

エヴァンジェリン達に背中を向け、教室に行こうとすると何故か呼び止められた。

 

「何だ?」

 

「貴様、魔法使いだろう?」

 

少年と関わり合いのある奴からそう言われても俺はあまり驚かなかった。だが念の為に言っておくと俺は魔法使いではない。

 

「……お前も魔法使いだろう? しかも最近騒ぎになっていた吸血鬼もお前の事だ、違うか?」

 

「ほう? なぜそう思う?」

 

「少年のあの慌てようを見てそう思っただけだ。……お前を見た瞬間、戦闘態勢をとった。つまりお前との間に戦う姿勢を取らなければいけない何かがあったって事だ。多分この間の宮崎を襲った時にバレたんじゃないのか?」

 

「フフフ……その通りだ」

 

「まぁ、決め手はお前がさっき「また生徒を襲われたくないだろう」って言った事だがな。『また』と言う事は前科があると言う事になる。そしてこの間佐々木が襲われた時に感じた魔力と宮崎を襲った奴の魔力は同じ」

 

「……」

 

「もういいか? なら俺は教室に行くが……」

 

これ以上ここに長居していると遅刻してしまうのだが。

 

「貴様……何もしないのか?」

 

「は?」

 

「私の見立てだと貴様の力なら今の我ら二人を倒すくらい簡単だろう?」

 

「……何故そんな話になる?」

 

「なに?」

 

「俺にはお前達を攻撃する理由が無い」

 

こいつらが対象か俺自身を狙わない限り俺から攻撃する事はまずないだろう。

 

「だが我らはぼーやの敵だぞ?」

 

「……俺が依頼されている仕事に少年への助力は無い」

 

「フフフ……アハハハ!」

 

急にエヴァンジェリンが笑い出した。……病気だろうか?

 

「……?」

 

「良いじゃないか。お前の事、気に入ったぞ。だがな、無理は良くないぞ? もう今にも襲い掛かってきそうな目をしているぞ?」

 

心底愉快そうに笑いながらそう言ってくる。

 

「フ……中々どうして、俺も少しは『人間』なのかも知れないな。友達の為に何かしようと思うとは」

 

「マスターお下がりください。ここは私が」

 

「やめろ茶々丸」

 

「しかしマスター……」

 

「こんなとこで戦ってなんになる。またじじいの説教を聞かねばならないのは私だぞ?」

 

じじいとは誰の事だ? 俺の頭の中では学園長くらいしか思い浮かばないが……。

 

「……ハイ」

 

「いい加減行って良いか?」

 

「ああ。なら貴様はあくまでこの件については関与しない。という認識でいいのかな?」

 

「……俺個人としては、な。正体がバレると面倒だから関わりたくないと言うのが本音だ。無論、お前が仕事の障害になるならどんな手を使っても排除するだけだ」

 

「フン、別に私とてぼーや以外に興味は無い。行くぞ茶々丸」

 

「ハイ、マスター」

 

そうして二人は去っていった。

 

「……変な奴だったな」

 

それに俺のことも知ってたみたいだし……少年、精々頑張る事だ。

 

しかし、意外と何事も無く土日が明けた。まさか、満月の時しか吸血鬼として動けないのか?

 

「おはようございますっ!! エヴァンジェリンさんいますかっ!?」

 

威勢良く少年が入ってくる。今日は登校する時から何やら張り切っていたが……何か進展があったのか?

 

「あー、ネギ君おはよー」

 

「エヴァンジェリンさんならまだ来てないですが」

 

「へ? あ……そうですか」

 

「なんや風邪でお休みするて連絡あったみたいやえー?」

 

「なるほど……。うーん……よーしっ!!」

 

少し悩んだ素振りを見せた後、少年はやはり元気良く教室を出て行った。それにしても……吸血鬼って風邪ひくのだろうか?

 

「ネギ君土日はさんで元気でたなー」

 

「そうだな」

 

対象の言葉に頷く。まぁ、あの様子なら大丈夫そうだな。

 

…………

 

………

 

……

 

 

「む……今日は学園のメンテナンスの日だったか」

 

ろうそく売り場があるという事はそういう事だろう。去年は何事かと思っていたが……。

 

「うん。そやで~」

 

「ろうそくたくさん買わなくっちゃね~」

 

「です」

 

「こーちゃんはろうそくとか買っとる?」

 

「いや、メンテナンスの日は早く寝るようにしている」

 

ろうそく買うのも金が勿体ない。別に金に執着しているわけではないが、無駄遣いは極力避けたい。

 

「えーっ!?」

 

「?」

 

「おかしーよそれ! だって8時だよ8時!」

 

「そう言われてもな……」

 

これが俺のスタイルなのだから仕方ないではないか。

 

「とにかく! 青山君もローソクを買う! 良いわね?」

 

「……近衛、綾瀬何とか言ってくれ」

 

「こーちゃん……すまん」

 

「そうなったハルナは止められないです……」

 

助けを求めたが、二人は合掌してそう言って来た。……仕方ないか。

 

「はぁ……分かった。買えばいいんだろう?」

 

「よし! そうと決まればレッツゴー!」

 

「どーしたんですか?」

 

「あ……ネギ先生ー……」

 

そうしてろうそく売り場に行くと、少年と神楽坂に出会った。

 

「知らないの先生、今日の夜8時からいっせいに停電だよ深夜12時まで♪」

 

「学園都市全体の年2回のメンテです」

 

「あーそっか職員会議で言ってたかも……」

 

「無駄な出費だった……」

 

強制的に買わされてはたまった物ではない。大した値段ではないとは言え、な。

 

「良いじゃん良いじゃん♪」

 

「まったく……」

 

「こーちゃんはどうするん?」

 

「何をだ?」

 

「ろうそく足りるん? 一本しか買ってないけど」

 

「ああ……一本が消えたら寝ようと思っている」

 

その時いきなり携帯が鳴り、かけて来た人物を確認すると学園長からだった。

 

「あや、おじーちゃん?」

 

「そのようだな。――もしもし」

 

『おお、今手が空いとるかの?』

 

「ええ、問題ありません」

 

『なら学園長室に来てくれるかの。至急、と言う訳ではないが少し話があるんじゃ』

 

「分かりました。では今から伺います」

 

『頼んだぞい』

 

話……口調からして近況報告と言った簡単な用件ではなさそうだ。……何の用だ?

 

「こーちゃん呼び出されたん?」

 

「そのようだ。今から行ってくる。みんな、また明日な」

 

「また明日~」

 

「良く分かんないけどまたねー」

 

対象達と別れ、学園長室に向かった。さて、鬼が出るか蛇が出るか。

 

「すいません。女子中等部3-Aの青山です」

 

「ふぉ。入って良いぞ」

 

「……失礼します」

 

学園長が返事をするのを確認し、部屋の戸を開いた。

 

「よく来てくれたの」

 

「いえ。それで、用事とは?」

 

「うむ。今日のメンテナンスについてじゃ」

 

「メンテナンスが何か?」

 

ただ停電するだけのハズだが……。他に何かあるのか?

 

「実はの、ちょっと気になる事があっての。君のクラスのエヴァンジェリンの事なんじゃが……」

 

「あの吸血鬼が何か……?」

 

俺には関係ない事だろう。それは担任である少年が解決すべき事ではないのではないだろうか?

 

「ふぉ、知っておったのか」

 

「逆に俺の正体もバレましたけど、特に問題は無いです」

 

信用、とは違うがバラす事は無いと思う。

 

「ふむ……」

 

「で、それが何か?」

 

「今宵、彼女がネギ君に対して何かしら行動を起こすじゃろう」

 

「?」

 

「実はのぅ、エヴァンジェリンは昔はとんでもなく悪い魔法使いでのう」

 

「まさか……『闇の福音』?」

 

『闇の福音』……600万$の賞金首で数々の人間を殺してきたが、無抵抗な女子供には手を出さなかったとか言う。そしてそいつの名が……エヴァンジェリン。そうか……どこかで聞いた事があると思ったら師匠からこの話を聞いたんだったな。

 

「そうじゃ。で、サウザンドマスターがそれを見かねて呪いをかけて今ではウチの警備員をやってもらっておるのじゃが……」

 

「はぁ……」

 

昼間会った時のあいつからは何の魔力も感じなかった。よほど強力な呪いなのだろう。で、満月の時に吸血鬼の力が溢れて多少力が使えるようになる……こんな所か。

 

「じゃが、ネギ君がおる」

 

「?」

 

少年? 何故ここで少年の名が?

 

「まぁ、知っての通りネギ君はサウザンドマスターの息子での? 当然、ネギ君の血を吸えばその魔力を吸収し、呪いを解くことが可能なのじゃよ。じゃから、君にはそれを阻止してもらいたい」

 

「それは初耳ですが、だから何なんです? それは俺の任務とは関係ないですよね?」

 

俺の任務は『近衛木乃香』の護衛だ。それ以外で俺が危険を冒してまで動く理由は無い。

 

「そうなのじゃがな。これはワシ個人からの依頼で、と言う事で頼めぬか?」

 

「……分かりました」

 

追加任務か……こういう事は割と良くある事だ。仕方ない、請け負うとしよう。

 

「すまんのう」

 

「いえ。少年は友達ですし」

 

「ふぉふぉ。そうか。では、わしからはそれだけじゃ。青山君からは何かあるかの?」

 

「では一つだけ。もしバレた場合の周りへのフォローはよろしくお願いします。正直そう言うのは面倒なので」

 

「相分かった。その時はこちらでなんとかしよう」

 

「ありがとうございます。他は特にないのでこれで失礼します」

 

さて、一応バレた時の事後処理は学園長に押し付けれる事が確定したし、それなりに自由にやらせてもらうとしよう。




主人公が戦わない理由……外側で見ると戦わせてもらう機会がないだけ。内側で見ると……魔法使えると言う事が周りにバレると色々と面倒だから、と言う事でございます。

面倒って何が?→魔法先生方に問い詰められるのがです。

それでは次回予告!
エヴァンジェリン戦に乱入→明日菜&オリ主で茶々丸とバトル?→最後に主人公にある変化が――
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