宮廷の遊撃人   作:らりるれリッター

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第21話 動き出した【宮廷遊撃部隊】

 

 

「いらっしゃい、椿咲隊長。今日はなんのご用だい?世間話ではないんだろう?」

 

 

頭に被る傘の下から京楽の目が鋭く覗いていた。【宮廷遊撃部隊】たる椿咲が自身前にその身分のまま現れたということは、それ相当のことがあったと察するに至っていたからだ。

ここは八番隊隊舎の隊長執務室。狐蝶寺が浮竹のもとを訪れるほんの少し前、椿咲は京楽と顔を会わせていた。

 

 

「やはり京楽隊長は鋭いですね。【宮廷遊撃部隊】”十四番隊”として【八番隊隊長】京楽春水殿にお願いに参りました」

「私たちに協力してもらえませんか?」

 

「堅苦しいのは良してよ。それに協力って?」

 

「朽木ルキアさんはご存知ですよね」

 

「朽木隊長の妹さんだね」

 

「今回、彼女に下された『極刑』の判断、重すぎると思いませんか?」

 

「……もしかしてだけど、その判決を覆させようとしている?」

 

「ご推察の通りです。勿論、この件で京楽隊長らに責任が振りかかる事態にはさせません。最悪の場合は【宮廷遊撃部隊】にすべての責任をふっかけていただいても構いません」

 

「……成程」

 

 

まだ自身らが何をするか、京楽たちに何をしてほしいかを言っていない段階だったが、京楽はなんとなく雷山率いる【宮廷遊撃部隊】が何をしようとしているのかを察していた。

 

 

「相変わらず雷山隊長も無茶するね。僕は具体的には何をすればいいのかな」

 

「護廷十三隊全体を巻き込んで、今回の決定はおかしいと声を上げてほしいんです」

 

「声?」

 

「ええ、現在春麗さんが浮竹隊長にも協力してもらえないかと十三番隊へ向かっています。そしてこの後、私は二番隊の砕蜂隊長のもとへ行きます。初めはその3名で声を上げていただき、今回のこの裁定はおかしいという認識を十三隊全体に広げてもらいたいんです」

 

「椿咲隊長も分かっているはずだけれど、中央四十六室の決定を覆すのはまず不可能だよ?」

 

「承知の上です。と言うのも今回、決定を覆すのが目的ではありません。仮にこれを運動と呼び、その運動にある人物を巻き込んでその行動を制限させてほしいのです」

 

「それは誰だい?」

 

「【五番隊隊長】藍染惣右介君です」

 

「ッ!!……そうか、やはり彼だったんだね」

 

 

京楽は一瞬だけ驚いた顔を見せながらも、どこか分かっていたように、残念だと言わんばかりな顔をしていた。

京楽は分かっていたのだ110年前、平子たちとの会話に参加し【王属特務】に興味を示す反応を見せたあの時から彼は腹に何かを抱えていると、

 

 

「気付いてたんですか」

 

「なんとなく、だけどね。椿咲隊長は知っているでしょ?かつて僕は雷山隊長に、101年前の事件の際に藍染隊長を見たかどうかって聞かれていたことを」

 

「ええ、確か私が『十番隊隊長代理』を担っていた頃でしたよね」

 

「あの時は語らなかったけど、僕が結果的に藍染隊長を目撃することになった理由は、あの事件の時に藍染隊長に思うところがあって様子を見に行ったからなんだ」

 

「そう言うことだったんですね。都合よく目撃されたとは思っていましたけれど」

 

「あれで藍染隊長のいわば無実が証明され、浦原隊長たちは追放。浦原隊長たちには悪いことをしちゃったと思っているよ。話を戻すけれど、さっきの件は引き受けるよ」

 

「ありがとうございます。それとこれはご忠告で、【三番隊隊長】市丸ギン、【九番隊隊長】東仙要、両名共に藍染君側の死神なのでお気を付けください」

 

「隊長の4分の1か……分かった。気をつけながら行動するよ」

 

「よろしくお願いします。私はこれで」

 

 

 

 

 

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

 

 

 

 

 

「ごめんね、砕蜂隊長。忙しいのに時間を取ってもらっちゃって」

 

「昔みたいに砕蜂ちゃんって呼んでください。それにそんなこともありません。久々に椿咲隊長と話せて嬉しさすらあります」

 

 

そう語る砕蜂に顔には確かに嬉しさからか笑みがこぼれていた。

 

 

「それで、いったいどのようなご用件でしょう」

 

「……隠密機動総司令官である砕蜂ちゃんに頼むのは忍びないんだけれど、京楽隊長、浮竹隊長と共に朽木ルキアちゃんの処刑決定はおかしいと声を上げてもらいたいの」

 

 

先程の笑顔がまるで嘘のようにその時、砕蜂は怪訝な顔をしていた。

椿咲が言っていることは、いわば上位組織である『中央四十六室』へ難癖を付けるようなもの。『護廷』の使命を重んじる砕蜂からすれば、いくら夜一と同じく敬愛する椿咲の言うことであっても大罪を犯した罪人へ一度下した判決を見直せなど言えるはずもなかった。

 

 

「……理由を伺ってもよろしいでしょうか?」

 

「私が本来属している隊の事情でね。とある人物が中央四十六室の決定を捻じ曲げている可能性が出てきたの。その捻じ曲げられた決定こそが朽木ルキアちゃんの双極を使った極刑」

 

「莫迦な……そのようなことが」

 

 

何者かが中央四十六室を(かた)ることなど、ありえないことだったために砕蜂も驚きを隠せずにいた。

椿咲がこんな嘘を平気で()くような人物でないことは砕蜂も知っていたが、それでも到底信じられる話ではなかった。

 

 

「申し訳ありません。いくら椿咲隊長の言葉と言えども、信じられるような話ではとても……」

 

「そうだよね。ごめんね、変なことを言って」

 

「あの、椿咲隊長……」

 

「大丈夫、気にしないで。元々無理なお願いをしているのは重々承知だったから」

「ただ、これだけは覚えておいてほしい。これから私たち【宮廷遊撃部隊】は尸魂界(ソウル・ソサエティ)の秩序を乱す行動を起こすことになる。もしその場面に砕蜂ちゃんが遭遇しても迷わず自分の使命に従ってほしい」

 

「よろしいのですか!?その……椿咲隊長を邪魔することになるのですが……」

 

「気にしないでって言ったでしょ?【宮廷遊撃部隊】【護廷十三隊】【隠密機動】はそれぞれ似て異なる部隊。砕蜂ちゃんは砕蜂ちゃんの仕事をすればいいの」

 

「……分かりました。ただ、私にもできる限りことはやってみます」

 

「ありがとう。それじゃあ、私はもう行くね。行きつけの甘味処があるからさ、この騒動が落ち着いたら一緒に行こうね」

「……あっ、そして最後に1つだけ情報共有しておくけれど、裏切り者は三番、五番、九番隊の隊長3人なの」

 

「ッ!!」

 

「その3人は私たちが対処するから砕蜂ちゃんは間違っても手出しはしちゃいけないからね」

 

 

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

 

 

「急に呼び出したと思ったら、いったい何の用なんだ?」

 

 

数日後のこと、

護廷十三隊内では京楽と浮竹が大々的に、うわさ程度で砕蜂も動く形で朽木ルキアに対する判決はおかしいのではないかという声が徐々に広がりを見せていた。【宮廷遊撃部隊】の目論見通りに藍染を巻き込む形として、

 

そしてこの日、雷山は元柳斎からの召喚に応じて一番隊の隊長執務室にやって来ていた。

 

 

昨日(さくじつ)旅禍(りょか)尸魂界(ソウル・ソサエティ)に踏み入ったのはおぬしも知っておろう」

 

 

この前日、西流魂街(るこんがい)の地に|黒崎(くろさき)一護(いちご)石田(いしだ)雨竜(うりゅう)茶渡(さど)泰虎(やすとら)井上(いのうえ)織姫(おりひめ)の4人としゃべる黒猫が1匹降り立っていた。

瀞霊廷はすぐさまそれを把握し旅禍(りょか)尸魂界(ソウル・ソサエティ)へ侵入したという(しら)せが飛んでいた。

 

 

「ああ、話は聞いてる。どんな奴かは知らないが」

 

「……雷山、おぬしに1つ確認しておくことがある。101年前の事件とは別に儂に何か隠し事はしておらぬか?」

 

「隠すって、いったい何を隠すんだよ。旅禍(りょか)の情報か?生憎と昨日の今日でまだ調べがついてないぞ」

 

旅禍(りょか)の事だけではない、例えるならば、極囚・朽木ルキアの件。ここ最近、四十六室の決定に異を唱える者が増えておる」

 

 

ここ2,3日の間に中央四十六室の決定に異を唱える声が広がりを見せているのは元柳斎の耳にも届いていた。

その発端は【宮廷遊撃部隊】であろうと元柳斎は見抜いており、その行動を起こすに至った何かの要因があるのだろうと考えた。

しかし自身のところまいっさいの報告が上がっておらず【宮廷遊撃部隊】が意図的に秘匿していると薄々勘付いていたのだ。

 

 

「実際に奴らの決定はおかしいからな。仕方のないことだろう」

 

「口を慎め、ここ最近おぬしを含め【宮廷遊撃部隊】”十四番隊”全体での妙な行動が(いささ)か目に余る」

 

「お前の目には”十四番隊”の行動が妙に見えるのか。心外だな」

 

(とぼ)けたことを言うな。もし極囚の件或いは、妙な行動について弁明があるのなら、この場で述べてもらおうかの」

 

 

元柳斎に問われた雷山は初めのうちはぐらかそうかとも考えた。

しかし、相手は千年も総隊長を務める傑物。小手先など通用しないと判断した雷山は言える範囲の事実をあえて言う方向に転換した。

 

 

「……お前が妙な行動と言っているのは現世に現れた大虚(メノス・グランデ)の調査のことだろう。そちらは現れた理由については大方把握したところだ。あとは虚圏(ウェコムンド)内で何か起きていないか調査して報告を上げようと思っていた」

 

 

雷山が語ったことは真実1割、嘘と言わなかったことが9割のものであった。しかし、元柳斎からすれば【宮廷遊撃部隊】の行動としては一応の筋は通っていたために、妙な行動について詮索はそれ以上は必要なしと考えた。

 

 

「……成程。では、極囚の件はどう弁明する」

 

「確かに京楽の次男坊と浮竹には中央四十六室(ろうがいども)の決定はおかしなものがあると話をしたのは事実だ。こちらから確認を取るともな」

 

「それが湾曲して広がったと、そう述べたいわけか?」

 

「さあな、噂がどう広まるか知らん。ただ、決定に異を唱えるその行為に我々は賛同する立場を取るけどな」

 

 

雷山が浮竹たちの行動に賛成の立場を取るとハッキリ言った事で、元柳斎は自身の予想通りこの一連の流れが【宮廷遊撃部隊】によって引き起こされたものだと確信した。そして同時に止めることが容易ではなくなった。

 

相手は【護廷十三隊】にも引けを取らない実力を誇る【宮廷遊撃部隊】”十四番隊”。裏切りに近い行為ではあったが、旅禍(りょか)が侵入したこのタイミングで内輪揉めして戦力を減らすのは得策ではないと不問にするしかなかったのだ。

 

 

「まあ、武力で決定を覆させようとせず、声を上げるだけなら放っておけばいいだろ。だが、京楽の次男坊や浮竹に無理に迫るなら相応の行動に出させてもらうからな」

「……ああ、そう言えば」

 

 

雷山は元柳斎に自分らは護廷十三隊と一戦交える覚悟はあるぞと忠告をして、その場を後にしようとしていた。しかし数歩いったところでわざとらしく声を上げて振り返った。

 

 

「たまたま帰って来た山吹が言っていたが、三番隊の市丸が旅禍(りょか)を取り逃がしたそうだな」

 

「……それがどうした」

 

「護廷十三隊としてその処遇はどうするつもりなんだ?まさか、不問にするなんて馬鹿げたことは言わないよな」

 

「この後、隊首会を開き本人より弁明を聞いてからの判断じゃ、その報告もいずれそちらにも行こう」

 

「そうか。ではこちらは旅禍(りょか)の情報を手に入れたらそちらに流すとしよう。じゃあな」

 

「……あやつめ」

 

 

元柳斎は雷山が最後に言った"旅禍(りょか)の情報が入ったらそちらに流す"という言葉が直感的に嘘であると見抜き呟いた。

 

 

『さすがは千年も総隊長をやってる傑物だな……』

 

 

帰路の最中、雷山は心中で元柳斎に称賛の声を上げていた。一切その気を悟らせていないのに【宮廷遊撃部隊】が意図的に情報を隠していることに薄々勘付いていたためである。

 

 

『いや、藍染がそれとなく元柳斎に情報を流しているのか……?』

 

 

 

カンッ!カンッ!カンッ!カンッ!カンッ!―――――

 

その時、瀞霊廷に木の板を叩く音が響き渡った。緊急伝達だ。

 

 

”緊急伝達!隊長各員に通達、緊急隊首会を招集!繰り返す!緊急伝達!隊長各員に伝達、緊急隊首会を招集!”

 

 

雷山は緊急の隊首会と聞いて、先ほど元柳斎が言っていた市丸ギンの件に関する招集だろうと推察していた。

そして警鐘が響く中、とあることを思いついた。それは地下議事堂に今のタイミングで潜入することだった。

 

雷山の見解は地下議事堂に市丸、藍染、東仙の3人がローテーションを組みように潜伏していると考えていた。そしてその3名は隊長であり否が応でも隊首会に参加しなければならない立場だった。

(すなわ)ち、今この瞬間に地下議事堂に行けば中の様子、及び何かしろの痕跡を探ることが出来るのではないかと踏んでいた。

 

 

「……多少、危険が伴うことになるが仕方がない」

 

 

雷山は瞬歩を使い、中央四十六室の地下議事堂へ向かった。

 

 

         ・

 

         ・

 

         ・

 

         ・

 

         ・

 

 

「……気配はなしか」

 

 

数十分後、雷山の姿は地下議事堂の前にあった。雷山は鬼道を使って霊圧を消しており、議事堂内に人の気配が無いかを探っていた。

 

そして人けが無いことを確認した雷山は慎重に議事堂内に入って行った。中に誰もいなくとも罠などの可能性を考慮していたためである。

雷山は前に来た時から思っていたことがあった。それは、”辺り一帯があまりにも静か過ぎる”という事であった。いくら藍染一派に乗っ取られたとは言ってもここまで静まり返ることはあるのかと、

 

 

「よし、これで中に……なっ!?」

 

 

議事堂内に入った雷山は自身の目を疑った。雷山の眼下では会議を続けているはずの中央四十六室の姿はなく、全員が何かしろの形で血を噴き出しすでに事切れている光景が広がっていた。

 

"惨劇(さんげき)――――――"

 

そう、まさにそこはその言葉が似合う程の状態と化していた。

 

 

「くそ、頭の片隅に最悪の場合と予想はしていたが……」

 

 

あまりにも静まり返る地下議事堂、議事堂内で息を潜めている気配、藍染一派に乗っ取られた可能性。

それらすべての事象を合わせた時、最悪の場合として雷山はこの光景を考えていた。しかし同時に外れていてほしいとも思っていたことだった。

 

 

「血が乾いている……殺されたのは昨日今日の話ではないという事か」

 

 

辺りを窺いつつ雷山はすぐ近くの遺体に近づき状況を調べた。

血は黒く変色してひび割れるほど乾ききっていた。そして事切れる全員共通で防御創もない刀傷があり、明らかに死神の仕業であった。

 

 

「藍染惣右介……奴の仕業か。しかし解せんな」

 

 

状況を確認した雷山はこれをやった犯人について間違いなく藍染一派の仕業だろうと考えていた。

しかし、同時に分からないこともあった。

それはほとんど全員が席に着いた状態で死んでいることだった。隊長3人ならば皆殺しも容易いことだが、座ったまま大人しく斬られる訳もない。ましてや誰にも気づかれずにこれだけの事をどうやってやり遂げたのかと、

 

 

「……101年前の時に瀞霊廷で目撃されていた事と然り、藍染惣右介の斬魄刀を今一度精査する必要があるな」

 

 

 

カンッ!カンッ!カンッカンッ!カンッ!――――――

 

”緊急警報!緊急警報!瀞霊廷内に侵入者あり!各隊守護配置に就いてください!―――――”

 

 

「ッ!!」

 

 

その時、瀞霊廷に警鐘が響き渡った。白道門(はくとうもん)での侵入を阻止された黒崎一護の一派は志波(しば)空鶴(くうかく)の力を借り高密度の砲弾を用いて無理やり瀞霊廷に侵入しようとしていた。

 

 

「……長居し過ぎたな」

 

 

警鐘が鳴ったことで我に返った雷山は、不用意にこの現場に残るのは良しと考えずに撤退した。

 

 

「もう!さっきから招集だったり警報だったり騒がしい過ぎるよ……―――って何あれ?」

 

 

同時刻、詰所にいた狐蝶寺は短時間に2回もなる警鐘に嫌気がさしていた。

 

もう少し静かに出来ないものかと、

 

そして気分転換でもと思い何気なしに外を見た時、何かが瀞霊廷を覆う遮魂膜(しゃこんまく)に近づいていることに気が付いた。

 

 

「……もしかしてあれってあの死神代行の子が空飛んで来たの!?」

 

「いよいよですか」

 

 

ドンッ!!

 

 

狐蝶寺の予想は正しかった。そしてけたたましい音と同時に砲弾は瀞霊廷を取り囲む遮魂膜(しゃこんまく)にぶつかった。

通常、霊子で出来ている物は何ものも等しく遮魂膜(しゃこんまく)によって分解されてしまうが、高密度の霊子によってできている砲弾は遮魂膜(しゃこんまく)を突き破った。しかしその衝撃はすさまじくすぐに砲弾は爆発し黒崎たちは4方向へ分かれてしまった。

 

 

「4方向に分かれちゃった……って、こんな悠長にしてる場合じゃない!」

 

 

狐蝶寺は慌てるようにして刀置きにある自身の斬魄刀を手に取り腰に差した。

 

 

「浮葉くん、後は任せていい!?」

 

「お待ちください、春麗隊長」

 

「待てないよ!」

 

「春麗隊長は雷山部隊長へご報告をお願いします。旅禍(りょか)たちは私にお任せください」

 

 

そう言うと浮葉は狐蝶寺を制して、自身の斬魄刀を手に取った。

浮葉は【宮廷遊撃部隊】”十四番隊”の『第一将』として自身が先陣をきるべきと考えを持っていたのだ。

 

 

「雷山部隊長へは命令違反をしてしまい申し訳ありませんとお伝え願えます」

 

「ちょっと、浮葉くん!」

 

 

時間に猶予がないとして、浮葉は狐蝶寺の言葉を最後まで聞かずに飛び出して行ってしまった。

 

それから約20分後、雷山が戻ってきた。雷山は浮葉がいないことにすぐ気付いたが、この状況下で理由もなくフラフラと出歩くような性格ではないと分かっていたため、あまり深刻に考えずにまずは狐蝶寺から事情を聞くことを優先した。

 

 

「ひとまず、なにがあったかを聞かせてくれるか」

 

旅禍(りょか)の子たちがついに中に入って来ちゃったんだよ」

 

「成程、2回目の警鐘はそれだったか」

 

「うん。それでね……」

 

「はぁ?砲弾が空を飛んできて遮魂膜(しゃこんまく)を突き破った!?」

 

 

狐蝶寺から彼女がつい先ほど見た光景を伝えられた雷山は驚きの声を上げていた。

遮魂膜(しゃこんまく)を突き破って来ることは不可能ではないが、とても現実的ではなかったからだった。

 

 

遮魂膜(あれ)を突き破るとなるとその砲弾ってのはかなり高密度の霊子で出来ていることにな―――……」

 

 

その時、雷山はそれを成し遂げることが出来る技術を持つ者が流魂街(るこんがい)に1人いることを思い出した。

 

 

志波空鶴(しばくうかく)花鶴大砲(かかくたいほう)……」

 

「ともかく旅禍(りょか)の子たちが入って来ちゃったから、私が出ようとしたの。そしたら浮葉くんが”私にお任せを”って行っちゃった」

 

「そうか。まあ、浮葉には後で連絡を取ろう。伝えておかなければならないこともあるしな。ひとまず春麗には先に話しておこう」

 

「どうしたの?」

 

「さっき隊首会が招集された時に地下議事堂の内部に行って来たんだが、事態は想像以上に厄介なことになっていた」

 

「厄介なことって?」

 

「中央四十六室が全滅していた」

 

「……へ?」

「えええええぇぇぇぇぇ!!!???」

 

 

中央四十六室が全滅していた。

雷山が発したその言葉は百戦錬磨の狐蝶寺を驚かせるには十分すぎる内容だった。

 

 

「まあ、驚くのも無理はないが事実だ。そして101年前の時とあの人数を誰にも知られずに殺しきることが出来た点を踏まえて、藍染の斬魄刀はやはり記録されている通りの能力ではない可能性が高い」

 

「……あー、101年前の時から時々話題に挙がってたやつだよね。そうだなぁ……例えばだけど、浮葉くんみたいに空間を生成できるとか南美ちゃんの幻覚能力みたいなんじゃないかな」

 

「やはり春麗もそう思うか。記録上では藍染の斬魄刀は”霧と水流の乱反射による同士討ち”となっているんだが、これは椿咲が戻ったら1度精査しようと思ってる」

 

「分かった」

 

「それから旅禍(りょか)たちが瀞霊廷に入ってきたおかげで案内役とようやく接触できるようになった。そこで俺はこれからその案内役のじゃじゃ馬姫を探しに行ってくる」

 

「……じゃじゃ馬姫?」

 

「ああ、春麗は椿咲が戻ったら先のことを伝えてもらいたい。そして藍染の斬魄刀について考察してもらいたい」

 

「りょーかい♪」

 

 

 

 

 

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

 

 

 

 

 

「雷山部隊長、申し訳ありません。命令違反です」

 

 

浮葉は雷山から”縛道の七十七”『天挺空羅(てんていくうら)』を応用した鬼道で連絡が入った際、開口一番でそう口にしていた。

 

 

”春麗からあらかた聞いている、気にするな。それより浮葉にも伝えておく情報が1つある”

 

 

雷山はつい先ほど狐蝶寺に伝えた、中央四十六室が全滅していたという情報を浮葉にも伝えた。さすがの浮葉も驚きこそしたが、狐蝶寺みたいに声を上げるほどではなかった。

 

 

旅禍(りょか)の方は浮葉に任せるが、俺も今から案内役を探しに行くつもりだ。もし案内役を見かけたら知らせてくれると助かる”

 

「承知しました。すぐにお知らせします」

 

”ああ、頼んだからな”

 

「……さて」

 

 

鬼道での交信が終わった時、浮葉は空を見上げていた。

約20分前に大胆にも空から侵入して来た旅禍(りょか)たちの、それも四方に散っていったどこにまずは出向くかを考えていた。

 

 

「……まずはこちらの方角から行くとしますか」

 

 

浮葉は上空で4つに分かれた方向の内、1つに向かっていった。浮葉が向かった先、そこに落ちていたのは大柄で浅黒い肌の男、茶渡(さど)泰虎(やすとら)だった。

 

 

「さて、どうするか……」

 

 

着地の際に技を繰り出して落下の衝撃を殺した茶渡はそのまま木の上で潜んでいた。しかし、自身が落下した地点の近くにいつまでも留まるのは得策ではないと、移動を開始していた。

 

 

「成程、あなたが瀞霊廷にやって来た旅禍(りょか)の1人……」

 

「ッ!!」

 

 

茶渡は驚いたように咄嗟に声のする方へ目を向けた。そこには白い羽織を身に纏う死神、浮葉が立っていた。

 

 

「私は【十四番隊・第一将”先鋒”】浮葉刃。まずはお見知りおきを、見たところ1人だが他の旅禍(りょか)たちは何処にいるか聞いても?」

 

「……答えるわけにはいかない」

 

「警戒心が高いのは良いことではありますが、この場は私の言うことを信じてもらいたい。私は雷山部隊長より、あなた方の保護を命じられている」

 

「悪いが、それを信じられない」

 

「ッ!!」

 

 

茶渡は人間の腕とはまた違う腕を用いて、浮葉へ攻撃を放った。

 

 

 

 





・その他用語


”縛道の七十七”『天挺空羅(てんていくうら)』応用編
この鬼道は「対象の位置を捜索・捕捉し伝信する」効果を持つ縛道で、自身から相手への一方通行しか情報を流すことしか出来ない。
それを1対1ではあるが、自身が指定したものとまるで電話のように互いにやり取りできるように応用し昇華させたもの。

ちなみに現在、雷山と銀華零の2名しか使えない。

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