正義の味方の1人娘ですが、悪の組織に就職しました ~今日も脅迫動画を父に送ります!~   作:うちっち

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「真面目な生き残り方をしようとしても絶対失敗する役回りというか……」

 ニシャプール様の強い希望により、最初に視察先になったのは街角で最近評判だと噂のパン屋だった。この店では、ふかふかの焼き立てパンがお勧めであるという。確かに、並んでいるパンはどれも香ばしい匂いを漂わせていた。

 

「こら。マシロ、トングをカチカチ鳴らさないの」

「だってやりたくなりませんです?」

「駄目よ、なんかはしたない。ニシャプール団のNo.2としての自覚を持ちなさい」

 

 パン屋のご主人はニコニコと2人のやりとりを見守っていたが、ニシャプール様の顔を見ると、ふと、なんだか困惑したような顔をした。「誰だっけ」みたいな顔をしている。

 

 そして、御主人は慌てたようにバタバタと店の奥に走り去っていった。急用だろうか。しばらく経っても戻ってこなかったので、俺たちは、お金を置いて去ることにした。ニシャプール様は、カレーパンと揚げカレーパンとチーズカレーパンを抱えてニコニコしていた。

 

「カレーが食べたい気分だったのよ」

 

 果たして3個目を食べるときもその気分が持続しているかどうかは定かではなかったが、大変ご機嫌であった。いいことである。

 

 

 

 その後、フィナンシェ1個しか買わなかったマシロさんからカレーパンを死守しつつ、ニシャプール様は近所の公園に向かった。ベンチでゆっくり食べたい、という主張だった。

 

 

 

「あのパン屋は、ニシャプール団のお抱えパン屋にするわ。看板にもそう書いていいし、何ならサインもあげちゃう!」

 

 3個のカレーパンを完食し、ニシャプール様は、真面目な顔で決定を下した。ニシャプール団お抱えの店が初めて誕生した瞬間であった。……うーん、でも……。

 

 

 

 

「悪の組織のお抱えって、客が減りそうじゃないです?」

「何か怪しいものとか入ってそうですよね……」

「入れるか! じゃあいいわよ! 私が『誓って何も入れてません』って一筆書いてあげるから!」

「そのニシャプール様の一筆への信頼、なんなんです?」

 

 

 

 

 

 その後、公園内のベンチで3人で日向ぼっこをしていると、ニシャプール様の足元に、散歩中の犬が寄ってきた。わんわん! と犬は吠えまくり、ニシャプール様はマシロさんの後ろにさっと隠れた。……あ、ニシャプール様、顔だけ出して唸ってる。

 

「元気な子ですね」

「ふふ、そうでしょ。……あれ、あなた、どこかで……?」

 

 そう言われたので、飼い主の女性を見返してみたが、知らない顔だった。小学校の友達のお母さんかな?

 

 

 

 そして、お互いに思い出せず、飼い主さんとは別れた。ニシャプール様も機嫌を直し、今はどこか物欲しげな顔で、向こうの方にある大きな滑り台をちらちらと見つめている。この公園の滑り台は非常に長く、アスレチックの一部みたいな感じで、高校生でも楽しめる、という看板が立てられていた。

 

 

「ニシャプール様、わたし、あの滑り台行ってみたいです。でも、1人じゃ怖いので……」

「しょうがないわねー! じゃ、私が一緒に行ってあげるわ! マシロはどうする?」

「あたしは遠慮しますです」

 

 

 

 

 その後、ニシャプール様は、キャーキャー言いながら滑り台を堪能した。

 しかし、ニシャプール様は、滑り台の一番下まで来ると、キキーッ! と急ブレーキを掛ける。後ろを滑っていた俺は、ニシャプール様の背中にしたたかに鼻をぶつけた。

 

「いったぁ……! ニシャプール様、急に止まらないでください」

「ハイランドリールがいるわ」

 

 

 

 ニシャプール様の視線を追ってみると、確かに、1人でベンチでのんびりしているマシロさんの横に、硬い表情の兄がいた。何やら話しかけている。

 

 ニシャプール様は、こちらを振り向いた。非常に面白いものを見つけた顔をしていた。俺も、重々しく頷く。だってあの2人の関係、気になるから。

 

 

 わたしとニシャプール様は茂みの中を移動し、ベンチの真後ろまでやってきた。そして、揃って耳を傾ける。

 

「頼む。俺と一緒に基地に来てくれ」

「お断りしますです。そもそもなんでここが分かったんですか」

「通報がいくつもあったんだよ」

 

 あ、兄がナンパしてる……! いや遠目に見た時からそう見えたけど! でも、どちらかというと硬派を気取っている兄なのに、女性に声を掛ける機能が搭載されていたなんて。

 

 

「怪人だからって、悪いようにはしない。保護させてほしいんだ」

 

 懸命に説き伏せようとする兄に対し、マシロさんはつん、と横を向いた。

 

「解剖されて利用されるに決まってるのです」

「いやっ……! 解剖はしないぞ!」

 

 

 あ、利用はするんだ。俺は、何か叫ぼうとしたニシャプール様の口を両手で押さえながら、様子を見守った。なんかすごく複雑な気分。マシロさんがすごくいい人なので兄には頑張ってほしい気持ちもあり、家族のそういうのを見るのが気恥ずかしいのもあり。

 

 しかし、見る限り、兄に勝ち筋はなさそうである。マシロさんは明らかに、公園のベンチでゆっくりする方に魅力を感じていそうだった。

 

 

「基地には俺が一緒に行くし! あんたが信用できる奴だって、全員に説明する!」

「へー、です」

「なんなら、信用してることを証明するために、開発中のロボの新兵器を見せてもいい!」

 

 

 ぴくり、とマシロさんの肩が揺れた。

 ……やばい。今、「面倒くさい」と「新兵器を見たい」という2つの気持ちが天秤に掛けられているのが分かる。

 

「ロボの、新兵器、ですか?」

「あ、ああ! 最終決戦で使うはずだった奥の手を、実戦で使えるように整備中なんだ」

「行きますです」

 

 

 天秤はあっさりと傾いた。兄に連れられ、マシロさんは公園を出て行った。それを確認して、俺はニシャプール様の口から両手を離す。……大丈夫かな? 勢いあまって、口と鼻も塞いでしまったような気がする。

 

 ぜーぜーと肩で大きく息をついていたニシャプール様は、俺をキッと涙目で睨んだ。

 

「なんで止めるのよ! マシロが連れ去られちゃったじゃない!」

「いや、自分で行ってましたよあれ」

 

 えーっと足音からすると、400メートル北東か……。さっそく基地に向かう気みたいだ。そのまま追おうとした俺の服の裾を、ニシャプール様がはっしと掴んだ。

 

「私も連れて行きなさい」

「えっ、でもわたしは多分入れてもらえますけど、ニシャプール様はさすがに無理じゃないですか?」

「無理じゃない! 私も行きたい!」

 

 俺が、困った、という顔をしていたのだろう。ニシャプール様は、いつもみたいに地団太を踏んだりしなかった。その代わり、顔を真っ赤にして、うんうんと力み始める。

 

 

 

 そして、ポン! と軽い音とともに、ニシャプール様の姿がかき消える。代わりに、ハチの頭みたいな形をしたバッジが、ポトリと地面に落ちた。

 

 

 

『拾って拾って』

 

 

 言われるままに拾い、とりあえず幹部バッジの隣に着けてみる。にしても、ニシャプール様、変身もできるらしい。さすが幹部。

 

 

 

 

 

 

 

 

 正義の味方の基地には、あっさり入れてもらえた。というか「補佐官さん、お疲れさまです」とか言われた。正義の味方の基地は、相変わらず床も壁も天井も全てが白く、近未来的で。コンクリートの打ちっぱなしみたいなうちの基地と比べると、えらい違いである。

 

 

 

 俺が壁の陰からそっと顔を出すと、ちょうど兄が基地のスタッフにマシロさんを紹介しているところだった。

 

 彼らはみな、一様に同じ顔をしていた。「とんでもないことになった」、そんな表情だった。まあ、いきなり怪人連れてこられたら困るよな。

 

「早くロボが見たいのです」

「それよりさ、あんたの部屋とか用意させるから、そっちを先に……」

「ロボが、見たいのです」

 

 

 マシロさんが、ちょっぴり語気を強め、兄をじっと見上げた。すると、兄はぐっと詰まる。さすがに、自分で言い出した条件を「やっぱ無理です」とは言えなかったらしい。

 

 

 

 兄は、見張りの人にペコペコと頭を何度も下げ、マシロさんをロボ格納庫に案内した。その後からそっとついていく俺。

 

 

 

 

 

 ロボは、冷たい格納庫の中で静かにうずくまり、ただ、出番を待っていた。巨大化した怪人たちを葬ってきた、鋼鉄の怪物。

 

 

 

 ――格納庫は、今は閉鎖されている。

 

 

 

 全長30メートルほどだろうか。俺は頭の中で、ロボのカタログスペックを検索する。これまでの武装は、ビームソードと、荷電粒子カノン、トゲトゲの付いた巨大なハンマー、のはずだが……。

 

「これが、分子分解砲だ」

 

 ロボの右肩には、明らかにバランスが悪いと思われる大砲が乗っていた。なんと、最終決戦でロボと戦う相手は、分子分解されてしまうらしい。殺す気しかないじゃん。いや、でもよく考えてみると、これまでも結構殺す気満々だったな……。

 

「エネルギーの充填まで、どれくらいかかりますです?」

「さすがだな。それが弱点で、2分かかる。その代わり、威力はお墨付きだ。試し撃ちの時は……宇宙から落ちてくる、半径1キロもある巨大な人工衛星がチリになって消えた」

 

 120秒でそんな攻撃が撃てるなんて、反則では? というか、試し撃ちって言った? 落ちてくる巨大な人工衛星で? もし試し撃ちが失敗したらどうするつもりだったんだ。

 

『悪、ってあいつらのことじゃないかしら』

「ですよねえ……」

 

 

 

 

 

 マシロさんは満足したらしく、考え込みながら、基地の中心部に戻る兄の後を、てくてくと歩いていく。兄は、そんなマシロさんを気遣うように何度も振り返った。

 

 

 

 

 

「――分析したところ、あれはシマエナガ怪人ですね。目の合った相手を洗脳し、好印象を植え付ける。ハイランドリールも操られているのでは?」

「いや、まさかそんな……」

 

 2人がホールに入ろうとしたとき、白衣を羽織った博士みたいな男性が、眼鏡の位置をくいくいと直しながら話し出した。

 

『何それ! マシロの力はすごく弱いから、ハイランドリールに通じるわけないじゃない! 初対面の莉名にも弾かれるくらいの力しかないってのに!』

 

「わたし弾いてたんですか!? マシロさんすごくいい人だなぁとは思ってたんですけど」

 

『マシロの力が通じるのは、一般人だけよ。組織に入る前から、力には目覚めてたんだって。でもそれも嫌だって言って、フェイスシールドをずっと被ってたのに……』

 

 

 

 俺はこのときまで、知らなかった。マシロさんがいつもフェイスシールドを外してくれていたのが、いったいどういう意味を持つのか。

 

 

 

 マシロさんは、スタスタとホールの中に入っていった。スタッフたちは会話を止め、マシロさんに視線が一斉に突き刺さる。しーん、という、非常に重い沈黙がホール全体を支配した。

 

「じゃあ、帰りますです。やっぱりここは、あたしには合わないみたいですから」

 

 

 

 

 兄を振り返り、そっと頭を下げるマシロさん。兄は、何も言わず、去っていくマシロさんの後ろ姿を見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 悪の基地で、ニシャプール様と俺が両手を広げて迎えると、マシロさんは眉をぴくりと動かした。あんな理不尽な目に遭ったマシロさんを一刻も早く癒してあげなければ!

 

「さあ、座ってください! マシロさんの好きなフィナンシェを用意してございます!」

「今日は私が腕によりをかけて作ったのよ!」

 

 テーブル一杯に敷き詰められたフィナンシェを、マシロさんはなんと完食した。ニシャプール様が、おそるおそる、口を開く。

 

「どうだった? お昼は1個しか食べてなかったから、おなか減ってないかもって思ったんだけど」

 

 俺たちがそれに気づいたのは、最後の1個をテーブルに置き終わった時だった。その直後にマシロさんが帰ってきたので、もうどうにもならなかったのだ。

 

 マシロさんは、困ったように視線をそらす。

 

「まあ、外は緊張しますですから、あまり食欲も湧かないのです」

 

 もう寝ます、と自室に引き上げていくマシロさんを、俺たちは見送った。ニシャプール様は「よかった」と胸を撫でおろしていたけれど、それってつまり、マシロさんにとってここは安心できる場所だってことで。

 

「何よ莉名、にまにましちゃって」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「でも聞きました? 分子分解砲ですって。こっちも対抗して何か考えた方がよくないですか?」

「今のところ、新しいのって死んだふりver.6しかないもんね」

 

 ……そういえば。ニシャプール様は以前は血を偽装するなんてできなかった、と言っていた。どうやってレベルアップしたんだろう。

 

 するとニシャプール様は、最初は「本気を出したからである」と繰り返していたが、すぐに白状した。基地の奥を探検していたら、変な本を見つけたんだって。そこには、死体をどうやって偽装するかの研究が、記されていたという。……あ、怪しい~!

 

 

 

 ニシャプール様に案内され、俺たちは、基地の奥までやってきた。ニシャプール様が壁の模様を押すと、ガコッと床の一部がせり上がり、地下に降りる階段が現れる。

 

「よくこんな場所、気づきましたね」

「まあ、下に空間があればわかるし。私っていうか、私の操る素体がね」

 

 

 

 狭い階段を下りると、そこは狭い部屋になっていた。壁のランプに火をともすと、ぼうっとした明かりが室内を照らす。そこには、小さな机と、その上に本が10冊くらい。部屋の隅には、人が1人入るくらいのカプセルがいくつか並んでおり、そのうちの1つの蓋が開いていた。覗き込んでみると、パイプや電源は繋がれていたけれど、カプセルの中には何も入っていない。

 

 

 

 狭い室内には、人が長期間入っていない部屋特有の、少しだけ淀んだ匂いが漂っている。明らかに隠し部屋だった。怪しすぎるにも程がある。

 

 

 

 マシロさんが、素早く机の本を全てチェックしてくれた。そして、その結果、わかったことがある。

 

 

 

 

 

 確かに、その本には、どうやって死を偽装するかの話が、記されていた。ニシャプール様が今回使ったのは、素体を変化させて死体の形にした、という方法だ。だから、血も素体。そういえば、血みどろになっていたソファーは、いつの間にか綺麗になっていたっけ。

 

 

 

 しかし本には、もっと多くのページを割いて記されていることが、あった。それは何か。

 

 

「ここには……素体に、意識をどうやって移すか、という研究結果が書いてありますです」

 

 

 置いてあった本には、マシロさんが驚くくらいに詳しく、素体への意識の受け渡しについての研究結果が記されていたとのことだった。

 ニシャプール様が、納得したように何度も頷く。

 

「なんだか難しそうなことが書かれてたけど、そんな中身だったのね」

「というか、逆にびっくりしますです。死の偽装の話なんて、最初の半ページくらいしかないじゃないですか。よくちゃんと読みましたね。まさか……」

「さすがマシロね。……そう、そこまでしか読めなかったのよ!」

 

 誇らしげに胸を張るニシャプール様。

 まあ、それはともかく。これを誰が残したか、という点については、俺たちの間でも、真っ二つに意見が分かれた。

 

 

 

 

 ドクターが書いたのではないか、と述べたのは、ニシャプール様とマシロさんだった。こんな難しい研究をできる人間は他にいない、というのがその理由だった。

 

 

 

 俺は、違う意見だった。以前聞いた、首領の話。前の首領は、正義の味方と決着をつけずに、病死したという。……あれは、本当だろうか。

 

 

 だって、悪の首領は、最終決戦ではついに自分が乗り出し、一時的に正義の味方を追い詰めるけれど、最終的にはなんやかんやして退治されてしまう、例外なくそんな道を辿るはずなのだ。少なくとも、病死で決着という話を、俺は聞いたことがなかった。

 

 

 

 

 

 俺は、もう1度、机の上に広げた本をぱらぱらとめくってみた。

 

 どのページにも、びっしりと書き込みが行われた記録。これだけ書くのに、どれだけ時間が掛かったのだろう。……おそらく首領は、理解していた。このままではどうあがいても、自分が負けて、死ぬのだと。だから、何か、手を打った。

 

 

 

 マシロさんの話からすると、主に、この記録の著者は、素体に意識を移す研究をしていたらしい。

 

 

「ねえ、これが使いこなせたら無敵じゃない? 負けそうになったら意識だけ遠くに移したらいいわけでしょ? 私もできるかしら? ほら、5km離れた場所に素体を置いておいて、負けたらポーンと中身だけ飛ばすの」

 

「たぶん、できませんです。最後の方の記録を見ても、遠隔での意識の移行の成功率は1%未満なのです」

 

「うーん……。さすがにそんな都合のいい話はないか」

「いえ、だからこそ、成功したんだと思います。成功確率は低ければ低いほどいいんです。正義の味方とか、悪の首領は特別にできるんですよ。そういうフラグがあるんです」

 

 

 

 ……そうだ。成功確率0.00001%、みたいなとんでもなく低い数字が提示された時ほど、絶体絶命な時ほど、成功することの方が、間違いなく、多いはずだ。

 

 

 すると、ニシャプール様は顔を真っ赤にして地団太を踏んだ。

 

「ずるい! 私だって幹部なのに! だって元首領補佐よ!? 首領とほぼ一緒でしょ!?」

「いえ、ニシャプール様はきっと……。そういう、真面目な生き残り方をしようとしても絶対失敗する役回りというか」

「何それ。ならバカバカしいほどいいの!?」

「言いづらいですが、そうなります」

 

 

 

 ともかく、俺が提言した「首領が生きてる可能性がある」ということを、ニシャプール様とマシロさんも、いちおう了解してくれた。

 

 

 

 しかし、そうすると次の疑問が浮上する。つまり、首領はどこに行き、何をしようとしているのか。

 

 

 

 

「記録を見る限り、遠隔で素体に意識を移せたとしても、しばらくはほぼ動けないみたいですね。手足に油を差したり、メンテナンスを行う必要もある、と」

「だからここにいないのね。……あれ? ここにいればよかったんじゃない?」

「ちなみに、首領がそんな感じで動けなかったとして。ニシャプール様が見つけたとしたら、どうします?」

 

 

 

 

 

 たぶん、この隠し部屋も発見できるくらいなんだから、ニシャプール様が第一発見者になる可能性は、限りなく高いと思われた。俺の質問に対し、しばらく困ったように腕組みして考えたニシャプール様は、後ろを振り向いた。

 

「うーん……。とりあえず、マシロの所に持っていくわ」

「マシロさん、首領を持ってこられてたら、どうします?」

 

「面白そうだから解剖しますです」

 

 

 

 怖っ。首領がこの場にいない理由が、さっそく解明された。にしても、マシロさん、全く迷わなかったな……。

 

 

 

「じゃあ、ここじゃないどこかにいるとして。首領はいったい、何をしようとしてるの?」

 

 

 

 ニシャプール様が俺とマシロさんを順に見たが、俺たちは、揃って首を横に振る。しかし、俺には、何となく予感があった。机の上に並べられた、10冊近くの記録。いずれにもびっしりと書き込みがなされていることからして、首領が執念深いということは、容易に想像ができた。

 

 

 

 

 

 そして、悪の首領の目的なんて――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 正義の味方を倒して世界を征服することに、決まっていた。

 

 

 

 

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