逆転する悪魔のパラベラム ~かつて最強と呼ばれた伝説のソロプレイヤーがゲーム大会に出場して無双する話~   作:ロカイクオ

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98話 悪魔、ふたたび

『さあ、白熱の展開でお送りしております、ルシファー・オンライン部門最終戦、最終マッチ! 驚異の残存16部隊で、ラウンド3に突入しております』

 

 

 

『ラウンド4が予告する舞台は、マップ南の錬金場です。この場合、最終エリアは錬金場とガイナブリッジの中間になりそうですが、ニャムさんいかがでしょうか?』

 

『そのとおり! ヘルズウェイクではよくみかける、有名な安置ですね。しかも、あまり評判のいい最終エリアではありません。崖上をおさえているチームがとにかく強いため、どのタイミングで先入りするのかが、この先の争点となりそうです!』

 

 

 

『おっと? ここでマップ西、ドロップボックスにて、プレイヤー蘇生が入ったようです。蘇生したのは……なんと、QB_Airi、戻ってきたのは――同じチームのAguma選手の模様!』

 

『あれ、どういうことでしょうかね。Quiet BearSは選手の体調不良により、第5試合は席に本人不在の状況ではじまっていたような……あ、そうですよね。ラウンド1の時点で、棒立ちのところを確殺されているログが残っております。ではコアだけ回収しておいて、いざ本人が復帰したところで蘇生した、という流れでしょうか?』

 

 

 

『どうもインカメがはずれてしまっているようですね……が、なにはともあれ体調が戻ったのならなによりです!』

 

『来年もまたチャンスがありますから、無理はしないでもらいたいですけどね』

 

 

 

『さてさて、この蘇生によって、これは…………!』

 

『――やはりというべきでしょうかっ! もともと複数チームが集まっていたドロップボックス、ここで蘇生が入ったことにより大きく状況が動こうとしています!』

 

『もともとじりじりと見合っていたところに、とうとう爆弾が投下されてしまった、といったところでしょうか? 前回のアップデートで、蘇生キャラクターには最低限の装備がついた状態での復帰となっておりますが、そうはいってもAguma選手、心もとない武装です。交戦が起きた際には、苦戦を強いられること間違いなしですが――』

 

 

 

『――っとォ、言っている傍からキルログが! ダウンしたのは――物資も尽きかけだったQB_Airi! 追跡チームの猛攻にこらえきれず、ここで確殺まで!!』

 

『それと同時、乱戦がはじまりました。ドロップボックスに入り乱れる4チーム、ここの熾烈な争いを生き抜いた者だけが、東の溶岩城へと抜けられます。果たしてどうなるのでしょうか――?』

 

 

 

 

 

   ***

 

 

 

 

 

 赤城さんの設置してくれた魔人像から蘇ると、すでに銃声が周囲を満たしていた。ログをみるに、ここには複数チームが集っているようだ。

 

 赤城さんはすでにダウンしている。場所は、ドロップボックスにある建物の一階。三階で復帰した俺を守るために迎撃に向かい、そこでやられてしまったということか。

 

 

 

「いいんちょくん、そこ、武器置いてるっ。ウィジットだけどっ」

 

 

 

 となりの赤城さんからコール。

 

 高威力ピストルのウィジット。こいつとショットガンのバルカローレを持っていくのが、赤城さんの愛用している武器構成だ。使い物にならない低レア銃のサンタマリアしか持っていない俺のために置いていてくれたということか。

 

 ありがとう、と俺は思う。

 

 もちろん、それは言葉には出なかった。

 

 

 

 いったん屋上に上がり、俺は足音を聞いた。ひとりはエレベーターロープ、ひとりは階段で詰めてきている。なら、対処そのものは簡単だ。

 

 辛抱するのは、スキルのリキャストが溜まるときまでだ。そしてルシオンでは、キルするとリキャストタイムが大幅に縮む。

 

 つまり、敵を一枚取るところまでが正念場だ。

 

 

 

 俺は屋上から飛び降りる。扉を開けて、一階の様子を確認する。

 

 復帰キャラを落とすのにフルで向かう必要がないと判断したのだろう、残って周囲の索敵をおこなっているチェリーパイにウィジットを二発撃ちこむも、アーマーのレベルが高くてダウンは取れなかった。

 

 さすがに反応がはやい。敵のチェリーパイは、ついぞ翠が習得できなかった、箒を使った専用の高等テク「空中スライド」で射線から逃れた。

 

 そのまま二階に逃げたチェリーパイは、いったん放置する。

 

 

 

 俺は、階段脇にスタングレネードのボーグルを投げておいた。

 

 その状態で内部に隠れて、一階の扉に置きエイム。開いた瞬間にウィジットを二発、追ってきたアタッカーのバッドアスに撃ちこむ。

 

 出会いがしらにアーマーが割れたバッドアスがひっこむと予想して、次は階段の出口にエイムを置く。

 

 ここに動きはなく、グレネードが無意味に起爆した。それならそれでいい。

 

 

 

 俺は頭のなかで状況を思い描く。バッドアスとチェリーパイを確認しているから、定石どおりなら、残りはサポートキャラか。足音の近さを聞くに、おそらく二階にいる。チェリーが削れたとみて、攻めるよりも防御に転じて待っているのか。

 

 無理をしないで、回復してから確実に相手を倒そうとしているわけだ。

 

 敵ながら、いい安定志向だ。

 

 それゆえに、逆に負け筋を作っている。

 

 

 

 単身で浮いているバッドアスを詰めるべく、俺のメレンが前に出た。ドロップボックスのこの位置だと、回復に使っている場所は読みやすい。

 

 外に出ると塀の上に乗って、隣の建物の壁を蹴って、ベランダから内部を覗く。

 

 そこで回復していたバッドアスが、俺の侵入を知ってアルティメットである〈ガンスリンガー〉を吐いた。これで、敵は短時間だけ銃の二丁持ちが可能となる。

 

 タイマンの状況では、圧倒的なダメージ差を生むことができる強ウルトだ。

 

 だが、弱点はある。中距離戦の制圧に優れるかわりに、屋内のインファイトでガンスリンガーを活かすのはむずかしい。

 

 どうにか接近戦にさえ持ち込めれば……。

 

 

 

 ピストルのウィジットを撃つ。一発当てて隠れると、お返しといわんばかりに、おびただしい量のサブマシンガンの弾が壁に突き刺さった。

 

 そのあとで――どういうわけか、敵はこちらに直進してきた。

 

 俺は、思わず眉をひそめた。

 

 こいつ、ふざけているのか?

 

 いや――それとも、この電甲杯の空気にあてられてしまっているのか。

 

 いずれにせよ、こんな行動を取ってくる相手の料理はかんたんだ。

 

 

 

 俺は半開きの扉を掴んで壁を登り、全身でピークした敵の死角に降りて、ほとんど零距離の射撃をおこなった。

 

 このバッドアスも反応自体はよく、振り向きの瞬発力はいい。

 

 だが、それだけだった。

 

 最後にヘッドショットを見舞うと、バッドアスがダウンした。

 

 周囲を気にしながら確殺し、石像となったバッドアスから物資を奪おうとする。

 

 

 

 そのとき、俺のメレンがダメージを負った。

 

 となりの建物の脇から、サポーターのフィラリアが俺をスナイパーで狙っていた。

 

 俺は、敵の使っていたサブマシンガンだけを手早く奪う。

 

 俺が気にしていたのは、周囲の銃声だった。もうさらに2パーティが、近いところで争っている。

 

 この敵は、はやく片づけたほうがいい。

 

 

 

「えっ。それ、だいじょうぶ!?」

 

 

 

 となりで観戦していた赤城さんが、声を出した。

 

 理由は――俺が、さきほどのバッドアスがおこなったのと同じで、体力が削れた状態で、あえて前に出たからだった。

 

 だが、これで問題ない。すでにスキルのリキャストは済んでいる。

 

 俺は、スキル〈ヴェロシティ〉を発動した。

 

 

 

 俺のメレンが、加速する。ヴェロシティの発動時間は耐久が紙になるから、どちらにせよ回復に大きな意味はない。

 

 フィラリアを大きく通り過ぎると、俺はマウスを思いきり振った。振り向きと同時に、ウィジットを続けざまに二発、発射する。

 

 片方の弾は、ヘッドをはずれた――残念にこそ思うが、驚きはない――なぜなら、俺はウィジットが得意ではないからだ。

 

 だがそれでいて、敵は瀕死だ。加速した俺を見失ったフィラリアに、SMGで背後から弾を浴びせる。

 

 これで、二体まで確殺。残るは一枚だ。

 

 

 

 最後の一体、チェリーパイは――すでに逃走しているか。

 

 ずっと遠くで、チェリーパイが箒に乗って逃げていた。

 

 俺はあきれてしまった。悠長すぎる。

 

 だがまあ、この敵はべつに、世界王者というわけでもない。

 

 俺はフィラリアから奪ったスナイパーライフルのスコープを覗きこむと、照準をあわせるのに一秒。

 

 引き金を引いて、敵の頭部を狙い撃つ。突然アーマーが剥がれたチェリーパイが、箒から落下する。その落下の偏差をみて、もう一発。

 

 チェリーが、空中で石像となった。

 

 

 

「…………これ、匿名熊のプレイだ」

 

 

 

 ぼそりと出てきた赤城さんの感想にも、俺はなにも反応できなかった。

 

 それよりも、ゲームだ。

 

 部隊の殲滅が済んで、俺は本格的に装備を整えた。

 

 くそ、ペインバッカーをだれも持っていない。あんなにいい銃を、どうしてだれも使っていないんだ?

 

 残り13部隊。欠けもあって、生き残りは27人か。果たして間に合うのか……。

 

 

 

 キルだ。

 

 とにかく、キルが必要だ。

 

 俺たちは今、何位で何ポイントなのだろう。首位とは、何ポイント差なのだろう。いったい、どれくらいキルを取れば追いつける?

 

 条件がわからないが、やるべきことはシンプルだ。

 

 とにかく、可能なかぎり倒すしかない。

 

 

 

 俺はますます背中を丸めて、前のめりになった。マップを開き、これからやるべきことを手短に確認する。

 

 速攻を重視して敵部隊を排除した関係上、近所で戦っているパーティは、いまだに交戦が終わっていなかった。おそらく、どちらも耐久に振っている編成なのだろう。

 

 

 

 つまり、そこにはキルポイントがある。

 

 この俺が、向かわなければならない場所だ。

 

 

 

 

 

   ***

 

 

 

 

 

『驚きの展開となっております、ラウンド3ッッッ!!! ほぼ同じタイミングで、ヘルズウェイクの西と東で大戦争が勃発しました!! マップ東、エッジガーデンを制したのは、さらなる差をつけるつもりか――――LC学園"V-labyring"、現在トップのse1en選手率いるチームです!!』

 

『いやー、すばらしかったですね。se1en選手は、もとより戦況をコントロールする能力に長けた視野の広い選手ですが、味方に情報を採らせてからの正確無比のスナイパー狙撃が、ああいった乱戦の局面だとキレーにハマりますね』

 

 

 

『さすがというべきか、ルシ王子! 現在4キルを携えて、悠々自適に最終安置のガイナブリッジへと移動しております――が、そこに構えているのは、本マッチにおいて運にも恵まれているエイジス・ゲーミングの面々です』

 

『もちろん、選手たちは気づいておりませんw ここのマッチアップもどうなるか、目が離せませんね――』

 

 

 

『対して、西側の結果ですが――――』

 

『これ、どういう展開だったんですかね……?』

 

『観戦カメラの都合で断片的にしか情報が取れなかったのが残念ですが、西で最後に生き残ったのは、"Quiet BearS"のQB_Aguma選手の模様ですね』

 

 

 

『現在、なんとここで6キルを獲得しております! 東に比べれば混戦具合は抑えめでしたが、おそらくAguma選手、あの遠距離スナイプでうまく漁夫の利を制したといったところでしょうか?』

 

『前哨戦でもスナイパーでの貢献が多くみられましたから、おそらく長物が得意なプレイヤーなのでしょう。同じ学年のLC学園se1en選手と、奇しくも似たプレイスタイルといったところでしょうか?』

 

 

 

『キャラクターも、しれっとメレンに変わっていますしねw これはSui選手の採用していたスキル〈転生〉によるものですが、前哨戦に引き続き、変わったスキル構成で臨むおもしろいチームです』

 

『いずれにせよ、現時点でソロとなってしまっています、Aguma選手。ここはどうにかしてガイナブリッジの周辺でハイドといきたいところですが……っと?』

 

 

 

『Aguma選手、銃声を聞きつけるや否や、突如として進路を変更しました。これは――南、ですね。好立地の溶岩城から、最終安置を通り抜けるかたちで、南の錬金場へと向かうつもりでしょうか?』

 

『んーーー……真白井さん、これはどういう意図でしょうか?』

 

 

 

『これは……ちょっとわかんないですw』

 

『ですよねw』

 

『ひょっとして――まさかのキルムーブっ?』

 

『いやーーーーww 彼、ソロですよ?w』

 

『そうなんですよね。このままハイドできれば3位以上の入賞はじゅうぶんに狙える状況ですが、Aguma選手、いったいどういう判断なのでしょーか! 最後にガイナブリッジのほうへ北上するというのは、撃ち下ろされる関係で非常につらいものがありますが……』

 

 

 

『さて、ラウンド4に入りました! カメラはここで南東の――おっと、ここでずっと息を潜めていたデュオ、マリオン選手が動くようです。ここは……先に移動してエンパシーゾーンから来る敵を弾くという作戦でしょうか。しかし――』

 

『あれ……すみません、ニャムさん。ちょっと』

 

『? どうしました、照井さん』

 

 

 

『いや――さっきのAguma選手なんですけど。さきほどインベントリを開いた際にちらっと映ったスキル構成……みました?』

 

『構成はみていませんが、映像だとヴェロシティを採用していましたね。紆余曲折あってシーズン2から弱体調整ナーフされ続けましたが、今でも逃げるぶんには有用なスキルですね。といってもアタッカー枠のスキルなので、食い合わせは悪いことが多いですが』

 

 

 

『あ、そうじゃなくて、ヴェロシティじゃないほうが……w』

 

『? なんだったんですか?』

 

『……や、気のせいかもしれないです。また映ったときに確認しましょう!』

 

『えー、気になるじゃないですかw ていうかまあ、メレンでヴェロシティって時点で、ちょっとアレかなとは思いましたけどw …………え、まさか??? いや、そんなはずないですよね?? だってここ、電甲杯の決勝ですけど?ww』

 

 

 

『そうですよねw まさか、そんなスキル構成で潜るはずがないですからね――みまちがいですよ、みまちがい。それでは、引き続き画面をみていきましょう』

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