宮廷の遊撃人   作:らりるれリッター

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第24話 邂逅(かいこう)

 

 

ガキンッ!!

 

 

「斬魄刀は解放しないのかい?浮葉隊長」

 

「足止めと言ったでしょう。足止めに始解は必要ありません」

 

「どうやら、随分と僕は甘く見られちゃっているみたいだね」

 

「どの口が言っていることやら。殺気も出さずに戦う隊長がいますか?」

 

 

八番隊隊舎の敷地内では、京楽と浮葉が切り結んでいた。

しかしお互いに本気と言う訳ではなく、浮葉は京楽が先に進まぬように足止めに徹し、京楽も足止めされたと大義名分を作るためにあえてそれに乗っている形だった。

 

 

「隊長!」

 

「七緒ちゃん、危ないから下がってて」

 

「申し訳ありません。悩んだのですが、お伝えした方が良いかと思いまして」

 

 

京楽は七緒から目を離すとジッと浮葉を見据えた。浮葉は先に進まないのであれば、どうぞご勝手にとジェスチャーで合図していた。

 

 

「……そう言えば、さっき裏廷隊(りていたい)の子が来てたね」

 

「はい、伝令です。藍染隊長がお亡くなりになりました」

 

「え?」「ッ!!」

 

「死因は斬魄刀による鎖結及び魄睡の摘出と心部破壊。事故死ではなく、殺害です」

「犯人は不明。山本元柳斎重國、日番谷冬獅郎両隊長の連名による一級厳令ですので、間違いのない情報かと……」

 

「……そっか、惣右介くんが」

 

「藍染惣右介が……?」

 

 

藍染が殺害されたという情報は浮葉を驚かせていた。【宮廷遊撃部隊】の目算では藍染は朽木ルキアの処刑に立ち会うものだと思われていたからであった。

それが殺害されたとあっては事実にしろそうでないにしろその目的が一気に分からなくなるからであった。

 

 

「どうするの?浮葉隊長。僕は顔だけでも見に行こうと思うんだけれど」

 

「ご勝手にどうぞ。私も今しがた用事が出来たところなので」

 

「……そう。七緒ちゃん、行くよ」

 

 

京楽は浮葉に背を向けながら手を振り歩いて行った。七緒は浮葉に怪訝そうな顔を向けて京楽に続いた。

浮葉は茶渡を追おうと考えたが、向かった場所が銀華零たちのいる懺罪宮(せんざいきゅう)であったため、問題はないと判断した。

 

 

「……となれば、私は詰所に戻るべきですね」

 

 

浮葉は事態が大きく動いたとして十四番隊詰所へ急いだ。

 

 

 

 

 

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

 

 

 

 

 

「藍染隊長、私は……」

 

 

牢の中で【五番隊副隊長】雛森が1人正座して先刻の一連の騒動について深く考え込んでいた。

ここは五番隊舎内にある特別拘禁牢。雛森は先の騒動によって謹慎を命じられていた。

 

 

"お待ちください!如何に総隊長からの許可を得ていたとしても今は……"

 

"あー、うるさいうるさい!緊急任命とは言え、新任の隊長が現副隊長に挨拶も無しとは副隊長の面目ないだろ。分かったら散った散った!"

 

 

「え、なに……?」

 

 

その時、外では見張りの死神と雛森も聞いたことの無い声の人物が言い争っていた。ひとしきり言い争った後、見張りの死神が渋々折れたようで、

 

"くれぐれも問題の無いように"

 

と何回も念押ししている声が聞こえてきた。

 

 

「そんなの言われなくても分かってるわ!こちとら何百年も……っと、すまんな。随分と騒がしくして」

 

 

雛森は入って来た死神の姿をまじまじと見つめていた。隊長羽織を着ていることから隊長なのだろうと推測することは出来たが、雛森は目の前に立つ人物の顔を見たことがなかった。

 

 

「五番隊副隊長、雛森桃で間違いないな?」

 

「えっ……?あなた、誰ですか……?」

 

「ああ、名乗り遅れてすまないな。追って沙汰が届くと思うが、藍染惣右介隊長の死去に伴い緊急任命で五番隊隊長に着任することになった雷山悟だ。よろしくな」

 

 

厳密に言えば、一刻の猶予が無い状態で強制的に隊長に任命する『緊急任命』と『隊長代理制度』は似て非なるものであった。

そして本来は隊長代理制度については話すわけにはいかない秘密事項であったために、雷山はあえてそう言い回しをした。

 

 

「は、はぁ……」

 

 

一方で、目の前で緊急任命とは言え五番隊隊長に着任したという死神を前に雛森は困惑していた。雷山はその雛森をひと目見て"やつれている"という印象を持った。自身の隊の隊長が突然死去とあればそうなるのも不思議ではないと思ったが、それと同時に副隊長がここまで消耗するほどに藍染が慕われていた事実と、それほど本性を隠し続けていた藍染に対して雷山は見事と言うほかなかった。

 

 

「まだ状況が飲み込めないだろうが、今は俺が新しい五番隊隊長になったということだけ覚えておいてくれればそれでいい。じゃあ、そこから出てくるのを楽しみに待ってるぞ」

 

「あ、あの!」

 

 

ひとしきりの会話を終えて去って行こうとする雷山を雛森は呼び止めた。

 

 

「私、市丸隊長が何か隠しているような気がして……もし可能ならば……―――」

 

「……雛森副隊長。それ以上はいけない」

 

 

雷山は本来の立場上、市丸と藍染が繋がっていることを知っていた。その中で意図せず市丸が何か隠していることに勘付いた雛森を称賛していた。

しかし、雛森の副隊長としての立場上、他隊とは言え隊長を証拠も無しに疑うことは止した方がいいと名前を呼ぶことで諭した。そして雛森も途中まで言ったところでただの憶測で隊長である市丸ギンを疑っていると言っていることに気が付いた様子だった。

 

 

「……あっ、すいません。私、勝手な憶測でこんなことを……」

 

「気にするな。慕っていた隊長が死んで誰も彼も疑いたくなるのは分からない話じゃない。まだ調べもついていない状況で誰か藍染隊長を殺したか分からないからな。推測だとしても市丸隊長が何かを知っているかもしれないということは頭に入れておくよ」

 

「い、いえ……」

 

「まあ、焦らずに行こう。冷静に物事を見なければ、見えるものも見えなくなるものだからな」

 

「……?」

 

 

雷山は自身が含みを持たせていった言葉の意味について、分からずにキョトンとする雛森を置いて出口に向かい歩き始めた。

出て行こうとした際に入れ違いに【十番隊副隊長】松本乱菊が入って来た。松本は拘禁牢から出てくる雷山を見て、自身が一切見たことがないこともあってか不審に思っている様子だった。

 

 

「あんたは……誰?」

 

「ん?」

 

 

話しかけられた雷山は目の前で(いぶか)しむ死神と対して、咄嗟に腰からぶら下げられる形で身に着けている十番隊の副官証を見た。

雷山は現十番隊副隊長は松本乱菊という人物だったと記憶していた。そして椿咲から容姿とその人となりについて聞いていたため、目の前に立つのが本人であると知った。

 

 

「不審がるのも無理はないが、そんな腫物(はれもの)を見る目で見ないでもらいたいな。まあ、それは置いて自己紹介でもしておこう。俺の名前は雷山悟。そのうち追って沙汰が届くだろうが、藍染惣右介隊長の死去に伴い、緊急任命で五番隊隊長に復帰することになった者だ」

 

「雷山悟?」

 

「ああ、とりあえず今は五番隊副隊長の雛森に就任したという挨拶をしに来てただけだ。では、俺はこれで」

 

 

そう言うと雷山はその場を去って行った。その時、雷山は松本が手紙らしきものを持っていることに気が付いたが、特に気にも留めなかった。

 

しかし雷山は思いもよらなかった。松本が雛森へ渡すこの手紙が事をさらに大きくするとは、

 

 

 

 

 

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

 

 

 

 

 

「ここが……」

 

 

浮葉と別れた茶渡は懺罪宮(せんざいきゅう)の麓までやって来ていた。

辺りに人影がなく、警備が手薄に見えたため一気に駆け抜けようと考えていた。

 

 

「止まりなさい」

 

 

しかしその時、茶渡は背後から声をかけられていた。

 

【挿絵表示】

 

見ると金色の髪を後ろで束ねポニーテールにしている女性死神が立っていた。

初めこそ鋭いまなざしを向けていたその死神だったが、茶渡の姿を見て「もしかして……」と言いたげな顔を見せた。

 

 

「……その恰好、もしかして旅禍(りょか)の方ですか?」

 

「あんたはいったい……」

 

「あたしは【十四番隊・第二将”次鋒”】山吹雷花と言います」

 

「十四番隊?」

 

 

茶渡は十四番隊の言葉に聞き覚えがあった。少し前に出会い、自身を庇い【八番隊隊長】を足止めすると言った浮葉刃と名乗る死神がそう言っていたと記憶していた。

そして山吹は茶渡が十四番隊という言葉に反応したことからすでに誰かが茶渡と会っていると察した。

 

 

『今瀞霊廷内で動いていると考えるならば……』

「浮葉刃と名乗る死神に会いましたか?」

 

「……その浮葉って死神と同じと考えてもいいのか?」

 

「はい、ひとまずはあたしについて来てください。朽木ルキアさんの前にあたしの上官に会ってもらわなければならないので」

 

「……分かった」

 

 

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

 

 

「……誰もいねぇみたいだな」

 

「おかしいですね。普通なら見張りがいるはずなのに……」

 

 

数分後、懺罪宮(せんざいきゅう)に辺りを探るように2つの影があった。

その正体は岩鷲と訳あって行動を共にする【四番隊第七席】山田(やまだ)花太郎(はなたろう)だった。

 

2人は極囚・朽木ルキアが囚われる独房の前に見張りの死神が誰1人としていないことを不審に思っていたのだ。

 

 

「罠かもしれねぇが、絶好の機会であることに変わりねぇ。さっさとルキアちゃんを出してやろうぜ」

 

「はい、そうですね」

 

 

岩鷲と花太郎は仮にこの状況が罠だとしても朽木ルキアを出してさえしまえば、あとはどうとでもなると考えすぐに行動に移った。

 

 

「しっかしまあ、牢の扉はシャッター型か。さて、どうやって開けるかだが……」

 

「ああ、それなら……」

 

 

そう言うと花太郎は懐から漢字の「山」のような形をした鍵のようなものを取り出した。明白な「裏切り行為」にさすがの岩鷲も驚いた。

 

 

「おい、大丈夫かよお前」

 

「いいんです。僕だってルキアさんを助けたい、その為に出来るだけのことはしようって決めたんです」

 

「……そうか。お前がそんなに助けたいってことはそのルキアってやつはよっぽどのかわい子ちゃんなんだな。いっちょ顔を拝んでみるか」

 

 

シャッター型の扉が開くと同時に牢の中に光が差し込んだ。中には小柄な女性が一人立っており、その人物が朽木ルキアであることを岩鷲は知ることとなるが、その顔に見覚えがあった。

 

 

「お前は、あの時の……!!」

 

 

その昔、志波岩鷲の兄である当時の【十三番隊副隊長】志波海燕(かいえん)は血だらけの状態で流魂街(るこんがい)にある空鶴(くうかく)邸に運び込まれた。まだ幼い岩鷲はその光景を断片的にしか覚えていなかった。曰く、冷たい目をして兄である海燕を連れてきた死神とその死神に対して礼を言う海燕の姿を、

 

 

「いったい何事だ……?」

 

 

状況が分からないルキアを置いて岩鷲は目の前に立つ朽木ルキアこそが兄である志波海燕を殺した死神であることを知ることとなった。

そんな時、銀華零と山吹が茶渡を連れて戻ってきた。

2人はすぐさま牢のシャッターが開いていることを確認し誰かが来たことを知った

 

 

「……銀華零隊長」

 

「ええ、ここまで到達したという事ですね」

 

 

山吹は一護と更木が戦いを始めたのでその様子を見に行くその道中で茶渡と出会っていた。

そして銀華零は山吹から旅禍(りょか)の1人である茶渡と遭遇したためにそちらへ向かっていた。

 

花太郎が見張りがいないと不思議がっていたのはこれが理由だった。一護と茶渡が生んだ奇跡のタイミングで岩鷲と花太郎はルキアと対面していたのだ。

 

 

「これはいったいどういう事ですかね」

 

 

銀華零は瞬歩(しゅんぽ)で一気に牢の入り口まで移動し中を確認した。見ると朽木ルキアのほかに見慣れぬ装束の人物が1人、死覇装を着た死神が1人いた。

 

 

「「ッ!!」」

 

 

突然声をかけられた岩鷲と花太郎は咄嗟に振り返った。そこには斬魄刀を携えた銀華零と山吹の2人と何故か茶渡が立っていた。

 

 

「茶渡!?なんでオメェがそいつらといるんだ!?」

 

「いろいろあってな……」

 

「コホン……本題に入りますね。朽木ルキアさんの救出に来られたところ悪いのですが、あなた方はわたくしたち【宮廷遊撃部隊】が保護いたします。ですので、この山吹と共に十四番隊詰所へ向かってもらいたいのですが」

 

「……っは!殺されねぇ保証もねぇのに、『はい、そうですか』と従う奴はいねぇだろうよ!」

 

「警戒心が強いのは良いことですが困りましたね……」

 

 

困ったように苦笑いしている銀華零の後ろでは山吹が臨戦態勢を取っており、いつでも抜刀できるように構えていた。

勿論、それは銀華零もすぐに察することになり、制した。

 

 

「……雷花さん。間違っても手出しはしないでくださいね」

 

「銀華零隊長、しかし……」

 

「しかしではありません。この方たちが恐らく(くだん)の―――……ッ!」

 

 

銀華零が山吹との会話に気を取られている隙に岩鷲は懐から何やら玉らしきものを取り出した。

 

 

「こうなりゃ先手必勝だ!食らえ、血涙玉(ちなみだま)!」

 

 

岩鷲が銀華零に向かって球のようなものを投げた。

血涙玉(ちなみだま)』それは、中に唐辛子などの香辛料の入る岩鷲特製の花火玉でひとたび炸裂すれば、隊長格と言えども咳と涙が止まらなくなる代物だった。

 

 

「……これは、また変わった物ですね」

 

 

ドンッ!! パラパラパラ―――……

 

 

銀華零がそう言った1秒後懺罪宮(せんざいきゅう)からはるか下で何かが爆発したような音が聞こえてきた。それを聞いた銀華零は音の正体が花火だと推察した。

花火を扱う点と見慣れぬ装束、よく見れば家紋のような物が付いており、それらから考えて目の前の人物が情報として受け取った旅禍(りょか)の1人、志波岩鷲であることを看破した。

 

 

「なんだ……いったい何が……」

 

 

一方で岩鷲は目の前の死神に向け投げたはずの花火がいつの間にか元の軌道を大きく外れて爆発したことに驚いていた。

しかし、岩鷲もバカではないため目の前の死神が一瞬にして弾いたのだと理解した。しかし特筆すべきは、斬魄刀を抜きそして弾くの一連の行動が残像としてもまったく見えなかったこと。そこに2人の間に圧倒的な実力差があることを痛感した。

 

 

「くそっ」

 

 

岩鷲は銀華零に対して下手な小細工は通用しないと判断し、イチかバチか戦闘不能、もしくは人質にでもと考えて飛びかかった。

 

 

「うおおおぉぉぉぉ!!」

 

「はぁ……」

 

「!!」

 

 

それは一瞬だった。銀華零に飛びかかった岩鷲だが、次の瞬間には目の前から銀華零が消え失せており、気がつけば背後に立っていた。

岩鷲はもう打つ手が無くなり観念するように両の手を上げていた。

 

 

「……気は済みましたか?」

 

「くっ……」

 

「銀華零さんと言ったか。さっきの会話で朽木をここから出すわけにはいかないと言っているように聞こえたが、その理由を聞いてもいいか?」

 

「朽木ルキアさんをここから連れ出すのは容易いことです。しかしそれでは敵の行動とわたくしたちの想定の間にズレが生じてしまいます。その場合、朽木ルキアさんを含めあなた方全員を守ることが難しくなるのです」

 

「難しくなるという事は、不可能ではないんだな」

 

「ええ、ハッキリ言ってしまえば、我々【宮廷遊撃部隊】は【護廷十三隊全軍】と戦っても勝つ自信はありますよ。それでも可能性が少なからずあるのならば、やめるに越したことは無い。それが、他者を危険にさらすことなら特に」

 

「……そっちの事情は分かった。岩鷲、ここは大人しく……―――」

 

 

ドンッ!!

 

 

その時、、巨大な霊圧が辺りを包んだ。

その霊圧にルキアたちは冷や汗をかいていたが、一方で銀華零と山吹はその霊圧が【六番隊隊長】朽木(くちき)白哉(びゃくや)の物だと即座に把握した。

 

 

「やれやれ、今日はやけに来客が多い日ですね。あなたはここに何用でお見えになったのですか?朽木六番隊隊長」

 

(けい)らには関係ない。私はただ、この場に潜り込んだ羽虫を払いに来ただけのこと」

 

「羽虫とは言いようですね。残念ながらもう終わっていますよ。お引き取り下さい」

 

「成程。(けい)らの目にはそれで終わっていると見えるわけか」

 

「……雷花さん」

 

 

その時、銀華零は白哉が言った羽虫という言葉には護廷隊士の花太郎と妹であるルキアの2人も含まれていると察した。

そして白哉が攻撃を仕掛けると察知して山吹に暗に4人を守護せよと指示を出した。

 

 

「”()れ”『千本桜(せんぼんざくら)』」

 

 

白哉が解号を唱えると同時に、彼の斬魄刀の刀身が桜の花びらに徐々に変化していた。

 

 

ガキンッ!!

 

 

その最中、銀華零は白哉に斬りかかっていた。

その行動は白哉の目に明確な裏切りに映り、驚きはしていたが受け切れないものではなく咄嗟に始解を止め刀のまま銀華零の斬撃を受け切った。

 

 

「驚かせて申し訳ないですね。朽木六番隊隊長」

 

「……どういうつもりだ」

 

「どういうつもりって、私はただ、必要以上にこの場を荒らさないでほしいだけですよ」

 

「極囚を脱獄させようとする羽虫を認識しながら何もするなと言う訳か。その行動こそ我等に対する恥ずべき反逆と知れ」

 

「反逆?おかしなことを言いますね。この場にいる4人はすでに投降していますよ?それに、私たちは山本総隊長より朽木ルキアの警護を任されています。警護とはそれ即ちこの場の秩序維持も指します。その私たちが先ほど鎮圧化した後に、一介の隊長が始解で荒らしていくのは良しとは出来ません。仮にも隊長であるあなたなら分かるはずでしょう?」

 

 

かつて隊長であった銀華零は”引き際”について何百年もの経験から弁えていた。しかし銀華零の経歴など一切知らぬ白哉からすれば、遠征から戻った一介の死神如きに”隊長としての矜持”を挑発しているともとれるその言動に眉をひそめていた。

 

 

「「…………」」

 

 

白哉と銀華零は睨み合ったまま互いに動かず、辺りの空気が張り詰めて緊張感が生まれていた。

『 一 触 即 発 』の言葉が似合う程に、

 

 

「まあ、どうしてもと言うのならば、私を反逆者として斬っても構いませんよ。出来ればの話ですけれどね」

 

「貴様……」

 

 

白哉は剣を弾き銀華零と距離を取った。そして銀華零を斬り捨てるべく刀を構えたその時だった。

 

 

ガシッ!!

 

 

「―――……ッ!!」

 

 

突如として白哉の腕を掴む死神が現れた。白哉も銀華零も目の前の相手に集中していたために近づいてくるその死神の気配に全く気が付いていなかった。

 

 

「物騒だな。2人ともそれくらいにしておいたらどうだい?」

 

「……浮竹」

 

「浮竹?」

 

 

白哉が不意に発した名前で銀華零は目の前の人物が【護廷十三隊十三番隊隊長】浮竹(うきたけ)十四郎(じゅうしろう)と知った。

浮竹の登場は銀華零と山吹にかなりの警戒心を与えた。敵か味方か分からない隊長がどのような思惑でこの場に現れたか分からなかったためであった。

 

 

「う、浮竹隊長……?」

 

「おっす、朽木!少し痩せたな、大丈夫か?」

 

「……まずいですね」

 

 

銀華零は一言だけそう呟いていた。現在の護廷十三隊隊長の中で穏健派として有名な浮竹ではあるが、もし仮に白哉に加勢したら銀華零、山吹の二人をもってしても4人を守り切れず殺されてしまう可能性が高いからだった。

しかし、それはあったとしても1%未満のありえないことであるが、銀華零としては警戒心を解いていい理由とはならなかった。

 

 

「そんな警戒しなくても大丈夫ですよ、銀華零隊長。それよりも白哉こんな所で斬魄刀解放なんて一級禁止条項だぞ?」

 

「心配無用。戦時特例により斬魄刀の全面開放は許可されている」

 

「戦時特例?旅禍(りょか)の侵入がそこまで大事になっているのか。まさか藍染を殺ったのも……」

 

”その旅禍(りょか)なのか”

そう浮竹が言葉にしようとしたその時、突如として橋の下より強大な霊圧が辺りを覆い始めた。その霊圧はその場に居る者は感じたことの無い霊圧だった。ただ一人、ルキアを除いて、

 

 

「何だこの霊圧は明らかに隊長クラスだぞ……!!だが、知らない霊圧だ……」

 

「この霊圧の感じ……まさか」

 

 

その時、橋の下より一護が右腕に巻いた道具を用いて空を飛んでやって来た。状況が分からない一護はたまたま近くにいた死神、山吹に斬りかかった。

 

 

ガキンッ!!

 

 

「くっ!!何をするんですか……あなたは!!」

 

 

ドンッ!!

 

 

「うぐっ!?」

 

 

一護の斬撃が届く直前、山吹は咄嗟に抜刀してその斬撃は防いでいた。しかし、一護は斬撃を防がれたと判断すると同時に、二撃目となる掌底を放った。その一連の動きは【十四番隊・第二将”次鋒”】の地位を持つ山吹を以てしても捉えることが出来ず、そのまま鳩尾を撃ちぬかれ弾き飛ばされた。

 

 

「雷花さん!!」

 

 

その光景は銀華零の想定を超えてであり、思わず山吹の名前を叫んでしまっていた。

 

 

『オレンジ色の髪に身の丈ほどの大刀……』

「この方が黒崎一護さん……!!」

 

 

そして、山吹を破った死神はオレンジ色の髪と身の丈ほどの大刀を背負った特徴を持っており、つい先日狐蝶寺から聞いた旅禍(りょか)の特徴と酷似していた。

その事から銀華零は目の前の死神が旅禍(りょか)の1人、黒崎一護であることを知った。

 

 

 

 

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