カーテンの隙間から差し込む朝日が、フローリングに敷かれた布団を白く照らしていた。
朱乃「……連、起きて。朝ですよ」
耳元で、鈴を転がすような、それでいてどこか湿度を含んだ甘い声が響く。暁連が重い瞼を持ち上げると、そこには既に身支度を整え、淡い光を背負った姫島朱乃の姿があった。
彼女は連の寝顔を覗き込むようにして、慈愛に満ちた微笑みを浮かべている。
連「……朱乃か。……悪い、少し寝すぎた」
朱乃「ふふ、いいのよ。昨夜は……色々とお疲れ様でしたものね」
朱乃はわざとらしく頬を赤らめ、連の胸元にシーツを掛け直してやる。昨夜、結局連はベッドを彼女に譲り、自分は床に布団を敷いて寝た。一誠のような野性味はないが、その「越えてこない」自制心が、逆に朱乃の征服欲と独占欲を激しく煽ったのは皮肉な結果だった。
リビングに移動すると、香ばしいパンの香りと、深いコクを感じさせるコーヒーの匂いが鼻をくすぐった。
朱乃「トーストとコーヒー、用意しておいたわ。……あなた、いつもブラックで飲んでいるものね?」
連「……ああ、助かる」
連は椅子に座り、朱乃が淹れてくれたコーヒーを一口啜る。苦味の奥に微かな酸味。彼が愛飲している豆の種類まで、彼女は短い滞在期間で見抜いていたらしい。
トーストを齧りながら、連はふと視線を感じて顔を上げた。朱乃がじっと、熱っぽい瞳でこちらを見つめている。
朱乃「ねぇ、連。……これからも、定期的に泊まりに来てもいいかしら?」
唐突な提案。だが、彼女の瞳は冗談を言っているようには見えなかった。
連はカップを置き、窓の外に広がる朝の景色を見やりながら、短く答えた。
連「……好きにしろ。鍵は預けないが、あんたの魔力ならいつでも入れるだろ」
朱乃「うふふ、承諾と受け取っていいのね。嬉しいわ」
朱乃は満足げに微笑み、自分のコーヒーに口をつけた。
朝食を終え、二人は登校の準備を整える。朱乃がふとリビングの窓から外のガレージに目を留めた。そこには、この閑静な住宅街には不釣り合いな、攻撃的なオーラを放つマシンが鎮座していた。
朱乃「あら……素敵な車とバイクね。赤色で、ボンネットだけが漆黒……。あっちのバイクも、黒地にパールの光沢が赤く輝いていて……。連、確かあなたはご両親がいなくて一人暮らしだって言っていなかったかしら?」
連「ああ。……あれは、俺が乗る」
連は事も無げに言い、玄関の棚から車のキーを手に取った。
車もバイクも、そしてそれを公道で走らせるための「偽造免許」も、すべては黄泉の母・イザナミがこちらの世界での便宜を図るために用意させたものだ。神滅具の適合者として、移動手段に不自由させるなという彼女なりの配慮だろう。
連「送っていく。……車に乗れ」
連がガレージのシャッターを開け、赤いスポーツカーのエンジンを始動させる。重厚な排気音が朝の空気を震わせた。
助手席に乗った朱乃は、車内のレザーの匂いと、運転席に座る連の横顔を交互に眺め、うっとりとした表情を浮かべる。
朱乃「連、あなたって本当に……底が知れないわね。高校生がこんな車を乗り回すなんて、普通なら大問題よ?」
連「理(システム)なんてものは、利用するためにある。……行くぞ」
車は滑るように走り出し、朱乃の自宅(厳密には彼女の寄宿先)を経由して、駒王学園近くの契約駐車場へと滑り込んだ。
車を降り、二人は並んで校門へと向かう。周囲の生徒たちからは「転校生の暁連が、あの朱乃先輩を車で送ってきた」という衝撃の事実が、瞬く間に噂となって広まっていく。だが、連はそんな視線など一顧だにせず、ただ隣を歩く朱乃の歩調に合わせて歩を進めた。
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放課後。
物語の歯車は、一人の少女の運命を大きく変えた後にあった。
アーシア・アルジェント。
レイナーレの手によって一度は命を落とし、神器を奪われた聖女。だが、彼女はリアス・グレモリーの「僧侶(ビショップ)」の駒によって、悪魔として新たな生を得た。
朱乃「今日は一誠君の家で、アーシアさんの歓迎会を兼ねた集まりがあるんです。……連、行きましょ?」
朱乃に袖を引かれ、連は渋々ながらも兵藤一誠の自宅へと向かった。
オカルト研究部の面々――リアス、朱乃、木場、小猫、そして新入りのアーシア。そこに、独立勢力であるはずの連が混ざっているという、奇妙な構成の集団が一誠の家を訪れる。
一誠「はーい……! つーか、連! お前まで来たのかよ珍しいじゃねーか!」
玄関で一誠が、驚きと少しの羨望が混ざったような顔で出迎える。
一誠の背後からは、まだ悪魔としての身体に慣れない様子のアーシアが、おどおどしながらも笑顔を見せた。
アーシア「暁さん、お久しぶりです……! あの時は、助けていただいて、本当にありがとうございました」
アーシアが深々と頭を下げる。教会でのあの一件、連がレイナーレを瞬殺し、神器を奪還して一誠に託したことを、彼女はしっかりと覚えていた。
連「……礼を言われる筋合いはない。俺は俺のやりたいようにやっただけだ」
連はぶっきらぼうに答え、一誠の部屋へと上がる。
一誠の部屋は、相変わらずエロ本やポスターが散乱していたが、そこに集まった面々の空気は、かつてないほどに結束していた。
リアス「さて、改めて。アーシア、私たちの眷属へようこそ。これからは、ここがあなたの居場所よ」
リアスが優しく宣言し、アーシアの目には涙が浮かぶ。
一誠は鼻の下を伸ばしながらアーシアを励まし、木場は爽やかな笑みを絶やさない。小猫は昨日連に稽古をつけてもらった影響か、心なしか以前よりも連の近くに座り、黙々と羊羹を口に運んでいる。
朱乃は、連の隣を死守するように座り、彼の湯呑みに茶を注ぐ。
朱乃「ふふ、賑やかでいいわね。……でも連、あなた、さっきから不機嫌そうね?」
連「……騒がしいのは嫌いじゃないが、この『平和』がいつまで続くかと思っているだけだ」
連は冷めた目で見つめる。
アーシアが悪魔になったことで、天界との摩擦は避けられない。そして、連という「神滅具の異物」がここにいる以上、三大勢力のパワーバランスは既に崩壊を始めている。
連「一誠。……その腕、少しは馴染んだか?」
連が問いかけると、一誠は左腕を掲げ、不敵に笑った。
一誠「ああ! ドライグの野郎も、お前の黒炎にはビビってたけどな。今は『負けてらんねえ』って騒いでるぜ!」
連「……そうか。なら、もっと鍛えておけ。次に来るのは、ライザーのような甘い奴じゃない」
連の言葉に、部屋の空気が一瞬だけ引き締まる。
リアスも、朱乃も、連の予見が正しいことを肌で感じていた。
今のこの平穏は、暁連という強大な炎がもたらした、刹那の猶予に過ぎない。
朱乃「いいじゃない。何が来ても、私たちは負けないわ。……そうでしょう、連?」
朱乃が連の肩に頭を預け、挑戦的な笑みを浮かべる。
連は茶を飲み干し、窓の外に広がる夕焼けを見つめた。
連(アザトース……。お前も、退屈してただろう。……すぐに、大きな獲物が現れるさ)
右手の甲に刻まれた黒炎の紋章が、一瞬だけ赤黒く脈動した。
天使と悪魔、そして龍の力が混ざり合うこの部屋で、暁連は自らの進むべき「破壊と再構築」の道を、改めて見定めていた。
日常という名の嵐の予兆。
物語は、さらなる深淵へと加速していく。
転スラの二次創作主人公でやって欲しい種族は?
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