逆転する悪魔のパラベラム ~かつて最強と呼ばれた伝説のソロプレイヤーがゲーム大会に出場して無双する話~   作:ロカイクオ

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21話 委員長率による実力の推移について

 しばらくして、俺はミュートを解除した。

 

 

 

「とりあえず戻ったよ。聞こえるかな、赤城さん」

 

 

 

 返事はなかった。

 

 切断されていたわけではなく、ほんのわずかな息遣いは聞こえた。

 

 

 

『……え、どゆこと?』

 

 

 

 五秒ほどして、ようやく赤城さんはくちを開いた。

 

 

 

『え、まじ? なんか、一瞬でひっくり返されたんですけど……』

 

「ひっくり返ってはいない。9-9だから同点だよ」

 

 

 

 あれから、俺はどうにか追いついていた。

 

 赤城さんが強敵なことに違いはないから、かなりの集中力が求められたが、それでもなんとか勝ちを拾い続けてきた。

 

 取り決めは十先だから、次で決着がつく。

 

 

 

『あのさ。プレイヤーが変わったりとか、してないよね……?』

 

「まさか。ここは俺の部屋だし、俺はひとりだよ」

 

 

 

 ははは、と俺はから笑いをした。

 

 

 

「赤城さんのキャラコンに、ようやく少し慣れてきただけだ。でも赤城さんのほうこそ、ますます動きがよくなっている。次はどうなるかわからない」

 

『いや、そういう次元のエイムじゃなくなかった……? てかエイムどころか、ぜんぶヤバかったけど……え、えぇ?』

 

「とにかく最後をやろう。グレを投げるよ」

 

 

 

 俺はGキーを押してグレネードを構えた。

 

 二十戦目がはじまる。

 

 これで勝敗が決まるせいか、赤城さんのプレイは消極的になっていた。

 

 あまりピークせずに、ぱらぱらとSMGを撃ってくる。

 

 俺もそれに付き合って、双方が少しずつ削れた。

 

 リロードのタイミングがずれて、俺のほうのマガジンが切れたときに、ようやくやる気になったのか、赤城さんは前に出てきた。

 

 

 

 おそらくショットガンで決めにくるだろうから、俺のほうも武器を持ち替える。俺が相手の出現ポイントを読んで照準すると、飛び出した赤城さんがすばやく壁ジャンし、俺の頭上を跳び越えた。

 

 その際、上からマシンガンの嵐に襲われる。赤城さんはまだSMGのままだった。

 

 俺はなんとか相手の動きに反応して、ショットガンの一発目を撃っていた。が、それはクリーンヒットにはほど遠い、カスダメにしかならなかった。

 

 HPは、俺のほうが若干不利だ。しかし相手にはリロードか、あるいは武器チェンジの隙が生じる。

 

 左右に小刻みに動く赤城さんに向けて、俺はふたたびショットガンを撃った。

 

 

 

 弾は、うまく当たらなかった。

 

 そのせいで武器を持ち替えられて、まともに撃ち返されてしまった。まだあと一撃なら耐える体力はある――そう思っていたが、俺のHPがなくなった。

 

 赤城さんは、楕円状に散弾が広がる仕様のショットガン〈バルカローラ〉の、その半分以上を俺の頭に当てたようだ。

 

 ヘッドショット。

 

 むずかしいかわりにダメージが胴体の倍になる、必殺のエイムだ。

 

 

 

 10-9……俺の負けだ。

 

 俺はマウスから手を離すと、指をよく揉んだ。

 

 

 

『いちおう、勝った……けど』

 

「ああ、おめでとう。さすがだな、赤城さん」

 

『……ありがと。でも……なんか、納得いかないんだけど!』

 

 

 

 なぜだか、赤城さんは怒るような口調だった。

 

 

 

『いいんちょくん、ちょっとプレイにムラがありすぎじゃない? 配信だとべつにそんなことなかったじゃん!』

 

「そうかな。タイマンなんてあまりやらないから、緊張していたのかもしれない。でも、俺の実力はもともとこんなものだよ」

 

『うそ! だってさっきの追い上げのときは、もっとぜんぜん……! ねえいいんちょくん、まさか通話してるときだけ手を抜いたりとかしてないよね?』

 

「そんなはずがないだろう。たんに赤城さんがうまいだけだ。さっきの壁ジャン後の削りなんかすばらしかったよ。さすがQGのエースだ、キャラコンならほとんどプロと遜色ないじゃないか」

 

『ん、やっ、まあ、たしかに自信はあるけどさ……。てか、まためっちゃ褒めんじゃん。やめて、それなんかヘンな感じなるから……』

 

 

 

 俺のほうには、べつに持ち上げているつもりはなかった。

 

 

 

『ゔーーーっ。でも、やっぱ納得いかない! ね、もっかいやろ? こんどはスキル有りとかでもいいから!』

 

「また後日にしないか? あまり時間もないし、もしカジュアルもやりたいのなら……」

 

『……むー、わかった。でもぜったい、ぜったいにまたやってね! 約束だよ?』

 

 

 

 俺は曖昧な返事をしたが、内心ではそこまで乗り気ではなかった。

 

 大会の練習をするつもりはあるにせよ、俺のプレイが赤裸々になるタイマンは、正直ごめん被りたい。

 

 そのあとは、ふたりでカジュアルマッチに潜った。

 

 俺はメレン、赤城さんはマレイユという移動に強いキャラ、ゲーム側でマッチしてくれた野良プレイヤーはビジーという武器を一丁多く持てるキャラだった。

 

 赤城さんの先導に従って俺と野良はついていき、彼女の読みのおかげで、ぶじに勝利できた。

 

 

 

 ルシオンのワンマッチにかかる時間は、最後まで勝負に絡めば、おおよそ二十分強だ。もともと一時間だけ軽くという話だったから、その日の赤城さんとの初プレイは、それで終了となった。

 

 彼女は大会の構成などについても相談したかったようだが、俺のほうが丁重にお断りして、本日のところはお開きとなった。

 

 理由は、シンプルに俺が限界だったからだ。

 

 

 

 俺はヘッドホンをはずすと、よろよろとベッドに向かい、倒れこんだ。

 

 ソーシャル・バッテリーの補充のつもりが、真逆の行為となってしまった。自室で委員長ロールをやったのは初めてということもあり、大幅に消耗してしまっていた。

 

 

 

「……弱かったな、俺」

 

 

 

 俺は自分の掌をみつめて言った。

 

 今さっきの自分のプレイングを思うと、なさけなくなる。

 

 雑魚もいいとこ、クソ雑魚だった。

 

 

 

 とはいえ、収穫もあった。

 

 チームメイトとして組んだときの赤城さんが、やはりというべきか非常に頼りになりそうだというのは、助かる再確認だったといえるだろう。

 

 俺が想像していたよりもずっと、彼女はこのゲームに造詣が深かった。

 

 だからといって、この体たらくの俺と、即席のチームメイトで、プロゲーマーも混ざるような大型大会で優勝できるかといえば……。

 

 

 

 それでも、やれるだけやるしかない。

 

 俺は委員長で、彼女はクラスメイトで、協力しなければならないのだから。

 

 

 

 俺は決意をあらたにすると、疲れた脳みそで、そのまま眠りについてしまった。

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