宮廷の遊撃人   作:らりるれリッター

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第23話 表に出てきた雷神狼(じんろう)

 

 

「初めまして、朽木ルキアさん。私は銀華零白と申します。本日から処刑期日までこの場の守護を務めさせていただきますので、どうぞよろしくお願いしますね」

 

「は、はぁ……」

 

 

ルキアは銀髪の死神と金髪の死神2人を前にして、初めて見ることもあってか少し困惑したようにそう声を上げていた。

ここは瀞霊廷の中心部にある懺罪宮(せんざいきゅう)

 

狐蝶寺がとある騒動に出くわす数分前のこと、元柳斎より懺罪宮(せんざいきゅう)守護の命を受けた銀華零と山吹が朽木ルキアと顔を会わせていたのだ。

ちなみに銀華零も山吹も不要な混乱を避けるために隊長羽織は鬼道で見えなくしていた。

 

 

「……あたしの名前は山吹雷花。よろしくお願いします……」

 

 

山吹は少し前に十四番隊詰所で雷山に諭されたことで一応の納得は示していた。

しかし、それは無理やり自分の意見を理性で押し殺した形となっていたために心の底では納得しきっておらず、結果としてルキアに対しての挨拶が不愛想なものになってしまっていた。

 

 

「あ、あの!あたしあなたを……―――」

 

「雷花さん」

 

 

”助け出して見せる”

山吹はそう口に出そうとしていた。

それをいち早く察知した銀華零は彼女の名前を呼ぶことで、それはまだ言ってはならないと(いさ)めた。

 

 

「まだ仕事中ですよ」

 

「はい……すいません、銀華零さん」

 

「……?」

 

 

ルキアは目の前の二人のやり取りを不思議そうに眺めていた。

その視線に銀華零が気付いたことで目が合った状態となり、咄嗟にルキアは目を逸らしていた。

 

 

「どうされました?」

 

「い、いえその……」

 

「黒崎一護さんたちなら徐々にですが、この場に向かって来ていますよ」

 

「え……!?」

 

 

目を伏していたルキアは驚くように顔を上げた。自身が考えていたことが当てられたこともあったが、目の前の死神が一護たちの事を知っていたからである。

 

 

「何故、そのことを……」

 

「詳しくは言えません。ただ、朽木ルキアさんはこの場でお待ちいただければいいのです」

「……もしもの場合は考えてありますから」

 

 

         ・

 

         ・

 

         ・

 

         ・

 

         ・

 

 

「はい、これが白ちゃん斬魄刀。そしてこれが山吹ちゃんの斬魄刀ね」

 

 

それから数十分後、狐蝶寺は2人の斬魄刀と雷山が得た情報を携えてやって来た。

 

 

「狐蝶寺隊長、ありがとうございます」

 

「いいよいいよ♪それよりさ、雷山くんから旅禍(りょか)の子の名前とか特徴の情報を預かってきたから教えるね」

 

「そうですね。この会話を誰かに聞かれるわけにはいかないですし」

 

「結構急ぎ足になっちゃうと思うからよく聞いてね」

 

 

その後、狐蝶寺は雷山から預かった情報を話した。今回、尸魂界(ソウル・ソサエティ)にやって来た5人の旅禍(りょか)の名前と特徴、その案内役が四楓院夜一であり、協力関係を築けたこと、つい先ほど起きたことの情報を添えて

 

 

「成程、案内役は四楓院元隊長でしたか。確かに雷山さんが言っていた通りうってつけの人物ですね」

 

「他5名の旅禍(りょか)の皆さんの情報は頭に入れました。狐蝶寺隊長、わざわざありがとうございます」

 

「私の仕事の1つだから気にしないでよ。それよりも藍染くんのことなんだけど白ちゃんと山吹ちゃんはどう思う?」

 

 

狐蝶寺はここへ来る道中に出くわしたとある騒ぎについて2人に聞いていた。

【宮廷遊撃部隊】は藍染の斬魄刀について椿咲と同様に”幻覚系統”の能力を持つとしていた。しかし先ほどの一件について、狐蝶寺は藍染ではない死神、その他は藍染としてその死体を扱っており、ただの幻覚能力ではそのような芸当は出来ないと考えていた。

 

 

「春麗ちゃんの目には藍染惣右介に見えなかったのですよね。春麗ちゃんにだけ幻覚として見せなかったのか、それとも他に条件があるのか、ですね」

 

「条件かぁ……例えば、藍染くんの姿を長く見ていることとか?ほら、私って101年前に1度見ただけだし」

 

「姿だけでは考えにくいですね。最も考えられるとすれば……」

 

「”斬魄刀を見ること”とかですかね」

 

 

山吹の言葉に狐蝶寺は腕を組みまるで何か悩むように”うーん”と声を上げていた。

斬魄刀を見るという事ならば、101年前にすでに体験していることだったからだ。

 

 

「藍染の斬魄刀なら101年前の時に見ちゃっているんだよね。雷山くんが来たから撤退してたけど彼、私と南美ちゃん迎撃する気満々だったから」

 

「そうですね……」

「……!」

 

 

顎に手を当てて考えていた銀華零はある1つの可能性に行きついた。

それは”藍染の斬魄刀の()()()()()()()が幻覚にかかる条件”なのではないかと、

 

 

「春麗ちゃん」

 

「なに?」

 

「1つ聞きますけど、101年前の時に藍染惣右介の始解は見ましたか?」

 

「見た覚えはないね。始解も無しに私たちと戦うのかなって思ったくらいだし」

 

「成程。という事はもしかすると私の推測はあながち遠くないのかもしれません。幻覚にかかる条件ですが、”藍染惣右介の始解を見ること”とは考えられないでしょうか?」

 

「……あ、そっか」

 

 

銀華零の推測に狐蝶寺は納得したように声を上げた。だから自身を含めた【宮廷遊撃部隊】は幻覚を見ずにいられるのかと、

 

 

「だから私たちは幻覚を見ないんだね。戻ったら雷山くんに伝えてみるよ」

 

「春麗ちゃん、もう1つあります。磔になっていた死体で初めて藍染惣右介の能力に触れたわけですが、その能力がどちらに作用しているかという問題です」

 

 

銀華零が言っていることはこうだった。

狐蝶寺が死体を見たというあの騒動では藍染の斬魄刀が発動したときに人や物に対して作用して別なものに魅せるか、人の目に作用して別なものに魅せるか分からなかった。

 

前者ならば人や物を変えるだけなので幻覚にかかったと自覚することが出来るが、

後者ならば幻覚にかかった者自身がそれが普通だと思ってしまうために自覚をすることは不可能に近いためだった。

 

 

「私たちは広く幻覚系統の能力としていましたが、これは似て異なる力です。『月華(げっか)』の斬魄刀を扱う南美ちゃん、その斬魄刀に最も長く触れて来た雷山さんにどちらが近しいか判断してもらうのが良いと思います」

 

「分かった。ありがとうね、白ちゃん」

 

「これが参謀たる私の役目、お気になさらず」

 

 

 

" @&%’*?~ "

 

 

 

その時、遠くから何者かの話声が聞こえてきた。恐らくは何かしろの伝令に来た護廷十三隊の死神だと思われた。

 

 

「ありゃ、誰か来ちゃったね。よいしょっと……」

 

 

ルキアが収容されている懺罪宮(せんざいきゅう)の通路は1本しかなくこのままでは護廷隊士と鉢合わせると考えた狐蝶寺は橋の欄干(らんかん)に足をかけてその上に乗った。

 

 

「え、ちょっと狐蝶寺隊長……?まさか……―――」

 

「じゃあ、見つかっちゃう前に私は帰るけど、白ちゃんも山吹ちゃんも頑張ってね!」

 

 

次に狐蝶寺が何をやるかを悟った山吹はそれを止めようとしたが、その言葉を遮るようにして狐蝶寺は激励の言葉を2人に投げると同時に背中からまるでバンジージャンプの要領で飛び降りた。

 

 

「狐蝶寺隊長!?」

 

 

この高さから落ちればまず無事では済まないため、山吹は思わず橋の下を覗き込んだ。

 

 

「またね~♪『暴風芽吹(ぼうふうめぶき)』!!」

 

 

山吹が覗き込んだことに気付いた狐蝶寺は手を振りながら落下していた。

そしてある一定のところまで落ちると同時に地面と向き合うようにして、自身の斬魄刀を解放した。そしてそのまま空中を飛び跳ねるようにして去って行った。

 

 

「はぁ……」

 

「相変わらず無茶しますね。春麗ちゃんは」

 

「ホントですよ……まさかこの高さで飛び降りるとは思わず、さすがに肝が冷えましたよぉ……」

 

「ふふっ」

 

 

銀華零はその場にへたり込んでしまった山吹を見て懐かしむように笑うと、視線を双極の方へと移した。

その視線は少し険しいものとなっていた。

 

 

 

 

 

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

 

 

 

 

 

「その風貌は八番隊の京楽春水……」

 

「そういう君は……もしかしてだけど、浮葉隊長かい?」

 

 

同時刻、

八番隊隊舎敷地内では茶渡と行動を共にする浮葉が京楽と相対していた。

何故、茶渡を連れているかは少し遡ることになる。

 

 

 

 

 

□ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■

 

 

 

 

 

少し前のこと、浮葉は茶渡と接触していた。旅禍(りょか)たちが瀞霊廷に入って来た時【宮廷遊撃部隊】の方針が追加されていた。それは”旅禍(りょか)は死なせてはならず、可能なら保護せよ”と言うものであった。

その為に、茶渡に他の旅禍(りょか)たちが何処にいるかをバカ正直に聞いた浮葉だったが、それを答える茶渡ではなかった。

 

 

「悪いが、それを信じられない」

 

「!!」

 

 

ドォォォォン...

 

 

「……成程、確かに人間としてはいい攻撃と言わざるを得ない」

 

「ッ!!」

 

 

茶渡の攻撃は浮葉に届いていなかった。それどころか斬魄刀すら抜かずに白打(はくだ)だけでその攻撃をいなしていた。

浮葉は今の一撃を護廷十三隊の第三席ほどならば十分に倒せるほどのものと評していた。

 

 

「そう驚かなくてもいい。今のは死神の体術『白打(はくだ)』という。私はこの白打(はくだ)を最も得意としており、雷山部隊長にも引けを取らない」

 

「……何故、反撃しなかった。絶好のチャンスだったはずだ」

 

「保護対象を攻撃するほど、私は好戦的ではない。信じられないと言ったが、【宮廷遊撃部隊】”十四番隊”はあなた方、旅禍(りょか)を保護する方針で動いている。その為にも他の旅禍(りょか)たちの居場所を教えてほしい」

 

「…………」

 

 

茶渡は自身の決定的な隙を突かずに守りに徹していたその姿勢で、目の前の浮葉と名乗る死神が言っていることはあながち嘘ではない可能性も考えた。

 

 

「俺たちの保護というのなら、協力してほしい」

 

「朽木ルキアの救出……私はその場所まで連れて行くことしか出来ない。あとは自身で」

 

「それで構わない。案内してくれ」

 

 

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

 

 

「……あなたとは面識はなかったはず」

 

 

浮葉は京楽とは面識がないと記憶していた。自身が【三番隊隊長】であった当時、京楽は八番隊の席官を担っていたのは知っているが、少なくとも自身は京楽と会話したことなどただの一度もなかったからである。

 

 

「山吹隊長と仲が良かったでしょ?十三番隊へ行った時に直接話したことは無いけど、見たことはあるんだよ」

「それで、話もを戻すけれど、彼をどうするつもりなのかな」

 

「南美隊長から聞いてませんか?」

 

「……もしかしてだけど」

 

「その、もしかしてという所ですね」

 

 

その時、浮葉の身体に6つの光が突き刺さり行動を封じた。それは【八番隊副隊長】伊勢(いせ)七緒(ななお)が放った、縛道の六十一『六丈光牢(りくじょうこうろう)』だ。

 

 

「動かないでください」

 

「ちょっと、七緒ちゃん」

 

「隊長、いくらお知り合いでも旅禍(りょか)を連れている者を放っておくことはできませんよ」

 

「はぁ……副官の教育がまるでなっていない。”縛道の九十一”『枷外(かせはず)し』」

 

 

その瞬間、浮葉に突き刺さる6つの光が霧散するようにして消え去った。七緒は『枷外(かせはず)し』の事を知ってはいたが、ここまで早く自身がかけた鬼道が解除されるのは初めての体験だった。

 

 

「京楽春水、先に手を出したのはそちらの副隊長だ」

 

 

浮葉は鬼道が解除されたと同時に瞬歩で一気に七緒に近づき鳩尾に一発入れようとしていた。しかしその拳が届くことはなかった。

京楽が浮葉の背後から斬魄刀を突き立てていたからである。

 

 

「ごめんよ。だけど、先に手を出したからって自身の副官がやられるのを黙って見ている隊長はいないでしょ?」

 

「それもそうですね。一応問いますが、大人しく退くつもりは」

 

「山じいの命令だからね。こちらが退くことは無いよ」

 

「成程。立場が逆なら私も同じことを言ったでしょう。……ならば」

 

 

ガキンッ!!

 

浮葉は斬魄刀を引き抜くと同時に突き付けられる斬魄刀を弾いた。

京楽と浮葉は互いに距離を取り向かい合う形で立っていた。

 

 

「茶渡泰虎と言ったか。朽木ルキアはこの先にある懺罪宮(せんざいきゅう)にいるはず」

「京楽春水は私が足止めする。あなたは先に進め」

 

「感謝する」

 

 

茶渡は浮葉に礼を言うと駆けて行った。

京楽は【宮廷遊撃部隊】が朽木ルキアの処刑阻止に動いていることを知っているが、あからさまな裏切り行為を堂々とやってもいいものなのかと思っていた。

 

 

「……”十四番隊”がそんなことしちゃってもいいのかい?」

 

「雷山部隊長からの命です。1つ、処刑を阻止せよ。1つ、旅禍(りょか)を保護せよ。そちらが山本総隊長の命に従うなら私は雷山部隊長の命に従うまで、何かおかしなことでも?」

 

「立場が逆なら同じ事言う、だっけ?たしかに僕も同じことを言ったかもしれない」

 

 

京楽はどこか納得したように言うと腰に差す2つの斬魄刀を鞘から引き抜いて構えた。

 

 

「浮葉隊長に足止めされた。そう言えば山じいも大目に見るかもしれない」

 

「やはり……」

 

 

浮葉は京楽が殺気を放っていないことに気づいていた。そのことを不思議に思っていたが京楽の言葉で納得した。

京楽自身、旅禍(りょか)と戦わずに済むならそれが一番いいと考えていることに、

 

 

「言っておきますが、手加減はしないので悪しからず」

 

「手加減させるつもりはないよ」

 

 

ガキンッ!!

 

 

2人の死神の間に火花が散る。

 

 

 

 

 

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

 

 

 

 

 

「まったくこれから忙しくなるって時に……」

 

 

その頃、一番隊舎内では雷山が隊長羽織をなびかせて悪態をつきながら歩いていた。

 

それは普段なら鬼道で別人に姿を変えてやって来ているところを完全に忘れているほどであり、隊士たちは初めて見る雷山の事を必死に止めようとしていたが、雷山のあまりの剣幕にすれ違う者は誰も雷山に対して話しかける事すらできず、ただただ避ける事しか出来ていなかった。

 

何故こうなったか、それは少し前に遡る。

 

 

 

 

 

□ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■

 

 

 

 

 

「―――……と白さんは予測していました」

 

「やはりそうか。だが、まだ情報が足りないな」

 

「藍染君の斬魄刀に加え、何を思って朽木ルキアさんを処刑したがっているのかも未だ不明ですからね……」

 

 

狐蝶寺が銀華零と山吹のもとへ向かった後、詰所に残る雷山は椿咲と話し合っていた。

参謀たる銀華零が大まかな作戦立案をしてはいたが、まだまだ情報が少なすぎる故にどう動くかについてはまだ話が煮詰まっていなかった。

 

 

「失礼します。雷山隊長は中にお見えでしょうか」

 

「え?今の声って……」

 

 

その最中、襖の外から声が聞こえた。その声に椿咲は驚いている様子だった。

通常、十四番隊詰所に来客がなどあり得ないためであるのと、外から聞こえた声について椿咲に聞き覚えがあったからだ。

 

 

「雷山悟は中にいる。入って来ていいぞ」

 

「失礼致します」

 

 

そう言って開けられた襖の奥にいたのは【一番隊副隊長】雀部(ささきべ)長次郎(ちょうじろう)忠息(ただおき)であった。

 

 

「えっと、何故雀部副隊長がこちらに来れるんですか?十四番隊(わたしたち)って山本総隊長しか知らないと聞いたんですけど」

 

 

椿咲の言う通り【宮廷遊撃部隊】”十四番隊”は雷山たちが自ら明かさない限り、瀞霊廷内広しと言えど【護廷十三隊総隊長】である元柳斎しか知り得ないことであった。

しかし、実際にはただ1人だけ例外が存在した。それが元柳斎の副官を務める雀部であった。

 

原則として情報のやり取りは狐蝶寺が担うことになっているが、何かしろの理由ですぐに【宮廷遊撃部隊】へ情報を流す必要が生じた際は、狐蝶寺を呼ばずに代わりに雀部が十四番隊詰所まで来て情報交換を行っていた。

 

 

「確かにそれは嘘ではないが、春麗がすぐに一番隊隊舎へ行けない場合もあるだろう?そんなときに元柳斎がこっちへ来るわけにもいかない。だから例外的に副官の雀部だけはこの場所を知っていて、ごく稀にやって来るんだ。それで、春麗を呼んでいる暇がなかったというのは分かるが、いったい何用なんだ?」

 

「元柳斎殿より雷山隊長へ伝令です。至急、一番隊隊舎へお越しください」

 

「こんな時にか?」

 

「はい、元柳斎殿は火急の事態につきと」

 

 

雷山は平静を装っている雀部の細かな態度と元柳斎の火急の事態という言葉で、何か自身を呼び出さないとならない事態が起きたのだろうと察した。

 

 

「……何があったのかだけでも聞かせてもらえるか?」

 

「今しがた入った報告です。五番隊、藍染惣右介隊長が何者かに殺害されました」

 

「!!」「え!?」

 

 

雀部の言った【五番隊隊長】藍染惣右介が殺害されたという報告は2人を驚かせていた。

 

 

「……分かった。すぐに向かう。椿咲は春麗の帰りを待ってから事実確認と調査を頼めるか?」

 

「……分かりました」

 

 

雷山が指示したことの意図を察した椿咲は深刻そうな顔をしていた。それは雀部も気付いていたが、その真意を察することは出来なかった。

 

 

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

 

 

「【宮廷遊撃部隊・十四番隊部隊長】雷山悟。馳せ参じたぞ」

 

「うむ。入れ」

 

 

一番隊の隊長執務室の前で雷山は名乗りを上げていた。

少しの間の後、中から元柳斎の返答が帰ってきたため、それを合図に雷山は隊長執務室の中へ入った。

 

 

「失礼する。まったく、こんな忙しい時に何の用だ?藍染惣右介を殺した奴を探し出せってか?」

 

 

雷山はすでに藍染惣右介に関してとある情報を得ているため何が起きているかを元柳斎以上に把握していた。しかし、この場でそれを口外することも察せられることも避けるべきと判断しており、知らぬ存ぜぬを貫いていた。

 

 

「否、おぬしには別の要件があって呼び出した」

 

「は?それはどういう……」

 

「此度の旅禍(りょか)の件で隊長、副隊長を1名ずつ欠く事態となった。この事態は火急であると判断し、【護廷十三隊総隊長】山本元柳斎重國の名のもと、【宮廷遊撃部隊】”十四番隊”に対して正式に『五番隊隊長代理』を要請したい」

 

「……一応聞くが、誰を五番隊隊長代理に任命するつもりなんだ?」

 

「おぬしをここへ呼んだ時点で答えになってはおらぬか?」

 

 

元柳斎が自身を呼び出した上で、隊長代理の話を出したことからその相手は自分自身なのだろうと雷山は分かっていたが、あえて誰を指名するか問いを投げていた。

それは元柳斎も分かっており、暗に雷山に五番隊隊長代理に就任してほしいと答えた。

 

 

「……はぁ、情けない話だな。そこまで例の旅禍(りょか)護廷十三隊(おまえたち)は引っ掻き回されているのか?」

 

旅禍(りょか)の情報を未だ手に入れられぬ宮廷遊撃部隊(おぬしら)には言われとうない台詞じゃ」

 

 

雷山はたった6人の旅禍(りょか)に引っ掻き回されて『隊長代理』という奥の手まで使用してまで雷山を引っ張り出してくる【護廷十三隊】の情けなさを、

 

元柳斎はその旅禍の情報を意図的かどうかは置いて今だ護廷十三隊に流していない【宮廷遊撃部隊】の体制をそれぞれ挑発していた。

 

 

「まあ、ひとまず五番隊隊長代理の話を受ける受けないは置いて、こんな慌ただしい中でやっても大丈夫なのか?今集めている余裕なんかないだろし、伝令にしたって正直に俺の事を話すつもりもないだろう?」

 

「心配無用。おぬしのことは帰還した死神として各隊長へ追って沙汰する。まずは早急(さっきゅう)に任に就いてもらいたい」

 

「前から思っていたことだが、何をそう急いでいる?それに隊長がいなくともしばらくの間なら副隊長で代替が効くだろ」

 

「……藍染惣右介の遺体が発見された際、錯乱した五番隊副隊長とそれを止めるために斬魄刀を解放した三番隊副隊長の騒ぎがあっての。両名とも拘置処分になっておる」

 

「はぁ……?」

 

 

その話を聞いた時雷山は困惑した。

【現五番隊副隊長】雛森桃のことは雷山も知っており、雷山自身の評価では隊長が戦死した程度では錯乱しない聡明な人物という印象を持っていたからである。

 

 

「……はぁ、随分と若い衆は血気盛んで賑やかなことだ。分かったよ。では正式に【宮廷遊撃部隊・十四番隊部隊長】雷山悟の名において、『五番隊隊長代理』を拝命する。さっそくその五番隊副隊長に挨拶に行くとしよう」

 

「待て。おぬしまた勝手な行動を……!!」

 

「任せておけ、上手いことやる。それに隊長代理の身分が現副隊長に挨拶も無しとは礼儀がなってないだろ?」

 

 

そう言って雷山は去って行ってしまった。雷山が出て行って少し間が開いた後、元柳斎は自身と千年来の付き合いがあるが故に言う事を聞きにくい雷山を、唯一(たしな)めることが出来る銀華零がいないこのタイミングで五番隊隊長代理に選んでしまったことを少し後悔していた。

 

 

 

 





・その他用語


”縛道の九十一”『枷外(かせはず)し』
自身に掛けられた鬼道を解くことが出来る。ただし、番号が上がっていくにつれて解除にかかる時間が増える(九十番台でだいたい10分かかる)。


『 隊 長 代 理 』
それは副隊長に隊長と同等の権限を一時的に貸与する”隊長権限代行”とは違い、文字通り【宮廷遊撃部隊】の1人を一時的に【護廷十三隊隊長】へ復職させる制度である。

この制度は隊長職の欠員が数十年、数百年の長きに渡ると判断される場合に【護廷十三隊総隊長】【宮廷遊撃部隊・十四番隊部隊長】両名の行使決定権、任命権を以て適応することが出来る。
最初にして最後に行われたのは、今から110年前の椿咲による『十番隊隊長代理』であった。

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