宮廷の遊撃人   作:らりるれリッター

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第27話 十一番隊へ

 

 

「護廷十三隊五番隊隊長、雷山悟だ。更木剣八隊長に会いに来た」

 

 

狐蝶寺が総合救護詰所にいるまさにその時、雷山は十一番隊隊舎にいた。

狐蝶寺からの情報として、井上織姫は今十一番隊の隊士に連れられていると聞いたために十四番隊詰所に連れて行くためにやって来ていたのだ。

 

 

「誰だぁ?てめぇは」

 

「緊急任命で五番隊隊長に就任した雷山だ。更木隊長はどこにいる?」

 

「はははは!!」

「てめぇみたいのが緊急任命?隊長に就任だあ?」

 

「…………」

 

 

偶々(たまたま)居合わせた十一番隊隊士は雷山のことを顔が見たことがないという理由でまるでチンピラが絡むように横柄な態度で対応していた。

雷山は現在の十一番隊が隊長と上位席官の一部は人格者であることは知っていたが、末端に行くほどこのような無法者とは言はないまでもチンピラに似たようなものが増えると認識していた。

 

 

「はぁ……ともかく、お前では話にならない。綾瀬川五席以上の者をよこしてほしいな」

 

「なんだと!?」

「調子に乗るんじゃねぇぞ!」

 

 

目の前の隊士は怒りだし斬魄刀に手をかけていた。

その行動は雷山にとっては何の脅しにもなっていなかった。しかし大人しく斬られるつもりもなかったため、仕方なしに無理矢理退けることにした。

 

 

「いいから……」

退け

 

「「!!」」

 

 

雷山が一瞬だけ出した威圧感は隊士たちを怯ませるには十分だった。

更木が普段から放つ以上とも言える威圧感を受けた2人の隊士は完全に怯えだしてしまった。そんな隊士たちをよそに雷山は他に誰かいないか辺りに目を向けていた。

 

 

「何の騒ぎだ」

 

「「綾瀬川五席」」

 

「はぁ……」

 

 

その時、雷山と隊士たちのいざこざを聞きつけた【十一番隊第五席】綾瀬川弓親がやって来て、雷山はため息を吐いた。

一方で弓親は怯えている様子の隊士と隊長羽織を身に纏う死神に目を向けていた。状況から何があったか察しはついたが、特筆すべきは目の前の隊長羽織を着た死神だった。

 

 

『この隊長はいったい……いや、少し前に……』

 

 

雷山と弓親はこれが初対面であり、弓親自身はその死神を見たことが無かったが、それと同時に少し前にあった元柳斎からの通達を思い出した。

 

 

「やっと話の分かるやつが来たか」

 

「お前たちは下がれ。僕が応対する」

 

「「は、はい」」

 

「うちの隊の者が失礼を、あなたは確か……」

 

「緊急任命で隊長に就任した者、と言えば分かりやすいか?綾瀬川五席」

 

「雷山隊長……でしたか。いったい何のご用でしょう」

 

「井上織姫を引き取りに来た。……いや、まずは更木隊長と話しに来たと言えばいいか?」

 

「……分かりました。こちらへどうぞ」

 

 

雷山は弓親が一瞬だけ自身に怪訝(けげん)な顔を向けたことに気が付いていた。

しかし、弓親は自身が仮にも隊長であるためにその事を言えないのだろうと判断して、その理由を聞こうと考えた。

 

 

「綾瀬川五席、そんな(かしこ)まらなくていい。言いたいことがあるなら言ってくれ、いつまでもそんな不審な目で見られてもたまらんからな」

 

「……では、失礼を承知で申し上げます。雷山隊長、あなたはいったい何者ですか?」

 

「…………」

 

荒巻(あらまき)旅禍(りょか)を連れてきたことは、他隊には出ていない情報。強いて言うならば涅隊長しか知り得ない。何故、あなたは知っているのか聞いても」

 

「そこに居合わせたやつから聞いた」

 

「そこに居合わせた?いったいどなたですか」

 

「しばらくの間、他言無用を通してくれるなら話すがどうする?一応言っておくが、今はまだそれほどの機密事項とも言える」

 

「……分かりました」

 

「俺の本来の所属は【宮廷遊撃部隊】”十四番隊”と言う。訳あって旅禍(りょか)の保護に動いている。その最中、涅マユリと石田雨竜が戦闘しているのを他の十四番隊が発見して保護した。その時に、井上織姫が十一番隊の者が連れて行ったと聞いたそうだ」

 

「……成程、それで雷山隊長が引き取りに見えた、と」

 

「ああ、手荒なマネはしない。更木がどう言うかは知らんが、殺しはしない、余計なことに巻き込まないというならこちら手を引くつもりではある」

 

「分かりました。そう言うことなら案内します」

 

「助かる」

 

 

         ・

 

         ・

 

         ・

 

         ・

 

         ・

 

 

「隊長、五番隊の雷山隊長が会いたいとのことでお連れしました」

 

「ああ?」

 

 

弓親に案内された部屋に入ると体に包帯を巻かれ、死覇装を文字通り羽織った格好の更木、椅子に座る班目一角と井上織姫、ベッドに腰掛ける草鹿(くさじし)やちる、そして雷山も知らぬちょび髭と言えるくらいのひげを生やした隊士が1人いた。

全員共通して言えるのはこちらに目を向けていたことだった。

 

 

「……なるほどな、てめぇが藍染の後釜っていう雷山か」

 

 

更木は姿を見るのはこれが初めてだが、元柳斎からの沙汰で雷山のことは名前で知っていた。

その雷山が何かしろの理由、恐らくは旅禍(りょか)の件で自身のところへ来たのだろうと看破していた。

 

 

「まだるっこしいのは嫌いなんでね。単刀直入にいかせてもらうが、井上織姫を引き取りに来た」

 

「……てめぇが何を企んでやがるかに興味はねぇが、この女は俺が一護と戦うのに要るんだ」

 

「その黒崎一護を含めた旅禍(りょか)の保護を我々は行っているわけなんだが」

 

「っは、知った事か。俺の邪魔しようってんならここでてめぇからたたっ斬るぜ」

 

 

そういう更木の目には殺気が映り、手は斬魄刀にかけられていた。

一方の雷山はこんなところで騒ぎを起こしたくないと消極的だったが、場合によっては衝突は避けられないと感じていた。

 

 

「イエーイ!剣ちゃんやっちゃえー!」

 

「あ、あの!」

 

 

更木剣八と雷山悟。2人の隊長の間に走る緊張を解いたのは井上織姫だった。

井上織姫は雷山が語った”旅禍(りょか)たちの保護”という言葉に引っかかった様子だった。

 

 

「私たちの保護っていったいどういう事なんですか?」

 

「それに答える前に、自己紹介でもしよう。俺は雷山悟と言う。今は【護廷十三隊五番隊隊長】に就くが、本来は【宮廷遊撃部隊・十四番隊部隊長】の職位を預かる者だ」

 

「わ、私は井上織姫です……」

 

「お前たちのことは四楓院夜一から聞いている。お前たちを保護する理由だが、我々も朽木ルキアの処刑を阻止するために動いているからだ。その過程でお前たちの死は避けるべきと判断した。だから保護して回っているんだ」

 

「え……?」

 

 

その時、織姫は驚いた顔をしていた。織姫もまた雨竜と同様に十四番隊なる部隊は護廷十三隊とその目的が同じだと思っていたためである。

雷山はまだ知る由もないが、その反応は狐蝶寺が雨竜に話した時と同様だった。

 

 

「その様子だと、我々のことも護廷十三隊のそれと同じと思っていたみたいだな。安心しな、()()()味方だ」

「現状を説明すると、十四番隊詰所ですでに2人、(じき)に狐蝶寺と言う死神が石田雨竜を保護して連れ帰るところだな」

 

「……黒崎君は?」

 

「残念だが、今どこにいるかは分からない。四楓院夜一と共にいることだけは分かっているが」

 

「そう、ですか……」

 

「安心しな、女」

 

 

雷山は銀華零からの報告で一護が夜一と共に消えた所までは知っていたが、どこにいるかまでは知らなかった。

その事に目を落としていた織姫に更木が声をかけていた。

 

 

「奴は生きて、まだ強くなろうとしてる」

「どうするよ、俺は一護を探す。一緒に来るってんなら手助けくらいはしてやる」

 

「でも……」

 

織姫はほかの3人と共に保護すると言う雷山に気を遣っている様子だった。その証拠と言うべきかチラッと目を向けたのを雷山は気が付いていた。

 

 

「気にしなくてもいいぞ」

 

「え……?」

 

「どこにいるか分からない仲間が心配だというその気持ち、分からないわけじゃない。無理強いをしているわけではないし自分の思うようにするといい」

 

「……私、十一番隊の皆さんと一緒に行きます。黒崎くんを探すために」

 

「ふっ、自分の意思をはっきりさせる奴は俺は好きだぞ。更木、俺は本人の意思を尊重して井上織姫をこの場に残していくが、余計なことに巻き込むなよ」

 

「知ったことか。だが、そう言うことならこっちは勝手にさせてもらうぜ」

 

「井上織姫、一応これを渡しておこう」

 

 

雷山は十四番隊詰所の場所が書かれた紙を織姫に手渡した。

十四番隊詰所で保護されている3人に織姫が会いに来れるようにと取られた措置だった。

 

 

「こちらも黒崎一護の捜索は続ける。もし先に見つけたら報せよう」

「それから更木、十四番隊詰所に来ても変に揉めるなよ。じゃあな」

 

 

 

 

 

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

 

 

 

 

 

「たっだいま!石田雨竜くんを連れて来たよ」

 

 

狐蝶寺はそう声を上げながら十四番隊詰所の襖を開いた。

その音で全員の視線は狐蝶寺へと向けられていた。その中で旅禍(りょか)の2人は狐蝶寺に連れられた雨竜を見て声を上げた。

 

 

「石田」

 

「茶渡君!本当にここにいたとは」

 

「ひとまず無事でよかった。井上は?」

 

「井上さんは僕が十二番隊隊長の涅と名乗る死神と戦う際に十一番隊の死神に託した。それからは……」

 

「大丈夫だって♪そっちは雷山くんが行ってくれてるから」

 

「しかし……」

 

 

茶渡が何かを言いかけたその時、部屋と廊下とを仕切る襖が勢いよく開き、椿咲が転がり込んできた。その顔には若干お焦りが見えた。

 

 

「えっと……南美ちゃん、おかえり?」

 

「すいません、騒がしくしてしまいまして」

 

「別にいいけど、大丈夫?」

 

「はい、それよりも雷山隊長は戻っていませんか?伝えなければならないことがあります」

 

「雷山くんは『五番隊隊長代理』に任命されちゃってね。こっちにはなかなか帰って来れないみたいなんだよね。今は十一番隊のところに行ってるけど、五番隊の隊舎に行けば会えると思うよ」

 

「そうですか……」

「分かりました。では、まず浮葉君と春麗さんにお伝えします。藍染君のその目的について」

 

 

椿咲がそう口にしたとき浮葉と狐蝶寺はピクリと反応した。朽木ルキアの処刑が決定されてから今に至るまで謎に包まれていた藍染の目的が判明したからである。

 

 

「藍染惣右介はいったい何を目的としていたのですか?」

 

「結論から言うとね。朽木ルキアちゃんに用があるのではなくて、朽木ルキアちゃんに隠されている物に用があるみたい」

 

「隠されている物?それって何なの?」

 

「名前を『崩玉(ほうぎょく)』。それが物質なのか現象なのか詳しくは分かりませんが、藍染君は双極を使って朽木ルキアちゃんの身体を蒸発させて取り出そうと考えているみたいです」

 

「成程……。それで双極による極刑ということですか」

 

「ただ、それだけじゃないみたいで」

 

「どういうことなの?」

 

「調べがついた時に藍染君と遭遇したんですけど、その場所が『大霊書回廊』でした」

 

 

大霊書回廊(だいれいしょかいろう)とは、尸魂界(ソウル・ソサエティ)全ての事柄が強制的に収められる場所である。収められる内容は、研究成果、過去の事件、表に出すことの出来ない機密事項など多岐にわたる。

 

 

「大霊書回廊ですか」

 

「処刑の期日を待たずに死を装ってまで潜伏するってことは何かを調べる時間が欲しかったと私は読みました。そこで、いざ行ってみたら」

 

「当たり、だったわけですか」

 

「そう言うことです。話を戻しますが、大霊書回廊にいたからには何かを調べていたことになります」

 

「うーん、またひとつ謎が増えちゃったね。困っちゃうなぁ」

 

「春麗隊長、それは藍染惣右介を捕えれば分かることです。それより今は……」

 

 

狐蝶寺は浮葉の目線の方を見た。そこには雨竜を始め旅禍(りょか)の3人がキョトンとまではいかないが、ただ茫然とこちらのやり取りを見ていた。

3人は椿咲のことを初めて見ることになりこの人物はいったい誰なのか、そして何を話し合っているのかとそう言った表情をしていた。

 

 

「あ、ごめんね。置いてけぼりになってたや」

 

「そう言えば、この3人はもしかしてですけど……」

 

「そっ♪旅禍(りょか)の子たちだよ。さっき雷山くんが十一番隊に行ってるって言ったでしょ?あれも井上織姫ちゃんを迎えに行ってるんだよ」

 

「そうなんですね。ゴホン……えっと、まずは初めまして、私は椿咲南美と言います」

 

 

         ・

 

         ・

 

         ・

 

         ・

 

         ・

 

 

「井上織姫なんだが、本人が更木たちと共に行くというもんだから置いて来てしまったんだ」

 

 

数刻後、十一番隊に井上織姫を保護に向かった雷山から”縛道の七十七”『天挺空羅・応用編』で連絡が入った。

曰く、井上織姫を迎えに言ったが本人が黒崎一護の捜索のために更木と行く意思を示したためにそれを尊重して手を引いたと、

 

 

”え、大丈夫なのそれ?”

 

「大丈夫と言い切れないが、更木も黒崎一護と戦うために井上織姫への協力は惜しまないと言っていた。つまりは下手なマネはしないと踏んでいる」

 

”まあ、雷山くんがそう言うなら良いんだけど……”

 

「それよりも椿咲は戻って来たのか?」

 

”戻って来たよ。ちゃんといろいろ情報を携えてね。変わる?”

 

「変わらなくてもいいが、1つだけ聞いておきたい。藍染は何処にいたんだ?」

 

”大霊書回廊だって”

 

「大霊書回廊か……分かった。残りはあとで直接聞きに行くつもりだから、椿咲にはひとまずご苦労さまと言っておいてくれ」

 

”オッケー♪”

 

「ああ、それと井上織姫に十四番隊詰所の場所を教えたんだが」

 

”あれ、そうなの?ありがとうね♪私も織姫ちゃんにいつ教えようかなって思ってたところなんだよ”

 

「いや、さっきも言ったとおり井上織姫は更木と共にいるんだ。つまり更木を伴って詰所に来る場合も考えられる」

 

”…………なんで教えちゃったの?”

 

 

長い沈黙の後、狐蝶寺はただ一言そう言った。

その立場上自身にはできなかった織姫に他の旅禍(りょか)たちが十四番隊詰所にいることと、その場所を教えることを雷山がやってくれたことに感謝していた。

 

が、”更木剣八が来るかもしれない”という余計な不安要素が出来てしまったことに対しては不満を言っていたのだ。

 

 

「おいおい、こちらが保護に動いていると言った以上教えないわけにもいかないだろ」

 

”そうだけどさぁ……更木剣八くんが大暴れしない保証はないじゃない”

 

「俺としては大暴れしてくれた方が良いけどな。陽動をかって出てくれるなら願ったりだ」

 

”もう……じゃあ、更木くんが来たら雷山くんに一報入れるからね。何を置いてもまずこっちに来てよ?”

 

「分かった分かった。ひとまず、旅禍(りょか)たちのことは任せるからな」

 

”はーい”

 

「……まあ、確かに春麗の言う通り更木の動きは全く予測できないからな」

 

 

ダッ!ダッ!ダッ!ダッ!

 

 

「変に……って何の騒ぎだ?」

 

 

その時、隊長執務室の外では誰かが廊下を(せわ)しなく走る音が聞こえた。

足音は徐々にこちらへと向かって来ており、初めは気にしていなかった雷山も何事かとそっちに意識を向けた。

 

 

「|失礼します!!」

 

 

足音がピタリと執務室の外で止まると同時に、外から雷山を呼ぶ声が聞こえてきた。

 

 

「【五番隊第十一席】火波(ひなみ)(だい)です。雷山隊長は中におられますでしょうか!!」

 

 

その報告は旅禍(りょか)や藍染惣右介とはまた別の問題を加速させることとなる――――――

 

 

 

 

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