逆転する悪魔のパラベラム ~かつて最強と呼ばれた伝説のソロプレイヤーがゲーム大会に出場して無双する話~   作:ロカイクオ

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31話 ゾンビゲーは苦手

 俺の発言に、クラスメイトたちがヒートアップした。

 

 

 

「どういうことだよ、愛莉……!」

 

「愛莉ちゃァァん、なんでぇェぇ……? どうして何度言っても組んでくれないのよぉぉ」

 

「ちくしょう……俺なんて愛莉と組むために本業のゲームやめてルシオンの猛練習をしてたってのに……!」

 

 

 

 いや、それはやめるなよ。

 

 軍団が亡者のように赤城さんにまとわりついていく。

 

 

 

 というか、わかってはいたつもりだが、赤城さんって本当に人気者なんだな……。ここまでひとに求められるというのも、それはそれで生きづらそうだ。

 

 

 

「ちょっと、いいんちょくん⁉ 助けて、なんかこわい!」

 

 

 

 赤城さんがゾンビ映画のごとく軍団に呑まれていく。その姿がみえなくなる前に、俺は言った。

 

 

 

「待ってくれ、みんな。聞いてほしい。今回、赤城さんが俺を誘ってくれたのは――俺をねぎらってくれてのことなんだ」

 

「ん? ねぎらい……?」

 

 

 

 そうだ、と俺は大きくうなずく。

 

 

 

「ついこのあいだの期末考査……それから、その前の中間考査。いや、もっとさかのぼって、一年のときの各試験の前。それぞれで、俺は各教科の試験対策ノートをみんなに配ってきただろう?」

 

「ああ、例のあれな」

 

「いつも助かっているぜ、委員長!」

 

「お金出しても欲しいやつね」

 

 

 

 みんな、なんのことだかはわかっているようだ。

 

 それもそのはずだ。

 

 委員長の仕事その4〈試験前はなんか助けてくれる〉を、俺はこれまで厳密に守ってきた。

 

 教師の「ここ試験に出るぞー」をあますことなく聞き取って、試験前になるとすべてをまとめたわかりやすいノートを作成して、クラスのみんなに共有しているのだ。

 

 

 

「どうやら赤城さんは、俺のこれまでのノートに対して、なにかお礼をしたいと思っていてくれたらしいんだ。それで、電甲杯の予選にいっしょに出て、俺におもしろい体験をさせてくれると、そう言ってくれたんだ。俺にはよくわからないが、ゲームの大会に出るというのは唯一無二の楽しさがあるらしくて――そう、だから、これは赤城さんから俺への、いわば厚意なんだ」

 

 

 

 俺はそこで赤城さんに目配せした。

 

 頼む、乗ってくれ。

 

 

 

「そ、そうそう、そういうわけ。だってほら、普通に考えてそうじゃん? あたしも含めて、みんなもいいんちょくんにはいつもお世話になってんじゃん! ノートもそうだし、クラスの仕事とかってぜんぶいいんちょくんが黙ってやってくれてるし!」

 

 

 

 しどろもどろながら、どうにか引き継いでくれた赤城さん。

 

 

 

「ほんとはね? みんなでなんかパセラするとかもいいと思ったんだけどさ。じつはいいんちょくん、ちょっとルシオンもやってたみたいだし、それなら大会とかって楽しいからさ、がんばっていっしょにやれたらいいかなー……みたいなー……カンジでー……?」

 

 

 

 ここを機とみて、俺たちは畳みかけた。

 

 

 

「とにかくそういうわけだ。俺も赤城さんがこうして引っ張りだこなのはわかっていたから断ろうと思ったんだが、そう言ってもらえるのもありがたくて、今回だけ! 今回だけはご厚意に甘えて、みんながよく出ている大会を経験してみようかと、そう思ったわけだ」

 

「そゆことそゆこと! いやだから逆にね? 今回あたしがいいんちょくんと組むのに不満なひとは、これまでのいいんちょくんのノートに感謝の気持ちとかないのっていう! 逆にどうなん、それは!」

 

 

 

 赤城さんは、逆に問いかけるかたちを取った。

 

 ゾンビたち、もといクラスメイトたちは顔を合わせると、

 

 

 

「うーん、そういう事情なら今回はあきらめるか……」

 

「たしかに、これまで当然みたいに受け取っていたけど、お礼は必要よね……二学期も絶対に欲しいし」

 

「てか、結局ノートが人質で合ってたくねぇ?」

 

 

 

 どうやら納得してくれたようで、ぞろぞろと解散していった。

 

 た、助かった……。

 

 

 

 土壇場にしては、いい言い訳だったように思う。俺は最低限の委員長ロールができたし、赤城さんの顔も立てられたはずだ。

 

 が、俺が胸をなでおろしていると、

 

 

 

「えい」

 

 

 

 ぽかりと、背中を叩かれた。

 

 もちろん、赤城さんだった。

 

 

 

「な、なぜ叩く」

 

「いいんちょくんめ、ヘンな嘘つかせたでしょー。あたし、よっぽどのことがないと嘘つかないようにしてんだからねー?」

 

 

 

 どうやら清廉潔白なひとのようだ。

 

 俺は逆に、嘘はけっこうつくほうだから耳が痛い。

 

 というか、なんなら嘘まみれだ。

 

 

 

「ま、いいんちょくんがいいんならいいんだけどさー……。でも、思いきって正直に話したほうがよかったんじゃない? どうせいつかみんないいんちょくんの実力がわかるんだからさ」

 

 

 

 赤城さんが自分の席に帰っていく。

 

 

 

 俺は、背中に残った感触を意識しながら、ふと思った。

 

 俺が、あまりそうした事態を心配していない理由。

 

 それは、俺が心のどこかで諦めているからだ。

 

 

 

 全力で赤城さんに協力し、優勝をめざす――そうした前提があっても、俺は自分のちからをあますことなく発揮できるとは、あまり思えていない。

 

 そうなればいいのに、きっと、なれない。

 

 

 

 俺という者は、結局どこまでいこうとも欠陥人間なのだ。

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