逆転する悪魔のパラベラム ~かつて最強と呼ばれた伝説のソロプレイヤーがゲーム大会に出場して無双する話~   作:ロカイクオ

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9話 ギャルVS委員長

 ここでもういちど、俺という人間についてあらためて説明しておこう。

 

 

 

 俺にとってなによりも大切なのは、委員長としてふるまうことだ。

 

 実際にナマで出会ったことはないのに、そういうタイプのやつっているだろうと言われたら、たしかにそんな気がしてくるような、模範的な委員長に。

 

 そして委員長であることは、俺にとって社会生活の核といっていい。

 

 

 

 そしてたった今、その核が壊れかかっている。

 

 委員長のくせにゲームに熱中しているのがクラスメイトにバレてしまった。これは俺の委員長マニュアルには対応策の存在しない危機だ。

 

 それでも俺は、委員長であり続けたい。

 

 とくに、相手がクラスメイトならばなおのことだ。

 

 ――それ以外の俺など、社会に存在するべきではないのだから。

 

 

 

 俺はいったん、めがねを外した。

 

 いつのまにか汚れていたレンズを布巾で拭くと、かけ直す。

 

 正念場だ。気合いをいれろ、亜熊杏介……委員長。

 

 

 

「すまない、ちょっと考え事をしていた」

 

「あ、しゃべった」

 

「しゃべるさ。当たり前じゃないか。それより俺が気になるのは、今の赤城さんの話を踏まえたうえで、なぜ俺を、ということだ」

 

 

 

 それは、当然の疑問だった。

 

 

 

「赤城さんなら、大会に出たいと思ったとき、組む相手なんてごまんといるだろう。それこそ、昼はC組の東堂くん……あの有名プレイヤーのse1enにも勧誘されていたじゃないか」

 

「セ、セレンじゃダメなの!」

 

 

 

 若干かぶせぎみに、否定された。

 

 

 

「ちょっとフクザツな事情があって……。ごめん、それも話すね。えっとね」

 

「いや、それならとりあえずはいい」

 

 

 

 また話が長くなりそうなオーラを感じたから、俺は首を振った。

 

 

 

「だが、もしかりに東堂くんが候補にならないとしても、ほかにも引く手あまただろう。赤城さんの実力なら、ある程度の実力者を連れていけば、じゅうぶんに好成績を取れるはずだ」

 

「え。いいんちょくん、あたしのプレイ、わかるの? み、見てくれたこととか、あったりすんの⁉」

 

 

 

 予想外のツッコミがあった。

 

 俺は一瞬、固まった。失言だった……だが、今さら否定もできない。

 

 

 

「まあ、少しは」

 

「え、うそ、超うれしーんだけど……! いつのやつだろ、なんかの大会? てか、『匿名熊』視点のフィードバック、欲しい! めっちゃ勉強なりそー!」

 

 

 

 赤城さんは、なぜだか頬をおさえてわーきゃーした。

 

 

 

「とにかく、俺はそう思うわけだ。違うかな」

 

「……や、でもそれ、どうかなぁ。だって、それこそ勝ち抜いてったら、相手、セレンとかになんだし。あいつ、ちゃらいけどルシの実力だけはマジだし」

 

 

 

 たしかに、se1enは〈ルシ王子〉とあだ名がつくほどの上級プレイヤーだ。

 

 現役プロのなかでも注目を浴びている存在。その実力はお墨付きを越えたものだといっていい。

 

 

 

「とはいっても、あのゲームはチーム戦だろう。まだ開催まで時間がある。そのあいだにチームの練度をあげていけば……」

 

「あたしと出られないなら、セレンは別ゲーのプロの知り合いとか連れてくると思う。正直、かなりきついよ」

 

「電甲杯はレベルの高い大会だが、それでもプロばかりのマッチアップというわけではない。かならずしも本気で取り組むとはかぎらないんじゃないか」

 

「ルシ王子がルシで手を抜く? ありえないって」

 

 

 

 赤城さんの言い方は、まるで勝てない理由を探しているかのようだった。

 

 俺は、全面的な賛同ができなかった。

 

 たしかに実力者が揃い踏みになるだろうが、赤城さんだって相当のものだ。勝負は時の運だし、じゅうぶんに優勝の見込みはある。

 

 そう――俺などに頼らなくても、赤城さんなら。

 

 

 

「……や、ごめん。あたしも、ダサいこと言ってる自覚はあるよ。もちろん、だれと組もうと本気で練習するし、優勝するつもりでプレイする。それは本当にそのつもり。でも――でも、どうしても優勝しないとダメだっていうときに、目の前に匿名熊がいるんだよ? それにいいんちょくん、もうメンバーが決まっているなんてこともないんでしょ? フリーなんでしょ?」

 

 

 

 そのとおりだ。

 

 メンバーどころか、大会に出る予定自体が一ミリもない。

 

 

 

「それなら、ぜったい組みたいよ……‼ ねえいいんちょくん、あたしたちならぜったい優勝できるって。そしたらさ、すっごいイイと思わない? 超アガるよ、ぜったい」

 

「赤城さん。申し訳ないが、俺にはそういうつもりはないんだ」

 

 

 

 と、俺があらためて言ったので、向こうは口を閉ざした。

 

 

 

「俺なんかを誘ってくれたのは嬉しいが、この件にかんして協力はできないと思ってほしい」

 

「どうして? いいんちょくん、あんだけうまいんだから表舞台に立たないと!」

 

「どうしても、なんだ。俺は……俺は、あのゲームは寝る前にちょっとプレイするとか、そういうのでじゅうぶんなんだ」

 

「そんなのって、宝の持ち腐れじゃん! みんな、超びっくりするよ⁉ あのいいんちょくんがあんなにゲームがうまいなんて知ったら‼」

 

「べつに知られなくていいし、むしろ知られないほうがいいんだ」

 

 

 

 そうだ。

 

 大会に出て注目されるような事態よりは、ずっとましだ。

 

 

 

「それに仮定の話をするなら、もしかりに俺が出場しても、ほとんど役に立たないだろう。俺は、ああいう場が、たぶんかなり苦手だから」

 

「それは……っ! まあ、大会だから、わかるけどさ……っ。あたしも、まだ緊張とかぜんぜんするし。でも、それを差し引いても、あの実力なら問題ないってゆーか」

 

「とにかく、俺には無理なんだ。すまない」

 

「なんでよ、この……っ!」

 

 

 

 俺が言い切ると、一瞬、赤城さんは怒ったような顔になった。

 

 

 

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