宮廷の遊撃人   作:らりるれリッター

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第7話 ”十四番隊”の風神と雷神

 

 

それからさらに数か月後、痣城(あざしろ)剣八の提唱する『尖兵計画(スピア・ヘッド)』は瀞霊廷へ侵入しようとした流魂街(るこんがい)の罪人を使った実験において大成功を収めた。

それは雷山が考えていた万が一を引いてしまった形となり、あれほど高を括っていた中央四十六室の方針が180度転換することになった決定的な出来事だった。

 

 

 

-- 瀞霊廷・十四番隊詰所 --

 

 

 

中央四十六室(ろうがいども)から勅命(ちょくめい)?」

 

「ええ、やはり雷山(かみなりやま)さんの予想通り、尖兵計画(スピア・ヘッド)の実験が成功した直後に中央四十六室が痣城十一番隊隊長に対して即刻の計画中止を迫ったそうです」

 

 

それは数日前に遡る。

 

 

-- 中央四十六室・地下議事堂 --

 

 

「十一番隊隊長・痣城剣八に()ぐ、『尖兵計画(スピア・ヘッド)』は人道にもとる非常な計画である!よって中央四十六室の名のもとに、計画の即時中止を通告する!」

 

 

裁判官の一人が高らかにそう宣言するのを最後に辺りは静寂に包まれていた。

痣城は四方八方を中央四十六室の裁判官と賢者に取り囲まれる形で地下議事堂の中央に立っていた。少しの間の後ゆっくりと痣城は口を開いた。

 

 

「……無駄な命令だな。承認したのはそちらであろう」

 

「なんだと?」

 

「隊長風情がそれは我らの裁定を不服と申すか!?」

 

「…………」

 

()()()()()()()()()()()()()()下衆めが!」

 

 

中央四十六室は『流魂街(るこんがい)の住人の魂魄を改造する』ことに許可を出した事実を『罪人の魂魄を改造する』ことに対して無許可で行ったと、言葉のニュアンスを変えることで痣城に罪を着せた。

それを皮切りに反逆罪など様々な冤罪を着せようとすることで痣城に計画を断念させようと画策したが、そんな中央四十六室の魂胆など痣城にとっては見え見えの策だった。

 

 

「念のために断っておくが、私に四十六室に取って代わろうという野望はない。だが、四十六室に『剣八』は止められまい?」

 

「貴様……」

 

「流魂街の住人全員の魂魄を改造する準備はすでに整っている。協力が得られないのならば、時間はかかるが私ひとりで行うとしよう」

 

 

痣城は流魂街(るこんがい)に向かうために姿を消した。自身らの命令に不服を申し付けたばかりか、お前たち如きでは止めることなど出来ないと挑発を受けた中央四十六室の怒りは頂点に達していた。

 

 

「護廷十三隊、鬼道衆、隠密機動すべての戦力に通達を出せ!!十一番隊隊長・痣城剣八をひっ捕らえ、抵抗を示すようなら即刻処刑せよ!!」

 

 

こうして瀞霊廷中を巻き込んだ痣城剣八討伐令が下された。

それはかつて雷山が中央四十六室に忠告していたこととまさに同じで呆れかえっていた。

 

 

(ろく)でもねぇ話だな。結局俺の言った通りになったじゃねぇか」

 

「しかし、痣城剣八を止めないわけにもいきません。ここは私が命を賭して……」

 

 

そう言う浮葉(ふよう)の手には斬魄刀が握られていた。その目には闘志が溢れていたが、それと同時に自身の死すらも厭わないと語っていた。浮葉は相打ち覚悟で痣城剣八を討ち取りに行くつもりの様子だったのだ。

しかし、部下の命を最優先と考える雷山はそんな命を捨てに行くような行動を許す訳もなかった。

 

 

「それこそ碌でもないことを言うな。浮葉は十四番隊詰所で白と留守番だ」

 

「では、一体どなたが……」

 

「痣城の討伐へは俺と春麗の2人で行く。さすがに2人がかりなら何とかなるだろ」

 

「へへっ、腕が鳴るねぇ♪」

 

「……承知いたしました」

 

 

浮葉は雷山と狐蝶寺が出る前に、”第一将”たる自身が先陣を切るべきでそうさせてほしいと言いたげだったが、未だに正確な能力も判明していない痣城剣八が相手では自身は役に立てないことを誰よりも理解していたために言葉を無理矢理に飲み込み承服していた。

 

 

「浮葉、なにもお前が役立たずと言っているわけではない。浮葉はすぐに椿咲と山吹を呼び戻して白と共に待機していてくれ。そしてもしもの時は痣城討伐を任せたからな」

 

「かしこまりました」

 

「白は十三隊から共有された情報を俺たちにも流してもらえると助かる」

 

「ええ、分かりました。雷山さん、春麗ちゃん。お気をつけて行って下さいね」

 

「ああ」「うん♪」

 

 

十四番隊詰所を出立した雷山と狐蝶寺の2人は霊圧探査が得意な雷山が痣城の霊圧を探っていく形でその行方を追っていた。

しかし霊圧探査が得意と自負する雷山を以てして、その居場所を突き止めるには至っておらず、さらには痣城の霊圧に異様さを感じ取っていた。

 

 

 

-- 瀞霊廷・白道門(はくとうもん)付近 --

 

 

 

「春麗、白から情報共有が来たんだが、痣城は白道門(はくとうもん)方面へ向かったのが目撃されているらしい。そしてやはり護廷大命(ごていたいめい)が出た」

 

「護廷大命?そりゃまた随分と大事になっちゃったね」

 

 

護廷大命(ごていたいめい)

それは数ある命令の中で上位に位置される、言わば”即時処刑命令”。もはや一刻の猶予もなく、また如何なる情状酌量の余地もないと判断された場合に発令されることが多い。

雷山たちですら今までの死神人生で片手指程の回数しか発令されたのを見聞きしたことがないほどであり、それほど事態になってしまったのかと感じていた。

 

 

「しかしどういうことなんだ?出立してから痣城の霊圧を探っているが、()()()()()()()ような感覚になる」

 

「どういうこと?あ、でも前に会った時に……」

 

 

狐蝶寺は雷山の言葉を聞いて、かつて痣城と相対したときのことを思い出していた。それは会話した直後に痣城がまるで辺りの景色と溶け合うようにして消えて行った記憶。

雷山の予想である”霊子を操る能力”でそんな芸当が出来るのか狐蝶寺は考えた。そして直に見た痣城の消え方から雷山が立てた仮説とは別の仮説が1つ思い浮かんだ。

 

 

「雷山くん、もしかしたら――――――」

 

「……やっと見つけた。分散している霊力が不自然に固まってる所。行くぞ、春麗」

 

 

狐蝶寺が話しかけたと同時に、雷山は辺りに漂う痣城の霊力が不自然に固まっている箇所を発見した。そのため狐蝶寺に話しかけられたことに気付いていなかった。

 

 

 

 

* * * * * * * * * * * * * * * * * *

 

 

 

 

 

「何故こうも無駄な事をする。君たちでは私に傷1つ付けられまい」

 

 

痣城の眼下では果敢(かかん)蛮勇(ばんゆう)か、挑んだであろう護廷隊士が倒れていた。痣城はトドメを刺すのは無駄なことと白道門(はくとうもん)へ向けて再び進軍を始めた。しかし、数歩行ったところで、痣城は歩みは止まる。

目の前には【宮廷遊撃部隊】”十四番隊”の中で顔を合わせたことのあるの二人が立ち塞がっていたからだった。

 

 

「……私に賛同するつもりがあるならば協力を、否定するのならば何もしない方が良い【宮廷遊撃部隊】」

 

「”無駄だから”か?十四番隊の二人が出張って来て、”無駄”と斬り捨てられるのは心外だな」

 

「誤解を解いておくが、私に中央四十六室にとって代わろうなどと野心は存在しない」

 

「そんなことは知ってる。むしろとって代わってくれた方が今後のためになるからそこは賛同するんだけどな」

 

「雷山くん、それを言うために来たんじゃないんでしょ。痣城くん、君の考えはいいと思うよ。思うんだけど、何事もやり過ぎは良くないんだよね。私たちの仕事が逆に増えちゃうし」

 

「そう言う訳だ。十一番隊隊長・痣城剣八。現状、お前に対して護廷大命(ごていたいめい)が出ている。大人しく投降……する訳はないよな。だから、俺たちと(いくさ)(きょう)じてくれ」

 

 

そう言うと雷山と狐蝶寺は腰に差してある斬魄刀をゆっくりと鞘から引き抜いて構えた。

痣城は感じ取った。目の前の”伝説”とまで言われるであろう2人の死神から溢れるとてつもない霊圧を、その眼に映る殺気を、

 

 

「”雷光(らいこう)(ひか)りて雷鳴(らいめい)()らせ”『雷斬(らいざん)』」

 

「”微風(そよかぜ)()()()へと()静寂閑雅(せいじゃくかんが)()()らん”『暴風芽吹(ぼうふうめぶき)』」

 

 

始解した雷山の手には、刀身がギザギザした形の斬魄刀。狐蝶寺の手には彼女の身の丈と同じくらいの大きさはあろう扇子(せんす)の形をした斬魄刀がそれぞれ握られていた。

 

 

「それじゃあ、始めるよ♪」

 

 

まず動いたのは狐蝶寺春麗。

狐蝶寺は扇子を振るうことでわざと砂埃を起こして見せた。(たちま)ち辺り一帯が砂埃に包まれていくが、痣城はその行為に何の感情も抱かずにただただ眺めていた。

 

 

「”雷斬居合(らいざんいあい)一閃(いっせん)”!!」

 

 

次に動いたのは雷山悟。

雷山は砂埃の中から斬魄刀を鞘に入れた状態で姿を現した。そのままの勢いで抜刀術によって痣城を腰の位置で横一閃に両断した。……かに見えたが実際には目測を誤ったか斬撃は外れていた。

 

 

「なんだと……?」

 

「”破道の六十三”『雷孔砲(らいこうほう)』」

 

 

雷山は斬撃が外れたことに一瞬気を取られていた。そのためか痣城が自身の腹部付近に手の平を向けていることに気付くのが遅れた。

 

 

「くっ……”破道の一”『(しょう)』」

 

 

避けることは不可能と判断した雷山は咄嗟に別の鬼道をぶつけることで威力を軽減させた。

しかし、完全に軽減することは出来ずに痣城の放った鬼道は爆発した。

 

 

 

ドゴォォォォォォォォォ!!!!

 

 

 

「雷山くん!!」

 

「大丈夫だ、狼狽(うろた)えんな!」

 

 

ズザアアアァァァ……

 

痣城が放った鬼道によって生じた土煙の中から、隊長羽織が少し汚れた状態で雷山が地面を滑るようにして後退して来た。

雷山は何故斬撃が外れたかを考えていた。長らく実戦を離れていたために勘が鈍ったのかと、

しかし実際には雷山は見ていた。自身の斬撃が痣城の身体をすり抜けていたことを、

 

 

「しかし、さっきのはいったい……?」

 

「雷山くん、さっき言いそびれちゃったんだけどさ。もしかしたら痣城くんの能力って『融合(ゆうごう)』だったりしないかな?」

 

「『融合』だと?」

 

「うん、痣城くんと初めて会った時にまるで景色に溶け込むようにして消えたって言った事あったでしょ?」

 

「……初耳だな、それ」

 

「あれぇ?」

 

 

狐蝶寺は痣城と初めて顔を合わせた時にあったことをすべて雷山に話していたつもりだった。しかし雷山が聞いたのは痣城が【宮廷遊撃部隊】の存在を知っていたという所までで、”景色に溶け込むようにして消えて行った”という話は今初めて聞いたことだった。

勿論、それは狐蝶寺にとっては全くの想定外で狼狽えるには十分だった。

 

 

「ま、まあそんなことがあったの!しょうがないじゃん。言ったつもりだったんだから!」

 

「分かった分かった。狼狽えてないでその景色云々の続きを話してくれよ」

 

「もう!それでさっき雷山くんが霊圧探査してたとき”どこにでも居るようだ”って言ったでしょ?それって例えば尸魂界(ソウル・ソサエティ)に存在してるの霊子と融合してるって考えられない?」

 

 

(はた)から見れば狐蝶寺が突拍子もないことを言っているように見えたが、様々な人物の様々な報告を聞き、一度は仮説を立てた雷山からすれば今まで謎とされていたことに対して説明できる部分が多くあった。

 

 

「……成程、それならいろいろと説明がつくことになるか。本当、春麗は突然冷静になるから怖いな」

 

「失礼だなぁ。それでどうするの?そんな能力を持ってるなら、ハッキリ言って私じゃ役立たずだよ」

 

「まだそうと決まったわけではないから安心しな。要するにあいつの周りにある霊子か空気を直接殴るか、無理やり吸収してやればダメージが通るわけだろ。なら、空気の方は春麗、霊子の方は俺の領分で攻めていくとしよう」

 

「オッケー♪」

 

 

雷山は痣城と距離を取ったまま斬魄刀を横一閃に振り抜いた。それと同時に刃状に変化する雷が放たれた。

 

 

「”放電(ほうでん)”!!」

 

「……!」

 

 

それは避ける間もなく痣城の身体を貫いていた。()しもの痣城もダメージが通ったのか少し顔を歪ませていた。

 

 

「”鎌鼬(かまいたち)四肢裂風(ししれっぷう)”!!」

 

 

狐蝶寺は扇子を振るった際に生じた風を4つに分かれさせた。風は右手・右足・左手・左足にそれぞれ向かい四肢を()ね飛ばして見せた。

 

 

「…………」

 

 

狐蝶寺によって四肢を失う大ダメージを負ったかに見える痣城だったが、鬱陶しいと言いたげな顔を一瞬したかと思えば、すぐに痛みなど皆無と言うように顔からその感情を消していた。そしてすぐさま景色と同化して消え、別の場所へと姿を現していた。

 

 

「無駄なことだ。私に斬撃によるダメージを届けたことは見事と言うほかないが、それも微々たるもの。いずれは霊力を消費し尽くし動けなくなる」

 

「……確かに()()()()ではジリ貧だな」

 

「だけどさ、そんな理由で私たちが怖気づいて退いてくと思ってるの?」

 

「無駄な問答をするつもりはない」

 

 

痣城は雷山と狐蝶寺を無視して一歩、また一歩と白道門(はくとうもん)へと歩みを進め始めた。

一方の雷山と狐蝶寺もただで通すつもりもなく、自身らの考えつく別な方法で痣城の霊力を削ろうと考えた。

 

 

「”縛道の八十”『樹縛(じゅばく)』」

 

 

雷山は両の手を一度合わせるとすぐさま地面につけた。するとそこから木の幹が生え出て来て、痣城の身体を捕らえた。

 

 

「これは……」

 

「相手の霊力を吸って巨大化していく樹木だ。普通は隊長格に使っても精々が少し大きな樹木程度にしかならず、大した拘束力も得られないが、周りと融合しているお前相手ならどんどんデカくなり拘束力も増していく」

 

「……成程」

 

「”破道の七十六”『蒼霊炎舞(そうれいえんぶ)』」

 

 

狐蝶寺は自身の斬魄刀である扇子を使い舞を舞い始めた。

すると狐蝶寺の周りにある霊子が舞によって生じる風に乗って漂い始めた。そして狐蝶寺が一気に扇子を振ると同時にその全てが(あお)い炎となり、一気に痣城を捕らえる樹木へと向かい痣城ごと樹木を燃やし始めた。

 

 

「へへっ、どんなもんだい♪」

 

 

ザシュッ!!

 

 

「……!」

 

「あれ?」

 

「捕らえた者の霊力を吸収することで巨大になり拘束力も増す樹木と霊力を糧にして燃える炎か。確かにこれに捕らわれ続けることは避けた方が良いだろうな」

 

 

痣城は別の場所から刃を顕現(けんげん)させて自身の身体を捕らえている樹木を切り裂くことでその拘束から脱した。そして吸収する霊力が無くなったことで樹木は消え失せてそれを糧として燃えていた炎も消えてしまった。

 

 

「”破道の九十一”『千手皎天汰炮(せんじゅこうてんたいほう)』……」

 

 

痣城は静かに腕を伸ばしただ一言呟いた。

痣城の周りには幾つもの光弾が生成されており、それが一斉に狐蝶寺に向かって放たれた。

 

 

「無駄だよ♪」

 

 

九十番台の鬼道を目の前にして狐蝶寺は防御態勢1つとっていなかった。

通常は狐蝶寺の斬魄刀『暴風芽吹(ぼうふうめぶき)』による能力効果で狐蝶寺と鬼道の間には風の防御層が存在しており、弾く形で防ぐためで防御態勢を取る必要が無かったためである。

しかし痣城は防御層が存在する空間と融合することで、その空間一帯を改造して狐蝶寺による能力に支配される部分を取り除き攻撃が通るようにした。

 

 

「え?」

 

 

狐蝶寺が異変を察知したのは数秒後、通常時に風の防壁に阻まれて留まる範囲を超えた時だった。

咄嗟に躱すことを含めた防御態勢を取ろうとしたが、痣城の放つ鬼道の直撃は避けられない形となっていた。

 

 

「やばっ……!!」

 

 

ドゴォォォォォォォォォォォン

 

 

爆煙(ばくえん)に辺りが包まれており、狐蝶寺がどうなったかは目には見えなかった。しかし空間と融合する痣城は肌で感じることで手応えが無かったことを知った。

 

 

「”百降雷壁陣(ひゃっこうらいへきじん)”」

 

 

煙が晴れて狐蝶寺の姿が露わになった。狐蝶寺の前には雷山が斬魄刀を逆手に持つ形で立っており、その周りには空から幾つも降り注ぐ雷の陣が組まれていた。

先程の爆発は痣城の放つ鬼道と雷山が放った雷の陣がぶつかり合ったことで発生したものだった。

 

 

「ごめん、雷山くんありがとう」

 

「気にすんな。それよりもやはり決定打に欠けるな」

 

「雷山くんどうするの?このままじゃ正直……」

 

 

百戦錬磨の雷山と狐蝶寺はこのまま戦いを続けてもこちらが霊力切れを起こす形で幕を下ろすと分かっていた。

 

 

「はぁ……仕方がないか。春麗、離れろよ」

 

「――――――さすがは【宮廷遊撃部隊】。九十番台の鬼道をすべて防ぎ切るとは」

 

 

その声と同時に雷山と狐蝶寺の前に痣城が姿を現した。痣城は隊長羽織を土煙で汚してはいるものの目立った外傷は負っておらず万全とも言える状態だった。

 

 

「……そう言えばまだ聞いてないことがあったな。何故ここまでの事をするほどに死神は歯車であるべきだと思うに至ったのかを」

 

「問答するつもりはないと言ったはずだが」

 

「数十年前にあった痣城家の一族諸共処刑が発端か?」

 

「…………」

 

「あの時の報告書をいま一度見直してな。最後に処刑命令が出たのがお前と霊術院生だったお前の姉であることは知っている」

 

「……!」

 

 

雷山は痣城剣八の姉の事を出した途端その表情に『後悔』の二文字が現れたことに気が付いていた。しかし、痣城はすぐに自身を律するようにしてその感情を廃棄していた。

 

 

「一瞬だけだが表情が変わったな」

 

「何処でそれを知った」

 

「簡単なこと、あの当時から十四番隊が存在する。ただそれだけの話だ。お前の姉の事は死後に少し調べた。死神としての才は十二分だったろうに、中央四十六室(ろうがいども)貴族(くされども)も碌でもねぇことをする」

 

「…………」

 

「まだ子供(ガキ)だったお前とその姉は何とかして助けてやりたいとは思っていたんだがな。結局は後の祭りだった」

 

「何が言いたい」

 

「別に、今話したことをどう捉えようとお前の勝手だ。さて、これで時間稼ぎも済んだな」

 

 

その時、痣城は雷山の隣から狐蝶寺がいなくなっていることに気がついた。

雷山悟を残して退いたのか?しかしなぜ1人だけで……と無駄な思考が頭を()ぎる。

痣城は慕っていた姉の話をされたことで少し、ほんの少しだが動揺していた。普段ならば無駄と斬り捨てるその思考をさせるほどに、

 

 

「”卍解”」

 

 

雷山は斬魄刀を肩のあたりまで上げて、そしてただ一言呟いた。

その瞬間、雷山の持つ斬魄刀に辺りの静電気が吸い寄せられるかの如く集まりだすと同時に落雷が発生した。その閃光と轟音によって雷山の姿を覆い隠していたが、空間と融合する痣城は雷山が持っていた斬魄刀がの刀身が徐々に伸びていることを感じ取っていた。

 

 

「”卍解”『雷刃(らいじん)(かなえ)』」

 

 

雷山の姿が現れるとさっきまで刀が握られていた手に2mはあろう(やり)が握られていた。

 

 

 

 





暴風芽吹(ぼうふうめぶき)

【十四番隊・第四将”副将”】狐蝶寺春麗の持つ斬魄刀。

解放すると巨大な1つ扇子の形の斬魄刀となる。この状態では扇子の山と谷の部分に刃があり閉じれば通常の刀のように使うことも出来る。
『風を操る能力』を持ち”風嵐系(ふうらんけい)最強最古(さいきょうさいこ)の斬魄刀”と呼ばれる。操れる風の種類は人や物による人工によるものでも、温度差や気圧差などによる自然によるものは問わないが、攻撃と防御でそれぞれ使える風の種類が変わる。
・攻撃→おもに人工によるものが用いられ、相手の能力や技、自身の扇子を振るった際に生まれる風が主となり、その威力は辺り一面を人、建物、技を問わずすべてをかき消してしまうほど。
・防御→おもに自然によるものが用いられ、気圧差や温度差によって生じる自然界の風が主となり、その防御力は相手のあらゆる攻撃を一定地点を境にしてすべて弾いてしまうほど。
解号は『微風(そよかぜ)()()()へと()静寂閑雅(せいじゃくかんが)()()らん』



雷斬(らいざん)

【宮廷遊撃部隊・十四番隊部隊長】雷山悟の持つ斬魄刀。

解放すると刀身がギザギザに曲がっている形の斬魄刀になる。
『摩擦によって生じる静電気を操る能力』を持ち”雷電系(らいでんけい)最強最古(さいきょうさいこ)の斬魄刀”と呼ばれている。
斬魄刀は中継器のような役割をしており、自身の周囲半径100メートル以内の大小問わずに発生した静電気を自身の霊力と混ぜて何十倍にまで強力にすることが出来る。このためどこかの誰かが持つ斬魄刀のように『雷を操る能力』と勘違いしている者が多々いる。
解号は『雷光(らいこう)(ひか)りて雷鳴(らいめい)()らせ』


【卍解】の名は『雷刃(らいじん)(かなえ)


卍解をするとギザギザに曲がった形の刀から、2メートルほどの鎗へと変化する。
卍解をした瞬間から『摩擦によって生じる静電気を操る能力』が強化されると同時にその範囲と対象が広がる。操る範囲は自身の周囲半径1㎞にもおよび、対象は静電気のみに留まらず、摩擦自体を静電気ごと斬魄刀へ収集することが出来る。
例えば、相手の足元の摩擦を静電気ごと奪い取り摩擦係数を0にすることが出来るようになる等。
また卍解状態では『(せん)』『(ごう)』『(らく)』『(らい)』の名を冠する4つの専用技が存在する。


・その他用語


”縛道の八十”『樹縛(じゅばく)
地面から霊力を吸う樹木を生やして相手を捕える。これに捕らわれたものは死にはしないものの動けなくなるほどに霊力を吸い取られる。吸い取った量に比例して樹木は大きさを変える。


”破道の七十六”『蒼霊炎舞(そうれいえんぶ)
身体を使い舞を舞うことで漂う霊子を自身の周囲に集める。その後刀を振るい蒼い炎へと変化させ、風に乗せて相手を燃やし尽くす。この炎は霊子を糧にして燃えるため、霊子で出来ているものが燃え尽きるまで炎の勢いは治まらない。







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