PokéDun LEGENDS 時忘れの迷宮 作:ゲーマーN
1F 砂漠の塔(前編)
砂漠を進む、一本の土埃。青いバイクに跨り、風に煽られるウエスタンハットを片手で抑える青年――彼の名はハルト。世界各地を渡り歩くポケモントレーナー兼トレジャーハンターだ。
『砂漠の塔を目指せ。お前の探すものは、必ずそこで見つかることであろう⋯⋯』
それが、突然消息を絶った祖父の手記に遺された言葉だった。完成目前だったという、飛空艇の謎。祖父の行方。手がかりは全て、砂漠の塔で消えている。祖父の追いかけた夢、父親の追いかけた夢、そして自らの夢を追いかけるため、ハルトはトレジャーハンターの道を歩んできた。
目的地である塔が視界に見え始め、ハンドルを握る手に力が籠もる。長年探し求めてきた祖父の足跡をもうすぐ捕まえられる。そう思うだけで胸が高鳴り、高揚感に満ち溢れていく。
「⋯⋯あれが、砂漠の塔」
塔の足元に横付けし、静かに空を見上げる。槍の穂先のように天を穿つ尖塔は、想像していたよりもずっと小さく、ここが本当に自分たちが探していた場所なのかと疑わしくなるほどだった。
乾燥した空気と埃っぽい熱風に顔をしかめながらバイクを降りると、そのバイクが、先端を前後に伸ばす形で折り畳んでいた四本の脚を地面に下ろす。
「アギャス!」
紫色の体。目の後ろから角が左右に二本ずつ生えており、上の角は長く、下は短く、根本が瞼に繋がってV字になっている。目は黒い液晶のようで、虹彩はドットで描かれている。首を上げるその姿は、もはやバイクではない。ポケモン――ミライドンが、その機械竜の本当の名前だった。
「ありがとう、イプシロン」
鼻先を撫でると、イプシロンと呼ばれたミライドンは嬉しそうに鳴き声を上げ、尻尾を振る。まるで大型犬のような仕草にハルトは頬を緩ませたが、すぐに表情を引き締め、塔の入口へと歩みを進める。
「ここに『大いなる力』が⋯⋯いかにも厄ネタっぽいけど、いったい何が待っているのかな」
「ギャオス……」
――砂漠の塔 1F*1
塔の内部は、外の暑さと打って変わって涼しい空間が広がっていた。もちろん、涼しいと言っても外と比べればの話であって、じっとりと汗ばむくらいの暑さであることに変わりはない。
床や壁は風化して脆く、今にも崩れそうな箇所が目につく一方で、壁の隙間から射し込む光が空間を照らしており、足元や周囲の様子をはっきりと見て取れた。これなら灯りを確保する必要はなさそうだ。
「さあ、行こうか」
「アギャス!」
一歩足を踏み出すたび、砂混じりの埃が舞い上がる。床は長い年月を経て擦り減り、あちこちに亀裂が走っていた。視界が開け、正方形の部屋に辿り着いたところで、ハルトは足を止める。
「ここ⋯⋯不思議のダンジョンみたいだね」
通路と部屋の組み合わせによって構造が無限に変化する不思議のダンジョン。今のところ気配はないが、間違いなく野生のポケモンたちが生息しているだろう。一瞬の油断が命取りになる。注意して進まなければ、と気を引き締めるハルトの耳に飛び込んできたのは――
「ギャオ⋯⋯」
「⋯⋯イプシロン? もしかして、お腹空いた?」
イプシロンのお腹が盛大に鳴る音だった。思わず苦笑しながら、ひとまず腰を下ろせる場所を探そうと視線を巡らせたところ、部屋の片隅にひとつ、リンゴが落ちているのが目に入った。
「あっ、リンゴだ! イプシロンの大好物だったよね? よかったら食べていいよ」
「アギャアス!」
拾ったリンゴをぽいっと放り投げると、イプシロンは大口を開けて器用にそれを受け止め、そのままがぶりと噛みついた。すぐには飲み込まず、何度も噛み締めているあたり、彼女なりに味わっているのだろう。
ハルト自身も水筒を取り出し、乾いた喉を潤しながら一息つく。お腹が減りすぎると、人もポケモンもHPが減っていく。ダンジョン探索に於いて、気を付けないといけないポイントだ。
「よし、それじゃお腹も膨れたことだし、そろそろ探索の続きに戻ろうか」
「アギャス!」
返事を確認したハルトは、塔の奥を目指して再び歩き始めた。静寂の中に響くのは、一人と一匹の足音だけだ。先ほどのリンゴのように多様なアイテムが落ちているのも、不思議のダンジョンの特徴の一つ。まだ見かけてはいないが、野生のポケモンと、それからもうひとつ――
「⋯⋯ワナだ」
ワナ。いやしのワナのようにHPを回復する有益なものから、命に関わるほどのダメージを与える爆破のワナまで効果はピンキリだが、基本的には侵入者に害を成すタイプのものが多い。
これらの発見と解除も、不思議のダンジョンを攻略するために必要な技術であり、まさに今、目の前の床には大量のワナが敷き詰められていた。
「うーん……お宝はワナに守られているのが相場だけど、これはちょっと露骨すぎるね。木を隠すなら森の中って言うし、本命が分からないように紛れ込ませている感じかな」
「アギャ⋯⋯」
「なら、ここから炙り出そうか。イプシロン、”エレキフィールド”でワナを暴発させるんだ!」
「ギャオオオオ!!」
イプシロンが床に尻尾を振り下ろすと、足元に青紫の電流が駆け巡る。電流は床に埋め込まれたワナを次々に起動させ、それは何もなかったはずの――否、あからさまなワナ群へと巧妙に隠されていた爆破のワナにも及んだ。
――ドカアアアァァン!
大爆発。その衝撃は床一面を薙ぎ払い、周囲に仕掛けられていたワナもまとめて消し飛ばす。おかげで拓けたワナの間を縫うように、ハルトたちはダンジョンの更に奥へ奥へと進んでいく。
「おっと、階段だね」
ハルトの言う階段とは次の階層へと進むための通路の総称を指す。それは必ずしも文字通りの階段とは限らず、裂け目や吊り橋、或いは崖下・崖上へと続く自然の坂道などというのも珍しくはない。⋯⋯もっとも、この砂漠の塔の階段は、正真正銘の上り階段だったが。
閑話休題。取り損ねたアイテムも、探索していない部屋もこの階層にはないはずだ。何処かの誰かに先を越されないためにも、さっさと上に進むべきだろう。
――砂漠の塔 2F
「サンド!!」
「ワァル!!」
「サンドパンにワルビル……砂漠の塔だけあって、じめんタイプのポケモンばっかりだね」
階層を上り、最初の部屋に踏み込んで早々。待ち構えていた二匹のポケモンを見たハルトは、冷静に状況を分析しつつ、ベルトのホルダーに手を掛けた。でんきタイプの技を主力とするイプシロンにとって、じめんタイプのポケモンは相性最悪だ。どうにかできないわけでもないが、ここは素直に別の仲間を繰り出すのが、彼女たちのトレーナーとして取るべき行動だろう。
「頼んだよ、アカリ!」
『はいっ! 任せてください!』
イヌ科の獣人を思わせる姿をしたポケモン――はどうポケモンのルカリオ。人語を理解するほどの高い知能を備えており、他の生き物が発する波導を感じ取ることで、その種類や考え、動きまでも鮮明に察知できる。波導とは万物が持つ固有の振動であり、これを同調させ、人間との自然な意思疎通を可能とするほどに、アカリの波導使いとしての技量は熟達していた。
彼女曰く、悪意のある波導は赤く見えるという。対峙する二匹のポケモンから敵意の赤色を感じ取ったアカリは、体の奥底から練り上げた波導の力を掌中に集め――
『ッ、行きます!』
――次の瞬間には、アカリの掌がサンドパンの胸部を正面から打ち抜いていた。残像さえ捉えられないほどの速さで掌打を叩き込まれたサンドパンは、自分の身に何が起きたのかも分からないまま意識を失う。おそらく、ほんの僅かな痛みを感じる間もなかっただろう。
間髪入れずに水色の光球を撃ち放つと、未だ反応できていないワルビルの側頭部へと炸裂――ビシャーン! 苦手とする水が勢いよく降り注ぐ。
『ふぅっ⋯⋯』
アカリは深く息を吐き出し、構えていた両腕をゆっくりと下ろした。張り詰めていた波導が霧散し、空間に残っていた緊張だけが遅れてほどけていく。
サンドパンたちが一撃で瀕死に陥った要因は、決してLv差だけではない。”みずのはどう”を織り交ぜた”はどうだん”は、じめんタイプに効果抜群のみずタイプの性質を得ていた。こうして各タイプの波導を操り、的確に弱点を突くのがアカリの戦闘スタイルなのだ。
「ありがとう、アカリ。せっかくだし、ここからは三人で探索を進めていこう」
『了解です!』
「アギャッス!」
鍛えられたルカリオの感知範囲は1km先にまで及ぶとされる。階層全体の状況を把握するくらいは造作もない。実際、第一階層のように強引な突破が必要不可欠なワナが仕掛けられている場合は別として、アカリは危険を未然に回避したり、野生のポケモンを迂回したりと、まさに
登場人物紹介
名前 :ハルト
元ネタ :【PokéDun LEGENDS】シリーズより『ハルト』
手持ち
・イプシロン (ミライドン)
・アカリ (ルカリオ)
・???
・???
・???
・???
名前 :イプシロン
性別 :メス
種族 :ミライドン Lv70
タイプ:でんき/ドラゴン
特性 :ハドロンエンジン/クォークチャージ
元ネタ:【Fate/Grand Order】より『イプシロン(テュフォン・エフェメロス)』
名前 :アカリ
性別 :メス
種族 :ルカリオ Lv70
タイプ:かくとう/はがね
特性 :ふくつのこころ/せいぎのこころ
元ネタ:【超昂大戦 エスカレーション・ヒロインズ】より『園崎アカリ』
オリジナル技・特性:
【みずのはどうだん】
使用者:アカリ(ルカリオ)
タイプ:かくとう/みず
分類 :特殊/連結
威力 :90
命中率:――
合成元:はどうだん/みずのはどう
効果 :『かくとう』『みず』の中からタイプ相性が一番良いタイプでダメージ計算する。
必ず命中する。追加効果として、20%の確率で相手をこんらん状態にする。
元ネタ:【NARUTO】より『風遁・螺旋丸』