今年初投稿はまさかの廣志麻!しかも真面目マッサージ!
いつかは何かしら書きたいと思ってたので非常に満足です。というか廣井さんを書くのも初めてか。
今年ものんびり投稿を続けたいと思ってますのでよろしくお願いいたします。
廣井side
SHICKHACKのメンバーでスタ練の際中、志麻のスマホが鳴りだした。
「志麻―? 何かスマホ鳴ってるよ」
「え? 本当だ。悪いちょっと待っててくれ。……はい、もしもし。あ、この前の対バンの時の」
ああ、こないだ志麻が対バンでの別のバンドでサポートに入ったバンドメンバーからかな? あの時はイライザと一緒に志麻が盗られるって大騒ぎだったな。まぁ結局こっちの方が性に合ってるって分かって安心したけど。
「え、この前のサポートのお礼も兼ねて改めて打ち上げを? そんな気にしなくても……、はい、はい……。じゃあお言葉に甘えて。はい、ありがとうございます」
耳からスマホを離す志麻。打ち上げって聞こえたけど、……これはもしかして酒の匂い!?
「志麻ー? 何の電話?」
「ああ、こないだライブのサポートに入っただろ? こっちでのスタ練を優先して途中で抜けたからさ、改めてその時の打ち上げをしないかって」
「え、マジ! やったー!」
やっぱり打ち上げだった! しかもお礼って事は向こうの奢りだよね。タダ酒タダ酒♪
「……何ついてくる気になってんだよ。お呼ばれしたのは私だけなんだからお前は留守番だよ」
「えー、いいじゃん。一人増えるくらいさー」
「その増える一人がお前だから問題なんだよ。イライザならまだともかくお前を連れてったら絶対問題起こすだろうが。だから駄目。イライザ、こいつがついてこない様に見張りよろしくな」
「ハーイ」
「ちぇー」
「……さて、練習時間もキリがいいしここまでにしとくか」
じゃあまたな、と言ってそそくさとスタジオを後にする志麻。……なんか、ウキウキしてない?
「きくりー、私達も帰りマショー」
「……イライザ。ちょっと作戦会議」
「エ?」
それから私達は作戦会議をいつものソイゼリヤに来ていた。この前と同じ轍を踏まない様にちゃんとなけなしのお金も下ろしてきてからね。
「それで、なんの作戦会議をするんデス?」
「そんなの志麻のに決まってるじゃん!」
「志麻ノ? でももうあれは解決したヨネ?」
「でもやっぱり不安になるじゃん。あんなウキウキしてる志麻見たらさぁ」
普段私に見せる顔って基本的に飽きれ顔とか怒り顔だからやっぱり他のグループとあんな楽しそうにしてたら気になっちゃうよ。
「向こうにはさぁ、ほら、男もいたじゃん?」
「いましたネ。出られなくなったドラムの人は分からないけど女子二人と男一人で」
「でしょ!? 打ち上げだって一度してるのに態々もう一回するなんて、あの男志麻狙いなんじゃない!?」
「いやー、志麻がそういうのに引っかかるとは思えないデスヨ」
「分からないじゃん!」
そんじょそこらの男よりイケメンだけど志麻だって一人の女。男日照りのこの状況で言い寄られたらもしかしたらもしかしたらするかもしれない!
「うぅ……! 一体どうしたら……!」
「んー……。でもやっぱりそんな心配する必要ないヨ」
「何で言い切れるのさ! そもそもNTRとか言って焦らせたのイライザじゃん!」
「アハハ、あれはごめんヨ。……でも落ち着いて考えれば志麻がSHICKHACKを離れるなんて絶対あり得ないデス」
「……なんで?」
何か妙に自信があるな。
「だって志麻は……、あー……、やっぱり内緒ダヨ」
「え? なんで?」
「だって勝手に言ったら志麻に怒られマス。でも絶対に志麻はSHICKHACKを辞めないヨ」
んー、そんなこと言われてもな……。
「そんなに不安ならまた引き留め作戦すル?」
「そうしたい所だけどなぁ」
日頃の感謝を伝えてもまったく響かなかったし。お金が掛かるのは先に借金返せって怒られるし、そもそもそのお金もこのソイゼリヤで消えるし。
「物じゃ駄目。言葉でも駄目。そうなるともう手が……」
「……あ、いい方法を思いつきましタ!」
「え! なになに!?」
「物でも言葉でも駄目なら!」
「駄目なら!?」
「身体で伝えるしかないデス!」
「……え?」
「そうと決まれば私の家に行くヨ! 善は急げデス!」
「ちょ、ちょっと待ってイライザ!」
お会計を済ませてイライザに引っ張られていく。
ちょちょちょ! 身体!? 志麻は多分そういう趣味無いし! そもそも私の不健康なガリガリな身体じゃそういう趣味の人間でも興奮しないと思うんだけど!? いるとしたら中々の変態なんだけど!
そしてイライザの家に連れ込まれる私。いや、何でそもそもイライザの家に!?
「勿論私のテクニックをきくりに叩きこむ為デス! 今日は寝かせませんヨ!」
「ええ!?」
まさかの私の初体験はイライザ!? ていうかイライザってそんなに、その、そういうこと得意なの!?
「勿論です! 実家で良くダディにしてマシタ!」
「爛れ過ぎだよ!」
「問答無用デス! さぁ、私の手技で快楽の海に堕としてあげマス!」
ちょ! ちょ、ちょ! まだ私そういうことしたことないし、色々心の準備ってものが! あ、ちょ! スカジャン脱がさないで! わ、わ! ベッドに寝かされ……! あ、ん……! そ、そんなとこ! だ、駄目ええええええ!!
志麻side
時刻は20時。インターホンが鳴ったので、嫌な予感がしながら出るとそこには案の定廣井がいた。
「なに? こんな時間に」
「いやー、またご飯頂けないなー、って思って」
はぁ、またか……。急に来るなって言ってんのに。
「……仕方ないな。打ち上げも言った通りついてこなかったし、晩飯くらい食わしてやるよ。私も今から食べるとこだったし」
「やった! 流石志麻! 良いお嫁さんになれるよ!」
「うるさい。夜なんだから静かにしろ、近所迷惑になるだろうが。さっさと上がれ」
「はーい」
パタパタと家に上がっていく廣井。はぁ、本当に野良猫みたいな奴。全く可愛くないけど。
「ねぇねぇ志麻。ご飯食べる前にさ、私のマッサージ受けない?」
「はぁ? なんだよ急に」
「いやぁ、普段から志麻にはお世話になってるしさ。お礼にマッサージしてあげたいなぁって。疲れてるでしょ?」
「そりゃ疲れてるよ」
主に年中酔っ払ってるアル中のせいでな。
「イライザにも免許皆伝もらってるし、どう?」
「いらん」
「即答!?」
そんなことされたら見返りに何を頼まれるか分かったもんじゃない。考えるだけで恐ろしい。
「本当に気持ちいいからさぁ! ね! ね! 悪い様にはしないからぁ!」
「あーもうしつこいな!!」
腰に抱き着いて離れない廣井。なんで今日はこんなにしつこいんだ!? ……って、なんだ? ロインの着信音?
しがみついてくる廣井を抑えながらロイン画面を見る。イライザから? ……ん? これって……。……あぁ、なるほど。
「……はぁ、お前って本当にバカで陰キャなんだな」
「え!? 急になんの罵倒!?」
「分かったよ」
「え?」
「受けてやるよ、お前のマッサージ」
「本当!?」
「でもマッサージした代わりに、っとか言い出したら飯抜きで叩き出すからな」
「言わない言わない! 志麻サンキュ!」
ったく。……ま、少しは可愛げがあるか。
「で、何なんだそのナース服は」
「え? これ?」
私をベッドに寝かせるとすぐさまナース服に着替えた廣井。しかも私の目の前で。少しは恥じらいを持て。後ちゃんと飯食えアバラ浮きすぎなんだよ。
「イライザが何事も形からってコスプレ衣装貸してくれたんだ。どうせ見られるの志麻だけだし」
「いやナースはマッサージなんてしないだろ」
「まぁ施術着なんてコスプレ衣装流石に無かったからさ。衣装の中で一番それっぽいからってだけだから」
「……まぁ、なんでもいいけど」
「さぁさぁ、そんなことより早速マッサージしてくよ。まずは慣らしからね」
「慣らし?」
「うん。いきなり強く揉んだりすると逆効果だからね。まずは擦ったりして軽くほぐしていくんだ。準備運動みたいなもんかな」
「ふぅん?」
そう言って私の背中を手の平でグッ、グッ、と軽く押したかと思うと、肩から背中、ふくらはぎまで擦っていく廣井。
――シュー、シューー
――グッグッ
ああ……、なんか、これだけでも癒されるな。
「志麻思ったよりガチガチだねぇ」
「ん、そうか……」
思えばマッサージ自体久しぶりだもんな。SHICKHACKも軌道に乗って嬉しくもあるが忙しいし、廣井のやらかしの尻ぬぐいで多方面に謝罪行脚したりしてるし。
「じゃ、本格的に解してくよ。触ってほしくない場所とかあんの?」
「いや特にないよ。好きにやってくれ」
「へーい。んじゃ力抜いててね。まずは定番の肩から、と」
ギュッ、と私の肩に廣井の細い親指が沈み込む。沈めたまま廣井が指を円を描くように動かすとゴリゴリとした音が頭に響く。
「うはー、志麻めっちゃ凝ってんじゃん。キツくなかったの?」
「これが当たり前過ぎてあんま気にしてなかったな」
――ギュッ、ギュッ
――グリグリ
……っ……、ああ、肩の凝りが解れてく……。今まで気にしてなかったけど石を削られる様にゴリゴリと解されて血が巡り始めると違いがハッキリ分かる。
「気持ちいい?」
「ああ……、良い……」
「へへー、じゃあ肩からどんどん解してくからね。次は……」
肩甲骨のとこ。と言って廣井が背骨と肩甲骨の間をゴリゴリと解し始める。
はぁ……、そこも良い……。
「志麻全然肩甲骨無いじゃん」
「はぁ? 肩甲骨が無いわけ無いだろ」
「そうじゃなくてさ、肩甲骨が埋没しちゃってるんだよ。全然出っ張りがないもん」
「そうなのか?」
「うん、ちょっとここ重点的にやろうかな。んしょ」
「ん、おっ……」
廣井の指が肩甲骨の縁に沿って丁寧にコリコリと解していく。気持ち良さの中に少しのくすぐったさが同居してそれもまた心地良い。
――クリクリ
――コリコリ
「こうやって肩甲骨全体を緩めて引っ張りだせるようにするかんね」
「……引っ張りだす?」
「うん。まぁ後で分かるよ」
そう言って少しずつ私の肩甲骨の縁に沿って全体的に緩めていく廣井。
そして廣井の指が肩甲骨の真ん中に添えられて
「この辺少し痛いかもだけど我慢してね」
「んあ?」
グリッと親指を押し込んだ。すると。
「〜〜〜〜〜!? ちょっ! 廣井そこ痛い!」
ビリビリとした痛みが肩甲骨の真ん中から響いていく。いや、これヤバい!
「ここは天宗って言ってね。肩とか凝ってるとすっごく効くんだー。志麻の凝り具合からして多分効くだろうと思ったけどやっぱ効果テキメンだったね」
あははー。と能天気に笑う廣井。何笑ってんだぶっ殺すぞ!
「ほらほら力抜いてってば。言っとくけど私全然力入れてないかんね?」
「はぁ!? こんなに痛いのにか!?」
「そうだよー。どんくらいかって言うとー」
廣井が私の手を取る。……こいつマジで手が細いな。骨と皮じゃん。
そして私の手の平に指を食い込ませると、軽く手の平をペコッとヘコませるくらいの力だった。
「マジかよ……」
「ね? こんなんであんだけ効いてるんだよ。その分本当に楽になるからもうちょい我慢してよ」
「……わかったよ。頼む」
「あーい」
廣井がまたさっきの天宗? っていうツボに指を添え、先程の痛みがまた来ると思って可能な限り力を抜いて身構えるが、一度軽く解されたからかさっきの思いっきり電流を流された様な痛みではなく、痛みは勿論まだあるんだけどその中に気持ち良さもあり、痺れるような痛気持ちよさが廣井の指先から広がっていく。
「つっ……、はぁ……」
「まだ痛い?」
「いや、良い……。効く……。そこ続けてくれ……」
「あいよー」
――キュッ、クリ、クリ
や、ばい。廣井が軽くクリクリと親指を軽く押しながら回してツボを刺激する度にビリビリというかジンジンというか、肩甲骨から全身に響くこの心地よさが癖になりそうだ。
そして解し終えたのか廣井が手の平で肩甲骨全体を動かすように撫でまわす。
「うん、動く動く。じゃあ肩甲骨の仕上げするよ。まずは右側を向いてもらっていい?」
「? こうか?」
何をするか知らないが廣井に言われた通りに一度体を起こして右を向いて横向けに寝そべる。
すると廣井が、じゃあ力抜いててねー。と言いながら私の右肩を軽く引っ張りながら、
私の肩甲骨に指を入れていった。
「え、ちょ!? 何してんだ!?」
「良いから良いから。力抜いて」
「う……」
力を抜いて廣井の指がどんどん肩甲骨に入ってくるのを感じる。
う、わ。何というか、新感覚だ。ベリベリ、とでも言えば良いのか。肩甲骨が筋肉から剝がされてる様な、でも痛みとか無くて妙な解放感を感じる。
「ぅぐお……」
「気持ちいいっしょ? 肩甲骨剥がしっていうんだー。肩甲骨と筋肉の癒着を剥がすストレッチなんだよ」
「そ、う、なのか……。あぁ……」
廣井に完全に身体を任せると肩甲骨に指を入れたまま掴んで身体が浮く程度に持ち上げられ、身体をユルユルと揺さぶられる。これ、本当、涎が垂れそうな程気持ちいい。
「はい、右肩終わり。次左ね」
「ん……」
左側を向く。すぐにやってもらいたくて少し動きが早かったか、廣井のケラケラと笑う声がするがそんなのどうでもいい。早くやってもらいたくて仕方なかった。
そして同じように廣井が脱力させた私の左の肩甲骨に指を入れて持ち上げる。あぁ、毎日やって欲しいくらいだ。
「ん、よし。これで肩甲骨はOKかな? どう志麻?」
「ん? あぁ……」
身体を起こして肩をぐるぐる回してみる。……すげえ軽い。
「めっちゃ良いよ。何か引っ掛かりが無いって感じだ」
「よっしゃ、効果抜群だね。じゃあこのまま続けっからまたうつ伏せになって」
「あいよ」
すっかり廣井のマッサージに骨抜きにされた私は始める前と違って素直にうつ伏せになってしまう。
「ここ、志麻なら効くかもね」
そう言って廣井が背骨を挟んで背中に親指を食い込ませる。
「ぐっ……」
「上から肝兪」
少し下に下がって。
「ここが脾兪」
「うっ……」
そして更に下に下がって。
「そんでここが」
「う、っ、くっ……! そこ効く……っ……!」
「やっぱねー。ここは胃兪って言って胃に効くツボなんだ。普段ストレス貯めてる志麻なら効くっしょ」
誰のせいだと思ってんだ。なんていつもすぐ出る悪態も出ない程私は廣井の指圧に身を任せてしまっていた。
――グッグッ
――ギュッ、ギュッ
「……っ……、はぁぁ……」
思わず熱い吐息が漏れてしまう。気持ち良すぎる……。
そのまま廣井の指圧に完全に夢心地になり、廣井もマッサージに本格的に熱が入ったのか黙々と私の身体を解していく。次第に私の意識はその心地よさに身を任せ、眠りに落ちていった。
「……ま……、しーま」
「……んあ……?」
「ほら起きて起きて、終わったよ」
「ん、ああ、そうか……。寝てたか……、悪い……」
いつの間にかあんまりにも気持ちいいから寝ちまってた。折角廣井がマッサージしてくれてたのに悪い事しちゃったな。
「良いって良いって。そんだけ気に入ってくれたんでしょ?」
「まぁ、な」
「へへー。で、どう? 身体の調子は?」
「……良いよ。身体が軽い」
身体を起こしただけですぐに分かる程身体が軽い。寝起きで少しダルいがそれを差っ引いても普段より余程スッキリ動く。
「いやー良かった良かった。これで」
「私がSHICKHACKを辞めることはないだろう、ってか?」
「そうそう。……え!?」
な、なんで。と廣井が口をパクパクさせる。
「お前にマッサージしてもらう前にイライザからメッセージが来たんだよ。お前が私を引き止めるために頑張ってマッサージ覚えたから受けてあげてくれってな」
「あ、あー、そう、なんだ」
あははー、恥ずー。と笑って誤魔化そうとする廣井。
「ったく。私がSHICKHACKを辞めるなんてある訳ないだろうが」
「そりゃ、そうだけどさぁ。でもなんか志麻楽しそうだったし。それに向こうにはほら、男もいたから……」
「はぁ? 何で男がいるからって向こうが良いなんて考えになるんだよ」
「だ、だってウチら女所帯で男日照りだし。私みたいな女捨ててるのはともかくとして志麻はいい女だし、限られた出会いは大事にしたいかなって……。それに私みたいなのの面倒見てるせいで辞めたいって思ってるかもだし……」
……こいつ酒抜けてきてるな。どんどん声が小さくなってる。多分マッサージ頑張ってくれたから汗かいてアルコールが一緒に抜けたんだろうな。
でも話聞いててイライラしてきた。こいつ本当……! とりあえずゲンコツ!!
「あいたぁ!! なんで殴んのさ!」
「お前がバカな事ばっかり言ってるからだろクソ陰キャ」
ひでー! と文句を言ってくる廣井。
しかし馬鹿だとは思ってたがここまでとは思わなかった。私が男に靡いて活動に支障をきたすなんて思われたことも心外だが、廣井の起こす厄介事の尻拭いは確かにウンザリしてるけどそれでSHICKHACKが嫌になるんならとっくに辞めてるっての!
「……じゃあ何で志麻は私に迷惑掛けられてもSHICKHACK辞めないでくれんの?」
「それは……!」
理由を勢いのまま言いそうになって口を噤む。廣井が不思議そうに私を見るが流石に理由を言うのは……。
だが悪い方向に考えたのか廣井の表情が暗くなる。……ああもう!!
「廣井、どうせお前おにころ持ってんだろ。一個寄越せ」
「え? 持ってるけどなんで?」
「良いから」
「う、うん」
廣井が投げ捨てていたスカジャンの中から取り出したおにころをひったくって一気に胃に流し込む。
「うっ……」
酷い味だ。それにマッサージで血行の良くなった身体に安酒の質の悪いアルコールが一気に巡って頭がクラクラする。
でもこれで良い。今から言うことをシラフで言うのは流石にキツイから。
「……おい、今から言う事はこれから先シラフでも、酔ってても、これ一回切りしか言わないからそのアルコールに侵されまくってる脳味噌によく叩き込めよ」
「わ、わかった」
「いいか? 私がお前にどれだけ迷惑掛けられても、どれだけやりやすい環境のバンドのサポートに入ってもSHICKHACKを絶対辞めないのはな」
「私がもうお前の作る曲に心底惚れて、脳を焼かれ過ぎてるからなんだよ」
「そ、そうなの?」
「そうだよ」
でなけりゃとっくに辞めてるわ。
こいつの作る曲が好きで、好きで好きで堪らなくて、私以外の誰にも叩かせたくなくて、だからこいつが未確認ライオットで泥酔しても、ライブで暴れ回っても、その尻拭いに奔走しても、私は廣井から離れられないんだ。
そしてイライザの自由なギターが、廣井の腹の底に響くベースが、堪らなく好きなんだ。だから私はこいつの後ろでドラムをずっと叩き続けたいんだよ。
「だから私はお前が音楽を辞めない限りずっとSHICKHACKでお前を支え続ける。SHICKHACKが続く限り私はずっと独身だ。恋愛なんてしてる暇なんかありはしないんだからな」
「……ふ、ふへへ」
「なんだよ、気持ち悪い笑い方して」
「だってさ、それ、一生結婚出来ないよ? 私、一生音楽辞める気無いし。例えメジャーデビュー出来なくてこの借金だらけの生活が続くとしても、私は音楽を辞めない。いいの?」
「……上等だよ。お前にその覚悟あるっていうなら、一生お前と添い遂げてやるよ」
だからもう、私が辞めるとかいらない心配してる暇があるなら曲の一つでも作れっての。馬鹿が。
「はぁ……、お前が変に早とちりしたせいでいらん事言うハメになったわ」
「まぁまぁ良いじゃん。マッサージも気持ち良かったでしょ?」
「まぁな。……一応言っとくとけど、支えるとは言ったけど迷惑を掛けて良いって訳じゃないからな。少しは反省してるなら酒減らせよ」
「あー……。善処しまーす」
……無理そうだな。
「まぁいいや。……じゃあ飯温め直すから、その間にお前も着替えとけよ。コスプレ衣装汚したらイライザもキレるぞ」
「そだねー」
そう言ってポイポイとコスプレ衣装を脱ぐ廣井。……だから少しは恥じらいを持てって。
色気のない廣井の着替えを見るつもりもないのでキッチンに向かう。その後ろから廣井が声を掛けてきた。
「しーま!」
「なんだよ?」
「これからも末永くよろしく!」
「……あいよ」