宮廷の遊撃人   作:らりるれリッター

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第8話 一時終戦

 

 

「”卍解”」

 

 

”卍解”と唱えた雷山の手には2mはあろう(やり)が握られていた。それは雷山悟が持つ”雷電系(らいでんけい)最強最古(さいきょうさいこ)”とも(うた)われる斬魄刀『雷斬(らいざん)』の本当の姿。

その名も――――――

 

 

「”卍解”『雷刃(らいじん)(かなえ)』」

 

「…………」

 

 

痣城は途方もない霊圧を放つ雷山とその雷山が持つ鎗を静かに見据えていた。

自身の斬魄刀の能力によって空気と融合することで、他の斬魄刀の能力を含めたあらゆる攻撃を透過(とうか)させることができる痣城を(もっ)てしても、目の前に悠然と立つ雷山悟の持つ『雷刃(らいじん)(かなえ)』なる卍解は警戒に値した。

 

 

「これでダメなら我々に打つ手はないが、()しものお前もただでは済むまい」

 

 

ザッ――――――

 

 

「これは……」

 

「……!」

 

 

痣城は雷山が攻撃しようと鎗を構えた一瞬の隙を逃さずに、空気中に刃を顕現させて雷山を貫こうとした。

しかし、卍解したことで溢れ出る雷山の強大な霊圧を前に顕現させた刃など(なまくら)同然で、貫くどころか一部が消し飛んですらいた。

それは痣城にとっても予想外の事であり、逆に決定的な隙を雷山に与えてしまっていた。

 

 

「残念だったな。今の刃が俺を貫いていれば矛先に集めた霊圧が暴走して爆発していた。そうすれば致命傷とはいかずともこちらの大ダメージは必至だったな」

 

 

そう言うと雷山は自身の持つ2mの鎗を勢いよく縦に振り抜いた。

 

 

「行くぜ、『雷刃(らいじん)(かなえ)』”(せん)”『一閃刃(いっせんじん)』!」

 

 

雷山が槍を振るうと同時に巨大な刃状の雷が放たれた。それは痣城を周りの霊子や空気ごと引き裂いた。

 

 

「……!」

 

 

その衝撃は凄まじく、雷山の前方約3㎞に渡って建物を全半壊させるに至っていた。そして、その衝撃からか痣城の姿も霊圧も消え失せてしまっていた。

通常の相手なら消し飛ばしてしまったと判断される状況だが、相手は八代目剣八・痣城双也。雷山は消し飛んでしまったと安易に考えずに霊圧探査を再度行ってその行方について思案していた。

 

 

「……やり過ぎたな。相手が剣八とは言えもう少し加減するべきだったか」

 

「雷山くん!」

 

 

雷山の攻撃に巻き込まれないために一時退避していた狐蝶寺がやって来た。狐蝶寺は雷山の前方に広がる光景を見て、怒りや呆れと言った感情を見せていた。

 

 

「いくら何でもやり過ぎだよ!あとで山本元柳斎(おじいちゃん)に叱られても知らないからね!」

 

「仕方がないだろ。それよりも、痣城のやつ姿も霊圧もキレイさっぱり消えちまった」

 

「……殺しちゃったの?」

 

「いいや、ダメージは負ってるだろうが()ったという感触はなかった。恐らくだが……」

 

 

雷山は遠くに見える白道門(はくとうもん)を見据えていた。自身の予想が正しければ痣城は雷山の卍解で消し飛んだと見せかけそのまま人知れず流魂街へ進軍していると考えた。

 

 

 

-- 瀞霊廷・白道門(はくとうもん)付近 --

 

 

 

「…………」

 

 

痣城は雷山の周囲の霊子ごと雷で焼き斬る攻撃を間一髪で躱し直撃だけは免れていた。しかし、その余波だけでも負傷するには十分すぎるほどで身体のあちこちから血を流していた。

そして少しふらつきながらも白道門(はくとうもん)へ到達した。

 

 

「居たぞー!!」

 

 

痣城は声のする方へと目を向けた。そこには自身を追ってきたであろう護廷十三隊が隊長格も含め数百人は集結していた。

自身を倒せる気でいる彼らを見て痣城は”無駄なことを”と呆れにも似た感情に抱いた。【宮廷遊撃部隊・十四番隊部隊長】である雷山悟の卍解による一撃ですら自身をダメージを与えたものの(ほふ)るには至らなかったと言うのに、

 

 

 

「……!やはり生きていたか」

 

 

白道門(はくとうもん)へとあと僅かな地点で雷山は痣城の霊圧を感じ取った。それは痣城が何らかの理由で霊子を固めて実体化したことを意味しており、恐らくは追跡して来た護廷十三隊に攻撃を仕掛けていると推測出来た。

 

 

「春麗、急ぐぞ!」

 

「オッケー!」

 

 

 

 

 

* * * * * * * * * * * * * * * * * * *

 

 

 

 

 

「え、なにこれ……?」

 

「チッ、遅かったか」

 

 

雷山と狐蝶寺が白道門(はくとうもん)へ着くとそこには目を疑うような光景が広がっていた。

 

 

「うっ……」

 

「クソ、この程度……」

 

「だ、誰か、救護班を……」

 

 

数人……数十人……いや、数百人はおろう死神たちがうずくまり(うな)っていた。

状況を見れば痣城を討伐しようと集結していたであろうことは容易に想像はでき、全員幸いなことに命はあるようだったが、特筆すべきはそのうずくまっている者たちの中に隊長格の死神も数人混じっていたことだった。

 

 

「それにしても、護廷十三隊が揃いも揃って情けない話だな」

 

「痣城くんを取り逃してる私たちが言えた義理じゃないと思うけどなぁ」

 

「痣城を取り逃がしたことに対して言ってるんじゃない、こうやって無様にうずくまってることに対して言ってるんだよ」

 

「……屁理屈(へりくつ)だね」

 

「屁理屈結構。それより早いとこ門の外に出ちまった痣城を……」

 

「――――――まただか?弱いもんイジメは感心しねぇな」

 

 

雷山たちの目の前には巨大な斧を両手に持った巨漢の死神が立っていた。

名を兕丹坊(じだんぼう)。数十年前に四大(しだい)瀞霊門(せいれいもん)がひとつ、白道門(はくとうもん)の門番に就任した人物。

 

 

「お前は……兕丹坊(じだんぼう)か!いや、それよりも弱いものイジメ?お前は何言って……」

 

「お()えらが1人を袋だたぎさすようとしのを見ただ!喧嘩は良くねぇど!」

 

「こいつ……!!」

 

 

雷山は兕丹坊(じだんぼう)が瀞霊廷内で何があったのかを一切知らずに白道門(はくとうもん)の内側で痣城と護廷十三隊が戦っているのをいち対多数の喧嘩と勘違いしていると察した。

次に現れた自分たちが兕丹坊(じだんぼう)の中では新手とされていることも、

 

 

「春麗!こいつ俺たちが痣城の捕縛命令を受けて行動してるのを知らずに迎え撃っているだけだ!間違ってもケガさせんなよ!」

 

「いやいやいやいや!無理でしょこれ!」

 

「ふんぬ!」

 

 

ガンッ!!

 

 

兕丹坊(じだんぼう)が振り下ろした斧と狐蝶寺が構えた解いた状態の巨大な扇子がぶつかり合い、けたたましい音が鳴り響いた。

狐蝶寺は(すん)でのところで斧を受け止めていた。一方の兕丹坊(じだんぼう)はそう来なくてはつまらないと言いたげにテンションが上がっている様子で辺りに声が木霊(こだま)していた。

 

 

「お()えで二人さ!オラの斧さを受け止めだのは!」

 

「ああもう、鬱陶しいなぁ!”蛇睨(へびにら)み”!」

 

「!?」

 

 

その技の名は”蛇睨(へびにら)み”

『恐怖で立ち尽くす』等の意味を持つ、蛇に睨まれたカエルという言葉をモチーフにしており、強烈な殺気や霊圧を相手に向けてまるで全身が硬直したかのように身動きを取らせなくする狐蝶寺の技の一つ。

今、狐蝶寺は兕丹坊に向けて強烈な殺気のこもった眼差しを向けており、言葉そのままを彷彿とさせる光景が広がっていた。

 

 

「う、動けねぇだ……」

 

「雷山くんにケガさせるなって言われたし、何より君はただの門番だからね。動けないだけにしておいてあげるよ♪」

 

「悪いな、春麗。助かった」

 

「いいって♪それより痣城くんを追うんでしょ?」

 

「ああ、『一閃刃』でダメージを負っていればいいんだが……―――」

「ッ!!」

 

 

雷山は顔をハッとした直後、瀞霊廷内部の方へ振り返った。その時、雷山は上空から猛スピードで瀞霊廷へと向かってきている霊圧を感じ取っていたのだ。

その霊圧は通常時ではまず出会いことの無い、一生かけて1回顔を合わせることが出来れば運の良い方とまで言われよう人物たちの霊圧だった。

 

 

「この霊圧は……」

 

「え?……あ、ホントだ」

 

「……成程。()()()()()で痣城捕縛に乗り出した訳か。【王属特務(おうぞくとくむ)】”零番隊(ぜろばんたい)”」

 

 

 

同時刻――――――

 

-- 流魂街(るこんがい)白道門(はくとうもん)付近 --

 

 

 

痣城は自身の行く手を阻む八番隊隊長・京楽(きょうらく)春水(しゅんすい)と十三番隊隊長・浮竹(うきたけ)十四郎(じゅうしろう)と相対していた。

説得を試みていた京楽と浮竹の2人だったが痣城に止まる理由はないためにすぐさま決裂した。すると今度は始解して実力行使で止めようとしていた。

 

 

「……無駄な事だ」

 

 

痣城はそんな2人を見て始解程度では止めることなど不可能だろうにと思いつつも、2人を少なくとも動けないようにしようと鬼道を放つべく腕をゆっくりと伸ばした。

 

 

「……!」

 

 

しかし、鬼道を放つための詠唱は痣城の口から紡がれることはなく、痣城は一瞬驚くように目を見開き、ゆっくりと後ろを振り返った。

 

 

「……そうか。霊王も私の行動を否定したか」

 

 

その時、一瞬だけ痣城の顔に残念だと言わんとする感情が乗ったのを京楽は気付いたが、痣城はすぐに自身を律したのか、感情は消え去ってしまった。

 

 

「……いいだろう。私は君たちに投降し、大人しく四十六室の裁判を受けるとしよう」

 

 

それ以降痣城は口を閉ざし何を語ることもなかった。一方の京楽と浮竹はイマイチ状況を飲み込めておらず痣城の突然の投降に顔を見合わせていた。

 

 

「ま、まあ大人しく連行されてくれるというのなら……」

 

「これ以上手出しするのは野暮だね」

 

 

若干の戸惑いはありつつも京楽と浮竹は始解を解き、斬魄刀を鞘に納め、念のために逃亡を防ぐ意味合いを込めて痣城の手首に殺気石(せっきせき)の錠をかけて、瀞霊廷の方へと歩き始めた。

白道門(はくとうもん)に着いた時、まず目に入ったのは門番の兕丹坊(じだんぼう)

彼は巨大なクレーターの前に立ち尽くし何やら言っていた。

 

 

「やり過ぎちまっただ。これじゃ墓に入れてやるごとが」

 

 

しかし、京楽と浮竹はそこに立つ別の人物たちの姿を見て驚愕していた。

それは自分たちが霊術院生、そして護廷十三隊に入隊したときの時代において隊長職を担っていたはずの人物。

 

 

「分かったからいい加減退いてくれ。お前がそこにいたら通れないだろ」

 

「ダメだ。見たこどもねぇ羽織さ着とる(もん)を通したとあっちゃ、オラが怒られちまう」

 

「だーかーら!これは隊長羽織って言ってね――――――」

 

「……成程ね、何故痣城隊長が血だらけの状態でいたのか不思議でならなかったけど」

 

「狐蝶寺隊長、ですか……?」

 

「え?」

 

 

突然声を掛けられたことで狐蝶寺は目を向けた。そこには笠を被り女物の羽織を隊長羽織の上から纏う死神と同じく隊長羽織を身に纏い、白色の髪をした優男(やさおとこ)の風貌をした死神が立っていた。

狐蝶寺はその中で後者の死神について身に覚えがあった。

 

 

「……あっ!もしかして、十四郎(じゅうしろう)くん?」

 

「やはり狐蝶寺隊長でしたか。こんなところでいったい何を……」

 

「いやぁ、ちょっとねぇ……散歩かな?」

 

「春麗、知り合いか?」

 

「うん。浮竹十四郎くんって言ってね、私がまだ護廷十三隊の隊長だった頃に十三番隊に配属されてきた子なんだよ」

 

「浮竹十四郎……ああ、八番隊の京楽春水と並んで霊術院卒で初めて隊長に就任したという……」

 

「こうやって話すのは何百年ぶりかな、雷山隊長」

 

「昔、元柳斎の周りをウロウロしていた時以来だろうな。まったく、あの言う事を聞かない子供(ガキ)が今や八番隊隊長とはな。……それはそうと、2人が痣城を捕らえたのか?」

 

 

雷山は浮竹と京楽の後ろで殺気石(せっきせき)の錠を着けられ連行されている状態の痣城を見てそう問いを投げかけた。

 

 

「捕らえたというよりは……」

 

「痣城隊長が投降して来たんだよ。急にね」

 

 

雷山の問いに答えたのは京楽だった。京楽は雷山に今さっきあったことを事細かに雷山に説明した。

それを聞いた雷山は痣城の性格的に投降するのも致し方なしと思った。

 

 

「成程、状況は分かった。お前はもう少し挑戦する気概は無いのか、痣城よ」

 

「私の事を知ると自負する君にしては、随分と無駄な問いだ」

 

「それもそうだな。俺とてまともにあいつらと戦うのは好ましいとは思わないしな」

 

「雷山隊長、痣城隊長の護送は僕たちに任せてもらえないかな」

 

「ああ、それは構わんぞ。元々、痣城を動けない状況に出来たら十三隊の誰かに引き渡すつもりだったからな」

 

「……念のために聞くけれど、山じいに雷山隊長たちのことは報告してもいいのかな」

 

 

京楽は未だに雷山たちの正体に行き着いておらずに、仮説として元柳斎にも秘匿の独自に立ち上げた何らかの組織で動いていたのではないかとも考えていた。

その場合、元柳斎に報告することは雷山たちの立場を悪くすることと同義であるために、最悪の場合雷山たちを討伐しなければならない事態に成り得ると考えた。

 

 

「それも構わないぞ。……そうだな、お前たち2人には言ってもいいかもしれんな。我々は【宮廷遊撃部隊】”十四番隊”として活動している。勿論、元柳斎の命によってな」

 

「【宮廷遊撃部隊】”十四番隊”?……成程。数百年前に雷山隊長たちが亡くなったという噂が流れた時があったけれど、あれはそう言う……」

 

 

京楽が言っているのは【宮廷遊撃部隊】”十四番隊”が発足したときにその存在が公になることを防ぐために護廷十三隊総隊長・山本元柳斎重國が流した偽情報であった。

 

 

「あれは元柳斎が流したガセ情報だな」

 

「……私は君たちの無駄話に付き合うつもりはないのだが」

 

 

痣城は自身には一切関係もない、本当の意味で無駄話を続けていた4人に対して連行するなら早くしろと言いたげな顔をしていた。

 

 

「ああ、呼び止めてすまなかった。それでは痣城剣八の護送よろしく頼む。京楽の次男坊」

 

「十四郎くん、またね~♪」

 

 

雷山と狐蝶寺は京楽たちの背中を見送ると、十四番隊における痣城剣八への”護廷大命(ごていたいめい)”は京楽春水、浮竹十四郎両名が痣城の捕縛を成功させたことを以て終結したとして、十四番隊詰所への帰路についた。

 

 

 

-- 瀞霊廷・十四番隊詰所 --

 

 

 

「雷山悟。たった今、帰還した」

 

「たっだいま~♪」

 

 

襖を開けると残る4人の十四番隊メンバーが揃っており、その全員がこちらを見ていた。

まず駆け寄って来たのは浮葉と銀華零、2人とも痣城の進撃を護廷十三隊からの情報共有で知っていたために一番心配していた。

 

 

「雷山さん、春麗ちゃん。お帰りなさい。無事で何よりです」

 

「お疲れ様でした。お2人ともご無事で何よりです」

 

「ああ、何とか2人とも五体満足、無事で帰って来れたな」

 

 

次に声をかけたのは山吹と椿咲。

2人とも別の任務で瀞霊廷を離れていたためにほんの少し前に帰還して来たばかりだった。

 

 

「お疲れ様でした。雷山隊長、春麗さん」

 

「雷山部隊長、狐蝶寺隊長、お疲れ様でした。申し訳ありません、参戦出来ずに呆けておりまして」

 

「気にしなくていいよ♪久しぶりに身体も動かせて楽しかったのも事実だし♪」

 

「ああ、そんなこと気にしなくていい。そもそも急に呼び戻す事態にしてしまった俺の采配がまずかっただけだ。……そうだ椿咲、()()()はどれくらい調べがついてるんだ?」

 

 

雷山が椿咲に投げかけた問い。それは、痣城剣八の一件が起きる前から” 近い将来尸魂界の脅威と成り得る存在に対しての先制攻撃 ”を役割のひとつに持つ【宮廷遊撃部隊】”十四番隊”が注目していたとある勢力に関する情報。

 

 

「それに関してはもう少し情報として確定してから報告を上げようと思ってたんですけれど……」

 

「構わないぞ。現状分かってる範囲でいいから頼む」

 

「分かりました。まだ未確定な情報も多いですが――――――」

 

 

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痣城の反乱から数日の時が経ったある日のこと

 

 

「はぁ?」

 

「えぇ?」

 

「そんな声を上げてもダメだと思いますよ」

 

 

雷山と狐蝶寺は浮葉から護廷十三隊総隊長・山本元柳斎重國より召喚の旨の通達があったことを聞かされており、物憂(ものう)げな声を上げていた。

このままでは面倒くさがって2人とも招集に応じない事態になると考えた銀華零は仕方なく、引率として2人を連れて一番隊舎まで行くこととなった。

 

 

「大変お待たせしました。【十四番隊・第五将”大将”】銀華零白。只今参上しました」

 

「銀華零じゃと?……成程、あ奴らめ」

 

 

招集した覚えのない銀華零が名乗りを上げたことを元柳斎は不思議に思ったが、すぐに雷山と狐蝶寺が素直に応じようとせず、仕方なしに銀華零が連れて来たものだと察した。

 

 

「雷山と狐蝶寺は共におるか」

 

「ええ、ここに」

 

「うむ、では入れ」

 

「……【宮廷遊撃部隊・十四番隊部隊長】雷山悟。馳せ参じた」

 

「……【十四番隊・第四将”副将”】狐蝶寺春麗。同じく参上しました」

 

「随分と不服そうに見えるがまあ良い。さっそくじゃが、雷山悟、狐蝶寺春麗。おぬしら、わしに弁明せぬことはないかの」

 

「……雷山くんなにかやっちゃった?」

 

 

狐蝶寺は自身には一切心当たりがないと雷山の方へと顔を向けていた。

一方の雷山は、仮に自分1人の話なら狐蝶寺は呼ばないだろと言いたげな顔をしており、その光景を見つめる銀華零はどこか懐かしむように笑みを浮かべていた。

 

 

「なんで俺1人が何かやった前提なんだよ。春麗も呼ばれてるのなら、呼ばれた理由なんざ痣城討伐の際に暴れすぎたことなんだろ?」

 

「けど全半壊させたのって卍解した雷山君でしょ」

 

「やかましいわ」

 

「……それに関しては火急の事態につき不問とする。わしが言うておるのは、春水と十四郎に顔を見られたことじゃ」

 

 

元柳斎は過去に【宮廷遊撃部隊】を発足させた際に雷山、銀華零、狐蝶寺の3人を死んだことにしてまでその存在を隠そうとしていた。にもかかわらず不用意に京楽春水と浮竹十四郎と言う、2人の護廷十三隊隊長の前に姿を見せる雷山と狐蝶寺の危機管理の無さを問い詰めていた。

 

 

「顔を見られたこと?確かに浮竹十四郎と京楽の次男坊には会いはしたが、そんな詰められることか?」

 

「相手が事情を察することの出来る春水と十四郎で良かったものの、他の隊士と鉢合わせておったら、どうするつもりじゃった」

 

 

雷山と狐蝶寺を知る者は少なくなったとはいえ、姿を見られたことで噂が立ち、最終的に【宮廷遊撃部隊】の存在が明るみでることは想像できることではあり、元柳斎の言いたいことも理解できた。

しかし雷山は、護廷十三隊の後援部隊としての立ち位置もある【宮廷遊撃部隊】が誰1人として顔を合わさずにその任務を全うすることなど不可能であると考えていた。

 

 

「そうは言われても、後援部隊なら全く顔を合わせずにいられるのなんか不可能だろ」

 

「少し自重せよと言っておる。そもそも今回の一件、儂はおぬしらに出撃要請など出しておらん」

 

「結果的に隊長格も含めた数百人が重軽傷を負ってんだから、緊急性が高いとして問題ないだろ。要するに次似たようなことがあったら護廷十三隊に顔を見られなければいいんだろ」

 

 

元柳斎はあまり言う事を聞かないと知ってる雷山に対して一抹の不安を残しつつも、しばらくは大人しくするだろうと判断して、”次は同じ事で召喚されることが無いよう精進せよ”と言葉をかけて雷山たちを帰した。

雷山は面倒くさいと言いたげにため息を吐いて去って行った。

 

 

こうして、痣城剣八の反乱は一旦の終息を見たのだった。

 

 

 

 

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