女幹部でも追加戦士になれますか? 作:改々
「起動したぞ!」
「おお……素晴らしい……!」
人々の歓声に包まれて私は目覚めた。うるさい。また下の階の住民が大音量でテレビを見ているのだろうか。
あ……? 手に違和感。髪も白くてやたらと長い。そもそもここは──?
混乱していると、顔色と人相が悪いおじいさんが近づいてくる。
「お前はこの私の最高傑作。名は
うわ、急に大声出さないでよ。周囲で色んな人が拍手喝采、まるで長年の夢が叶ったように叫んでいる。でも何かおかしい。
当然おかしいのは私も同じ。思考が鈍く、服もない。普段なら恥ずかしくて体を隠すのに、なぜか平然としていられた。
そして言うべきことも言えない。
「敵はどこ」
口が勝手に動いた。違う、本当は「敵が来るから逃げよう」と言いたかったのに。
どうしてかわからないけど数分後にみんな殺される気がする。襲来した
「敵? 戦闘はまだ先だ。まずあのお方に謁見し、次に偉そうな馬鹿共に実力を見せつけ──くくく。そうだな、時間を潰したいならこの基地を散歩していいぞ」
「敵いないの?」
「ここにはいない。だから無闇に破壊するな。あと外にも出るな。ま、心配せずともすぐに戦える時が来る」
駄目だ、話通じない。主に私が。
敵が来るのに。現代兵器では全くダメージを受けないどころか魔法や怪人の攻撃ですら怯ませる程度にしかならない強大な敵。私が戦っても奴のペンダントを傷つけることしかできない。
あれ……? 自分の思考がどこかぐちゃぐちゃになってる気がする。魔法とか怪人とかゲームやアニメみたいな……そもそも敵が来る感覚もわからない。
でも理解はできた。なんとなく、今戦えば勝てない気がした。
だから私は逃げた。よくわからない建物から脱出しようと走っているうちにアラームが鳴り、遠くで何度も爆発が起こる。とにかく必死で逃げていると床が抜けて異常な程勢いが強い川に落ちた。
こんな所に基地なんか作るな。
数日後、私はあの人達が全滅したのを知る。
そしてここが『
◆◆◆
『
このアニメを作る際に製作陣が意識したのは夢と希望。そんな抽象的なテーマと真剣に向き合った結果、予想以上にハードかつ陰湿な世界と凶悪な怪人、そして何度も苦悩し打ちのめされる主人公達といったシリアスな作風が誕生。
かつて夢を諦めてしまった苦い経験や自らの希望が他者の希望を潰してしまうジレンマ、それらに負けず戦い続ける主人公達。その美しい精神に憧れ、大人になっても心に残り続けている人は多い……らしい。
後にそんな評判を思い出す私も、この時はまだ何も知らない。
倒れ伏す私に接近してきた奴らにとっては幸運だっただろう。
「ぷぷぷ……ダッサ! 無様に敗戦した最強兵器ちゃんは土舐めが趣味なのかな?」
「い、いきなり暴れ出しませんよね? もっと慎重に……!」
「敵と味方の区別くらい教育されているわ。相当な無能でなければね」
「じゃあダメじゃないですか! 有能だったら壊滅してませんよ!? 無能です無能」
「ふん。私達にも牙を向けてくるなら、ここで死ぬだけよ」
「あのさー、オマエラなんでいるの。コレの回収はボクの仕事だよ」
最初に煽ってきた奴が他の二人と言い争ってる。新しい幹部がどうとか、教育がどうとか。心底どうでもいい。
知らない場所に流れ着いた私はそのまま寝て過ごしていた。
今の私は何もやる気が出ない。無気力。いや、精神的な私は動いて服を着たいと思っているけど体が動きたくないらしい。
「おーい。話聞いてたでしょ。あのバカ共は帰らせたからさっさと起きてよ」
無視。そもそも話聞いてない。
動きたいとは思ってるけど、この体になってからお腹空かないしトイレにも行きたくならない。ずっと寝てられるから特に不自由なくこうしていられる。
まあ仮に動こうとしても体が動かないから仕方がない。
瞬間、腹部に痛みが走り視界が二転三転。数回地面をバウンドした後、顔面から木に衝突し崩れ落ちた。
痛いなあ。あー、全身が痛い。
「無視すんなよガラクタ。フツーなら闇の中で野垂れ死んでたオマエごときに、このティカ様がせっかく勧誘してあげてるんだぜ?」
止めて下さい、とは言えなかった。でも無防備な時に蹴られたのは不思議と理解できる。
だとしても体が動かないからどうにも──あ、今動かせる。
「……ティカ。覚えた」
なんだか無性にぶちのめしたい。あのティカとかいう奴の舐めた態度に全身が怒りを覚えてる。
……私ってこんな性格だっけ? どちらかと言えば争いを避けて穏便に過ごしたいタイプだと自認していたけど、今は違う。戦ってやる。
そして、戦いも体が勝手に動いてくれる。殴られる際に反射で目を閉じるように、或いは出かける時に家の鍵を閉めるように。
私は背中から数本の触手を生やしティカへと放つ。ぬるっととんでもない技を使った気がするけど、なんとなく感覚でやれてしまった。
「へぇ。蹴った感覚もだけど、人形じゃなくてちゃんと怪人なんだ。ボクはてっきりつまんないロボットとかゴーレムとか想像してた」
「そっちは見た目通り単純そう」
しかし、ティカは蝙蝠のような翼を生やして飛翔。触手を避けつつ木々の間をすり抜けていく。こちらが更に多くの触手で迎撃を試みるが意味を成さなかった。
再び脚が強襲。今度は私の顔面が蹴飛ばされる。
「っ……!」
「バーカ! 単純なのはオマエの動きだよ! 足も動かした方がマシなサンドバッグになれるって知ってるか?」
う、そう言われると反論できないかも。私の口は勝手に煽らないでほしい。さっきから言いたいこと言えないくせに、余計なことばかり話してる気がする!
でも確かに単純なのはティカが正しい。だって結構わかりやすい
私は土の中に埋めていた触手でティカの足を掴む。そのままノータイムで地面へと叩きつけた。
「うわっ!? ……おー、やるじゃん」
一瞬にして触手は切断されたけど、まあ一撃は一撃。
どうだ! とでも言うようにピースして見せる。それといい感じになった所で終わりにしませんか? たぶんこれ以上戦う必要ないと思うんですけど私。
全部の触手を引っ込めて戦意が無くなったのをアピールした。
「待って。今なら話聞く」
「……ま、いいよ今はそれで。許してあげる。じゃあリーダーに報告してくるから、次会う時には綺麗にしててね」
「あの。今なら話聞くって──」
あっ……。霧のように消えたティカを見て、私は呆然と立ち尽くす。まあ「話聞いてなかったからもう一回言え」なんて言ったらまた戦闘になったかもしれないと考えると……うーん。
結局どんな要件だったのだろう。きっと考えても答えは出ない。じゃあ考えなくていいか。
邪魔者がいなくなったとポジティブに考え、私は肉体に促されるように睡眠を再開した。
◆◆◆
ティカが帰ってから数分後、或いは数秒後かもしれない。誰かの足音が聞こえた。
「えーっと……確かにこっちだった筈なのに」
聞き覚えのある声。でも誰かわからない。いやまぁ、実を言うとティカやすぐ帰った二人も聞き覚えのある声だった。ただ、今回はもっと思い出せそうな。
「ぜ、全裸の女の子が倒れてる!? 大丈夫!?」
声の主が駆け寄ってくる。うつ伏せに寝ていた体がひっくり返され、目が合った。
知っている。その可愛い顔立ちも、白い髪も、煌めく瞳も。……どこで? 知っている理由はすぐ近くにある気がする。
「誰?」
「わたしは
そう認識した瞬間、記憶している限りの『