メーデー!:あるウマ娘チームの真実と真相   作:運輸省

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なんか日刊ランキングに載ってたらしいので初投稿です。メーデー民に支えられて日刊ランキング!


《前回の誤字報告者兄貴姉貴》(敬称略)
Simca V、アカギ

ありがとナス!


3話 僕らはいつまでも一緒だからな

【答え合わせ】

 

 

・ギムリーグライダー

 → エア・カナダ143便

  『エア・カナダ143便滑空事故』

  *1

 

・Captain Strike

 →ブリティッシュ・エアウェイズ5390便

  『ブリティッシュ・エアウェイズ5390便不時着事故』

  *2

 

・アクロバットクルー

 →フェデックス705便

  『フェデックス705便ハイジャック未遂事件』

  *3

 

・セントエルモライト

 →ブリティッシュ・エアウェイズ9便

  『ブリティッシュ・エアウェイズ9便エンジン故障事故』

  *4

 

・マツユキラッキー

 →スカンジナビア航空751便

  『スカンジナビア航空751便墜落事故』

  *5

 

・ハドソンミラクル

 →USエアウェイズ1549便

  『USエアウェイズ1549便不時着水事故』

  *6

 

・ワンアイドヒーロー

 →タカ航空110便

  『タカ航空110便緊急着陸事故』

  *7

 

・マッスルリーブ

 →リーブ・アリューシャン航空8便

  『リーブ・アリューシャン航空8便緊急着陸事故』

  *8

 

・ハリケーンハンター

 →NOAA42

  『アメリカ海洋大気庁P-3エンジン喪失事故』

  *9

 

 

 

──────

───

 

 

 

 

「なんで分かるんだよ…」

 

 

全てのメンバーの出自を言い当てたあとの沈黙を破ったのは、アクロバットクルーの発言だった。

 

 

「ちょっと、なんで引き気味なの」

 

「いや、だってさぁ……」

 

「普通、事故が起こった時は話題にしても事故の詳細含めて全部覚えてるっていうのはおかしいよ? 航空関係者でもたぶんそういないと思う」

 

「私も、そう思う」

 

 

ハドソンミラクルとワンアイドヒーローも一緒に頷く。

 

 

「え~、そ、そうかなぁ……」

 

「まあ、悪い気分ではありませんが」

 

「ね。私たちが頑張ったことを覚えていてくれる人がいるって、えへへ、なんだかうれしいね」

 

 

セントエルモライトが静かに微笑み、マッスルリーブは嬉しそうにはにかんだ。

 

 

「それで?」

 

「それで……っていうと?」

 

「決まってるだろう、マツユキの告白を受けるのか?」

 

ハリ(ハリケーンハンター)さん……? 私が追いかけたら貴女の脚では逃げられないことを忘れないでくださいね……?」

 

「おっと、それを言われると弱るな」

 

 

 

若干顔を赤らめたままのマツユキラッキーから睨まれたハリケーンハンターが、演技がかった風に肩をすくめた。

『マツユキからの告白を受ける』。

例えに意図を感じるが、要は『チーム35L(仮)の顧問を引き受けるか』という問いである。

 

考えを言うと、別に顧問を引き受けたくないというわけではない。ただ、いくつか心配なことがあるだけだ。

 

 

「でもさ、さっきマツユキさんには話したけど、私でいいの? トレーナー免許は持ってないし、レースの知識も素人に毛が生えた程度だよ?」

 

「ええ、それでいいんです」

 

「Conversely……逆に言えば、『()()()()()()()()()()()()()()()()』とも言えるかもしれませんね」

 

 

マツユキの言葉に、少し困った風のキャプテンストライクが続ける。

 

 

「……どういうこと?」

 

「説明するよりも見てもらった方が早いかと。先輩、先日のレース映像を彼女に見せても?」

 

「構いませんよ。現状デビューしてるのは私だけですしね」

 

「私とギムちゃんはもうすぐデビューなんだけどねー」

 

 

セントエルモライトから許可を得たキャプテンストライクが、スマホを取り出して某有名動画サイトを開いた。

 

 

「こちらは、今月のはじめに開催された重賞、Diamond Stakesの様子です。えーと、先輩は……ここですね」

 

 

彼女が指さした画面には、集団の遥か前方を突っ走る巨体の姿が映されていた。隣を他に2人のウマ娘が走っている。逃げ3人がハイペースでレースを引っ張っているのか、後続集団とは距離がかなり開いている。

 

 

キョウエイプロミス、ピュアーシンボリ、セントエルモライトのデッドヒート!差はほとんどありません!残り200を通過!ここでキョウエイプロミスが少し前に出たか!セントエルモライトとピュアーシンボリも粘るが距離は縮まらない!キョウエイプロミス!キョウエイプロミス!キョウエイプロミスが1着でゴールイン!ダイヤモンドステークスを制したのはキョウエイプロミス、これが重賞初制覇になります!2着はピュア―シンボリ、3着にセントエルモライトが入っています

 

 

実況の声を最後に、動画はそこで終了した。

 

 

「へえ、重賞で3着。すごいね」

 

「今のところこれが最高成績なので、重賞勝ちはまだありませんが……とにかく、ストラ(Captain Strike)が何を言いたいかわかりますか?」

 

「んー……いや、さすがにわかんないかなぁ……逃げってことぐらい?」

 

Correct!(正解!)

 

「え?」

 

 

違うだろうなぁと適当に言った答えは、意外にも正解だったようだ。

嬉しそうにそう言い放ったキャプテンストライクが、チームメンバーを振り返る。

 

 

「私たち、全員が『逃げ』なんですよ」

 

「それは、まあ、珍しいね。9人全員なんて」

 

「なんでだと思います?」

 

「『なんでだと思います』??? えっ、脚質って理由あって決まるものなんだ。うーん、その方がいいから……とか?」

 

「おお、すごいですね……ほぼ正解と言えるでしょう」

 

「マジで????? 今結構適当に言ったよ?」

 

「ストラも結構ノリと勢いで話してるぞコイツ」

 

「失礼ですねギムリーさん。『楽しさを重要視している』と言ってください」

 

「同じだろ」

 

「コールさん、我々の前世が『事故機体』というのはさっき言ったじゃないですか」

 

「うん、言ってたね…………あっ、あ~……」

 

 

セントエルモライトの助言で、ひとつ答えを思いついた。

 

 

「もしかして、『()()()()()()()()()()』ってこと?」

 

「はい。嫌いなんてものじゃありません、生理的に無理です。隣に並ばれるのも、すぐ後ろについたりつかれたりするのも結構緊張します」

 

「さきほど見せたダイヤモンドステークスで最後競り負けたのもそれが原因だそうです」

 

「はえ~……ほかのみんなも?」

 

「軍人さんでもない限り、飛ぶときはみんな一人だからねぇ」

 

「俺もキツいな。多少平気なのは……この中じゃハリぐらいか?」

 

「並ばれるのが平気なぐらいだ。完全に馬群に埋もれるのは私も勘弁願いたいね」

 

 

ウマ娘というのは、普通『異世界の競走馬の魂と名前』を受け継いで生まれてくる。ここで言う異世界とはメーデーコールから見た前世のことだが、このチームのウマ娘たちはそれの代わりに『異世界の事故機体の魂と名前』を受け継いでいる。

……おわかりいただけるだろうか。

航空機、特に民間旅客機というのは、よっぽどのことがない限り単独で飛行する。むしろ、空中で極端に接近する行為自体が危険なのだ。

 

そんな魂を持った彼女たちが、すぐ隣に並ばれたり、馬群の中に埋もれたりするのはどれだけのストレスなのだろうか。頭の中でTCAS(空中衝突防止装置)が「Traffic!Traffic!」と警告を発している気がする。

 

 

「とまあ、全員がこういう状態なので、普通のトレーナーにつかれると大変面倒くさ……失礼、都合が悪いんですね。実際、先輩は一度スカウトされて別のトレーナーに指導されていましたが、先ほどお見せしたダイヤモンドステークスののちに『長距離大逃げは脚に負担がかかるのでなんとか別の戦法をさせたいトレーナー』vs『絶対に大逃げしないとまともに走れない先輩』で大揉め。たづなさん立ち会いの元、双方合意の上で契約解消の憂き目にあっています」

 

「悪い人ではなかったんですよ? なんだかんだシニア級まで面倒を見てくれましたから。ちなみに、皆でこのコースに集まり始めたのもその頃からです」

 

「な~るほどなぁ……レースの知識があるトレーナーより、私の方が都合がいいってのはそういうことね? その辺の事情を理解できるから」

 

「That's right!」

 

 

それはまあ、メーデーに頼ろうとするのも頷ける。

いくら競馬の知識が乏しいメーデーでも、大逃げが不安定というのは知っている。普通のトレーナーなら矯正させようと試みるだろう。

 

しかし、そうさせてしまえば彼女たちはまともに走れない。

 

理由を説明しようとすれば、馬群が嫌いという至極まっとうな理由以外に出てくるのは『私は異世界の航空機の魂を受け継いでいるので接近されると大変ストレスです』というものだ。そんなことを話せば、おそらく早急に保健室か神社に行くことを薦められることだろう。

 

 

事ここに至れば、もはや断る選択肢はなかった。

 

 

「わかったよ。私で良ければ」

 

 

その発言を受けて、皆がそれぞれ喜びあった。

 

 

「よろしくお願いします、コールさん!」

 

 

セントエルモライトの手を受け取る。

 

 

「こちらこそよろしく」

 

「じゃあ、これでやっとチーム名も決められるってわけだ」

 

「ずっと『35L(仮)』じゃ恰好がつかないからな」

 

「そうだね。(仮)じゃなくて正式なものを決めないといけないと。何か案は考えてるの?」

 

「ああ、アンタがこのコースに来始めて、マツユキが「あの人を顧問に迎えよう」って言い始めてからな。話し合ったんだ」

 

「トレセン学園では、チームの名前は天体の名前をつけるのが一般的だそうなので━━━━『ポラリス』、と」

 

「へえ、ポラリス……北極星か、いいね。いいと思………………あっ!いや、違う、『()()()()()』か!」

 

「うわ、見抜きやがった!」

 

「なんで分かるの……?」

 

 

『ポラリス賞』。

 

それは、国際定期航空操縦士協会連合会 から、優れた飛行技術や英雄的行為を発揮した民間航空機パイロット等に対して贈られる、民間航空に関係する賞としては最高位に位置する賞のことである。メーデー!本編においてもたまに聞く賞だ。

 

 

「さすがですね……そうです、ポラリス賞から取りました。前世でもリーブさん、マツユキさん、ストラさんの関係者の方々が受賞されましたし……この世界において、私たちの心の拠り所となればいいな、と」

 

「……いいじゃん。いいと思う、最高」

 

 

 

 

時は晩春。

トレセン学園の端っこの変な名前のコース脇で、色々な意味で『伝説』と呼ばれるチーム、『ポラリス』が産声を上げたのである。

*1
みんな大好き『もう助からないゾ♡』。ヤーポン法とメートル法の変換をミスって燃料を半分しか搭載しないまま飛び立った。なんやかんやあって死者無し。機体ものちに修理されて現役復帰した。

*2
飛行中に突然コックピットの窓が吹き飛び機長が機外に吸い出されるという大惨事。副操縦士が頑張って(誇張無し)機体を着陸させ、機長も生還したうえに5か月後に職務に復帰。強い人(物理)。

*3
フェデックスの貨物機で起こったハイジャック未遂。色々あって人生終わる前にフェデックス本社に突っ込んでやると画策した社員が飛行中のクルーを襲撃したものの、クルーの中に元海軍攻撃機パイロットがいたり、そのパイロットが民間貨物機であるDC-10で攻撃機ばりのアクロバット飛行をしたりで未遂に終わった。DC-10の頑丈な機体構造が功を奏した一例。DC-10を崇めよ。あと貨物ドアの設計は直せ。

*4
ロンドンからニュージーランドに向かう747型機が遭遇した事故。「なんか急に機外光り始めた(セントエルモの火)ンゴねぇ……」とか思ってたらすべてのエンジンがストップしたり再始動したりもう一回ストップしたりしたが無事に最寄りのジャカルタ空港に着陸した。全部火山灰ってやつが悪いんだ。あとジャカルタ空港はグライドパスを直せ。

*5
伝説の「回転!」回。離陸上昇時に、主翼の上に残っていた雪と氷が剥がれ落ち後方のエンジンを直撃。機長はマニュアルに従って操作を行ったものの、製造元が航空会社に伝えていなかった仕様によりエンジンが破損し墜落。しかし、クルー等がすごく頑張った(小並感)事に加え森の松と雪で墜落時の衝撃が分散され、機体が3つに大きく分断されたにもかかわらず死者は出なかった。絶望的に運が悪く、奇跡的に運がいい。ちなみに機長はその後機械不信に陥り復帰を断念、引退した。悲しいね。

*6
言わずと知れた『ハドソン川の奇跡』。ニューヨークのラガーディア空港を飛び立ったA320型機がバードストライクにより両エンジンを喪失、機長の素早い判断の末眼下に広がっていたハドソン川におおよそ完璧と呼べる不時着水をぶちかました。ちなみに事故後「空港まで戻れなかったのか?」という検証が行われたが、結論は「異常事態発生直後にチェックリストを無視して即空港に引き返す」という無茶苦茶なものだったため、機長の判断は正しかったと言える。これにはさすがの鱗滝さんもニッコリ。

*7
隻眼の機長が操る当時最新鋭の737型機が、『着陸アプローチ中に大量の雹を吸い込む』という開発元も想定していなかった事態に陥り両エンジンを喪失。一度は運河への着水を決断するも、直前になって運河の側にあった堤防を発見しそこに緊急着陸した。ちなみに、事故機は色々と理由がありその場でエンジンを修理して堤防から再び離陸した。どういうことなのだ(困惑)

*8
筋肉。プロペラの脱落、機体への衝突によって急減圧と共にエンジンの制御ケーブルが切断され出力の制御が出来なくなり、更に操縦の制御用ケーブルも客室の床と機体フレームの間に挟まれ手動操縦が困難に陥った。が、クルーが渾身の力で操縦かんを動かしていたら制御用ケーブルが機体フレームを削り、操縦が回復した。その後もこの機体状態で一度はゴーアラウンドを決断したりして無事生還。最後の仕事としてネクタイを締めなおし、乱れた制服をなおして帽子をかぶって地上に降りたった。筋肉の女神に愛された、イカれた真のプロ達。

*9
リーブ8便が『イカれた真のプロ』なら、こちらは『イカれた気象学者』。でっけえハリケーンカテゴリー3(実際は史上類を見ないほどでっっっっっけえハリケーンカテゴリー5)に突っ込んでいって第三エンジンを燃やしたり、第四エンジンに愛着がないかを確認しながら帰ってきた。救援に駆け付けた空軍機はお通夜状態だったが、当事者たちは割とハイテンションでデータ収集に勤しんでいたとか。やってることが大体ハリウッドのマッドサイエンティスト。




ダイヤモンドステークスのレース描写については、当時のレース映像が見つからなかったので多分に憶測を含んでいますがそもそもこの作品はフィクションなので問題はないと思います。多分。あったらごめん。

あと一応調べはしたんですけど本編で『ポラリス』ってチーム名出てないですよね? 出てたら大変面倒なことになるんですけども。
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