《前回の誤字報告者兄貴姉貴》(敬称略)
Simca V、アカギ
ありがとナス!
【答え合わせ】
・ギムリーグライダー
→ エア・カナダ143便
『エア・カナダ143便滑空事故』
・Captain Strike
→ブリティッシュ・エアウェイズ5390便
『ブリティッシュ・エアウェイズ5390便不時着事故』
・アクロバットクルー
→フェデックス705便
『フェデックス705便ハイジャック未遂事件』
・セントエルモライト
→ブリティッシュ・エアウェイズ9便
『ブリティッシュ・エアウェイズ9便エンジン故障事故』
・マツユキラッキー
→スカンジナビア航空751便
『スカンジナビア航空751便墜落事故』
・ハドソンミラクル
→USエアウェイズ1549便
『USエアウェイズ1549便不時着水事故』
・ワンアイドヒーロー
→タカ航空110便
『タカ航空110便緊急着陸事故』
・マッスルリーブ
→リーブ・アリューシャン航空8便
『リーブ・アリューシャン航空8便緊急着陸事故』
・ハリケーンハンター
→NOAA42
『アメリカ海洋大気庁P-3エンジン喪失事故』
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「なんで分かるんだよ…」
全てのメンバーの出自を言い当てたあとの沈黙を破ったのは、アクロバットクルーの発言だった。
「ちょっと、なんで引き気味なの」
「いや、だってさぁ……」
「普通、事故が起こった時は話題にしても事故の詳細含めて全部覚えてるっていうのはおかしいよ? 航空関係者でもたぶんそういないと思う」
「私も、そう思う」
ハドソンミラクルとワンアイドヒーローも一緒に頷く。
「え~、そ、そうかなぁ……」
「まあ、悪い気分ではありませんが」
「ね。私たちが頑張ったことを覚えていてくれる人がいるって、えへへ、なんだかうれしいね」
セントエルモライトが静かに微笑み、マッスルリーブは嬉しそうにはにかんだ。
「それで?」
「それで……っていうと?」
「決まってるだろう、マツユキの告白を受けるのか?」
「
「おっと、それを言われると弱るな」
若干顔を赤らめたままのマツユキラッキーから睨まれたハリケーンハンターが、演技がかった風に肩をすくめた。
『マツユキからの告白を受ける』。
例えに意図を感じるが、要は『チーム35L(仮)の顧問を引き受けるか』という問いである。
考えを言うと、別に顧問を引き受けたくないというわけではない。ただ、いくつか心配なことがあるだけだ。
「でもさ、さっきマツユキさんには話したけど、私でいいの? トレーナー免許は持ってないし、レースの知識も素人に毛が生えた程度だよ?」
「ええ、それでいいんです」
「Conversely……逆に言えば、『
マツユキの言葉に、少し困った風のキャプテンストライクが続ける。
「……どういうこと?」
「説明するよりも見てもらった方が早いかと。先輩、先日のレース映像を彼女に見せても?」
「構いませんよ。現状デビューしてるのは私だけですしね」
「私とギムちゃんはもうすぐデビューなんだけどねー」
セントエルモライトから許可を得たキャプテンストライクが、スマホを取り出して某有名動画サイトを開いた。
「こちらは、今月のはじめに開催された重賞、Diamond Stakesの様子です。えーと、先輩は……ここですね」
彼女が指さした画面には、集団の遥か前方を突っ走る巨体の姿が映されていた。隣を他に2人のウマ娘が走っている。逃げ3人がハイペースでレースを引っ張っているのか、後続集団とは距離がかなり開いている。
『キョウエイプロミス、ピュアーシンボリ、セントエルモライトのデッドヒート!差はほとんどありません!残り200を通過!ここでキョウエイプロミスが少し前に出たか!セントエルモライトとピュアーシンボリも粘るが距離は縮まらない!キョウエイプロミス!キョウエイプロミス!キョウエイプロミスが1着でゴールイン!ダイヤモンドステークスを制したのはキョウエイプロミス、これが重賞初制覇になります!2着はピュア―シンボリ、3着にセントエルモライトが入っています』
実況の声を最後に、動画はそこで終了した。
「へえ、重賞で3着。すごいね」
「今のところこれが最高成績なので、重賞勝ちはまだありませんが……とにかく、
「んー……いや、さすがにわかんないかなぁ……逃げってことぐらい?」
「
「え?」
違うだろうなぁと適当に言った答えは、意外にも正解だったようだ。
嬉しそうにそう言い放ったキャプテンストライクが、チームメンバーを振り返る。
「私たち、全員が『逃げ』なんですよ」
「それは、まあ、珍しいね。9人全員なんて」
「なんでだと思います?」
「『なんでだと思います』??? えっ、脚質って理由あって決まるものなんだ。うーん、その方がいいから……とか?」
「おお、すごいですね……ほぼ正解と言えるでしょう」
「マジで????? 今結構適当に言ったよ?」
「ストラも結構ノリと勢いで話してるぞコイツ」
「失礼ですねギムリーさん。『楽しさを重要視している』と言ってください」
「同じだろ」
「コールさん、我々の前世が『事故機体』というのはさっき言ったじゃないですか」
「うん、言ってたね…………あっ、あ~……」
セントエルモライトの助言で、ひとつ答えを思いついた。
「もしかして、『
「はい。嫌いなんてものじゃありません、生理的に無理です。隣に並ばれるのも、すぐ後ろについたりつかれたりするのも結構緊張します」
「さきほど見せたダイヤモンドステークスで最後競り負けたのもそれが原因だそうです」
「はえ~……ほかのみんなも?」
「軍人さんでもない限り、飛ぶときはみんな一人だからねぇ」
「俺もキツいな。多少平気なのは……この中じゃハリぐらいか?」
「並ばれるのが平気なぐらいだ。完全に馬群に埋もれるのは私も勘弁願いたいね」
ウマ娘というのは、普通『異世界の競走馬の魂と名前』を受け継いで生まれてくる。ここで言う異世界とはメーデーコールから見た前世のことだが、このチームのウマ娘たちはそれの代わりに『異世界の事故機体の魂と名前』を受け継いでいる。
……おわかりいただけるだろうか。
航空機、特に民間旅客機というのは、よっぽどのことがない限り単独で飛行する。むしろ、空中で極端に接近する行為自体が危険なのだ。
そんな魂を持った彼女たちが、すぐ隣に並ばれたり、馬群の中に埋もれたりするのはどれだけのストレスなのだろうか。頭の中で
「とまあ、全員がこういう状態なので、普通のトレーナーにつかれると大変面倒くさ……失礼、都合が悪いんですね。実際、先輩は一度スカウトされて別のトレーナーに指導されていましたが、先ほどお見せしたダイヤモンドステークスののちに『長距離大逃げは脚に負担がかかるのでなんとか別の戦法をさせたいトレーナー』vs『絶対に大逃げしないとまともに走れない先輩』で大揉め。たづなさん立ち会いの元、双方合意の上で契約解消の憂き目にあっています」
「悪い人ではなかったんですよ? なんだかんだシニア級まで面倒を見てくれましたから。ちなみに、皆でこのコースに集まり始めたのもその頃からです」
「な~るほどなぁ……レースの知識があるトレーナーより、私の方が都合がいいってのはそういうことね? その辺の事情を理解できるから」
「That's right!」
それはまあ、メーデーに頼ろうとするのも頷ける。
いくら競馬の知識が乏しいメーデーでも、大逃げが不安定というのは知っている。普通のトレーナーなら矯正させようと試みるだろう。
しかし、そうさせてしまえば彼女たちはまともに走れない。
理由を説明しようとすれば、馬群が嫌いという至極まっとうな理由以外に出てくるのは『私は異世界の航空機の魂を受け継いでいるので接近されると大変ストレスです』というものだ。そんなことを話せば、おそらく早急に保健室か神社に行くことを薦められることだろう。
事ここに至れば、もはや断る選択肢はなかった。
「わかったよ。私で良ければ」
その発言を受けて、皆がそれぞれ喜びあった。
「よろしくお願いします、コールさん!」
セントエルモライトの手を受け取る。
「こちらこそよろしく」
「じゃあ、これでやっとチーム名も決められるってわけだ」
「ずっと『35L(仮)』じゃ恰好がつかないからな」
「そうだね。(仮)じゃなくて正式なものを決めないといけないと。何か案は考えてるの?」
「ああ、アンタがこのコースに来始めて、マツユキが「あの人を顧問に迎えよう」って言い始めてからな。話し合ったんだ」
「トレセン学園では、チームの名前は天体の名前をつけるのが一般的だそうなので━━━━『ポラリス』、と」
「へえ、ポラリス……北極星か、いいね。いいと思………………あっ!いや、違う、『
「うわ、見抜きやがった!」
「なんで分かるの……?」
『ポラリス賞』。
それは、国際定期航空操縦士協会連合会 から、優れた飛行技術や英雄的行為を発揮した民間航空機パイロット等に対して贈られる、民間航空に関係する賞としては最高位に位置する賞のことである。メーデー!本編においてもたまに聞く賞だ。
「さすがですね……そうです、ポラリス賞から取りました。前世でもリーブさん、マツユキさん、ストラさんの関係者の方々が受賞されましたし……この世界において、私たちの心の拠り所となればいいな、と」
「……いいじゃん。いいと思う、最高」
時は晩春。
トレセン学園の端っこの変な名前のコース脇で、色々な意味で『伝説』と呼ばれるチーム、『ポラリス』が産声を上げたのである。
ダイヤモンドステークスのレース描写については、当時のレース映像が見つからなかったので多分に憶測を含んでいますがそもそもこの作品はフィクションなので問題はないと思います。多分。あったらごめん。
あと一応調べはしたんですけど本編で『ポラリス』ってチーム名出てないですよね? 出てたら大変面倒なことになるんですけども。