宮廷の遊撃人   作:らりるれリッター

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第36話 旅禍(りょか)への回答(アンサー)

 

 

「黒崎一護、今回の朽木ルキアの件について協力感謝する」

 

「別に大したことはしてねぇよ」

 

 

”大逆の罪人”藍染惣右介が虚圏(ウェコムンド)に逃げ遂せた翌日、雷山は黒崎一護たち旅禍(りょか)の面々を十四番隊詰所へ招いていた。

雷山は椅子に腰かけその右を銀華零、左を狐蝶寺が固めていた。浮葉は自身の席に座っていた。

 

 

「それよりも、結局あんたらは何なんだよ」

 

 

一護たちは雷山と対面するように4人掛けのソファに座っていた。その中で一護は雷山に聞いていたのだ。

 

 

「何なんだとは?」

 

「あんたら【宮廷遊撃部隊】”十四番隊”って言うんだろ?」

 

「そう言えば、まだ十四番隊のことについて詳しく言ってなかったな」

 

「護廷十三隊みたいなものか?」

 

「護廷十三隊とはまた違うな」

 

「じゃあ、護廷十三隊より偉いのか?」

 

「……ああ、偉いぞ。ものすごくな」

 

「雷山さん」

 

 

一瞬間を置いて雷山が答えたその時、銀華零が遮った。

雷山は一瞬のうちに自身らが護廷十三隊の上位組織と言う近からずとも遠からずの情報を一護らに吹き込もうとしていた。

勿論、それは長い付き合いの銀華零もすぐに分かった事であり、みなまで言わせずに遮ったのだ。

 

 

「黒崎一護さん。これについてはわたくしが代わりにご説明します」

 

 

雷山を押し退けるように前に出た銀華零を見て、一護はなんとなく綺麗な人だなと言う印象を抱いた。

 

 

「まず、【宮廷遊撃部隊】”十四番隊”とは【護廷十三隊】の後援部隊です。その役割は第一に瀞霊廷、引いては尸魂界(ソウル・ソサエティ)の守護。その他に未知の戦力に対する先制攻撃、前線等における独自の調査などがあります」

 

 

銀華零に説明を受けた一護たちだったが、イマイチ護廷十三隊との違いが分からずにいた。

 

 

「創設は今から約600年前のことです。その当時、護廷十三隊隊長を引退したわたくしたち3名を山本総隊長が引き留めたことが始まりですね。また『最後の切り札』という異名もありますが、こちらは――……」

 

「白、話が脱線する。そこまでにしておこう」

 

「…………」

「これは失礼しました。つい熱くなってしまいました」

 

 

そう言う銀華零はどこか恥ずかしそうにしていた。一方で雷山は一護たちに『すまんな』と声をかけていた。

 

 

「……まあ、ともかく護廷十三隊と違うってのは分かった。その上で俺が聞きたいのは……」

 

「”何故、朽木ルキアをギリギリまで助けなかったのか”だろ?」

 

「……ああ」

「あんたらも護廷十三隊のようなものなんだろ?なら、ルキアが処刑される前に助けることくらい出来ただろ」

 

「…………」

 

 

しばらくの沈黙の後、雷山は口を開いた。

【宮廷遊撃部隊】”十四番隊”が何を思って今回動いていたのか、その事情を一護たちに説明するために、

 

 

「黒崎一護。まずお前は1つ勘違いをしている」

 

「勘違い?」

 

「我々は朽木ルキアを助けるために動いていたわけじゃない」

 

 

途端、一護の顔が目に見えて険しくなった。

その表情には結果的にルキアを助けたが、実は初めの内は助ける気が無かったのではないかと疑念を含んでいた。

 

 

「……どういう意味だ」

 

「正確には、朽木ルキアの処刑を阻止するために動いていたんだ」

 

「同じことじゃねえか」

 

「違う」

 

 

一護の言葉に雷山は即座に否定していた。

【宮廷遊撃部隊】”十四番隊”の目的は一貫してルキアの処刑阻止、引いては藍染に殺させることを防ぐであった。

結果的にルキアを助けることが必要だったわけであり、助けたかったわけではなかったと断っていたのだ。

 

 

「まず根本の話をするが、朽木ルキアの罪状は”死神の力を人間に譲渡したこと”だ。これは情状酌量(じょうじょうしゃくりょう)の余地があったとしても重罪であることに変わりない」

「通常ならば投獄刑がいいところだろう。しかし実際に出た判決は不自然なことに双殛を用いた極刑。あまりに重すぎるうえに理由(ワケ)もなく執行日が繰り上がった。それこそ異常なほど性急(せいきゅう)にな」

 

「それで怪しいと思ったのか?」

 

「ああ、だから直接中央四十六室に向かった。だが面会できなくてな。実力行使に出て無理矢理中に入った。中がどうなっていたかは、虎徹勇音から聞いているだろう?」

 

「……全滅させられた後だった」

 

 

雨竜が静かに一言呟いた。

 

 

「その通り。それで確信に変わった。今回の案件も藍染惣右介が関わっているとな」

 

「ちょっと待ってくれよ」

 

「ん?」

 

「つまりその藍染が関わっていると最初から分かっていたのか?」

 

「最初からではなく早い段階で、だな。話が脱線するから詳細は省くが、奴は101年前に尸魂界(ソウル・ソサエティ)でとある事件を起こしていてな。四十六室の惨状を見て、今回も奴の仕業だと確信した」

 

「そこまで分かってて、黙って見てたってのかよ」

 

「それも違う。我々は黙って見ているつもりなど毛頭なかった。表立って行動は出来ないが、それでも朽木ルキアの処刑を阻止する準備は進めていた。それこそ護廷十三隊と全面戦争する覚悟を決めてな。ただ……」

「黒崎一護、お前たち旅禍(りょか)尸魂界(ソウル・ソサエティ)に来たことで少し状況が変わった」

 

「俺たちが?」

 

「ああ、護廷十三隊の警戒レベルが上がったんだ。それにお前たちの快進撃を続けた。元柳斎が極囚の護衛に白と山吹を指名し、藍染が死を偽装して潜伏始めるくらいにな」

 

「……ああ、そうだ。分かってたと思うが、本来ならば案内役の四楓院夜一と合わせてお前たちは尸魂界(ソウル・ソサエティ)への不法侵入者として討伐対象。それは【宮廷遊撃部隊】”十四番隊”から見ても変わりない」

 

「討伐対象って、だったら何で俺たちを助けたんだよ」

 

「それは目的が同じだったからだ」

 

「目的?」

 

「分からないのか?朽木ルキアの処刑阻止だ」

 

「…………」

 

「お前たちは文字通り、朽木ルキアを助けるため。我々は藍染の目的を阻止するため。まあ、詰まるところは利害の一致だな」

 

 

一護たちは薄々勘付いてはいたが、雷山の口から明かされたことでようやく【宮廷遊撃部隊】”十四番隊”が自身らの保護に動いていた理由に得心が言った様子だった。

 

 

「……と言いつつも、もう1つ理由はあった」

 

「もう1つ?」

 

「利用できると思ったからだ」

 

「おい」

 

「利用と言っても藍染を炙り出す餌としてではない。護廷十三隊や藍染の目をお前たちに向けることが出来れば、我々の動きを多少誤魔化すことが出来る。そう考えていた」

 

「十四番隊は護廷十三隊の後援部隊って言ってなかったか?随分勝手に動き回るんだな」

 

「はっはっは!勝手にか!どこかのひげを蓄えたじじいにもよく言われるな」

 

 

雷山が豪快に笑う一方で背後に立つ銀華零は頭を抱えていた。

その光景から一護たちは目の前の雷山悟と言う死神の人となりについてなんとなく分かった様子だった。

 

 

「……それで」

 

「ん?」

 

「これで終わったのか?」

 

 

その瞬間、雷山の表情が変わった。

先ほどまであった穏やかさがまるで嘘のように消えていた。

 

 

「藍染は逃げたんだろ?ルキアは助かったし、もう狙われることもねえ。だったら全部終わったんじゃねえのか?」

 

「……いや」

 

 

少しの沈黙の後、雷山は静かに答えた。

 

 

「むしろ始まったと言っていいだろう」

 

「……何がだよ」

 

「端的に言えば、戦争」

 

「藍染惣右介は単に尸魂界(ソウル・ソサエティ)を裏切ったわけじゃない。さっきも言ったが、藍染は101年前にもとある事件を起こしている。恐らくは何かをするためにその頃……いや、それよりも前から準備をしていたのだろう。藍染が何を企んでいるのか、その全容はまだ分からないが、1つだけ確かに言えることはある」

 

「藍染は必ずまた現れる。虚圏(ウェコムンド)で従属させた(ホロウ)の軍団を引き連れてな。そして次に奴が動く時、昨日のような騒ぎでは済まない」

 

「…………」

 

 

十四番隊詰所を静寂さが包み込んだ。それほどの事態に発展することが容易に想像出来たのと、その規模に思わず息を飲んだからだった。

 

 

「護廷十三隊はこれから藍染への対策を始めるだろう。だが、藍染も護廷十三隊を知り尽くしている。隊長たちの斬魄刀も、瀞霊廷の構造も、尸魂界(ソウル・ソサエティ)の制度も何もかもな」

 

「だから十四番隊が動くのか」

 

「ああ」

 

 

雷山はそう言うと同時に椅子から立ち上がった。

そしてそのまま窓辺まで歩きながら語った。

 

 

「【宮廷遊撃部隊】”十四番隊”はこういう時のために存在しているからな」

 

「こういう時?」

 

 

一護の問いに雷山は背を向け、窓の外を眺めながら答えた。

 

 

「護廷十三隊では対処できない事態が起きた時。そして……」

尸魂界(ソウル・ソサエティ)、引いては現世と虚圏(ウェコムンド)を合わせた三界そのものが滅びる可能性が生まれた時」

 

 

そこまで言った時、雷山は振り返って静かに一護たちを見据えて言った。

 

 

「その時に動くのが【宮廷遊撃部隊】”十四番隊”だ」

 

 

一護たちは黙って雷山を見つめていた。

 

 

「黒崎一護……いや、他の3人も同様か。全員等しく聞いておく」

 

「……?」

 

「何だよ」

 

「さっき黒崎が言った通り、朽木ルキアは助かった。つまりお前たちの戦いも終わりとなり、ここから先は死神の仕事となる。だが、藍染が現世に手を伸ばした時は話が大きく変わる」

 

 

雷山が言った藍染が現世にも手を伸ばす可能性、

それを聞いた時、一護の目がわずかに細くなった。

 

 

「その時、お前たちは嫌でもこの戦いに巻き込まれるだろう。その覚悟はあるか?」

 

「覚悟もクソもねぇよ。ただ俺は仲間を護る。それだけだ」

 

 

一護は迷わずに即答した。

その答えを聞いた雷山は一瞬だけ目を丸くしたが、すぐに小さく笑った。

 

 

「……ふっ、やはり随分と面白い奴だな」

 

「何だよ、それ」

 

「こっちの話だ。気にするな。ともあれ、今は旅禍(りょか)から正式に客人だ。しばらくの間、尸魂界(ソウル・ソサエティ)にも居るんだろ?」

 

「そういや、穿界門(せんかいもん)が出来るのに7日はかかるって言ってたな」

 

「そうか。大したもてなしも出来ないと思うが、ゆっくりしていけ」

 

「はいはーい!」

 

 

雷山が言い終えると同時、狐蝶寺の声が十四番隊詰所に木霊する。

『こちらに注目!』と言わんばかりに左腕を挙げる狐蝶寺にその場にいる全員の視線が注がれていた。

 

 

「それじゃあ、こんな重苦しい空気はここまでにしてお互いに知らない子もいるだろうから自己紹介をしようよ♪」

 

「妙に大人しいと思っていたら、こいつこのタイミングをずっと計っていたのか……」

 

「まずは私からね♪改めて私は【十四番隊・第四将”副将”】狐蝶寺春麗!これからもよろしくね♪」

 

「…………」

 

「……あれ?」

 

 

意気揚々と自己紹介をした狐蝶寺だったが、誰からも何の反応も返されなかった為順番に雷山たちの顔を見てキョロキョロとしていた。

 

 

「はぁ……」

 

「ちょっと、みんなは自己紹介しないの?」

 

「それは良いんだがもっとこう、順番に紹介していくとか出来ないのか?」

 

「あっ!そうだね。それがいい、そうしよう!」

「じゃあ、改めて今椅子に腰かけている白い髪の子が浮葉刃くん」

 

「初めは私ですか……ゴホン、【十四番隊・第一将”先鋒”】浮葉刃と言います。以後お見知りおきを」

 

 

浮葉は立ち上がると一護たちの元へ行き、握手として手を差し出していた。一護以外は戸惑った様子だったが、狐蝶寺に促される形で握手していた。

 

 

「次に銀色の髪が特徴の銀華零白ちゃん」

 

「【十四番隊・第五将”大将”】銀華零白と申します。春麗ちゃんが急な事を言い出して申し訳ありません。ですが、どうか大目に見てあげてください。今後もお願いしますね」

 

「最後に雷山悟くん」

 

「俺だけ何にも無しかよ。改めて、【宮廷遊撃部隊・十四番隊部隊長】雷山悟だ。藍染の出方次第ではまた力を借りることもあるだろう。よろしくな」

 

「最後に私と療養中の山吹雷花ちゃんと出掛けてる椿咲南美ちゃん。計6人で活動しているよ♪」

「さてさて、次は君たちの番♪現世の学校っていう所の話も聞きたいし、もっと君たちのこと教えてよ!」

 

「……あっ!えーっと、確かここに秘蔵のお菓子があったはずだから……」

 

 

狐蝶寺は数ある棚の1つに近づき奥の方を探ると煎餅(せんべい)などの茶菓子を取り出してきた。

 

 

「のんびりしながらおしゃべりしよう♪」

 

 

 

 

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