「すまない。遅くなった」
日番谷たちと別れた後、雷山はすぐに十四番隊詰所に戻ってきた。そこでは詰所に残る浮葉、椿咲、狐蝶寺の3人が慌ただしく動いていた。
「雷山くん大変だよ!」
「ああ、それは聞いている。椿咲が持ってきた情報の共有も兼ねてこれから緊急会議を行う」
「分かった!じゃあ、白ちゃんと山吹ちゃん呼んでくるね!」
「ちょっと待て、春麗」
その声に狐蝶寺も思わず振り返ってしまっていた。その顔には2人を呼びに行かなくてもいいのと言った表情が現れていた。
「わざわざ呼びに行かなくてもいい。その時間も惜しいからな」
「いいの?」
「こんな状況だからこそ、あの2人には朽木ルキアのそばに就いていてもらいたい。故に呼び戻すことはしない。それに……ッ」
「手段がない訳じゃない」
そう言うと雷山は歯で自身の左手の人差し指を切った。その後右手の掌に【十四】と血文字を書き右腕を伸ばした。
「"
雷山が伸ばした腕の先に巨大な【十四】の文字が現れ亜空間が生成された。その空間内には十四番隊詰所にはいない銀華零、山吹の姿もあった。こうしておよそ3日ぶりに【宮廷遊撃部隊】”十四番隊”のメンバーが全員揃った。
「まったく、1週間と経ってないのに、随分と久しぶりに会う気がするな。白に山吹」
「ええ、それだけ内容の濃い毎日が続いていましたからね」
「ああ、良くも悪くもだな。山吹、具合はどうだ?黒崎一護に手痛い一撃をもらったと聞いたが」
「うっ……それに関してはお恥ずかしい限りです。ご心配をおかけしましたが、もう万全の状態です」
「別に恥ずかしがる話ではないぞ。黒崎一護の成長速度がおかしすぎるだけだ」
「さて、前置きはここまでにして、今から緊急会議を行う。議題についてだが、皆も知る通り朽木ルキアの処刑日程が約29時間後、明日の正午に変更になった。そこでこの対応について話し合おうと思う」
「はい、私から先んじて情報共有をしても良いですか?」
その時、椿咲は手を上げていた。椿咲は自身が知り得た情報をまだ雷山、銀華零、山吹の3人には説明していなかった為、それを先んじて説明しようと考えた。
「……そうだな。俺もまだすべては聞いてないし、まずは調査結果から聞こうか」
「ありがとうございましす。さっそくですが、この時間短縮は藍染君の準備が整ったからだと思われます。そして肝心のその目的ですが……」
椿咲は『
続けてその藍染と遭遇した場所についても語った。それを聞いた銀華零はだから死を装う必要があったのだと得心が行った様子だった。
「以上が私からの報告です」
報告を終えて引き下がる椿咲と変わるようにして雷山が一歩前に出た。
雷山は「改めて言うことになるが」と前置きしたうえで語り始めた。それは自身が調べたうえで結論付けた藍染惣右介の斬魄刀についてだった。
「藍染惣右介の斬魄刀はやはり”人目に作用して別のものに魅せる幻覚能力”の可能性が高い。これは藍染とされる遺体を見て来たことで確信を得たんだが、あれは幻覚で作られたものではなかった。つまりは実在する物体に好きな外見を
「そして検死をしたであろう卯ノ花を欺き通したことを踏まえると、質感も精巧に
「成程……もしこの先で乱戦になるようなことがあれば厄介なこととなりますね」
「雷山部隊長、これから我々はどう動くべきですか?」
「そうだな……」
「雷山さん、【宮廷遊撃部隊】の『参謀』として提案があるのですがよろしいですか?」
「ああ、構わないぞ」
「ありがとうございます。まず、藍染惣右介への強襲は南美ちゃん、浮葉さんの2名で決行すべきと考えます。これの理由については―――……」
【十四番隊・”第五将”『大将』】である銀華零はどのような作戦をどのようにして進めるか決める『参謀』の役割を担っていた。そこで銀華零は藍染のもとへは十四番隊の中で最も藍染の事を知る椿咲、斬魄刀の能力で動きを封じることが可能な浮葉の2名を向かわせる提案をしていた。
「次に朽木ルキアさんについてですが、この後すぐに彼女を
「白、それに関してだが少し待ってくれ」
銀華零はかつて雷山に相談して了承を得ていた”万が一の際は朽木ルキアを懺罪宮から出す計画”をここで実行しようと考えていた。
しかし、それに待ったをかけたのは了承をしたはずの雷山自身だった。
「はい?」
「朽木ルキアは当初の予定通り、双極の丘に向かってもらった方がいい」
「その理由を聞かせていただいても?」
「こちらがまだ何の準備も、手も打てていないからだ。無策のまま朽木ルキアの身柄をこちらに移すのは大きなリスクが伴う、
「……そうですね。わたくしとしたことが功を焦りましたか」
「その代わりとして、俺が五番隊隊長として立ち合いに向かうのはどうか。あの場に来て我々と敵対となる隊長は多く見積もっても6人だ」
この6人とは元柳斎、
卯ノ花は救護部門の長と言う立場で不参戦、
京楽、更木、浮竹は
日番谷と涅は別の目的、或いは先の戦いによる負傷のため来ないと雷山は予想していた。
「6名ならば、護送の2人と俺1人の計3人で事足りる」
「成程……たしかに、悪くはない案です。しかし春麗ちゃんはどうするのですか?」
「そうそう、私はどうすればいいの?」
今までの話し合いで唯一名前が挙がっていない狐蝶寺の役割について銀華零と狐蝶寺本人が聞いていた。
「白、春麗。
「あー、それもそうだね」
「春麗ちゃんはそれで構わないですか?」
「うん、任せて置いてよ♪」
「では、春麗ちゃんは十四番隊詰所に残り、
「ではまとめるが、椿咲と浮葉が藍染への強襲。俺と白と山吹が双極にて朽木ルキアの処刑阻止。春麗が詰所にて
雷山は全員に対してその他に作戦に対して異なる意見はないかと問いを投げかけた。その場にいる全員とも、静かに頷き異論はなしとしていた。
「……異論はないな。よし、では先の案でいく」
「雷山部隊長、朽木ルキアさんのの護送に関してですが、彼女の身の安全を最優先と考えればよろしいですか?」
「いや、朽木ルキアもだが白と山吹の2人の身の安全も最優先だ」
「承知しました。ありがとうございます!」
山吹は笑みを浮かべてお礼の言葉を口にした。自身らの身の安全も案じてくれている雷山に感謝していたからだった。
「では雷山さん、後ほど双極でお会いしましょう」
「ああ、2人とも朽木ルキアの護送頼んだぞ」
「はい、彼女にとって死地とされる場所へ赴かせるのは心苦しいですが、朽木ルキアさんを必ず送り届けますよ」
「"
雷山がいくつか印を結ぶと生成されていた亜空間が徐々に崩壊し始めた。そして完全に消滅すると同時に元の十四番隊詰所に風景に戻った。
「それじゃあ、さっそく私たちは行こうか」
「ええ、私たちの戦果が今後を大きく左右すると言っても過言ではないですしね」
「浮葉、そんな重く考えなくてもいいぞ。強襲が成功すればよし、失敗しても藍染たちをどこかに誘き出せればそれもよしくらいでいい」
「お気遣いありがとうございます。しかし、【十四番隊・”第一将”『
「もう、浮葉君硬すぎるって!」
「……まあ、無事に行って帰って来てくれればそれでいい、頼んだぞ」
「はい!」「はっ!」
浮葉は一礼、椿咲は敬礼のようなポーズをとって瞬歩で
一方で雷山は初めて顔を会わせることとなる
「お前らがつい先日、
「雷山、悟……」
雨竜たち3人はそこで初めて、他の十四番隊から度々名前が挙がっていた雷山と言う死神が目の前に立つこの人物であることを知った。
「ふむ……ガタイのいい奴が茶渡泰虎、ヒョロヒョロの眼鏡が石田雨竜、そしてお前が志波岩鷲だな。成程、確かに四楓院夜一が言っていた通りだな」
「さて、本題に入らせてもらうが、お前たちはこの詰所内で待機していてもらいたい。勿論、放っておくわけではなく護衛としてこの春麗を置いていく」
「よろしくね♪」
「おう、邪魔するぞ」
その声と同時に廊下と部屋とを仕切る襖が開かれた。
全員の視線は自然とそちらに向けられたが、その前に雷山はその声に聞き覚えがあった。
「……更木か」
「て、てめぇは……ざ、ざざざ……更木剣八十一番隊隊長!?」
襖を開けて入って来た人物、それは【十一番隊隊長】更木剣八だった。それと同時に引き連れて来たであろう十一番隊第三席・班目一角と同隊第五席・綾瀬川弓親が更木の背後から出てきた。
「だぁー!!てめぇはあの時の変態おかっぱナルシスト!!」
「……誰かな。悪いが僕は醜い顔は覚えられない体質でね」
「だとぉ!?こちとら……―――」
「待て待て、言い争いはこんなところでしないでもらいたいな。綾瀬川五席に志波家の」
「……失礼しました。雷山隊長」
「更木、お前がここに来た理由はなんとなく分かるが、あえて聞こうか。何しに来たんだ?」
「ああ?俺ただ
「別に聞かなくても分かるけどな」
雷山は他の
雷山の目の前では久方ぶりに顔を会わせた
「はぁ……予定がだいぶ変わるが、連れて行きたいなら連れて行きな」
「……巻き込む形になるが、そうすれば護廷十三隊の目はそちらに向くだろうしな」
雷山が言ったことを不審に思った更木だが、ここで時間を潰している暇も更木にはなかったために早々に入って来た天上の穴から
「……けっ、てめぇが何を考えてるかは知らねぇが、そう言うことならこっちは勝手にさせてもらうぞ」
「オラ行くぞ。邪魔したな」
そう言い残すと更木は全員を引き連れて去って行った。
その場に残る雷山と狐蝶寺はまるで嵐が過ぎ去ったかのようにただただ茫然としていた。
「雷山くん、更木剣八くんがみんな連れて行っちゃったけど良かったの?」
「正直に言えば
「更木がどう動くは分からないのは事実だが、奴の実力を考えれば少なくとも
「ふーん。それで私はどうすればいいの?護衛対象がいなくなっちゃったけど」
「そうだな……春麗には双極までついて来てもらおうか。勿論、『
「オッケー♪……って、え?えぇ~!?」
雷山のその一言は狐蝶寺を驚愕させた。狐蝶寺自身は雛森を知らず、まずかな違和感で周りの隊長格を騙せるわけがないと思ったからである。
「さすがに無理だって、私その雛森って子を知らないからバレちゃうよ!」
「軽い返答は俺がするから任せろ。春麗はただ黙って隣に立って居ればいい」
「そうだけどさぁ……」
「情けないな。"
「……ふふっ」
雷山の軽い挑発を聞いた狐蝶寺は肩を震わせていた。傍から見ると怒っているように見えたが、雷山が自身の実力が高いと遠回しで言った事に対して
「まったく雷山くんはズルいなぁ……いいよ、やってあげる♪」
「さすが話の分かる
「オッケー♪」
「……そう言えば、春麗。雛森の容姿って分かるか?」
「大丈夫だよ♪藍染くんの死体騒ぎの時に見てるから。"縛道の八十七"『
・その他用語
"
自身の血と霊圧を媒介に発動する通常とは異なる鬼道。
効果は、他者と自分の空間を繋げて亜空間を作り出すというものでこの空間には鬼道を使った者が指定した者しか召喚することが出来ず、また鬼道が解かれれば中に居た者はそれぞれ元にいた場所に戻される。この亜空間内と外では時間差がおよそ5倍であり、外での1時間は亜空間中で5時間となる。
雷山はどこからでも指定した者を呼べる点、内外との時間差の点を利用して、主に時間が無くなった場合や遠くにいる者と直接顔を合わせて話し合うことに使っている。