宮廷の遊撃人   作:らりるれリッター

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第34話 双極の丘にて

 

 

「双極の丘、だと……!?」

 

 

阿散井は辺りを見回しながら驚愕していた。ここはつい数刻前にいた双極の丘であり、自身は今さっきまで双極の丘よりずっと離れた場所にいたためである。

阿散井はすぐに東仙によって強制移動させられたことは分かったが、あまりに突然のことでまだ完全に理解が及んでいなかった。

 

 

「ようこそ、阿散井くん。朽木ルキアを置いて下がりたまえ」

 

 

声が聞こえると同時に阿散井は振り返り、その場に立つ人物に驚愕した。そこには数日前に死亡が確認されたはずの【五番隊隊長】藍染惣右介が市丸ギンと共に立っていたからだった。

 

 

「藍染隊長……!?市丸……!?」

 

「要もご苦労だったね。……おや、その恰好はどうしたんだい?」

 

 

藍染は東仙に目を向けると同時に、何故か死覇装が焦げている姿を指して聞いていた。

 

 

「恥ずかしながら、”十四番隊”1人の始末に少々手こずりました」

 

 

 

 

 

□ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■

 

 

 

 

 

「さらばだ、十四番隊。これがお前たちの無意味な戦いの結末だ」

 

 

 

-- 瀞霊廷内・とある路地 --

 

 

 

そこでは【九番隊隊長】東仙要と【十四番隊・第二将”次鋒”】山吹雷花が相対していた。

東仙は山吹を自身の卍解空間内に捕らえることに成功しており、山吹は突然、目も耳も霊圧知覚も使えなくなったことに対応しかねている状態だった。

 

 

「こうなれば――……ッ!!」

 

 

山吹が動こうとした直後、東仙は背後から山吹を斬りつけた。

与えられた傷が深く、打開策もまだない今のままでは一方的に(なぶ)り殺されると判断した山吹は、せめて東仙だけでも道連れにしようと考え、斬魄刀を構えた。

 

 

「雷山部隊長、狐蝶寺隊長……申し訳ないです。”灼熱旋風(しゃくねつせんぷう)”!!」

 

「……!!」

 

 

東仙は山吹の斬魄刀から放たれる熱風をその肌で感じ取っていた。それは到底、無事では済まないような温度であることは確かだった。

 

 

「くっ……このまま私を焼き殺すつもりか……!!」

 

「”十四番隊”を舐めないでよね!!」

 

「やむ無し……!!」

 

 

東仙は深手を負わせたとは言え、卍解を解いた状態では山吹を始末できないと考えていた。しかし、同時にこのまま卍解空間を展開し続ければ山吹を始末できるが、自身が蒸し焼きになってしまう危険性があるとも考えていた。

二者択一を迫られた東仙はやむを得ず卍解を解いた。

 

 

「侮っていた……」

「……!!」

 

 

卍解を解き、山吹の攻撃に備えていた東仙はふと阿散井がいなくなっていることに気が付いた。

恐らくは自身が卍解をする瞬間にわずかにその範囲内から山吹と名乗る死神が2人を出したのだろうと推察した。

 

 

「仕方あるまいか。今は朽木ルキアを確保することが先決……」

 

 

東仙は朽木ルキアの身柄確保を最優先と考え、山吹のことはその場に放って置き、瞬歩を使って阿散井を追っていった。

 

 

「ま、待て……二人とも……今、助けに……」

 

 

バタッ――――...

 

 

一方で、山吹は深手を負った上で身体への負担が激しい技を使ったために圧消費が限界を迎えてしまい、数歩行ったところで倒れ込んでしまった。

 

 

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

 

 

「……成程。それは災難だったね」

 

「いえ、私としては一生の不覚です」

 

「いいよ。こうして朽木ルキアを確保してくれたからね」

 

 

阿散井は藍染が生きていたことも衝撃だったが、何よりも衝撃だったのが先程藍染が言った言葉だった。

 

 

「藍染隊長、生きて……いや、それよりも今なんていった……!?」

 

「聞こえなかったかな。朽木ルキアを置いて下がれと言ったんだ。阿散井くん」

 

「……断る」

 

「なに?」

 

「”断る”と言ったんです。藍染隊長……!!」

 

「……成程」

 

 

阿散井を始末しようと市丸は腰に差してある斬魄刀に手をかけたが、すぐに藍染がそれを制した。

 

 

「いいよ、ギン。君は強情だからね、阿散井くん。朽木ルキアだけを置いて下がるのが(いや)だというのなら仕方ない。こちらも君の気持ちを汲もう」

 

 

藍染は歩きながらそういうと同時に鞘から斬魄刀を引き抜いた。

 

 

「抱えたままで構わない。腕ごとおいて下がりたまえ」

「……!!」

 

 

ザシュッ!!

 

 

阿散井へ斬撃を繰り出そうとした藍染だったが、その時僅かな違和感を感じ取った。そして咄嗟に見えないながらも雷山の斬撃を躱した。その勘の鋭さに雷山をして称賛に値した。

 

 

「今のを躱すのか。腕の一本ぐらいもらうつもりだったんだが」

 

 

その声と共に藍染の目の前の空間が陽炎のように歪み始めた。すぐに藍染はそれが”縛道の八十七”『陽炎写(かげろううつし)』であることに気付いた。

 

 

「さすが護廷十三隊を手玉に取り、椿咲からも逃げ遂せる男。その実力は大したものだな」

 

「……雷山悟か」

 

「!」

 

 

藍染の一言は雷山を驚かせていた。藍染が雷山を見るのはこれが初であり、声すら聞いたことが無かった。にもかかわらず、目の前に立つ死神が雷山本人だと断定していたからである

 

 

「……実力もさることながらその知識も大したものだ。まさか顔を見ただけで雷山悟だと分かるとはな」

 

「名前を知る手段はいくらでもあるんだ。こうして直に相対することになるとは思いもよらなかったが」

 

「それはお前たちが派手にやり過ぎたおかげだ。本来ならこうやって俺たちが表に出てくることなんかない」

 

「ふっ……しかし運命などと言う言葉を信じるつもりはないが、椿咲南美の次に雷山悟と相対することになるとは思いもよらない。だが、今は間が悪い。僕はこう見えても忙しいんだ」

 

「安心しな。これからは随分と暇になるだろうからな」

 

「成程。しかし君1人で隊長3人を足止めできると思っているのかい?」

 

「挑発のつもりか?それとも本当に俺がのこのこと1人でこの場に来たと思っているのか?」

 

「…………」

 

 

藍染は椿咲が目の前に現れてから予想していたことがあった。それは101年前に初めて遭遇した【宮廷遊撃部隊】が総員で自身に対しての包囲網を敷いているのだろうと、それはこの場に雷山がいたことから正しい予想となったがそれだけではないのだろうと考えていた。

 

 

「ホントホント、君たちいちいち長過ぎるんだよ」

 

「念のため言っておきますが、この場から逃げようなどと思わないことですよ。まあ逃げたところで藍染惣右介、あなた方の逃げる場所など何処にもありはしないわけですが」

 

 

その声が聞こえたと同時に市丸、東仙の背後が陽炎のように歪み始めた。2人はすぐに鬼道だと気付いたが、すでに斬魄刀を突き付けられておりその場から動くことは出来ずにいた。

 

 

莫迦(バカ)な……!!」

 

 

東仙は自身に一切悟らせずに背後を取って見せた狐蝶寺に驚愕していた。雷山が現れてからというもの東仙はいつでも動けるように辺りに対して警戒を怠っていなかった。にもかかわらず、今こうして狐蝶寺が姿を現すまでその存在に気付けなかったからである。

 

 

「……すんません藍染隊長。これはどうにもあきませんわ」

 

 

市丸は少し前に雷山の実力の一端を見ていた。その雷山がいる状況下かつ雷山が自らの捕縛に連れて来た死神に完璧に背後を取られる今の状態ではどうあっても打開は不可能とあきらめている様子だった。

 

 

「阿散井恋次!お前の覚悟と藍染への啖呵は称賛に値する!故に泥を塗ってしまう事を心から詫びよう。だが、ここからは【宮廷遊撃部隊】”十四番隊”の管轄だ」

 

「か、雷山隊長……あんたたちは一体……?」

 

 

阿散井は双極の地下で雷山と狐蝶寺に会った時からただの死神ではないことに薄々勘付いていた。

それが今、目の前の光景を目の当たりにして確信に変わると同時にその正体について尋ねていた。

 

 

「別にそう(かしこ)まらなくても良いぞ。全て終わったら知ることになるだろうが、先に教えておいてやろう。俺たちは【宮廷遊撃部隊】”十四番隊”だ。俺は訳あって五番隊隊長に一時復帰しているに過ぎないんだ」

 

「【宮廷遊撃部隊】”十四番隊”……?」

 

「簡単に言えば、護廷十三隊の後援部隊だ。まあ、詳細はまた話してやるとして、今はこの3人を元柳斎たちに引き渡すのが先だ」

「……ああ、その前に」

 

 

雷山は何かを思い出したかのように声を上げた。雷山には東仙に対して聞きたいことがあったのだ。

 

雷山は東仙にただ一言問いかけた。”阿散井を追っていたはずの山吹をどうしたのか?”と、

東仙は答えた。”予定外の事象のために排除した”と、

それを聞いた雷山は思わず笑ってしまっていた。

 

 

「はっはっは!随分と面白い冗談だな。お前が十四番隊(うち)の山吹が()っただと?」

 

「ふっ、余程のショックで信じることが出来ないと見える。だが安心しろ。お前たちもすぐに同じ運命を辿るのだからな」

 

「何をするつもりか知らないけど、動いたらすぐに首を刎ねるからね」

 

「ふっ、首を刎ねる……か。出来ればの話だがな」

 

 

東仙がただ一言呟いたその時だった。

突然、落雷が起きたのだ。それは誰の目にも明らか、東仙が目くらましのために鬼道を使ったのだった。

 

 

「ケホッケホッ……何のつもりかは知らないけれど、これくらいの鬼道じゃ――……」

 

 

落雷自体には攻撃性はなく狐蝶寺にダメージは無かったが、一瞬だけ視界が塞がれたことによって東仙が斬魄刀を鞘から抜いていることに気付くのが遅れていた。

 

 

「”卍解”――――――

 

 

東仙が”卍解”呟くと同時にドームのようなものが展開され、東仙を抑えていた狐蝶寺とが巻き込まれた。

狐蝶寺は東仙の”卍解”という言葉が聞こえた次の瞬間には視界は闇に包まれていた。

 

 

鈴虫終式(すずむしついしき)閻魔蟋蟀(えんまこおろぎ)』。狐蝶寺春麗だったか。101年前じかに体感したお前にしては私に近づいたことは浅慮(せんりょ)と言うべきだ」

「……まあ、すで耳に届いてはいないだろうがな」

 

 

嘲笑気味に話す東仙の眼前では狐蝶寺は辺りを見回すようにキョロキョロとしていた。しかし、東仙の卍解の能力によって視覚、聴覚、霊圧知覚、嗅覚まで封じられているため、自身がどこにいて、どうなっているかを知ることは叶わなかった。

 

 

『これはもしかして、101年前のあの時と同じ……』

 

 

狐蝶寺は101年前に一度、東仙の卍解を経験しているため自身の置かれた状況を理解したが、その背後に東仙の刃が迫っていた。

 

 

 

 

 

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

 

 

 

 

 

「春麗ちゃん!」

 

 

幸か不幸か、東仙の卍解を逃れた銀華零はそう声を上げていた。中の状況がうかがい知ることが出来ず、狐蝶寺の安否が分からなくなったためである。

 

 

「白、落ち着け!いくら東仙の卍解だとしても春麗を倒すのは至難だ。放っておいてもそのうち出てくる」

 

「しかし……」

 

「今は藍染惣右介と市丸ギンの身柄を抑えることが先だ」

 

「随分と狐蝶寺春麗を買っているみたいだね」

 

 

その声で雷山は視線を銀華零から藍染へと戻した。

雷山に斬魄刀を突き付けられる藍染はその事を脅威とは感じておらず、まるで昼下がりのティータイムのようにリラックスしている様子だった。

 

 

「しかし、要を甘く見ない方がいい」

 

「……そうか。それはご丁寧に忠告をもらったな。だが、その前に自分自身の心配をしたらどうだ?」

 

「心配する必要などないさ。すぐに君の相手は僕ではなくなるからね」

 

「それはどういう―――」

 

「藍染!!」

 

 

雷山が問いを返したまさにその瞬間だった。

突如、藍染の名を叫ぶ声が木霊すると同時に雷山の背後に何者かが降り立ち砂煙が上がった。

 

 

「我らを(たばか)った貴公の裏切り、許しはしないぞ!!藍染!!」

 

 

その正体は【七番隊隊長】狛村(こまむら)左陣(さじん)なのだが、雷山は笠の下の素顔を知らなかった為正体を推し測れずにいた。

しかし発した声については聞き覚えがあり、そこから目の前の死神の正体に行きついた。

 

 

「この声……七番隊の狛村か!てめぇ何処に目を付けてやがる。俺は……」

 

 

雷山はその時、目の前でほえる狛村が鏡花水月によって藍染と雷山の姿を反対に錯覚させられているのではないかと考えた。

事実、その推測は正しく藍染は狛村が近づいて来ていることを察知し、雷山たちに鏡花水月の始解を見せ足止めすることよりも、狛村に対して発動し雷山を足止めさせる方が早いと判断しその行動に出たのだ。

 

 

「なにか弁明があるなら言ってみろ!!」

 

「ちっ……」

『催眠状態のこいつに何を言っても無駄か……!!』

 

「……残念だ。”卍解”『黒縄天譴明王(こくじょうてんげんみょうおう)』」

 

 

”卍解”と唱えたことで、狛村の霊圧は跳ね上がった。

それと同時に巨大な鎧武者が出現し狛村の動きと連動するように雷山へと刀を振り下ろした。

 

 

「!!」

 

 

ドゴォォォォォォォォォ!!!!

 

 

         ・

 

         ・

 

         ・

 

         ・

 

         ・

 

 

「阿散井、藍染は狛村に任せて俺たちと共に来い」

 

 

狛村が雷山に攻撃を続ける中、『鏡花水月』によって雷山の姿を模る藍染は阿散井に近づいていた。

 

 

「雷山隊長、しかし……ッ!!」

 

 

完全催眠を受けている阿散井だったが、藍染が斬撃を仕掛けるその瞬間を直感的に感じ取り防御に入ったが、藍染の実力は卍解を会得した阿散井をまったく寄せ付けない程であり簡単に斬り伏せられてしまった。

 

 

「恋次!!」

 

「さあ、立つんだ。朽木ルキア」

 

「ルキア!!」

 

 

阿散井が斬り伏せられてからおよそ1分、身の丈ほどの大刀ではなく、漆黒の斬魄刀を握った一護が現れた。一護は斬り伏せられている阿散井を見て怒りを見せている様子だった。

 

 

「……黒崎一護か。遅かったね」

 

「てめぇ、ルキアから手を放せ!」

 

「断る……と言えば?」

 

「てめぇを叩斬(たたっき)る!」

 

「出来れば君には大人しくしていてもらいたかったんだが、仕様がない子だ」

 

 

一護は藍染に斬りかかった。しかし、次の瞬間一護は驚愕することになる。

藍染が渾身の一撃である自身の攻撃を涼しい顔をして人差し指1つで防いでいたからだった。

 

 

「……おや、腰から下を切り落としたはずだったが、浅かったか」

 

 

藍染は人指す指を静かに一護の刀に置くと同時に、腰のあたりで一刀両断しようとしたが、一護の踏み込みがわずかに甘かったために、腰を斬り落とすまではいかなかった。

 

 

「あーあ、だから言わんこっちゃない……ってあら?」

 

 

市丸は腰辺りで一刀両断されかけた一護と斬り伏せられた阿散井の二人を見てそう言ったが、気が付けば自身を抑えていたはずの銀華零がいなくなっていることに気が付いた。

 

 

ガキンッ!!

 

 

銀華零の姿は藍染のもとにあった。黒崎が斬られたことで、対処すべき優先順位が市丸から藍染に移ったと判断したために斬りかかっていたのだ。

 

 

「判断を誤ったようだね、銀華零白。そこに転がっている旅禍(りょか)の少年と阿散井くんが倒れた時点で君はもはや動くべきではなかった」

 

「動くべきではなかった、と?」

 

「分からないのかい?狐蝶寺春麗は要によって捕らわれ、雷山悟は狛村くんに足止めされている。その中で残る戦力は君ただ1人だ。この状況下で旅禍(りょか)の少年と阿散井くんを守りながら戦うことは君にも出来まい」

 

「……ふふっ、ナメられたものですね」

 

 

その時、銀華零は口元を緩ませて笑みを浮かべていた。藍染もその笑みにすぐに気づくことになるが、先に藍染が言った通り、不利とも言えるこの状況下で笑っている銀華零の不気味さをすぐに思い知ることになった。

 

 

「……何が可笑(おか)しいんだい」

 

「いいえ、何も。ただ、雷山さんから【十四番隊・第五将”大将”】を仰せつかるこの私が2人を守りながらあなた方の相手が出来ないと思われているとは―――」

 

 

 

 

 

”―――― 心 外 で す”

 

 

「「!!」」

 

 

藍染と市丸はその時、明らかに寒気を感じた。それは体感温度が低く凍えると言う寒さよりも、圧倒的強者に殺気を向けられた時に生じる悪寒のようなものだった。

それは藍染が初めて経験することでもあり、気が付けば銀華零の霊圧が徐々に上昇しており、明らかに雰囲気も変わっていた。

 

 

「後ほど情報が必要になると捕縛優先と考えていましたが、やめましょう」

「あなた方の首は、今この場で刎ねさせてもらいます」

 

 

その時の銀華零は清々しい程の笑みを浮かべていたが、その笑みは優しさと言うものを一切含んでおらず、”恐怖”と言う二文字しか見えなかった。

 

 

「”友鏡(ともかがみ)(うつ)して 万象(ばんしょう)見取(みと)らん”『銀鏡(ぎんきょう)』」

 

 

斬魄刀を解放した銀華零の手には何も持たれていなかった。しかし、藍染と市丸は確かに銀華零の”解号”を聞いたために、この状態が始解なのだと判断していた。

 

 

「まずは応急処置としましょうか。銀鏡(ぎんきょう)・”()()らせ”『粉吹雪(こなふぶき)』」

 

 

銀華零が解号を唱えると同時に、隣に全身が映るほどの大きさの鏡が現れた。銀華零は鏡の中に手を突っ込むと同時に一気に引き抜いた。すると銀華零の手には『銀鏡(ぎんきょう)』とは別の斬魄刀が握られていた。

 

 

「これで失血死の心配はひとまずないでしょう」

 

 

銀華零は阿散井と一護に向けて斬魄刀を振るっていた。振るうと同時に刃から飛び出た氷が2人を覆っていた。

一見すると攻撃だが、銀華零は2人の傷口を氷で凍結して止血するためにあえて放った攻撃だった。

 

 

銀鏡(ぎんきょう)・”鮮血(せんけつ)()()桜花(おうか)()(みだ)れ”『紅桜(べにざくら)』」

 

 

銀華零は藍染らに向かい合うと同時に新たに解号唱えた。すると先ほどと同様に隣に鏡が現れた。

そして鏡の中に手を突っ込むと今度は脇差(わきざし)程の丈をした斬魄刀が出てくると同時に、銀華零の背後に大きな桜の樹が召喚されていた。

 

 

「さあ、どう対処するかお見せください。藍染惣右介、市丸ギン」

 

「……ギン、彼女を抑えておいてくれないか。僕は要件を済ませる」

 

「ええんですか?」

 

「ああ、予想を大きく超えていた。これ以上の時間はかけれまい」

 

「分かりました、藍染隊長。”射殺(いころせ)せ”『神鎗(しんそう)』」

 

 

 

 

 

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

 

 

 

 

 

「ちっ!めんどくせぇ……!!」

 

 

雷山は狛村の卍解『黒縄天譴明王(こくじょうてんげんみょうおう)』の振り下ろされた巨大な刀を受け切っていた。しかし威力はすさまじく、足元は陥没していた。

こんな状態ではまともに藍染の相手など出来ないためにやむを得ない判断として多少負傷させてでも狛村を倒すことに決めた。

 

 

「狛村左陣、悪いが少し寝ててもらうぞ。『雷斬(らいざん)』!!」

 

「!!」

 

 

その瞬間、雷山の霊圧が跳ね上がると同時に彼の持つ斬魄刀『雷斬(らいざん)』から膨大な量の雷が放出された。

 

 

「”放電(ほうでん)”!!」

 

「ぐはっ!!」

 

 

雷斬(らいざん)』による雷撃を受けた『黒縄天譴明王(こくじょうてんげんみょうおう)』は連動する狛村と共にダメージを負った。

そしてその影響で狛村自身に決定的な隙が生まれていた。

 

 

ドスッ!!

 

 

雷山はすかさず狛村の懐へと入り込み、彼の鳩尾に斬魄刀の柄で一撃を入れた。

同じ隊長と言えど、雷山と狛村の間には実力差があり、狛村はその一撃に耐え切れずに失神してしまった。

一方で雷山はすぐさま藍染の方へと目を向けた。その時、藍染は懐から筒のような()れ物を取り出していた。カチッと音がなると同時に藍染とルキアを取り囲むように緑色の爪のようなものが生えてきた。

 

 

「ちっ!!」

 

「くっ……!!『銀鏡(ぎんきょう)』!!」

 

「ッ!!」

 

 

ルキアの周囲が異常な状況だと判断した銀華零は市丸を無理矢理に退かしてルキアのもとへ急いだ。

それと同じく、雷山もルキアの元へと急いだ。

 

 

「これがその答えだ」

 

 

しかし一歩遅くルキアは藍染の腕に貫かれていた。しかしルキアにダメージはなく同時に藍染の手には多角形の防壁が張られた『崩玉(ほうぎょく)』が握られていた。

 

 

「これが、『崩玉(ほうぎょく)』……」

 

 

 





銀鏡(ぎんきょう)

【十四番隊・第五将”大将”】銀華零白の持つ斬魄刀。

解放すると同時に斬魄刀が消え、変わりに宙に浮かぶ鏡が1つ現れる(大きさは人の全身が映る程度)。この鏡は普段は実体を持たない概念みたいなもので、能力を行使するときのみ実体を持ち常に銀華零の1メートル以内に存在している。そして如何なる攻撃を用いても割ることが出来ないし、例え割れたとしても時間が経てば元に戻る。
ちなみにこの時点での斬魄刀本体はモヤのようなものであり、銀華零自身もちゃんと姿を見たことがないという。
『他者の斬魄刀の始解のみを鏡に映して使用できる能力』を持つ。使用できる能力は1つまでで、銀華零自身が見たことがあり、且つ名前を知っていることが絶対条件。解号を知らずとも使うことが出来るが、解号を唱えた方が能力の精度や技の威力は上がる。
能力を行使する時は、使いたい斬魄刀の名前(出来たら解号も)を唱えることで鏡の中からその斬魄刀が現れる仕組みで、使用する斬魄刀を変えたいときはその都度名前(解号)を唱える必要がある。使える斬魄刀は本来の所有者の生死は問わないが、銀華零が”最後に見知った時点”での強さ、能力で映されるためごく稀に誤差が起きる。この斬魄刀はその性質上、ありとあらゆる斬魄刀に通ずる斬魄刀と呼ばれている。
解号は『友鏡(ともかがみ)(うつ)して 万象(ばんしょう)見取(みと)らん』


その他用語

・『粉吹雪(こなふぶき)
かつての護廷十三隊・副隊長が使っていた斬魄刀で氷雪系に分類される。その能力は、
『霊力を雪に変化させ操る能力』。
所有者本人は自身の霊力消費を(かえり)みずに、相手の周りに大雪を降らせて生き埋めにする使い方をしていた。
解号は『()()らせ』


・『紅桜(べにざくら)
かつての護廷十三隊・隊長が使っていた斬魄刀で生物系に分類される。その能力は、
『斬りつけた相手の血と霊圧を奪い取る能力』。
一度に奪い取れる量は平隊士の死神1人分であり、それ以上の霊圧を持つ者の霊圧や血をすべて奪うためにはその都度相手を斬らねばならない。背後に召喚される桜の樹と手に持つ斬魄刀がリンクしており、奪った血と霊圧は桜の樹に貯蔵される。血や霊圧のMAX貯蔵量は隊長格3人分ほどであり、MAXまで行くと紅い花の桜が咲き誇る。なお、始解して一定時間(平均にして30分)血や霊圧を奪えずにいると使用者自身の血と霊圧をどんどん吸い取っていってしまうデメリットがある。
解号は『鮮血(せんけつ)()()桜花(おうか)()(みだ)れ』


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