PokéDun LEGENDS 時忘れの迷宮   作:ゲーマーN

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2F 砂漠の塔(後編)

 ――砂漠の塔 3F*1

 

 そして、第三階層。反対側の壁には、あまりにも分かりやすく階段が据えられていた。視界を遮るもののない広場にひとつだけ、この先へと進むものを阻むかのように大きな影が佇んでいる。

 

「ネンドール⋯⋯それも、あの大きさは……」

 

『⋯⋯オヤブンネンドール、ですね』

 

 ネンドール――どぐうポケモン。その起源は2万年前にまで遡り、当時栄えていた古代文明で作られていた泥人形が、謎の怪光線を浴びて生命を得たポケモンだと言われている。

 見るからに通常個体と比べて一回りも二回りも大きく、頭の全方位に付いた8個の赤い目が禍々しく輝いている。オヤブン個体――もしかしたら、古代の人々が守護者として作り出した特別なネンドールなのかもしれない。

 

オヤブンネンドール Lv.70

                                            

 

「――ネンドォォォル……」

 

 低く、鈍い起動音にも似た鳴き声が室内に反響する。オヤブンネンドールは壺のような形状の腕を体から切り離し、念力で宙に浮かべた。代わりに本体の側を軽く沈ませ、こちらを迎え撃つ体勢へと移行する。

 

”野性の力”

 

 ――オヤブンの ネンドールは 野性の力に 満ちあふれている!

 

 ポケモンたちの中でも、一際屈強で凶暴な個体であるオヤブンポケモン。彼らの最大の武器が、専用の状態変化”野性の力”だ。状態異常や状態変化によるダメージを半減するうえ、HP以外の全ステータスを1.5倍に引き上げるという極悪ぶり。野生のオヤブンは常にこの恩恵を受けているため、同Lv帯はもちろん、多少のLv差があっても対策なしでは戦いの土俵にすら立てない。

 ――とはいえ、だ。もう何年も危険な遺跡や秘境を旅してきたハルトにとって、オヤブンとの対峙など慣れたもの。泰然自若、普段と変わらない調子でオヤブンネンドールと向かい合う。

 

「ネンッ!!」

 

”サイコキネシス”

 

 威力・命中・PP。全てに於いて安定しており、多くのエスパータイプがメインウェポンとする特殊攻撃技。先んずれば人を制す。有り余るサイコパワーによって必殺の域まで高めたそれを、オヤブンネンドールは問答無用で放ってくる。

 当然か。オヤブンネンドールからすればハルトたちは単なる侵入者、手心を加える理由も必要もない。全力で排除する――それ以外の判断(コマンド)を挟む余地が一体何処にあるというのか。

 

「”エレキフィールド”!!」

 

アギャオオオオォォォォ――――――!!

 

”エレキフィールド”

 

”ハドロンエンジン”

 

 ――竜炉点火:未来竜

 ――イプシロンは 未来の機関を 躍動させる!!

 

 青紫の電流が床面を覆うだけでなく、周囲にも充満していく。炉心たる”ハドロンエンジン”が生成する莫大な電力が駆け巡り、エレキフィールド――でんきタイプの技の威力を数割増しにするだけの領域を、直接攻撃以外のあらゆる敵対的干渉を灼き尽くす攻性結界へと昇華させる。

 

”クォークチャージ”

 

 ――竜炉展開:ミライドン

 ――イプシロンは クォークチャージを 発動した!

 

 リングやアンテナ、尻尾の先端などが光り輝き、全身から迸る電流はより激しく、より強く。最も高い能力を強化する”クォークチャージ”が、イプシロンの特攻を最大限まで引き上げる。

 じめんタイプのオヤブンネンドール自体には影響ないが、エスパータイプの技である”サイコキネシス”は青い雷に掻き消される。大地を灰に変えたと古い伝承に語られるミライドンの雷は伊達ではないのだ。

 

『たああああああ!』

 

”あくのはどう”

 

”はどうだん”

 

 ”あくのはどうだん”*2

 

 その一方で、アカリは赤・紫・黒の入り混じる悪意に満ちた闇の波導を身に纏う。普段は”だいちのはどう”――イプシロンにより2倍3倍にも増幅された雷の波導を扱うのが定石だが、如何せん今回は相性が悪い。

 

「ネンッ!?」

 

 かといって、水の波導で攻撃するというのも得策とは言い難い。凝縮された泥で肉体が構成されているネンドールは、濡れると溶けてしまうため、雨の日にはサイコパワーの防御膜で全身を守るのだが――この念動力の鎧が非常に堅牢で、生半可な水攻撃は弾き返してしまう。

 そこで、”あくのはどう”だ。自らの身体に赤黒い波導を染み込ませ、擬似的なあくタイプと化したアカリの拳は、サイコパワーの攻撃も防御も無視してオヤブンネンドールを殴り飛ばす。

 

「ッ、ドォル……ッ!!」

 

『⋯⋯⋯⋯っ⋯⋯!』

 

 だが、オヤブンネンドールもただでは転ばない。片腕の先端をアカリに押し付け、ゼロ距離からの”じしん”。弱点タイプ、しかも本来は広範囲を揺るがす地震の衝撃を一点に収束させたそれは、波導の守りを破るに足るものだった。

 耐え切れず、吹き飛ばされたアカリに止めを刺そうと、オヤブンネンドールはもう片方の腕を向ける。真ん丸とした、人間で言う上腕の部分にエネルギーを充填させ――

 

”はかいこうせん”

 

 ――閃光。破壊の奔流が放たれる。射出口より数ミリ太いだけ。大技の筆頭。”はかいこうせん”にしてはあまりにも細く、頼りなくさえ見える。けれど――その細さこそが、無駄な拡散を一切許さず、破壊力を極限まで凝縮した証だった。

 

「――戻って!」

 

 胸の中心を貫く、その刹那。アカリの姿は青い光に包まれ、必殺の一撃は空を切る。強い力には代償が伴う。技の反動と、突然標的が消失した困惑から硬直したオヤブンネンドールへと、目を赤く光らせ、これまた赤いオーラを纏ったイプシロンが激しい怒りのままに――

 

「今よ、ヴォルグ!!」

 

グォオオオオオオオォォォォォ――――――!!

 

”アクセルブレイク”

 

 ――勝負をしかけられた!

 ――ハルトたちと ネンドールは 不意をつかれて 動けない!

 

 紅蓮の円環が、オヤブンネンドールの後方からイプシロンを轢き潰す。逃げ場を失い、間に挟み込まれたネンドールの背中が回転する炎輪に削り取られ、その圧力はイプシロンにも及ぶ。後ろ脚で踏み止まりながら耐えるものの、完全には抗いきれずじりじりと押し込まれる。

 

「グオォ! グオオオオ!!」

 

 荒々しい雄叫びを上げて正体を現したのは、スカーレットカラーが映える、逞しい竜人のような姿をしたポケモン――コライドン。自らの力を誇示するかのように、全身の羽を開き、翼の王は威風堂々と立ちはだかる。

 

「ヴォルグ!? ということは、まさか⋯⋯!?」

 

「うふふふふ。御名答。お久しぶりね。伝説のトレジャーハンターさんたち!」

 

「っ、イルマ!!」

 

 傍らにヨノワールを従えた、赤髪のツインテール⋯⋯でいいのだろうか。下に二本、上に一本と髪を束ねた、喩えるなら、そう、蟹のような髪型の女が嘲笑を浮かべる。彼女の名はイルマ。ハルトたちの商売敵であるトレジャーハンターだ。

 露出が多く、豊満なボディラインが強調された衣装を着ており、見ているこちらが目のやり場に困るほど扇情的だが、それこそが罠。男を惑わせ、隙を突くための武器だった。

 

「あなたがさっき、嬉しそうに話していた『大いなる力』⋯⋯あたしが頂いておくわ」

 

「待て!」

 

「ディアボロス……“ふぶき”よ」

 

「ヨノワール!!」

 

 腹部にある巨大な口のような空洞から冥界の冷気を放出するヨノワール。白く霞んだ空気が視界を奪うが、イプシロンの領域(エレキフィールド)にまで及ぶものではない。⋯⋯イルマも、そんなことは百も承知のはず。となれば、彼女の狙いは――

 

「――イプシロン!!」

 

「アギャオッ!!」

 

「ガァーブッ!!」

 

””げきりん””

 

 竜虎相搏――氷雪の壁を突き破り、雷の大地を駆ける第三の竜。体を折り畳み、翼を伸ばした鮫にも似たその竜は、音の速さでイプシロンの懐へと潜り込み、下から右の翼で突き上げる。

 対するイプシロンもまた、半歩分ほど後ろに退いて間合いを作ると、右前脚を振り下ろした。ドラゴンポケモンの代名詞たる”げきりん”が鍔迫り合う。鋭い火花と衝撃が散り、低く唸るような轟音が階層全体を貫いた。

 

「ヒナコ! ”はめつのひかり”!!」

 

「キュルルッ!!」

 

 この世のものとは思えないほどに甘く危うい美を備えた花が咲き誇る。妖精の少女。古ぼけた木製のモンスターボールから飛び出したフラエッテが、あたかも銃の砲口を向けるかのように、花柱を敵の竜――ガブリアスへと即座にかざす。

 

”はめつのひかり”

 

 白と紫で彩られた五枚の花弁。その中心に抱かれた光球が脈打つように膨らみ、輝度を増し、限界を超えた瞬間、質量すら感じさせる光の柱となってガブリアスの矮躯を呑み込んだ。

 

「⋯⋯っ、やっぱり!」

 

 氾濫する雷も、凍てつく嵐も掻き消した閃光が途切れたとき、そこには空白だけが残り、在るはずのイルマたちの姿は何処にもなかった。気が付けば、”はめつのひかり”の直撃を貰ったはずのガブリアスも消えている。ヨノワールはこの世とあの世を行き来するポケモン。霊界経由――”ゴーストダイブ”で回収したのだろう。

 時間稼ぎ――実にイルマらしい狡猾な作戦だと歯噛みしつつ、フラエッテのヒナコをモンスターボールに戻したハルトは、イプシロンと共に急いで後を追おうとして――

 

「ネェェ……ン……」

 

 弱々しい、今にも消え入りそうな呻き声に足を止めた。その主は、イプシロンのすぐそばで倒れているオヤブンネンドール。”アクセルブレイク”はかくとうタイプの攻撃技、タイプ相性の上では効果はいまひとつだが、コライドンは拳で大地を引き裂いたとも云われるポケモンだ。半減してなお、立つこともままならないほどのダメージをオヤブンネンドールに与えていた。

 

「⋯⋯」

 

 一人のポケモントレーナーとして見過ごすわけにはいかない。自らの役目を果たそうと必死に藻掻くオヤブンネンドールに歩み寄ったハルトは、鞄の中に忍ばせていた虎の子の”かいふくのくすり”を、傷の深い部分へと振りかける。

 当然、何をするつもりだと警戒するオヤブンネンドールだったが、直後訪れた痛みが引いていく感覚に目を大きく見開いた。

 

「大丈夫。すぐに良くなるからね」

 

「ネ、ン⋯⋯?」

 

 即座に完治とまではいかないものの、砕けた泥の表面に走っていた細かな亀裂が次第に塞がっていく。軋むようだった動きも落ち着きを取り戻し、倒れていた巨体は時間をかけて、確かに起き上がる兆しを見せた。

 疑問。この人間は何故、敵対している当機を助けようとする? 瀕死の当機を放置して、上層へ進むのが最善の判断だというのに⋯⋯当機には、行動原理が理解できない。

 

「⋯⋯待たせたね。急ごう、イプシロン」

 

「アギャス!」

 

 理解できないが――もう、この人間を止める気にはなれなかった。使命を全うできぬなら、せめて見届けよう。修復途中の筐体に鞭を打ち、階段を駆け上がる人間と竜種を追跡する。

 第三階層同様、大きな広場しか存在しない階層の中心、細長い台座に安置された紫色の結晶が異様な存在感を放っている。⋯⋯これが『大いなる力』。思わず呟きながら、イルマは迷いなく、その輝きへと手を伸ばす。

 

「イルマ!!」

 

「あら、遅かったわね。ご覧の通り、『大いなる力』はあたしが――」

 

 突如――彼らの言葉を遮るように、雲が渦巻く。天より降りてきた光が砂漠の塔を貫き、そこにいる全員を激流にて吸い上げた。ハルトも、イルマも、イプシロンやコライドンといったポケモンたちも、彼の地へ導かれる。

 

「うわっ!!」

 

「「うわーーーーーー!!!」」

 

「「ギャオーーーーー!!!」」

 

 ――■■■の街へと。

*1
【推奨BGM:デュエルルーム】チョコボの不思議なダンジョン 時忘れの迷宮より

*2
威力90。『かくとう』『あく』の中からタイプ相性が一番良いタイプでダメージ計算する。

必ず命中する。追加効果として、20%の確率で相手をひるませる。




【OPテーマ:ドアクロール】チョコボの不思議なダンジョン 時忘れの迷宮より

登場人物紹介

名前  :イルマ
元ネタ :【チョコボの不思議なダンジョン 時忘れの迷宮】より『イルマ』

手持ち
・ヴォルグ   (コライドン)     Lv70
・ディアボロス (ヨノワール)     Lv70
・バハムート  (ガブリアス)     Lv70
・???
・???
・???

名前 :ヴォルグ
性別 :オス
種族 :コライドン
タイプ:かくとう/ドラゴン
特性 :ひひいろのこどう/こだいかっせい
元ネタ:【チョコボの不思議なダンジョン 時忘れの迷宮】より『ヴォルグ』

名前 :ディアボロス
性別 :オス
種族 :ヨノワール
タイプ:ゴースト
特性 :プレッシャー/おみとおし
元ネタ:【ファイナルファンタジー】シリーズより『ディアボロス』

名前 :バハムート
性別 :オス
種族 :ガブリアス
タイプ:ドラゴン/じめん
特性 :さめはだ
元ネタ:【ファイナルファンタジー】シリーズより『バハムート』



ハルトの手持ち
・イプシロン (ミライドン)  Lv70
・アカリ   (ルカリオ)   Lv70
・ヒナコ   (フラエッテ)  Lv70
・???
・???
・???

名前 :ヒナコ
性別 :メス
種族 :フラエッテ(■■■■のはな)
タイプ:フェアリー
特性 :???
元ネタ:【Fate/Grand Order】より『芥ヒナコ』/
    【サイレントヒルf】より『清水雛子』



オリジナル技・特性:

【あくのはどうだん】
使用者:アカリ(ルカリオ)
タイプ:かくとう/あく
分類 :特殊/連結
威力 :90
命中率:――
合成元:はどうだん/あくのはどう
効果 :『かくとう』『あく』の中からタイプ相性が一番良いタイプでダメージ計算する。
    必ず命中する。追加効果として、20%の確率で相手をひるませる。
元ネタ:【NARUTO】より『風遁・螺旋丸』
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